ラベル 日本 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 日本 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2025年6月24日火曜日

C-17 グローブマスターIIIの生産再開は実現するのか――ボーイングが直面する現実的な課題

 


(The National Interest記事を基に作成しました)

生産終了から約10年、ボーイングが再びC-17 グローブマスターIIIの製造を検討中だが、それは決して簡単な話ではない――そして、費用も莫大だ。C-17の生産再開構想は魅力的だが、現実は厳しい。

月開催されたパリ航空ショーで、ボーイング・グローバル・サービス部門の副社長トゥルビョーン・ショーグレンは、C-17への国際的な関心が高まっていることを認めた。しかし、ボーイングには生産能力がなく、後継機の計画も存在しない。

「現時点でこの航空機に代わる新しい計画は存在していません。そのため、アメリカ空軍および国際的な運用国と連携し、延命および近代化プログラムを実施しています」と(ショーグレン)。

世界的な需要増——しかし障害も多い

アメリカ空軍は現在も223機のC-17を運用中で、イギリス、オーストラリア、カナダ、インド、カタール、UAE、クウェート、NATO加盟国などの同盟国でも現役で使用されている。その高い搭載能力(約45トン)と、荒れた短い滑走路(1,000m以下)での運用能力は、他機にはない特長だ。

日本を含む複数国が購入を希望しているが、生産が終了しているため手に入らない。M1エイブラムス戦車を空輸できる戦略輸送機はC-17のみであり、エアバスA400M、エンブラエルC-390、川崎C-2などの競合機ではその任務をこなせない。

ロングビーチ工場という壁

最大の障害は生産拠点だ。ボーイングは以前、カリフォルニア州ロングビーチにあったC-17の生産工場を閉鎖しており、その土地は現在売却中。新たに工場を建設するには、時間と数十億ドル単位のコストがかかる。

 RANDコーポレーションによる2013年の試算では、生産を再開して150機を製造すると**約80億ドル(約1兆円)**が必要だとされている。

 現在の見込み需要が「数十機」規模であることを考えると、投資回収(ROI)は見込めず、ボーイングにはリスクの高い賭けとなる。

同盟国にとっての戦略的価値

インド太平洋の緊張が高まるなか、日本がC-17に興味を持つのは当然だ。災害対応や戦略的移動力、抑止力の観点から、長距離輸送能力は不可欠だが、アメリカも手放す余裕がない今、どこからも調達できないのが現実だ。

 ボーイングはセントルイスでF-15EXを生産中であり、第6世代戦闘機「F-47」への転換も視野に入ってきた。C-17の再生産ラインに資源を振り分ける余地は小さいのかもしれない。

代替機なき時代へ

 後継機の計画が存在しない今、C-17の運用寿命は2070年まで延長される見込みだが、それまでの数十年を現有機体でしのげるかは不透明だ。

 ボーイングは既存機の延命とサポートに注力しているが、世界の戦略空輸ニーズにそれだけで対応しきれるのか――注目が集まっている。



2021年12月6日月曜日

主張 日豪印の三か国に加え、米英両国も加わりインド太平洋の戦略環境を三角形構造で考えると今後どうなるか。

 

 

ーストラリア、インド、日本の三か国がここ数年にわたり連携を静かに深めてきた。米国・英国もアジア太平洋での関係強化を進めている。

 

ヘンリー・キッシンジャーは三角形で考え、米、ソ連、中国の関係を構想した。今日の戦略三角形はインド太平洋にある。頂点にキャンベラがあり、そこから北西にニューデリーがあり、もう一方は南北に走り東京とキャンベラを結ぶ。さらに重要な線が二本あり、それぞれワシントンDCとロンドンをつないでいる。

 

2007年に中国の主張の強まりを受けてこの関係がゆっくりと進化を開始した。ある意味でバラク・オバマ大統領のシリアでの「レッドライン」撤回、ドナルド・トランプ大統領の同盟関係への取引感覚導入から米政策の動きが予測不能となったのを反映したものといえる。同時に日本、オーストラリア、インドが安全保障面での役割強化をそれぞれ認識してきたことの反映でもある。

 

インド太平洋の安全保障構造の進化は冷戦時の「ハブ&スポーク」モデルがネットワーク型の総合構造へ変わったものであり、オーストラリア、インド、日本の安全保障上の関係強化をもたらした。新たな構造では戦略提携関係がインドネシア、シンガポール、ヴィエトナムにも広がっている。他方で、オーストラリア、インド、日本の各国は二国間同盟関係を米国と保持しつつ、域外の勢力とも安全保障上のつながりを強化している。そのあらわれがAUKUSの潜水艦調達事業として実現した。

 

インド太平洋の三角形

 

三角形協力に向かう動きではオーストラリア=インド艦の戦略取り決めがめだつ。オーストラリアの2017年版外交白書ではインドを中核的安全保障の相手国としてとらえており、域内秩序を支えるとしている。AUSINDEX演習が2015年に始まり、直近は2021年9月にダーウィンで開催されている。

 

2020年のリモート型式によるサミットでスコット・モリソン、ナレンドラ・モディ両首相は2009年の戦略パートナーシップを総合的戦略パートナーシップに格上げし、「開かれた自由で法の支配下のインド太平洋のビジョン」を共有し、海洋部での協力強化を謳った。両首相は相互補給支援でも合意し、両国軍事基地の相互利用を決めた。サミット後にインドはオーストラリアを印米日の共同海軍演習マラバールに招待し、クアッド各国が初めて一堂に会する演習となった。2021年9月10日から12日にかけ初の2+2大臣級会合で総合的戦略パートナーシップ協議がニューデリーで開かれ、インド、オーストラリア両国は外相、国防相を参加させた。

 

インドと日本の関係は6世紀の仏教伝来までさかのぼるが、21世紀に特別な戦略グローバルパートナーシップに深化した。モディ、安部晋三両首相が中心になり両国関係が変化した。安部は自由で開かれたインド太平洋構想の原型を2007年のインド国会演説で初めて公表した。「両大洋の合流」と海洋国家の両国に触れ、インドと日本には「シーレーンの確保で死活的国益がある」と述べた。安部は両国の外交防衛担当部門に対し将来の安全保障上の協力を「共同検討」するよう求めた。

 

日本はマラバール演習に2015年から常任演習実施国として参加している。日印間のJIMEXは2016年にベンガル湾で始まり、毎年開催されている。2020年9月、両国は安全保障の関係強化を狙い物品役務相互提供協定を締結した。2021年6月、両国は合同演習をインド洋で展開し自由で開かれたインド太平洋の実現の一助とした。2+2大臣級会談が毎年開かれ、両国間の意思疎通を図っている。

 

21世紀の日本=オーストラリア間の協力の原型となったのが2007年の安全保障協力の共同宣言で、「アジア太平洋さらに域外で共通の戦略権益を協議する」とし、防衛関係者の交流、共同演習、2+2メカニズムの創設を目指した。2013年に両国は物品役務相互提供協定を結び防衛協力をさらに進めた。キャンベラ、東京はともに二国間関係を特別な戦略パートナーシップに格上げしている。

 

オーストラリアの2017年版外交白書では日本の防衛改革努力並びに防衛力整備を歓迎しつつ日本が「一層積極的な役割を域内安全保障で演じるよう支援する」とした。日本は米豪間のタリスマンセイバー演習に2019年初めて参加し、ヘリコプター空母いせと自衛官500名を派遣した。両国間の防衛関係強化を受けて、2020年に両国政府は相互アクセス協定を結び、菅義偉首相は両国間の「意思と能力を共有し、域内の平和安定に資する」と評価し、モリソン首相も「画期的な防衛条約」として日豪の「特別の戦略パートナーシップ」を強化すると称賛した。2021年6月の2+2会合に先立ち、茂木敏充外相が両国の安全保障関係を「次のレベル」に引き上げたいと発言したとロイターが伝えた。

 

自由で開かれたインド太平洋

 

三角形はここ十年で深化し、日本、オーストラリア、インドは米国とのつながりをさらに強め、強硬な態度を強める中国という課題に対応し、力を合わせ自由で開かれたインド太平洋の維持を図っている。

 

2019年の日米安全保障協議会の共同声明文は両国の安全保障政策の方向性を一致させることに触れ、「力による国際法規範や仕組みの変更は自由で開かれたアジア太平洋で共有する価値観、同盟関係への挑戦である」とし、同盟関係国が東南アジア諸国連合、インド、日本、大韓民国と一緒に「ネットワーク構造の同盟関係、協力関係を強化することで安全、繁栄、包括的かつ法の支配が働く広域圏を維持する」ことに全力を尽くすとした。

 

2020年にトランプ大統領はインドを訪問し、包括的グローバル戦略パートナーシップで合意した。同年10月に米印2+2会合で両国政府は物品役務相互提供協定、通信互換性保安合意、軍事情報包括保護協定でそれぞれ合意を形成した。同時に自由で開かれたインド太平洋の維持を再確認した。

 

そこにインド太平洋三角形のもう一つの線が出てきた。ロンドンからである。HMSクイーン・エリザベス空母打撃群をインド太平洋に展開させ、哨戒艇二隻を同地区に常駐させる決定、さらにAUKUS枠組みでの原子力潜水艦建造がロンドンのめざす意図を物語っている。英国防相ペニー・モーダントが2019年のシャングリラ対話で使った表現では域内プレゼンスを「粘り強く」維持するとあった。

 

現時点のオーストラリア-インド-日本の三角形に米国がクアッドで加わり自由で開かれたインド太平洋の価値観を各国が共有する形が生まれた。各国は法規則に基づく秩序、紛争の平和的解決、力による既成事実の変更の拒絶で共通する。では各国間に対中国姿勢で違いは存在しないのだろうか。実はある。各国とも地理や経済の違いのため国益は一様ではない。だが、インド太平洋に関する限り、各国は相互に補強しあう。さらにこの先を見るとワシントン、東京、キャンベラ、ニューニューデリーの政治トップの次の課題は各国の相違点を縮める努力にあわせ、共通のビジョンの方向に国内政治を収束させていく仕事だ。■

 

Can the Australia-India-Japan Strategic Triangle Counter China?

by James Przystup

October 21, 2021  Topic: Quadrilateral Security Dialogue  Region: Indo-Pacific  Tags: Quadrilateral Security DialogueIndiaJapanAustraliaAUKUSAlliancesChina

 

James Przystup is a Senior Fellow at the Institute for National Strategic Studies. Previously, he has served as Deputy Director of the Presidential Commission on U.S.-Japan Relations 1993-1995, the Senior Member for Asia on the State Department’s Policy Planning Staff 1987-1991, Director of Regional Security Strategies in the Office of the Secretary of Defense 1991-1993 and Director of The Asian Studies Center at The Heritage Foundation 1993-98. The views expressed are the authors’ own and do not reflect those of the National Defense University or the Department of Defense.

Image: Reuters.


 

2017年10月2日月曜日

韓国が原子力潜水艦運用を開始する日が来るのか


著者の一人は現役韓国海軍潜水艦乗り組み士官です。果たして実現の可能性はあるのでしょうか。虫の良い主張にも聞こえる反面、展開されている効果も実現の可能性はあるように思えます。日本との微妙な関係に配慮した文脈になっていますが、独島と竹島を併記する一方原文では東海となっていますのでやはり韓国だなという感じは残りました。皆さんはどう思いますか。


Should South Korea Start Building Nuclear Submarines?

韓国は原子力潜水艦建造を開始すべきか

September 26, 2017

  1. 北朝鮮が潜水艦発射式弾道ミサイル(SLBM)開発に取り組む中、韓国は米国支援を得て原子力推進式潜水艦(SSNs)の取得に近づいている。国連本部訪問時の協議で韓国大統領文在寅はドナルド・トランプ大統領と韓国が長年目指すSSN建造を議題にした可能性がある。
  2. 韓国国防筋はすでに国産SSN建造費と効果を試算しているが、米国でこの話題はほとんど議題になっていない。米国防政策筋が米韓同盟に韓国SSNsが実現した場合の結果を真剣に検討することこそ重要である。一方で米国支援で韓国がSSNを実現した場合の同盟関係への潜在リスクを検討してみる。
4Dの強化
  1. 韓国国産SSNの一つの効果は同盟軍による「4D」作戦構想の実現が強まることだ。この構想は北朝鮮核ミサイルの「探知、妨害、防衛、破壊」detect, disrupt, defend against, and destroyを行う内容でいわゆる「キルチェーン」の一部として北朝鮮内部深くを攻撃する能力で北朝鮮ミサイルの発射前にこれを排除する構想が4D構想の中心だ。北朝鮮がSLBM開発に進んでいるため、現在のキルチェーンの有効性に疑問が生まれている。同盟側も対潜戦(ASW)能力を向上しないと北朝鮮潜水艦が4D構想そのものを揺るがしかねない。
  2. そこで韓国製SSNsが決定的な役割を果たす。SSNは騒音も大で韓国が供用中の孫元一Son Won-I級およびl張保皐Chang Bogo級ディーゼル電気推進潜水艦(SSKs)より艦体も大きくなるが航続性能や推進力の増加、センサーの能力向上、水中速力の増加で有利だ。米海軍が指摘するようにSSNsは水中無人機(UUVs)の運用、充電が可能で偵察用途に投入できる。
  3. そうなるとSSNは4Dのうち「探知」と「破壊」で威力を発揮する。また海中配備センサーやP-3オライオン哨戒機を補完するほか、同盟国のASW機能にもそのステルス性を生かし北朝鮮沿岸に前方展開することで効果を発揮する。北朝鮮港湾部を監視し、ミサイル潜水艦を追尾する中でUUVsやセンサーの威力をいかんなく発揮できるはずだ。SSKsではバッテリー充電で居場所を露呈してしまうがその心配はない。また必要ならSSNsの高速と武装を生かして北朝鮮ミサイル潜水艦を事前に排除できるので「水中キルチェーン」の基盤にもなれる。
  4. だがそれなら米海軍がSSNsを定期的に黄海や日本海に配備すればすむのではないかという疑問が出るだろう。残念ながら米海軍は世界各地での展開とくに中国ロシアへの対応で潜水艦展開に余裕がない。さらに水中キルチェーン実施の任務を与えれば米潜水艦隊には一層の負担となる。そのため韓国が小規模のSSNs部隊を編成し4D任務を韓国近海で実施できれば米海軍機能の補強戦力になる。
支配力と抑止力
  1. 韓国版SSN部隊には北朝鮮相手の力による交渉力を強化する効果も期待できる。韓米同盟側が4D実施能力を高める中で韓国の北朝鮮核兵器に対しSSNsは「拒否による抑止」の手段となる。北朝鮮がSLBMを投入する可能性を減らすだけでなくSSNsにより北朝鮮はSLBMで有頂天になれなくなる。言い換えれば同盟側の4D機能が充実し効果を上げれば、北は報復を恐れるあまりSLBMでの強硬挑発策に躊躇するはずだ。
  2. 米国による技術移転ならびに韓国の大規模支出を実施するかで同盟側の決意が試される。米韓両国は追加負担を受け入れれば北朝鮮の挑戦に果敢と立ち向かい抑止効果の機能をさらに高められる。
同盟間の結合
  1. 米国支援のもと韓国がSSNs開発に走れば韓米同盟の結合にも好影響が出る。同盟間でたえず付きまとう恐怖が韓国の「放棄」である。この懸念は北が米本土直撃能力を整備するにつれて一層現実のものとなっており、もし北朝鮮が米本土を核攻撃する構えを示せば米国は韓国防衛に向かわないのではとの心配が韓国側に根強い。ただし米国が海軍用原子力利用の支援をおこなえば、米国が韓国防衛にただならぬ決意をしている証となり、韓国も同盟関係への信頼を高めるだろう。
  2. 同時に韓国に防衛上の責任を強化することとなれば韓米同盟関係も好転するはずだ。ワシントンがソウルに負担増加を求めているのは財政、人的資源両面で半島および域内の安全保障上の役割拡大を望んでいるためだ。トランプ大統領は韓国は自国防衛の能力がありそうすべきと繰り返し発言してきた。SSNs小部隊が整備されれば韓国はこの実現に大きく近づく。米海軍SSNsに依存せずに北朝鮮SLBM脅威への負担分担として韓国は自国軍の強化をはかるべきだ。
遠距離運用能力
  1. 韓国SSNsの二番目の戦略意義として韓米同盟の適用範囲を地域からグローバル両面へ拡大する効果が見込まれる。近年の同盟協力関係では安全保障協力範囲を拡大する傾向が大で「グローバルパートナーシップ」を強調しがちだ。しかるに韓国の軍事力投射能力は限定されたままである。韓国ではこれに対して迅速展開部隊の整備として独島級強襲揚陸艦を中心とした装備を企画しているが、展開部隊の護衛には鈍足で航続距離が短いSSKsを充てるしか選択の余地がない。韓国SSNsははるかに高機能の護衛となり、高速かつ遠距離に展開可能となる。
  2. 能力拡大により韓米同盟は域内およびグローバルな安全保障への貢献を朝鮮半島を超えて実現できるようになる。かつてマイク・マレン提督が呼んだ「1,000隻海軍」つまり志を共有する各国海軍の集合で海洋の安全安定を守る構想が有効だ。韓国の迅速展開部隊は核拡散防止構想、シーレーン防衛、海賊対策、人道救難活動の海外展開に有益だ。
水中軍拡の恐れ
  1. 韓国版SSNs整備で別のリスクも発生する。韓国の隣国である日本、中国が韓国の新規能力の整備に警戒する可能性がある。各国との関係が悪化したり韓国の意図を誤解しての軍拡競争につながりかねない。
  2. 特に中国が同盟国の4D機能整備でこれまでも悪い反応を示している。同盟国による高高度採取段階地域防衛(THAAD)の展開に敏感に反応して中国は韓国への自国民旅行を停止させ独自に長距離レーダーの稼働を内蒙古で開始した。
  3. 日本はそこまで過敏な反応はしめさないはずで、北朝鮮ミサイル脅威への懸念を共有していることに加え米韓含む三カ国体制でも利害を共有しているためであるが、もし韓国が独島(竹島)を舞台とした韓日対立にSSNsを展開する事態になれば日本の計算も変わるはずだ。
  4. 水中戦力整備は東南アジアですでにはじまっている。中国の潜水艦部隊の整備が1990年代以来進んだことで各国も独自の潜水艦部隊整備に乗り出している。シンガポール国防省の予測では2025年までに各国保有の潜水艦は合計200隻ないし250隻になる。韓国SSNsの整備が軍拡競争を一層激しくしないよう慎重に事業を進める必要があろう。
核拡散の潜在性
  1. 一方で韓国SSNsは一歩間違えば深刻な核拡散問題を引き起こしかねない。海軍用原子炉には濃縮ウラニウムが必要で使用済み核燃料は貯蔵あるいは再処理が必要となる。このため原子力推進技術でその国の核燃料サイクル技術理解が進み核利用の潜在力が高まる効果が生まれる。問題となるのは海軍用原子炉では高濃縮ウラニウム(HEU)が必要となり、ウラニウム235を90パーセント程度まで高めた燃料を使うが、これは武器にも転用できることだ。実際にイランはSSN開発を言い訳としてHEU製造を過去に行っている。
  2. もし韓国がSSNを利用して核兵器開発に向かっていると周囲国や世界から見られれば、域内の安全保障のみならず世界規模の非拡散方針に重大な影響を及ぼしてしまう。またこれまで北朝鮮に核兵器開発を放棄させようとしてきた努力を無駄にしてしまいかねず、他国も独自核兵器開発に向かいかねない。同盟各国はこの懸念が現実にならないよう十分な配慮して韓国版SSNs推進を理解する必要がある。
リスク緩和と効果の増大をめざせ
  1. トランプ-文間で米韓協力体制でSSN建造が合意できれば、リスクを慎重に避しつつ前に述べたような効果を最大限に実現する方法を模索すべきだろう。韓米同盟も韓国SSNsが実現した場合の効果を最大限に発揮できると強調すべきだ。米国には技術面で韓国を全面的に支援してもらう必要があり、その他人員面や作戦構想面でも韓国が効果的に各艦を運用できるよう支援を期待したい。
  2. 韓米同盟は外交面でも協調して信頼醸成と軍同士の接触を中国とさらに三カ国体制として日本とも確立して軍拡競争に陥らないようにすべきだ。同時に各国は堂々とSSN整備で北朝鮮SLBMを無力化でき、北朝鮮が半島の安全と安定を損なう行動に出るのは許さないとの決意を強調すべきだ。
  3. 韓米同盟は核拡散への懸念の打ち消しにも努力すべきだ。特に米国は韓国に米保有の濃縮ウラニウム購入を許しSSNs燃料とさせるべきで、韓国独自の濃縮化は許すべきでない。さらに米国は今後も韓国とともに使用済み核燃料貯蔵の課題解決に向けた努力をすべきだ。特にドライキャスク方式の核燃料保存技術が再利用に代わる手段として脚光を集めており、核拡散の懸念を生まない技術になっている。■


Jihoon Yu (LCDR) is a submarine officer in the ROK Navy. He earned his PhD in Political Science at the Maxwell School of Syracuse University and MA in National Security Affairs at the U.S. Naval Postgraduate School. He can be contacted at yjhnavy3@hanmail.net.
Erik French is a PhD Candidate in Political Science at the Maxwell School of Syracuse University, an adjunct instructor at American University’s School of International Service, and a young leader with Pacific Forum CSIS. He can be contacted at edfrench@syr.edu. Twitter: @Erik_D_French.
Image: The Ohio-class ballistic missile submarine USS Tennessee returns to Naval Submarine Base Kings Bay, Georgia in this February 6, 2013 handout photo. REUTERS/Mass Communication Specialist 1st Class James Kimber/U.S. Navy/Handout via Reuters

2017年4月18日火曜日

危機状態だからこそ朝鮮半島の今後を考える



今回の危機をどう見るかで戦略思考の有無、思考の時間軸の長さが露呈します。いたずらに危機を煽り立てる安っぽいジャーナリズムはごめんですが、50年100年先をデザインする能力が今圧倒的に欠けていることを痛感しています。フィンランド化は中国の思う壺ということですね。

The National Interest

How to Make the Korea Problem Worse: Unification

Worst fears realized: a unification in which neither North or South Korea has a vote.

北朝鮮問題よりは統一後が厄介 南北いずれも主導権を発揮できない朝鮮半島統一になりそうだ


April 13, 2017

  1. 朝鮮人は何世紀も大国の陰で暮らしてきた。周辺国に自らの運命が決められるのは恐ろしいことだ。19世紀末に日露中の帝国主義の覇権争いで日本が朝鮮を併合し占領した。第二次大戦が終わると米ソが38度線をはさみ占領地を決定し今日まで朝鮮は分断されたままだ。
  2. 第六回目の核実験のおそれがある中で核問題は米中合同で解決に当たるべきとの提言があり、米韓軍事同盟を終わらせ朝鮮半島を「フィンランド化」するとの内容がロバート・ケリーの主張だ。ケリーの考えは「金一族が大混乱を巻き起こす前に解決の出口をみつけ」る点で今や沸騰寸前の北朝鮮問題を巡るトランプ政権内の外交政策論争にも満足の行く対応策と言えよう。
  3. 北朝鮮問題の解決策は長年答えが見つからない難問だ。1990年の南北合意、1994年の枠組み合意、2005年の合意さらにオバマ政権の2012年合意もあった。平壌は非核化の代償にエネルギーや経済援助を求めて、米朝国交正常化と平和条約締結の保証を求めてきた。毎回のごとく平壌は一度「イエス」と述べてから「ノー」と言える道を見つけてきた。
  4. 先制攻撃が公然と話題になっているが、これも別の出口解決だ。だが攻撃の前に政策決定当事者は一般では考えもしない方法もいとわないはずだ。北朝鮮を攻撃すれば韓国駐留米軍部隊や米国市民が犠牲になるリスクのほうが大きくなる。ソウルは北朝鮮火砲ミサイルの標的であり、実施されれば韓国首都地域は壊滅的被害を被る。
  5. 現在進行中の議論に我慢ができない気持ちは理解できる。北朝鮮は外交上の「忌まわしい問題」であり、現在の複雑な条件では解決は困難であり不可能だからだ。ウォーレン・クリストファー元国務長官はボスニアを「地獄の問題」と述べていたが北朝鮮では選べる選択肢が最悪しかない。現時点では解決策に抵抗もあるが、一部の問題は解決策が完成するまでも制御可能になるものの、こと北朝鮮に関してはその段階に達していない。
  6. そこでケリー提案による外交方針だが、中国が北朝鮮に蓋を閉める想定になっている。その代償はどれくらいになるか。ケリーは「世界最悪の管理独裁政権を一刻も早く終わらせる道義的な責務がある」とし「半島統一で韓国が文句を言っても」耳を塞ぐという。
  7. 米外交政策では道徳が常に重要な要素だが、実際には欠点を露呈している。もし中国が食料、燃料の供給を止めれば、金正恩が黙ったままでいるだろうか。東ドイツと同様にソウル主導の統一が実現するだろうか。北のミサイルはどの方向にも発射できる。北朝鮮は40年かけて大量破壊兵器の実用化を進めて金一族の存続を図ってきた。黙ったままで居るはずがない。
  8. ケリー構想のもう一つの問題は米韓同盟の解体でこれが実現すれば中国が朝鮮半島を我が物顔で支配するだろう。最悪の状況と言える。統一しても北も南も主体性を発揮できない。韓国が同盟国であり強い民主主義態勢を勝ち取った国だからこそ朝鮮半島の将来に意見を反映させる必要があるとの見方は道義道徳からの観点である。
  9. 朝鮮が統一され非同盟国になれば中国が再び三千年の歴史を繰り返し表に躍り出る。韓国の教科書では中国の朝鮮侵攻が900回あったと教えている。もっとわるいのが米韓同盟廃棄により中国支配下の「フィンランド化」が出現することだ。その場合、米国が果たしてきたアジア等の平和の守り手という立場に朝鮮半島から波及効果が出るだろう。アジアでの同盟関係崩壊は中国が長年模索している目標でもある。
  10. 金大中大統領は2000年6月の平壌サミットのあと、朝鮮半島の戦略的位置にふれ、統一後も同盟関係を残すとしていた。理由を尋ねられ、大統領はこう答えた。「北には巨大な大陸国家がありその地理条件は変えられない。東には海洋大国がありやはり動かない。米国は大国で強力だがいかんせん遠すぎる」
  11. ケリーはこのような取り決めが実現した際の日本の反応を見落としている。日本からすれば北朝鮮消滅は安心材料だが、同盟国である日本の頭ごなしで合意が成立すれば不信感を持つはずだ。また日本は覇権主義の中国と共存できないと堅く信じ、米国のアジアでの立場や同盟関係は一気に過去の存在になってしまう。
  12. 北朝鮮が大陸間弾道ミサイル開発に成功すれば抑止態勢が崩れケリーがいうような代償を払わされるのだろうか。平壌の唯一の美点は自殺攻撃は考えていないことだ。北は聖戦主義ではない。ジェイムズ・マティス国防長官も米国に大量破壊兵器を使えb、米国とその同盟国は一緒に「圧倒的かつ効果的な」対応をすると明言している。
  13. 北朝鮮がICBMを保有すると考えると気分が悪くなり、かつ危険な状況だが、(北が本当に実用化するまでには4、5年かかる)それで抑止態勢が劣化するとは認めたくない。平壌はスカッドやノドンミサイルの射程を延長して韓国や日本国内の米軍基地を核攻撃できる実力があることを忘れてはならない。北朝鮮がICBMを持てば「世界の終わり」とヒステリックな反応が出ているが1964年当時の論争を思い起こさせるものがある。当時は毛沢東が常軌を逸し核兵器取得に奔走していたがその後われわれはその態勢のもとで生活を送っている。
  14. では北朝鮮問題でわれわれはどうなるのか。オバマの「戦略的忍耐」政策は失策と言われている。欠点の一つがアメリカが全面的な制裁措置をイランで実施したのに北朝鮮にはとらなかったことがある。そこで意味のある次の策は二次制裁措置を実行に移すことだ。(中国の銀行やフロント企業への制裁を含む)これで北朝鮮の国際金融制度へのアクセスを完全に絶ち、ハードカレンシーを枯渇させる。平壌はインフォーマルな現金経済で生き残っているに過ぎない。金正恩一族は贅沢品を手に入れている。そこで現金がなくなればどうなるか。防衛体制強化を組合せ、プーチン流のサイバー攻撃、フェイクニュース(暗殺準備が進んでいる、金正恩は性的不能者だ、など)をその他有効策と合わせ実施すればトランプ政権の北朝鮮政策としてはかなりのものになると思うがどうだろうか。■
Robert A Manning is a Senior Fellow at the Atlantic Council and its Foresight, Strategy and Risks Initiative. James J. Przystup is a Senior Fellow at the Institute for National Strategic Studies at the National Defense University. The views represented in this article are theirs alone and do not represent the views or policies of the Atlantic Council or the National Defense University.

2017年4月15日土曜日

★第二次朝鮮戦争になればどうなるか



これまでの米国の動きは北朝鮮が見抜いていたようで挑発行為も瀬戸際で止まっていたのですが、トランプの心の中は読み取れないのではないでしょうか。金正恩も同じで、世界は不安の中でこれから過ごすことになりそうです。

The National Interest Armageddon: The Devastating Consequences of a Second Korean War 第二次朝鮮戦争の壊滅的効果を予測する


April 14, 2017

  1. 北朝鮮をマルクスレーニン主義国家、あるいは毛沢東の文化大革命の影響を受けた国家と見れば本質を見誤る。北朝鮮は王朝支配の専制国家であり、半ば神格化された金一族が絶対的な権限をチューダーあるいはシーザーのごとく国民にふりかざす国家だ。
  2. 北朝鮮国民が指導者へ狂信的に献身信奉する姿はうわべだけではない。北朝鮮へ行き一般国民と話して金一族への献身ぶりがよくわかった。主体思想のためなら命を犠牲にする、偉大なる指導者やその血族のためでも同様だ。北朝鮮は40年近く日本帝国の支配下にある間に、天皇のため命を犠牲にするのを厭わない神風精神を吸収したようだ。
  3. 北朝鮮はイラクとも異なる。北朝鮮特殊部隊エリート隊員3万人は簡単に粉砕されたサダムの共和国防衛隊とは大違いだ。特殊部隊は地下トンネルから韓国一般市民を奇襲攻撃で狙う。また自称「核大国」の北朝鮮は核弾頭20発を保有している。また化学兵器の備蓄があり、1万発あると言われる火砲で投射できる。DMZ付近に巧みに構築された陣地からソウル首都圏はわずか35マイル先であり、大被害をもたらすはずだ。この大規模化学攻撃態勢はシリアのアサドからすればうらやましいかぎりだろう。ソウルの人口は10百万人超で首都圏全体では25百万人が暮らす。
  4. 韓国の2016年度版白書では北朝鮮は1980年から化学兵器開発に乗り出し、今や化学兵器2,500トンから5,000トンのを備蓄しており、生物兵器も含め各種にわたり、炭疽菌、天然痘、ペストまであるという。CNNは4月13日に安倍首相が「北朝鮮はサリン神経ガスを搭載したミサイルを発射する能力がある」と公に発言したと報道。
  5. 金正恩は公然とトランプ大統領を軽蔑し、第六回目の核実験を4月15日の金日成誕生日近辺で実施するようだ。米大統領がレッドラインと警告する中で金正恩は計算づくでトランプはまさか第二次朝鮮戦争に火をつけるはずはないと見ているのだ。
  6. 祖父金日成は当時の米大統領をなんらちゅうちょせず挑発している。米情報収集艦USSプエブロを国際公海上で拿捕したのは1968年1月のことで、同艦は今日でも返還されず、乗組員82名(一名は襲撃時に死亡)は一年近く抑留された。リンドン・B・ジョンソン大統領はヴィエトナム戦争の泥沼に足を取られており、平壌への報復攻撃を控えた。翌年4月に米偵察機が日本海上空で北朝鮮MiG-21に撃墜され31名の乗員は全員死亡した。これは冷戦時の米航空乗員被害では最大だ。平壌はたくみに計算しヴィエトナム戦争のエスカレーションを恐れワシントンは激しい行動を取らないと見ていた。
  7. さらに1976年夏に前年のジェラルド・R・フォード大統領のヴィエトナム完全撤兵を受けて、平壌はDMZで米軍を襲撃し、米陸軍将校二名が死亡した。有名な「斧殺人事件」で平壌は戦争に疲れたワシントンがアジアで再び大規模戦に巻き込まれたくないと思っているはずと見たのだ。瀬戸際政策は北朝鮮の普通の戦略方法論なのだ。
  8. 最近では2010年に韓国海軍艦艇を魚雷攻撃し、46名を死亡させながら同年に韓国離島を砲撃し、韓国海兵隊員2名一般市民2名を殺害している。ここでも平壌は挑発行為をしかけながらたくみに事態を収束させているのは、同盟国の中国が国連による対応を阻止したためだ。
  9. 金正恩は攻撃を仕掛けるだろうか。直近の脱北高官によれば可能性はあるという。ロンドンで大使次長だったThae Yong-hoが金正恩の心の中を語り「金正恩を過小評価してはいけない」と2月17日CBSで述べている。「アメリカだけでなく韓国や世界に被害を与えようとしている。金正恩はICBMが手に入れば、アメリカは簡単に怖じ気出すと信じている」とBBCに語り、追い詰められればロサンジェルスを核攻撃すると発言した。「自らの権力と一族が追い詰められればボタンを押すはず」
  10. 現時点で北朝鮮に米本土まで到達可能なICBMはないとみられるが、あと数年で実現する可能性がある。ただし短距離中距離ミサイルは韓国、日本、グアムの米軍基地を射程に入れている。日本政府の懸念は北朝鮮が日本統治時代から続く反日、反帝国主義の主張から日本国内に化学兵器の雨を降らすことだ。
  11. 在韓米軍は28千名が駐留し開戦となれば即出撃する態勢をとっている。さらに軍属家族が数千名韓国にある。非戦闘員退避作戦で米国や同盟国の民間人数千名を韓国から退避させるが2つの問題が未解決だ。まず、これだけの民間人がソウル首都圏にいる中で突如として化学攻撃を受ければ国外避難が円滑にできるのか。二番目に危機が迫る中でワシントンが米軍属の退避命令を出せば、パニック状況が生まれ大量の市民が朝鮮半島南部へ逃げ出すだろう。空港は言うに及ばず、首都機能は麻痺し、韓国株式市場は大幅安になる。
  12. もう一つ第二次朝鮮戦争勃発の場合に危惧されるのが国際貿易だ。1950年の東アジアと違い、東アジアは世界経済のエンジンになっている。ミサイルがグアム以遠まで飛び交う太平洋になれば、中国製やその他アジア各国製品がウォルマート店舗から消えるだろう。海上貨物輸送も戦火に巻き込まれるリスクは避ける中で米軍人員物資の輸送が最優先のはずだ。
  13. 米軍が北朝鮮核施設ミサイル施設をピンポイント空爆することで第二次朝鮮戦争が勃発すれば、また北京が北朝鮮との防衛条約を履行すれば、世界経済は壊滅的影響を受ける。中国は1950年に自国の中核的権益が脅かされていると感じ軍事介入してきた。
  14. 2000年のペンタゴン資料では当時の米軍死傷者数は33,651名とあり、さらに「その他」として疾病事故死があるとする。朝鮮戦争記念館の死傷者は54,246名と記録している。中国は132千名から400千名を喪失している。英、トルコ、カナダ、オーストラリア、フランス他の連合国で3-4千名が戦死している。韓国一般市民は2百万人が死亡している。戦争により米国では200億ドル、中国は25億ドルの損失が生まれた。
  15. 第二次朝鮮戦争となれば被害規模はさらにふくれあがる。今回も韓国で2百万人以上が死亡するだろう。米軍は50千人超となりアジア地上戦で一般国民が動員される事態となる。韓国国内のインフラが破壊されれば「漢江の奇跡」は再び振り出しに戻る。米軍の太平地区の基地、韓国、日本の都市部に化学攻撃があるだろう。太平洋地区の株式市場は大幅安となり、世界貿易は壊滅的影響を受ける。中国介入の可能性がある。また恐ろしいのは核兵器が戦闘で初めて投入される可能性だ。
  16. そうなると次の疑問が生まれる。ピンポイント攻撃を敢行してこれだけのリスクを覚悟できるのだろうか。
Dennis Halpin, a former adviser on Asian issues to the House Foreign Affairs Committee, is currently a visiting scholar at the U.S.-Korea Institute at SAIS (Johns Hopkins) and a consultant at the Poblete Analysis Group.


2017年2月21日火曜日

北朝鮮対策を中国に頼むために米国の譲歩はやむを得ないのか 


この論文を書いた方はひどく頭の良い方のようで論調はきわめて冷徹で日本には考えたくない可能性にも触れていますので、普段から主張が日本第一の方は以下お読みになっても当方は責任を負いかねます。ただ、読んでいてあまり地政学がわかっていない方だな、中国に宥和的だなと感じ一方、取引の材料があれば中国が動くと見るところは甘いなと感じたことはご報告しておきます。こうしてみると本当に北朝鮮が厄介な存在だとわかります。韓国も米国から見れば価値観を共有できない国なのでしょうか。

The National Interest

How the U.S. Can Win Over China and Silence North Korea


February 17, 2017

北朝鮮が弾道ミサイルテスト実施に踏み切ったことで米国には改めて中国に平壌に圧力をかけさせ挑発行為を防止する期待が高まっている。米政界・政策立案部門には経済制裁他各国が一致すべき措置に中国がおよび腰なのに不満と怒りが高まっている。
その裏には中国が北朝鮮に多大な影響力を有しており、同国こそ平壌に言うことを聞かせられる唯一の国との考えがある。ニューヨーク・タイムズのコラムニスト、トム・フリードマンは中国が北朝鮮に断固たる意向を一回示せば同国の望ましくない行動はただちに止まるはずだと述べている。
中国が北朝鮮に最も影響力を有するのは疑う余地はないし、北朝鮮向け食料エネルギー供給の大部分は中国が提供している。供給ストップや減産すれば北朝鮮はただちに混乱する。
ただし米側は中国の影響力を過大評価しがちで、中国が抜本的対策を取らないと実現しない。また実施すれば中国にもリスクが増える。北朝鮮が不安定となれば、大量の難民が中国との国境に向かい、韓国へも殺到するだろう。もっと悪い可能性は自暴自棄になった北朝鮮指導部が軍事冒険主義に出ることで、これは各国が防ぎたいと考えるシナリオだ。
北京にもハイリスク戦略の選択は魅力あるものと映るだろうが、米政府関係者や有力指導者は中国に断固たる措置を期待している。だが米関係派には外交政策とは慈善行為と程遠い存在であると理解する必要があり、中国の外交政策が慈善行為だったことは一度もない事実を理解する必要がある。
では中国にもっと強硬策を選択させ北朝鮮による受け入れがたい行動を事前にやめさせるべくワシントンが譲歩しても良いものはなんだろうか。4つの選択肢がある。
台湾
中国が事実上独立国となっている台湾に民進党大統領が2016年に生まれて以来、一層不満を感じているのは明らかだ。ドナルド・トランプも大統領就任前に中国の懸念を高めた。前例のない電話会談を蔡英文総統としたためだ。トランプはその後報道機関取材で米国は「一つの中国」政策に束縛されないと語っている。その後、発言内容を修正しており、習近平主席には既存政策の変更はしないと述べている。
ただし北朝鮮に対する中国の具体的行動を引き出すためなら米国は現状維持にとらわれないだろう。出発点はリチャード・ニクソンが署名した1972年の上海合意で、米国は台湾を中国の一部だと認めている。政策変更を実施すれば大きな譲歩となる。米国は台湾向け武器輸出を漸減させると甘言を持ち出せばよい。北京はこれに抵抗できないはずだ。
実際にはこの実施は困難だ。台湾は強い民主国家であり、ワシントンが今後も西太平洋に海軍力を投射していくのであれば同国の地理条件は戦略上重要だ。台湾支持派の議員は多く、米政界全体も同様なので台湾政策の変更には相当の抵抗が出る。譲歩なら難易度の少ない選択肢を選ぶはずだ。
南シナ海
ここ数年中国が進めている南シナ海での広大な野望に関し米中間の対立が深まっている。中国は歴史に根付いた主張とし、およそ8割の海域を自国領土だとする。この二三年で事態を悪化させてたのは中国が人工島を建設し軍事装備を搬入していることで、滑走路まで建設した。
周辺各国も領有権を主張している中でこの動きは緊張を招くばかりだが、米国も関与せざるを得なくなっている。米政府は国際海域を中国領海に変更させようという中国を懸念している。中国がこの動きを続ければ南シナ海の航行を中国が支配してしまうと米国は考え、世界で最重要の通商航行路の保全を懸念する。
米海軍はいわゆる航行の自由作戦を数回実施し、中国の野望をワシントンが傍観出来ないと示してきた。オバマ政権は公式には中立をうたいながら事実上「中国は除く」姿勢で領有権主張を見ている。
では米国が南シナ海でどんな譲歩ができるか。まず、ワシントンはあくまでも中立の姿勢を示すことだ。これは言葉の上だけにとどまらず、次に航行の自由作戦を縮小または中止する。その後中国へ中国が航行の自由を脅かさないかぎり、米海軍は南シナ海でのプレゼンスを維持しないと伝える。この政策方針の変更には中国の意図を正しく理解するのが前提だ。が、中国は輸出大国として海上交通路の妨害で得るものはないので危惧されるようなリスクはないと主張している。ただし南シナ海での譲歩がどうなるかは見えてこない。譲歩しても北京が北朝鮮に強い態度に出ることはないだろう。
東シナ海
三番目の可能性は米国が東シナ海を巡る日本支持を自ら撤回する譲歩だ。中国が同地で求めてきた目標は2つだ。一つは防空識別圏の設定で通過飛行する航空機は総て中国へ報告を求めているものの、米国はじめ同盟各国は公然と中国が実力で防空圏を運用することに反対の姿勢を示している。
もう一つの目標は論争になりそうだ。中国は尖閣諸島の領有権を主張している。同地は無人の岩だらけの島にすぎないが、周囲の海域は豊富な漁業資源がある。また石油他鉱物資源の存在の兆候もある。日中間の緊張は何度となく高まってきた。
どちらの側が歴史的に同地を歴史的に領有主張できるのか明白ではないが、日本が現在は支配している。ワシントンも日本の立場を尊重し日米安全保障条約の適用範囲に尖閣諸島も含まれるとの立場だ。ジェイムズ・マティス国防長官も直近の訪日でこの点を明確にした。
だがワシントンは簡単にともに譲歩してしまうかもしれない。中国の防空識別圏設定で死活的に失うものはなく、むしろ空の安全が実現するならそれで良いと判斷するかもしれない。国籍不明機が飛んできて中国が警戒するのはとくに軍用機が近隣基地から飛来する際の警戒心は理解できる。そこでこの点で譲歩があれば北京の北朝鮮政策にも大きな変化が期待できる。
そうなると尖閣諸島問題でも米国の立ち位置は大きく変わってしまうかもしれない。ワシントンが同諸島のために自国の安全を危険にするのは愚かなことだ。一旦米関係者から今後は日米安保条約は同島に適用しないと声明し、今後は厳密な中立的立場をとると発表すれば北京は北朝鮮関係も見直しに動くのではないか。
韓国
最後だがもっとも重要な政策変更可能性がある。ワシントンが韓国との関係を見直すことだ。中国は圧力をかけすぎれば北朝鮮が不安定になるのを恐れるだけでなく、読めない戦略構図が生まれることも懸念している。中国にとって北朝鮮は頭にくる、かつ危険なほど不安定な同盟国だが、領土上はその他米国の影響下にある地域との干渉地として重要だ。
仮に北朝鮮が内部崩壊した場合、北京は南北が軍事統一を米国の後ろ盾で実現する可能性に向かわざるを得ない。その場合は現在は北朝鮮となっている国内にも米軍基地ができる可能性に中国は直面するだろう。ワシントンが言葉の上でそのような行動は取らないと述べても中国には懐疑的になってしかるべき理由がある。ソ連崩壊で一方的に利益を得たのは米国であり、その後のロシアの弱体化につけこんでNATOはロシア国境近くまで拡大しているではないか。今やワシントンがそのような国に部隊や装備を配置している。
口約束では不十分で少なくとも米指導層は書面による保証を出す必要があるはずで、統一朝鮮が出現した場合にはそのような行動は取らないと示すことだ。それがあれば北京は平壌に強硬態度に出てもリスクを甘受できよう。だがワシントンが魅力的な提案をするとすれば、韓国から全米軍部隊を撤退すると中国と合意することだ。具体的な撤退期日を示すことだ。米韓同盟関係の基礎は北朝鮮の存在が唯一の理由であり、脅威が消滅すれば同盟の存続理由もなくなり、米軍のプレゼンスを維持する意味がなくなる。また仮に北朝鮮が存続できる場合でいまよりものわかりのよい脅威度の少ない国家体制になった場合、ソウルは自国のみで脅威を抑止する効果を十分持つことになる。
無論のこと、以上の選択を米国がとれば、大きな物議を引き起こすのは必至だ。だがワシントンが北朝鮮の核兵器開発、弾道ミサイル装備導入を防げなかったのは大失策だ。米国は東アジア内の同盟各国と厳しい選択に直面している。核武装した北朝鮮と共存を迫られても、このまま行けば北朝鮮は米本土の攻撃手段も手に入れるだろう。あるいはワシントンは北朝鮮の脅威を減らすことが可能な唯一の国の気を引いてついに意味のある行動を引き出すことができるかもしれない。だが北京を各国協調行動に引き出すには相当の条件が必要となる。もし米指導層が必要な犠牲を甘受するつもりがないのであれば、中国の不作為を非難するのはやめるべきだ。
Ted Galen Carpenter, a senior fellow at the Cato Institute and a contributing editor at the National Interest, is the author of ten books on international affairs, including (with Doug Bandow) The Korean Conundrum: America’s Troubled Relations with North and South Korea (Palgrave Macmillan).

2017年1月9日月曜日

★北朝鮮がICBMを完成する前に先制攻撃を実施すべきか



北朝鮮の思考は大戦中のわが国の国体護持と同一で、案外もろいものかもしれませんが、核兵器整備まで進むのはあらゆる国とって容認できるものではなく、イランと並んで頭の痛い問題でしょう。先制攻撃構想は単純な思考でしょうが、魅力があることも事実です。トランプ大統領がどう判断をするのかが見ものです。



The National InterestShould Washington Strike North Korea's Dangerous ICBMs Before It's Too Late?

January 7, 2017


  1. こんな仮定はどうだろう。北朝鮮の独裁者金正恩が朝鮮中央通信を通じいつもの調子で米国がいかに邪悪で嘘まみれかを罵詈雑言とりまぜて演説。20分後、初のICBM発射実験が最終段階に入ったと宣言し予定は一週間後と述べる。演説を受け米情報機関は北朝鮮がICBMを太平洋に向け発射するのは確実と評価。米政府は発射を食い止める唯一の手段は米軍による攻撃と判断し、二日後に米空軍、海軍に実行命令が下る。
  2. まるでハリウッドのサスペンス映画だが、ワシントンの外交専門家の間では北朝鮮が近隣諸国はおろか西海岸なまでと脅威を及ぼすのを防ぐには米国・国際社会には武力行使しか選択肢がないとの見方が強まっている。リンゼイ・グラハム上院議員もその一人で、上院軍事委員会の昨年12月の公聴会で軍事力行使の権限を大統領に与え北朝鮮のICBM完成を阻止するため先制攻撃も必要だ陳述している。
  3. 共和党院内総務ミッチ・マッコネルは黙殺するだろうが、共和党が正式に審議に持ち込めば、民主党上院議員は成立阻止に動くだろう。北朝鮮への先制攻撃は止めどもない被害を生じさせ、百万の兵を有する北朝鮮との全面軍事対決になる予想もあり、金の権力基盤を揺るがすだけに終わらない。
  4. 米軍が先制攻撃した際に金がどう対応するかが予測できないが北朝鮮による報復攻撃の与える損害の大きさは容易に想像できる。グラハム上院議員は失念しているかもしれないが、北東アジアには米軍8万名(日本に55千名、韓国に28,500名)が駐留しており、北朝鮮には標的が8万通りあることになる。在韓米軍は非武装地帯に沿って配備されており容易に標的になる。金が直情的に行動していることは知られており、中距離ムスダンミサイル多数を日本や韓国へ発射するのを自制できるか不明だ。三代目の最高指導者が報復が最善の選択ではないと計算できればよいが、希望的観測は戦略の根拠になりえない。
  5. 次に、北朝鮮ミサイル基地が攻撃を受ければ北朝鮮は核開発交渉に戻れなくなる。北朝鮮指導部との外交交渉の再開はきわめて薄くなっている現状からすれば一旦攻撃を実施すれば北朝鮮が主張してきたように米国が好戦的かつ侵略国家だとの観点が強まるだけだ。北朝鮮ウォッチャーは金正恩は信じられないほど偏執狂だと見ている。張成沢Jang Song-thaekの処刑が示すように政府転覆を図る分子、国家の敵、反逆者を絶えず摘発するのに懸命だ。その中で米国が究極の敵であり、北朝鮮に一度攻撃を加えれば外交は全く役立たずとなるのは間違いない。
  6. 最後になるが、北朝鮮への軍事力行使を支持する向きには孔子の聖句を思い出してもらうのが賢明だろう。力の行使は最後の手段だ。ワシントンのタカ派には反対の論調があるが、北朝鮮との外交交渉はまだ途絶してない。ビル・クリントン政権時代の交渉は包括的かつ究極のアメとなる平和条約を持ち出す代わりにその場しのぎで各論中心だった感が強い。平和条約の話もあったが協議は一回もされていない。オバマ政権の第一期目では覚書の協議があったがごく短期間に終わった、8年間に及ぶ「戦略的忍耐力」の時期とは問題に目をつぶり自然に消えることを願うのみだったのではないか。外交手段が完全に道を閉ざされた場合にのみ米政府に軍事力の行使を選択してもらいたい。実際にはそんなに簡単ではないが。
  7. ジェイコブ・ヘリブランはドナルド・トランプ次期大統領に金と話し合い、「我々の時代に平和」を精緻に構築してもらいたいと助言している。先制攻撃により米軍数万名の生命と韓国全土を危機に追いやるよりはずっとましな選択だろうが、米国と中国の関係には悪影響が生まれるはずだ。■

原著者ダニエル・R・デペトリスはWikistrat Inc.地政学コンサルタント企業のアナリストの他、フリーランスで研究員もつとめる。CNN.com、Small Wars Journal、The Diplomatに寄稿している。
Image: An F-15 Eagle and an F/A-22 Raptor fly in formation. Wikimedia Commons/U.S. Air Force