中国は軍事費をどこまで伸ばすつもりなのかジェイムズ・ローレンスソン、チェンシン・ピン両名がAUKUSにからめ問いかけている。AUKUSは中国の軍事脅威を理由に戦略方向性の変更をねらったものだ。
直近のDoD中国軍事力レポートは国防費を2,090億ドルとしており、GDP比で1.3%にあたる。ただし、報告書では数字には裏があり実際の予算額はこの1.1倍から2倍の間としている。
ストックホルム国際平和研究所は中国国防支出をGDP比1.7%とみている。米国は絶対額、GDP比ともに中国を上回る規模の国防費となっている。軍事アナリスト陣からは米国にはグローバル規模での軍事行動がある一方、中国は今のところこの任務がなく、米軍の実戦部隊の規模も供用年数も高いことで差は説明できるとする。
とはいえ次の疑問が残る。「現状を変えようとする勢力はどこまで国防支出するものなのか」
急激に変化する国際システムに深入りしようとする国が現状に満足する国より防衛支出を増やすのは当然ともいえる。両大戦間の日本が好例だ。日本の経済規模に対し米国は5倍の差があったが、日本は一貫して米国に匹敵する軍事予算を計上した。米国は太平洋大西洋でプレゼンスを維持する必要があったが、日本は太平洋に専念できた。
日本は現状を大幅に変える勢力に写り実際に支出を続けた。だがソ連の軍事予算支出を見ると、GDP比15%を1980年代まで続けていた。ただし、USSRは1980年代に現状変化を求めず、自国防衛に高い警戒態勢を維持していた。現在の中国は日本ともソ連とも異なる。中国の軍事力に目を見張るものがあるが、今のところ現状を変え脅威を与えるものではない。
もちろん、別の要因はある。中国の軍事力公表は巧みに重要戦力を隠す傾向があり、ストックホルム平和研究所でさえ欺かされている。国内の軍事産業はほぼ海外と無関係に活動しており、技術、資源、人材を米高水準より安く調達できる。また戦術面の要因もある。西太平洋の攻撃力防御力のバランスから恩恵を受けている。これはソ連が総じて軍事バランスでは不利なのに通常兵力で大きな優位を維持してきたのと似ている。中国が南シナ海を陸上基地発進の航空機、短距離運航の潜水艦、陸上配備のミサイルで支配してこれだけで軍事優位性を享受しており、圧倒的な軍事予算の投入は不要だ。
中国の軍事支出が比較的低水準のままだが、同国が整備中の軍事力を考えると維持できなくなる日が来る。艦艇、航空機、ミサイルをPLAが次々と調達し、整備、近代化、改修と支出が増える。中国の兵力を維持しようとすれば国防予算の増大は不可避だ。米国が中国軍事力を意識し反応し始めているをため、両国関係で悪化の兆しが表れている。1.7%でも大変なら、3.5%になったらどうなるのか。さらに大きな懸念材料は中国が両大戦間の日本同様に国防支出を増大するあるいは現在の米国並みにしたらどうなるのか。
米国は警鐘を鳴らしているが、中国はまだ実力行使をしていない。■
How Much Should China Spend On Its Military?
https://www.19fortyfive.com/2021/11/how-much-should-china-spend-on-its-military/
Now a 1945 Contributing Editor, Dr. Robert Farley is a Senior Lecturer at the Patterson School at the University of Kentucky. Dr. Farley is the author of Grounded: The Case for Abolishing the United States Air Force (University Press of Kentucky, 2014), the Battleship Book (Wildside, 2016), and Patents for Power: Intellectual Property Law and the Diffusion of Military Technology (University of Chicago, 2020).
In this article:China, Chinese Military Spending, featured, Military History, U.S. Military Spending
本ブログの「2021年3月5日、中国の国防予算6.8%増と公式発表… 2021/3/7」でもコメントしましたが、実際にはGDP比4%程度と推定します。
返信削除中国の国防費の定義が極めて狭義であり、近年PLAの支配下となった武警、海警の費用、それに軍民一体で区別が不明瞭な軍事技術の研究開発費を計上しているようには見えません。
また、最近著しく拡大しているICBMとその弾頭の製造、及び発射基地建設、並びに極超音速兵器開発はそれぞれ数兆円かかっていると考えれば、約22兆円とのDoDの中国国防費の推定値は、全く足りず、ストックホルム国際平和研究所のGDP比1.7%でも足らないと推定します。
ところで、記事の中で「日本の経済規模に対し米国は5倍の差があったが、日本は一貫して米国に匹敵する軍事予算を計上した」との記述があるが、これは誤った認識だ。これは米国の大恐慌による軍事費削減と、日本の日中戦争開始による一時的なものであり、一貫したものでない。例えば、「Top 15 Countries by Military Spending (1914-2018)」(https://youtu.be/cw2Wm8T6tio)を参照下さい。