宇宙で米国を追い越す北京の戦略(Defense One)―中国の宇宙開発ではPLAの関与に注意する必要はありますが、経済不況でも夢のある計画に邁進する姿には「年金の壁」が課題の国民からするとうらやましいものもあります。
2024年9月28日、中国有人宇宙局の月面着陸用宇宙服を披露する、中国有人宇宙計画の副チーフデザイナーで中国初の宇宙飛行士楊 利偉。 Wang Quanchao/xinhua via getty images 月 への帰還からその先へ進む競争が、新たな局面を迎えてきた。月と火星のどちらを目指すかでイーロン・マスクとNASAが論争を繰り広げる一方で、中国が最近発表した宇宙科学計画は、米国を凌駕し世界有数の宇宙大国になる意図を宣言している。 昨年10月、北京は初の「国家宇宙科学中長期発展計画」を発表した。これは、宇宙ベースの科学技術分野を発展させ、宇宙領域で優位に立つための戦略的青写真である。天文学的な追求にとどまらず、恒久的な有人月研究ステーションの設立、月資源の開発、そして最終的には火星への有人ミッションに優先順位を置いている。その包括的な目的は明確で、中国を宇宙進出の「国際的最前線」に位置づけることである。 計画は3段階に分かれている。初期段階は2027年までで、基礎的な技術力を固め、多くの分野でミッションを成功させることに集中する。これには、さらなる無人月探査や火星ミッションのためのコアコンピテンシーの開発などが含まれる。2028年から2035年までの第2段階では、中国がこれらの進歩を利用して、月面に飛行士を着陸させ、恒久基地を建設し、火星への複雑な有人ミッションを実行することを想定している。 2050年を頂点とする最終段階では、中国が他の天体に有人ミッションを派遣し、宇宙科学イノベーションの卓越した中心地としての地位を確固たるものにすることを想定している。 強力な宇宙分野の戦略的意味は広範囲に及ぶ。冷戦下の宇宙開発競争の中で考案された米海軍のナブスター・プロジェクトから派生した全地球測位システム(GPS)の開発に代表されるように、宇宙開発への投資が地上に大きな利益をもたらすことは歴史が証明ずみだ。ソーラーパネル、高度な建築材料、農業の進歩といった技術的な波及効果だけでなく、宇宙プログラムはSTEM教育の触媒となり、下流に大きな経済効果をもたらす。 このような目標を念頭に、中国は近い将来、月面基地を建設しようとしている。科学者たちは、クリーンで安全な核融合炉の実現に理想的な希少同位体であるヘリウム3が月に大量に埋蔵されている可能性が高いと見...