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2024年2月2日金曜日

米国の対外軍事装備品の売却、2023年度は809億ドルに急増  米国防衛産業株は買いか

 世界各地の安全保障への不安で、米国の防衛産業が好況のようです。FMS制度を使った売上が大幅増。Breaking Defense記事からのご紹介です。

Air Force photo

An Army M1 Abrams tank is loaded onto an Air Force C-17 transport. (Air Force photo)

23年度の外国向け武器販売・納入額は前年度比で55%増になった。

国務省の発表によると、米国の国防企業は昨年、対外軍事販売プログラムの下で809億ドル相当の兵器を他国に引き渡し、契約を交わした。

約810億ドルという数字は2023会計年度(2022年10月から2023年9月)のものである。ウクライナ戦争が激化し、友好国が近代化努力を加速させる方法を模索する中、バイデン政権が太平洋の同盟国を支援する後押しを続けたためである。22年度は519億ドルだった。

810億ドルに含まれるのは、同盟国やパートナー国からの資金による武器売却623億ドル、対外軍事資金プログラムを通じて契約された40億ドル、地雷除去や対テロリズムなどの項目を含む「その他」プログラムラインの147億ドルである。

昨年度の大型FMS案件には、ポーランドへのAH-64Eアパッチ・ヘリコプター96機と高機動砲兵ロケット・システム(HIMARS)100億ドル、ドイツへのCH-47Fチヌーク・ヘリコプター85億ドル、チェコへのF-35航空機と軍需品56億2000万ドルなどが含まれる。

FY23のFMSに加え、政権はFY22の総額1,536億ドルから2.5%増となる1,575億ドルの商業直接販売を昨年許可した。内訳は以下の通り:

  • F-35の主翼アセンブリとサブアセンブリ製造でイタリアに28億ドル

  • GE製F414-INS6エンジン・ハードウェア製造でインドへ18億ドル

  • 韓国にF100推進システムと予備部品用で12億ドル

米国はすでに24年度において、トルコ向けの推定230億ドルのF-16とギリシャ向けの推定86億ドルのF-35を承認し、以前は56億ドル相当と見積もられていたチェコ共和国向けの別のF-35契約を最終決定するなど、高額な潜在的取引の数々が承認ずみだ。■

US Foreign Military Sales deals mushroomed to $80.9 billion in 2023 - Breaking Defense

By   ASHLEY ROQUE

on January 30, 2024 at 1:57 PM


2013年9月27日金曜日

防衛装備の海外販売に熱を入れるペンタゴンの狙いは国内産業基盤維持および調達費用高騰の防止にある

Pentagon Pushes More Foreign Sales Of U.S. Goods

By Michael Bruno
Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek.com September 16, 2013
Credit: NIDS/NATO Media Library

アメリカ経営学の第一人者ピーター・ドラッカーは「ビジネスの本質は顧客を獲得し、維持すること」と表現した。国防総省はその言葉を真剣に受け止めているようだ。
  1. 強制予算執行削減はこのまま続きそうな観測で、国防関係者は輸出を前例のない水準まで引き上げようとしている。時間がかかる海外軍事販売 (FMS)では我慢できなくなり、海外バイヤーを米国製武器装備の販売に直接巻き込む傾向が強くなってきた。.
  2. 「近代装備は一層高価格になっており、長期間にわたる開発の負担が大変だ。これは米国以外でも同じ」と国防安全保障協力庁 Defense Security Cooperation Agency (DSCA)副長官リチャード・ジェネイルRichard Genaille, Jrが発言。いわんとしているのは開発調達コストを多くの海外諸国に負担させることだ。
  3. その好例が9カ国が参加する共用打撃戦闘機(JSF)でハイエンド装備は概して調達数が小規模になる、とジェネイルは発言。一方で、世界各地の開発途上国・新興国ではローエンド技術が訴求力を有している。
  4. そこでDSCAの対策のひとつに複数国向けにLOA要望承諾書を一括発行することで、従来は各国別にLOAを提示してきた。「多国向けLOAがあれば、同時に複数国が署名し、特定の製品を共同購入が可能となり、従来の二国間ベースより安価かつ容易に導入する道が開ける」(ジェネイル)
  5. JSFより成功している事例にNATOの戦略空輸能力手段調達計画でボーイングC-17グローブマスターIIIが計3機導入された件がある。各機はハンガリーのパパ空軍基地Papa AB に駐留し、10カ国が共同運航している。加盟国のアフガニスタン撤退時はこの制度を有効に活用した。.
  6. ハイディ・グラント空軍副次官(国際担当) Heidi Grant, deputy undersecretary of the Air Force によると空軍は空中給油分野で国際コンソーシアム体制の構築を目指し、NATOC-17の例を参考にしたいという。一方で空軍はFMSの対象となる可能性がある各国で導入希望が高い共通した15種類の兵器・システムを抽出しており、今後はその販売実現を重点的に進めることにし、従来のFMSを最初から案件成立していくプロセスを取りやめる。
  7. DSCAはFMS総額4,000億ドル相当の各種案件の成約を期待し、年間平均410億ドルの取引規模になる。「毎年410億ドルの新規案件で生まれる資金流入は国内の産業基盤を維持し、わが国自身の国防調達コストを下げることにつながる」(ジェネイル)
  8. オバマ政権が打ち出した輸出拡大策は国防総省による海外販売が頼りで、FMSでの販売が成立しないと国内の技術職技能職の数百万人分が雇用不安になるとジェネイルは試算し、逆に米国向けの調達価格が2割から3割値上がりするという。
  9. 一方で米国はすでに通常型戦争を行う能力を喪失したと危惧する向きもある。「武器調達・支援費用に軍の人件費も加えるとインフレーション率を上回る上昇をしており、当面この傾向がおさまりそうもない」と見るアナリストもいる。
  10. F-35、V-22やオハイオミサイル原潜の後継艦のような新型兵器は高性能だがインフレ率を加算してみると前の世代の兵器より高価になる。敵側の攻撃手段は防衛対象装備の数分の一の価格だと同アナリストは指摘し、「米国の国防産業企業の売り上げよりも少ないGDPの国が発射した」無誘導の初歩的なミサイルや中国のDF-21D対艦弾道ミサイルから防衛するために巨額の費用がかかる。■