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パキスタンがインド戦闘機に対しPL-15Eを使用したことで、中国で最も脅威的なミサイルに関する情報入手の可能性が出てきた
中国製のPL-15Eアクティブ・レーダー誘導型空対空ミサイルの後部やその他部品が今週初めのパキスタンとの国境上空での空戦中に、ほぼ無傷のままインドに落下した。 両国間の空中戦の詳細については不明な点が多いが、PL-15が戦闘に使用されたのはこれが初めてである、 中国で最も近代的な空対空ミサイルの一部でも回収できれば、インドその同盟国、パートナー国にとって大きな関心事となる。
本日の記者会見で、パキスタン当局者は、中国製のJ-10とJF-17戦闘機、そして米国から供給されたF-16ヴァイパーが、5月6日夜から7日にかけてのインド軍との空中戦に参加したと述べた。また、PL-15Eミサイルの使用も明記されている。パキスタン当局は、自軍42機の戦闘機が72機のインド軍ジェット機と交戦し、フランス製ラファール3機、ロシア製Su-30MKIフランカー1機、ロシア製MiG-29フルクラム1機の計5機のほか、ドローン1機を撃墜したと主張している。
パキスタン側の主張は根拠がないままだ。パキスタン当局は現在、レーダーデータと音声記録を公開しているが、独自に検証することはできない。インドのラファールのうち少なくとも1機が失われたことを示す視覚的証拠がある。現在、インド空軍の損失に関する複数の報告があり、米仏印当局者が引用しているが、正確な数や状況については意見が分かれている。パキスタンはまた、未確認の反論に対して、航空機の損失を否定している。
その中で、パキスタンが発射した中国製PL-15Eミサイルの一部がパキスタン国境沿いのインド領内に落下した。これには、パンジャブ州ホシアルプル地区のカマヒ・デヴィ村付近に落下したミサイルも含まれる。 写真とビデオでは、ミサイルの後部ボディの大部分と誘導部の一部と思われるものが近くに横たわっているのがわかる。
インドのパンジャブ地方に落下したPL-15Eミサイル本体の写真。via X
近くで発見されたPL-15Eの誘導部らしき部分。
その後、ミサイルの一部が回収されたかどうかは不明だ。インドのインド・アジア・ニュース・サービス(IANS)の報道を機械翻訳すると、「金曜日、村人の情報により、インド空軍の兵士がその場所に到着し、ミサイルの無力化に成功した。 「兵士たちは村人をその場から追い払い、その後、ミサイルを無効化し破壊した」。
しかし、インド軍が現場を確保している映像はあるが、PL-15の部品が物理的に破壊されたことを示す映像はないようだ。 諜報活動を考えれば、ミサイル部品を回収していない可能性は低いと思われる。PL-15の小型部品は、今週の空戦後、パンジャブ州で発見されたと伝えられている。
ミサイルの紛失、特に比較的無傷の状態での紛失は、多くの状況の結果として起こりうる。 これには、発射機の長時間の誘導支援なしに、目視範囲を超えたミサイルの能力の最大到達距離で発射されたものも含まれる。このような発射は、防衛的または攻撃的に使用することができ、ミサイルは目標に向け発射され、自身のシーカーが作動するずっと前に、「発射して忘れる」モードに入る。これらの射撃は、発射した機体がコース途中のアップデートを送信しなくなるまで、ミサイルが最初のテレメトリーに基づいてターゲットの位置を最もよく予測した状態で行われる。 ミサイルに搭載されたレーダーは射程が短いため、ターゲットが射程内に入ったと判断すると、レーダーを起動しターゲットを探す。
この発射方式は、殺傷の確率を大幅に下げるが、発射する戦闘機の生存率を大幅に高めることもできる。 今回の空対空の小競り合いの間、インド機もパキスタン機も国境を越えていなかったとされることを考えると、発射機による限定的な誘導で行われた長距離射撃が行われた可能性が高い。 発進する戦闘機のレーダーから提供される中間コースの最新情報も、航空機が国境に接近し、国境を越えたり、相手戦闘機や地対空ミサイル・システムの交戦包囲網の奥深くに入ったりしないように、物理的に国境から遠ざかる必要があるため、切り捨てられる。 このような脅威の高い地域で戦闘機のレーダーを長時間オンにするだけで、迅速に発見され、死に至る可能性があるからだ。
また、遠距離から発射されるミサイルは、最終的に地上に衝突するとき、運動エネルギーが非常に低い状態になっている可能性が高い。
繰り返しになるが、ミサイルがこのように比較的無傷で発見される理由はたくさんあるが、国境沿いの戦術的状況について我々が知っていることを考慮すると、この可能性は非常に高いと思われる。
中国のPL-15は2010年代半ばから配備された、同国で最も近代的な空対空ミサイルのひとつである。少なくともアメリカのAIM-120 Advanced Medium Range Air-to-Air Missile(AMRAAM)の大まかなアナログとして開発されたと言われている。このミサイルは、アクティブ電子スキャン・アレイ(AESA)シーカーを備えたレーダー・ホーミング設計で、アクティブ・モードとパッシブ・モードがあり、中国の先行機種よりも高周波対策に強いと言われている。また、発射後の誘導更新を可能にする双方向データリンクも備えている。
PL-15の最大射程は約124マイルと報告されているが、パキスタンで運用されている輸出型PL-15Eの射程はわずか90マイルと言われる。ミサイルの輸出バージョンは、その国が自国用に製造したものに比べて能力が低下することは珍しくない。
2024年珠海航空ショーで展示されたPL-15Eミサイルまたはそのモックアップ。 写真:Costfoto/NurPhoto via Getty Images
一般的に、比較的無傷の武器やその他の資料、特により高度な設計のものを回収することは、諜報機関にとって好都合となる。PL-15Eのような空対空ミサイルの部品を回収することで、能力や限界に関する貴重な情報を得ることができ、新たな対抗策や戦術、技術、手順の開発に役立てることができるからだ。
ミサイル誘導パッケージ(特にPL-15に搭載されているようなAESAシーカー)やその他の電子機器が主な関心事ではあるが、その他のコンポーネントを精査することで、非常に有用なデータを得ることができる。 PL-15はデュアルパルスロケットモーターを使用しており、その性能については、使用済みの例から何らかの知見が得られるかもしれない。また、ミサイル本体やその他の部品に使用されている材料を試験することで、原産国の生産ラインの全体的な工業能力や品質管理に関する有益な情報を得ることができる。
最近の戦闘でPL-15が少しでも使用されれば、ミサイルの重要な部品が回収されるか否かにかかわらず、情報収集の機会が得られたはずである。インドはまた、PL-15のコンポーネントや、現在の危機で回収したその他の先進的な物資を、同盟国やパートナーがさらに調査・分析するために共有することもできる。PL-15について新たな詳細が得られる可能性は、米国にとって特に興味深い。このミサイルは、将来中国と衝突した場合、米航空機にとって差し迫った脅威となるだろう。
また、インド、米国、その他の外国の情報機関がPL-15についてどのような情報をすでに持っているかわからないことも注目に値する。米軍を含む米情報機関には、航空機からミサイル、戦車、その他まで入手可能なものは何でも入手することを任務とする、いわゆるFME(Foreign Materiel Exploitation)と呼ばれる大規模な事業がある。
一方でインドとパキスタンの危機は収まる気配がない。この記事を書いているちょうどその時、首都イスラマバードの南東に位置する北部の都市ラワルピンディを含むパキスタンの基地を標的としたインド軍の新たな攻撃の波が報告された。 パキスタン当局は資産の喪失を否定しているが、ラワルピンディのヌールカーン空軍基地でC-130が攻撃されたのではないかという疑問が画像で浮かび上がっている。
インドのパンジャブ地方に落下したPL-15Eが回収されたかどうかは別として、現在進行中の危機が終わる前に、これらのミサイルの一部や、情報活用のための他の貴重な物資を回収するチャンスはもっと生まれるかもしれない。■
Chinese-Made PL-15 Air-To-Air Missile Components Came Down Intact Inside India
Pakistani use of PL-15Es against Indian fighters opens up a new vector for intelligence exploitation on one of China's most threatening missiles.
UPDATED MAY 9, 2025 7:28 PM EDT
ジョセフ・トレヴィシック
副編集長
2017年初頭からThe War Zoneチームのメンバー。 それ以前は『War Is Boring』の副編集長を務め、『Small Arms Review』、『Small Arms Defense Journal』、『Reuters』、『We Are the Mighty』、『Task & Purpose』など物に寄稿している。