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2022年2月13日日曜日

ウクライナ危機 フル装備F-15がポーランドへ展開中。欧州配備中の米空軍イーグル最後の任務となりそう

 F15 poland

POLISH ARMED FORCES

 

 (メディア関係者の皆様へ。F15Cという機体は存在しません)


空軍のF-15C、F-15Dイーグル戦闘機部隊がワスク航空基地 Łask Air Base(ポーランド)に2022年2月10日到着し、「NATOの集団防衛体制強化」に加わり、同時にバルト航空警戒(BAP)任務にも投入される。F-15C/D型はヨーロッパ連続配備が終わろうとしており、一方でロシア軍はベラルーシで大規模演習を開始し、東西緊張が高まってる。ロシアのウクライナ侵攻への恐れが高まる中で、前方配備部隊の運用が注目される。

 

 

今回のF-15C/D機材は第48戦闘航空団所属の8機でRAFレイクンヒース基地(イングランド)からワスク基地に本日到着し、ポーランド、デンマーク両国のF-16部隊によるBAPミッションに加わる。BAPはエストニア、ラトビア、リトアニアの防空任務で、ポーランドに移動したF-15機材は高性能中距離空対空ミサイル(AMRAAM)を搭載している。

 

ドイツのラムステイン航空基地に司令部を置く連合航空司令部では今回のイーグル配備についてロシア脅威をあえて理由にあげている。

 

「戦闘機追加分は連合抑止防空体制を強化し、一方でロシアはウクライナ周辺で部隊増強を続けている」と連合航空司令部は声明を発表している。「各機は同盟加盟国部隊とともに空対空、空対地訓練を展開しつつ、高度航空哨戒enhanced Air Policing (eAP) ミッションを実施する」

 

POLISH ARMED FORCES

An F-15D lands in Poland.

POLISH ARMED FOCES

F-15C/D Eagles taxi into parking at their temporary home away from home.

 

eAP ミッションでは必要な地区に戦闘機を追加投入し、輪番で任務に当たるNATO部隊を補強する。BAPは小規模で通常は4機を投入するが、eAPはそもそも2014年にロシアのクリミア併合への対応として発足したものだ。

 

「米空軍F-15部隊がポーランドに進駐して集団防衛能力がNATO東部方面で強化された」と在欧米空軍司令官兼連合航空司令官ジェフ・ハリガン大将General Jeff Harrigianが述べている。「米機材を投入したのは同盟の結束への姿勢を示すもので、防衛ミッション実行を共同で行う」

 

F-15C/Dの投入はミッションの防衛的な性格を考慮したものだ。「明るい灰色」塗装のイーグルは防空専門で、F-15EストライクイーグルやF-16の対地攻撃能力は付与されていない。

 

今回のF-15C/D部隊の到着とロシアのベラルーシ国内演習( Allied Resolve 2022)の開始が同時となった。ベラルーシはポーランド、ウクライナ両国の隣国で演習は10日間の予定だ。ベラルーシ国内に布陣するロシア軍はそのまま北部ウクライナ侵攻に投入される恐れを読んでいる。

 

ベラルーシ国内のロシア軍は30千名規模といわれ、S-400地対空ミサイル部隊2、イスカンデル短距離弾道ミサイル(SRBM)部隊も加わっている。注目すべきはこうしたロシア部隊の大部分がウクライナ国境付近に展開していることで、多くは30マイル地点だ。演習シナリオではベラルーシ南方国境地帯で敵に反撃する想定もある。

 

ロシア戦闘機部隊もSu-35Sフランカー多用途戦闘機、Su-25SMフロッグフット対地攻撃機がベラルーシに到着している。このうち、Su-35Sはワスク基地から300マイル足らずのバラノヴィッチ航空基地に展開している。迎撃任務訓練にベラルーシ空軍のSu-25が投入された。

 

ロシアのTu-22M3バックファイヤー爆撃機部隊もベラルーシ空域に投入されている。ロシアのSu-35S、ベラルーシのSu-30SMがあたっていた。爆撃機のうち少なくとも一気にKh-22あるいはKh-32超音速巡航ミサイルが搭載されており、核弾頭も運用可能だ。

 

クレムリンの公式発表では演習が2月20日二終了次第、ロシア軍はベラルーシから撤収するとあるが、そのとおり撤収となるのか、ロシア部隊全部が撤収となるかはわからない。

 

更に、ロシアはベラルーシ以外にも大規模部隊を集結しており、ウクライナ南方はロシアが占領中のクリミアや黒海からの揚陸作戦に脆弱だ。

 

他方でバルト海地方にロシアはMiG-31フォックスハウンド迎撃戦闘機にキンザル極超音速ミサイルを搭載し、カリニングラードに展開している。同ミサイルの配備はNATOの動きに対抗するもので、東部方面でのNATO部隊はここに来て強化されてきた。

 

第48航空団のイーグル各機はバルト海、ベラルーシでのロシア航空兵力展開への強力な対応だ。RAFフェアフォード基地に米空軍B-52H戦略爆撃機4機もミノー空軍基地(ノースダコタ)から到着している。爆撃機任務部隊の展開は事前に決まっていたが、現地に到着した各機は欧州東部の緊張をあらためて感じさせるものとなった。

 

F-15C/D各機はレイクンヒース基地の493戦闘機隊「グリムリーパーズ」所属で、今回の進駐は欧州で最後の作戦展開となる。ポーランドへ移動する前に同隊はイーグルからF-35Aへの機種転換の作業に入っていた。「グリムリーパー」隊はレイクンヒースで495戦闘機隊「ヴァルキリーズ」に続きF-35を運用することになる。

 

「グリムリーパー」隊はF-15を4月末まで供用の予定だったが、今回の展開で計画がどう影響を受けるかは不明だ。

 

JAMIE HUNTER

A “Grim Reapers” F-15C in its element, in one of the low-flying areas in the United Kingdom.

 

493戦闘飛行隊のイーグル各機は米国に戻り、州軍航空隊に加わる準備に入っていた。48戦闘航空団はF-35A飛行隊2の体制となるが、F-15Eを同基地から492戦闘飛行隊「マッドハッターズ」、494戦闘飛行隊「パンサーズ」が引き続き運用する。

 

防空専門のF-15C/Dはヨーロッパの空を1977年以来守ってきた。当時西ドイツのビットブルグ航空基地、オランダのソースベルグ基地から運用が始まった。

 

「グリムリーパーズ」は1994年からF-15C/D運用をレイクンハースで開始し、旧ユーゴスラビアでのアライド・フォース作戦で4機撃墜している。

 

ロシアは繰り返しウクライナ侵攻の予定はないとするが、部隊増強と物資搬入がウクライナ国境付近で続いていることから緊張は高いままだ。ベラルーシ演習が本日始まったことで状況は悪化の一途で、NATO側はF-15部隊がポーランドに登場したことで東部方面での備えと決意の程をモスクワに伝えようとしている。

 

ヨーロッパ配備のF-15C/Dで今回が最後の作戦投入になるとすれば、同機の輝かしい経歴で白鳥の歌としてふさわしい作戦になりそうだ。■

 

 

Fully Armed Grim Reaper F-15 Eagles Arrive In Poland In Response To Russian Build-Up

 

Arriving from England, the F-15C/Ds from the famous Grim Reaper squadron may be making their final operational deployment.

BY THOMAS NEWDICK FEBRUARY 10, 2022

 


2017年3月25日土曜日

★米空軍がF-15C/D型の早期退役を検討中



予算がないからと機種を整理していけば、その先はどうなるかわかっていても背に腹は変えられない事情が米空軍にあるのでしょうか。F-15はまだまだ供用に耐える機種であり、「空飛ぶミサイルトラック」に改装する構想もあるのに行く末に黄色信号ですね。もっともA-10の事例のように議会が強硬な反対論を展開することもあり(マクサリー議員は退役空軍大佐でA-10パイロットのようです)、空軍もわざと議論を巻き起こしてちゃっかり予算を確保したいと考えているのではないでしょうか。本家の米空軍がこんな状態では先が心配ですね。航空自衛隊は結局最後までイーグルを運用するのではないかと思いますが。

Are the F-15 Eagle's days numbered? Top generals say maybe

By: Stephen Losey, March 22, 2017 (Photo Credit: Senior Airman John Hughel/Air Force)
米空軍はF-15C型およびD型を退役させ任務をF-16に引き継がせる検討に入っている。
  1. 下院軍事委員会即応体制小委員会の聴聞会が今週水曜日に開かれ、委員長ジョー・ウィルソン議員(共、サウスカロライナ)がスコット・ライス中将(州軍航空隊総監)にF-15C型D型計236機を退役させ予算節約する案を質した。ライス中将は検討中と認めた。
  2. 同聴聞会でマーサ・マクサリー議員(共、アリゾナ)から同案は初めて聞いたとして、スコット・ウェスト少将(空軍運用部長兼参謀次長)に同戦闘機退役案が既定方針なのかを問いただした。
  3. ウェスト少将は正式決定ではないとしながら限られた予算を最大限に活用する案を空軍が検討中と認め、ミッション実現のため機種数を最小限にしたいと発言。ウェスト、ライスともにF-15の一部退役は「正式決定前」とした。なお、F-15Eストライクイーグルは検討対象ではない。
  4. ライス中将からはレーダー改修を行えばF-16でF-15の代わりは務まるとの発言があり、空軍は2019年度業務を計画中だが、F-15C型D型の退役方針は今年中は決まらないとライス中将は発言。そうなると同機退役は最短で2020年となる。
  5. だが空対空任務を主眼におくF-15C型D型を退役させ、空対地任務中心のF-16を使う案には疑問が寄せられた。F-15C型D型の就役開始は1979年でAIM-9サイドワインダーおよびAIM-120AMRAAM空対空ミサイルを最大8発搭載する。これに対してF-16は空対空ミサイルあるいは空対地ミサイルを最大6発搭載する。両機種がM-61A1多銃身20ミリ砲を装備するが、F-15では940発なのにF-16は500発だ。
  6. 「性能の違いは明らかだ」とウィルソン委員長は指摘。
  7. F-15イーグルの任務をF-16に任せて航空優勢確保で支障が生まれないのかを尋ねられライス中将は問題なしと答えている。「機種構成変更でリスクがないわけではないが、F-16に新能力を付与すれば性能面で十分対応できる。即応体制や本土防衛体制で変更が生じるが、対応は可能」と述べている。
  8. これに対してマクサリー議員はF-22登場までF-15Cが最優秀の空対空戦闘機であったと指摘。これに対しF-16は各種任務を低費用でこなせるが、レーダーを換装してもF-15Cと同等の空対空性能は実現しないと主張した。また現在でさえパイロット不足に悩む空軍で機種変更したら即応体制の維持が懸念されると表明した。「今でも即応体制に危うさがあり機種変更で再訓練をする間に危機が生まれれば短期でも即応体制が犠牲になる。戦闘機飛行隊が55個まで削減されている中、機種変更には慎重に望むべきだ」
  9. ウェスト少将は機種変更の際には一時的に「オフライン」状態が発生するが、中国やロシアへの優越性が減っているのも事実だとし、機種近代化は早く行ったほうが良いと述べた。
  10. 空軍報道官アン・ステファネックはその後F-15C型D型の退役案は決定事項ではないと述べ、これまでもA-10退役を複数年度で提案したものの同機はまだ運用中と指摘した。「将来の戦力構成は機会あるごとに検討しています。予算案に盛り込まないかぎり、案は案であり、検討にすぎません。選択肢の一つであり実行に移すわけではありません」■


2016年11月19日土曜日

★決断の時迫る、米空軍F-15半数で大規模修理が必要、改修か廃棄か



いくら機体設計が優秀と言っても、機齡60年になる2040年代までF-15の現行機材が何機稼働可能なのでしょうか。であれば、F-35調達を削ってでもボーイングの既存生産ラインを稼働させて新造機を追加するほうがいいのではないでしょうか。ただ2040年代にドッグファイトそのものが存在するのかわかりませんね。

Decision Time: Half of US F-15s Need Overhauls — Or Retirement

A U.S. Air Force F-15C Eagle fighter aircraft from the 104th Fighter Wing, Massachusetts Air National Guard, departs Joint Base Elmendorf-Richardson, Alaska, for Barnes Air National Guard Base, Mass., on Aug. 12, 2011.
WESTFIELD, Massachusetts — F-15Cイーグルの機体重量は16トンほどだが、推力47千ポンドで離陸するとまるで16オンスのように感じる。
  1. わずか数秒で時速100マイルに達し、さらにその倍で地面から飛び上がるが、ジェイ・「ファット」・タルバート少佐は水平飛行のまま高度50フィートで加速する。「Gが来ますよ」と少佐は後席の筆者に警告をだして操縦桿を引いた。
  2. アフターバーナー2つから雷鳴のような響きがニューイングランド上空に広がると機体は垂直飛行を開始する。高度計がストップウォッチのように回るが、タルバート少佐が6,000で止めて機体は左にロールし横滑りしながら水平になった。その後、右にロールし訓練空域に向かい、基本設計が1970年代で1985年製造だが今でも空戦能力があると実証する。
  3. 数百億ドルを投じてF-15のC型D型を近代化改装し電子装備を向上させるのが良いのか同じ予算なら新型機に使うのがいいのかで米空軍上層部が検討を迫られている。
  4. 「ミッションがなくなることはない」とピート・グリーン大佐、州軍第104戦闘機隊の副司令は語った。「航空優勢戦闘機の必要性は不変だ」
  5. 米空軍はF-15のC型D型をあと25年は稼働するとしている。(より新型のF-15Eストライクイーグル派生型はもっと長く供用の予定)だが想定以上の機数を退役させ整備費用を節約した分で新型機を調達するとしている。空軍では空対空戦しかできないF-15を今後どう活用するか検討が始まっている。
  6. 選択肢として第四世代のF-15を改良すること、第五世代のF-35ライトニングIIの調達を増やす、あるいは未来の軍用機、長距離侵攻型制空機材 Penetrating Counterairに予算をつぎ込む、がある。
  7. 「予定通りならF-15は2042年ごろまで供用する」とジョン・「ヒード」・マクローリンが航空戦闘軍団でF-15関連を担当する責任者としてラングレー空軍基地で語っている。マクローリンは以前はイーグルのパイロットで現在は同機の改修計画を統括している。
  8. イーグルはF-22ラプターとチームを組み、航空優勢戦闘機として活用する構想だ。
  9. 「F-15はF-22と協同運用します。今後の空軍、州軍航空隊双方でこの運用が中心となるでしょう」と語るのはスティーブ・パーカー(ボーイングF-15担当副社長)だ。ボーイングは同機の製造元として改修活動を実施中だ。「同機は2040年代まで航空優勢能力の中心となります」


新型装備で高まる威力

  1. 1970年代からF-15C/Dは最高の戦闘機と言われてきたが同機を上回るドッグファイト性能がF-22で実現している。
  2. 第104飛行隊のイーグル各機は1980年代製で搭乗員の大部分が生まれる前に製造されている。
  3. コックピット内部ではF-15Cはアナログ時代の産物だと一目瞭然だ。大型カラーのタッチスクリーンではなく丸型ダイヤル式計器各種が速度、燃料、方向その他飛行データを表示している。
  4. 一部ながらハイテク装備も導入している。州軍のパイロットはスナイパー標的探知ポッドを運用している。これは対地攻撃機でよく使われており、数マイル先から対象の機体番号が識別でき、米本土での迎撃任務に有益だと語るのはトラビス・「ビースト」・ヘイゼルタインでフロリダ州ジャクソンビルにある州軍空軍予備役司令部でF-15テストを担当している。
  5. だがイーグル運用を続けることには課題もある。各部品を製造したメーカー多数がもはや存在しておらず、きれいな外観とは裏腹に内部機構には細心の注意が必要だ。
  6. タルバート少佐のフライト二日前には外気温が華氏60度から30度まで急に下がり機体が始動できなくなった。また少佐がニューハンプシャー上空の制限空域に移動すると、機体が急に右に傾き慌ててコース修正が必要となった。
  7. 飛行可能にしておくことは高費用になる。三十有余年にわたり高性能飛行をしたため機材にしわよせがきている。F-15の機体を保持するためには新造の鋼鉄製縦通材が必要だ。イーグルで9年前にミズーリ上空で機体が分解する事故があったのはこの縦通材が折れたためだ。パイロットは生還したが射出脱出時に負傷を負った。
  8. また主翼も新しくする必要がある。この大規模改修は2020年代中頃を目処に実施する。
  9. 新型電子装備品では主コンピュータを交換しロシアや中国の地対空ミサイルや新型機に対抗する。
  10. 「現在の処理能力はコモドア128(旧型家庭向けパソコン)並だ」とマクローリンは語る。「戦闘能力を未だにそれに頼っているのは驚くしかない」ボーイングのパーカーによれば新型ミッションコンピュータは従来より50倍強力だと言う。
  11. その他にもイーグル・パッシブ・アクティブ警告システムがあり、デジタルの電子戦装備だ。「極めて重要な装備でF-15は厳しい空戦環境でも残存性を高められる」(パーカー)
  12. だがこの新型装備は60億ドルかかり、搭載はまだ10年先となり、何らかのつなぎが必要だとヘイゼルタインは述べた。
  13. その他の改修に長波赤外線捜索追尾装備があり、敵脅威を長距離から探知できる。レーダーが妨害されても敵機に照準を合わせる別の手段となる。
  14. 「この装備はなんとしてもほしい。第四世代機の性能を画期的に変えて、第五世代機にも対抗できるようになるから」とマクローリンは述べる。
  15. 旧式モノクロ画面やアナログ計器は新型カラー画面に取り替える。
  16. 「電子戦能力の進歩とミッションコンピュータ交換、ミサイル搭載能力の向上で今後20年以上に渡り相当の威力を保持できます」(パーカー)
  17. その他にも極秘の改良案が検討されている。「たえず敵より一歩先の性能を維持しておきたい」(マクローリン)
  18. 推定費用は120億ドルで工期20年と航空戦闘軍団は見ている。ここにはコンフォーマル燃料タンク他の向上策は含まれていない。
  19. 「イーグルの航続距離は伸ばす必要があります」とパーカーは述べる。「現地上空で待機して相当の兵装を積んだままの想定が米必要になると空軍、州軍は見ています」
  20. コンフォーマルタンク追加で飛行距離は増え、空中給油の回数が減り、空対空ミサイルを追加搭載できる。
  21. 「ステルス性は劣りますが大量の兵装をぶら下げて飛べます」とトム・「スリング」・ブレイデン大佐(104飛行隊の作戦指揮官)は述べる。
ボーイング提唱の「F-15 2040C」仕様の構想図ではミサイル16発を搭載している。(Boeing)

機数が足りない
  1. これまで米空軍が調達したF-15C/D型は400機を超えるが、そのうち現在稼働中なのは単座C型が212機、複座D型が23機のみだ。D型は訓練用途に運用されている。半数以上が州軍の5個航空団に配備され、残りは日本と英国に駐留する第一線飛行隊にある。
  2. ここマサチューセッツでは18機のF-15が警戒態勢を保ち、必要なら数分以内でロシア爆撃機の接近、ハイジャック事件、小型セスナ機が無線応答しない場合等に対応する。州軍五個航空団は高度警戒態勢にあり、空対空ミサイルを搭載している。各機は24時間体制を365日維持している。
  3. だが航空団配備の機数がこれだけ少ないとF-15の本来任務であるドッグファイトの訓練が十分できない。
  4. 「中心任務の四機編隊F-15でもっと多くの敵に対抗させる飛行訓練が難しい」とブレイデンは説明する。「全く新しい方法で四機訓練案を作り直したいが実際には警戒待機中の機体をつかっているのが現状だ」
  5. 空軍がもっと多くの機材を運用していた頃は機材を借用して別の部隊とチームを組むのは簡単だった。だが機材老朽化と予算不足で空軍は機数削減に走っているのが現状だ。F-16ファルコンをこれまでドッグファイトの相手機に使ってきたが、現在は対地攻撃訓練に軸足を移しイラクやアフガニスタンを想定している。
  6. 州軍航空隊を統括するスコット・ライス中将は104飛行隊司令を務めた経験があり、飛行隊の機数を増やそうとしておr,F-15の代わりにF-35を配備する方向になりそうだ。
  7. 「予算不足・人員不足の中で飛行隊の追加は機運が実っていませんが、既存飛行隊の拡充は可能なはず」「3機、6機、9機と予備機材を増やせば人員はそんなに増やさずに稼働機を増やせるはず」
  8. F-15パイロットは現地展開を通じて技能を磨こうとしている。104飛行隊は今年はじめの六ヶ月をヨーロッパで過ごし、アトランティック・リゾルブ作戦の一環でウクライナに手を出したロシアに対抗した。同隊はNATOの哨戒飛行ミッションとしてアイスランドに展開し、オランダ、エストニア、ブルガリアでの合同訓練に参加した。
  9. 「制空任務の訓練機会となります」とグリーンも今後の配備を期待している。
第131戦闘飛行隊(マサチューセッツ州バーンズ州軍基地)のF-15Cイーグルと第194飛行隊(フレズノ州軍基地所属 )がレッドフラッグ16-1演習で空中給油の順番を待っている。2016年2月撮影。 (U.S. Air Force)

運用は多忙を極める
  1. だが104飛行隊がヨーロッパに簡単に行けたわけではない。144隊(カリフォーニア州フレズノ基地)と調整し必要機数を確保している。
  2. 「パイロット、整備陣は残しておく必要があった。部品等も同様だ」とブレイデンは104隊作戦主任として語った。部隊派遣で改めてロシアがウクライナを侵攻したことで東ヨーロッパでの脅威が痛感された。
  3. 「エストニアから離陸するとロシアの地対空ミサイル装備が近隣のカリニングラードにあることがわかる」
  4. また同隊パイロットは国境の反対側を飛ぶロシア機を度々目視している。
  5. 「平時であることがあらためてありがたかった」とブレイデンは述べている。
  6. 104隊がブルガリアに到着すると、同国空軍のソ連製MiG-29飛行隊がスクランブル態勢にあるのが目に入った。
  7. 「F-15が到着したその日にブルガリア空軍はスクランブルを三回行っており、滑走路に常時一機が待機していました」とブレイデンは語る。「ロシアが国境線をしきりに偵察していたためです」
  8. 米軍機はロシア機との接近遭遇や緊急事態は経験しなかった。
  9. 「まあ、暴走族がヨーロッパ遠征したようなものでしたが、なにごともなかったわけです」とブレイデンは振り返る。
  10. ブルガリアでは同戦闘機隊はアメリカ式の待機態勢をとっていた。「戦術レベルですべて一箇所にまとめていました」(ブレイデン)
  11. ライス中将は今後のヨーロッパ派遣で州軍飛行隊が「大きな役割を果たす」と見ている。
  12. ニューハンプシャー上空に戻ったタルバート少佐とウィングマンはヨーロッパへの派遣が再びあると覚悟している。■