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北朝鮮対策を中国に頼むために米国の譲歩はやむを得ないのか 


この論文を書いた方はひどく頭の良い方のようで論調はきわめて冷徹で日本には考えたくない可能性にも触れていますので、普段から主張が日本第一の方は以下お読みになっても当方は責任を負いかねます。ただ、読んでいてあまり地政学がわかっていない方だな、中国に宥和的だなと感じ一方、取引の材料があれば中国が動くと見るところは甘いなと感じたことはご報告しておきます。こうしてみると本当に北朝鮮が厄介な存在だとわかります。韓国も米国から見れば価値観を共有できない国なのでしょうか。

The National Interest

How the U.S. Can Win Over China and Silence North Korea


February 17, 2017

北朝鮮が弾道ミサイルテスト実施に踏み切ったことで米国には改めて中国に平壌に圧力をかけさせ挑発行為を防止する期待が高まっている。米政界・政策立案部門には経済制裁他各国が一致すべき措置に中国がおよび腰なのに不満と怒りが高まっている。
その裏には中国が北朝鮮に多大な影響力を有しており、同国こそ平壌に言うことを聞かせられる唯一の国との考えがある。ニューヨーク・タイムズのコラムニスト、トム・フリードマンは中国が北朝鮮に断固たる意向を一回示せば同国の望ましくない行動はただちに止まるはずだと述べている。
中国が北朝鮮に最も影響力を有するのは疑う余地はないし、北朝鮮向け食料エネルギー供給の大部分は中国が提供している。供給ストップや減産すれば北朝鮮はただちに混乱する。
ただし米側は中国の影響力を過大評価しがちで、中国が抜本的対策を取らないと実現しない。また実施すれば中国にもリスクが増える。北朝鮮が不安定となれば、大量の難民が中国との国境に向かい、韓国へも殺到するだろう。もっと悪い可能性は自暴自棄になった北朝鮮指導部が軍事冒険主義に出ることで、これは各国が防ぎたいと考えるシナリオだ。
北京にもハイリスク戦略の選択は魅力あるものと映るだろうが、米政府関係者や有力指導者は中国に断固たる措置を期待している。だが米関係派には外交政策とは慈善行為と程遠い存在であると理解する必要があり、中国の外交政策が慈善行為だったことは一度もない事実を理解する必要がある。
では中国にもっと強硬策を選択させ北朝鮮による受け入れがたい行動を事前にやめさせるべくワシントンが譲歩しても良いものはなんだろうか。4つの選択肢がある。
台湾
中国が事実上独立国となっている台湾に民進党大統領が2016年に生まれて以来、一層不満を感じているのは明らかだ。ドナルド・トランプも大統領就任前に中国の懸念を高めた。前例のない電話会談を蔡英文総統としたためだ。トランプはその後報道機関取材で米国は「一つの中国」政策に束縛されないと語っている。その後、発言内容を修正しており、習近平主席には既存政策の変更はしないと述べている。
ただし北朝鮮に対する中国の具体的行動を引き出すためなら米国は現状維持にとらわれないだろう。出発点はリチャード・ニクソンが署名した1972年の上海合意で、米国は台湾を中国の一部だと認めている。政策変更を実施すれば大きな譲歩となる。米国は台湾向け武器輸出を漸減させると甘言を持ち出せばよい。北京はこれに抵抗できないはずだ。
実際にはこの実施は困難だ。台湾は強い民主国家であり、ワシントンが今後も西太平洋に海軍力を投射していくのであれば同国の地理条件は戦略上重要だ。台湾支持派の議員は多く、米政界全体も同様なので台湾政策の変更には相当の抵抗が出る。譲歩なら難易度の少ない選択肢を選ぶはずだ。
南シナ海
ここ数年中国が進めている南シナ海での広大な野望に関し米中間の対立が深まっている。中国は歴史に根付いた主張とし、およそ8割の海域を自国領土だとする。この二三年で事態を悪化させてたのは中国が人工島を建設し軍事装備を搬入していることで、滑走路まで建設した。
周辺各国も領有権を主張している中でこの動きは緊張を招くばかりだが、米国も関与せざるを得なくなっている。米政府は国際海域を中国領海に変更させようという中国を懸念している。中国がこの動きを続ければ南シナ海の航行を中国が支配してしまうと米国は考え、世界で最重要の通商航行路の保全を懸念する。
米海軍はいわゆる航行の自由作戦を数回実施し、中国の野望をワシントンが傍観出来ないと示してきた。オバマ政権は公式には中立をうたいながら事実上「中国は除く」姿勢で領有権主張を見ている。
では米国が南シナ海でどんな譲歩ができるか。まず、ワシントンはあくまでも中立の姿勢を示すことだ。これは言葉の上だけにとどまらず、次に航行の自由作戦を縮小または中止する。その後中国へ中国が航行の自由を脅かさないかぎり、米海軍は南シナ海でのプレゼンスを維持しないと伝える。この政策方針の変更には中国の意図を正しく理解するのが前提だ。が、中国は輸出大国として海上交通路の妨害で得るものはないので危惧されるようなリスクはないと主張している。ただし南シナ海での譲歩がどうなるかは見えてこない。譲歩しても北京が北朝鮮に強い態度に出ることはないだろう。
東シナ海
三番目の可能性は米国が東シナ海を巡る日本支持を自ら撤回する譲歩だ。中国が同地で求めてきた目標は2つだ。一つは防空識別圏の設定で通過飛行する航空機は総て中国へ報告を求めているものの、米国はじめ同盟各国は公然と中国が実力で防空圏を運用することに反対の姿勢を示している。
もう一つの目標は論争になりそうだ。中国は尖閣諸島の領有権を主張している。同地は無人の岩だらけの島にすぎないが、周囲の海域は豊富な漁業資源がある。また石油他鉱物資源の存在の兆候もある。日中間の緊張は何度となく高まってきた。
どちらの側が歴史的に同地を歴史的に領有主張できるのか明白ではないが、日本が現在は支配している。ワシントンも日本の立場を尊重し日米安全保障条約の適用範囲に尖閣諸島も含まれるとの立場だ。ジェイムズ・マティス国防長官も直近の訪日でこの点を明確にした。
だがワシントンは簡単にともに譲歩してしまうかもしれない。中国の防空識別圏設定で死活的に失うものはなく、むしろ空の安全が実現するならそれで良いと判斷するかもしれない。国籍不明機が飛んできて中国が警戒するのはとくに軍用機が近隣基地から飛来する際の警戒心は理解できる。そこでこの点で譲歩があれば北京の北朝鮮政策にも大きな変化が期待できる。
そうなると尖閣諸島問題でも米国の立ち位置は大きく変わってしまうかもしれない。ワシントンが同諸島のために自国の安全を危険にするのは愚かなことだ。一旦米関係者から今後は日米安保条約は同島に適用しないと声明し、今後は厳密な中立的立場をとると発表すれば北京は北朝鮮関係も見直しに動くのではないか。
韓国
最後だがもっとも重要な政策変更可能性がある。ワシントンが韓国との関係を見直すことだ。中国は圧力をかけすぎれば北朝鮮が不安定になるのを恐れるだけでなく、読めない戦略構図が生まれることも懸念している。中国にとって北朝鮮は頭にくる、かつ危険なほど不安定な同盟国だが、領土上はその他米国の影響下にある地域との干渉地として重要だ。
仮に北朝鮮が内部崩壊した場合、北京は南北が軍事統一を米国の後ろ盾で実現する可能性に向かわざるを得ない。その場合は現在は北朝鮮となっている国内にも米軍基地ができる可能性に中国は直面するだろう。ワシントンが言葉の上でそのような行動は取らないと述べても中国には懐疑的になってしかるべき理由がある。ソ連崩壊で一方的に利益を得たのは米国であり、その後のロシアの弱体化につけこんでNATOはロシア国境近くまで拡大しているではないか。今やワシントンがそのような国に部隊や装備を配置している。
口約束では不十分で少なくとも米指導層は書面による保証を出す必要があるはずで、統一朝鮮が出現した場合にはそのような行動は取らないと示すことだ。それがあれば北京は平壌に強硬態度に出てもリスクを甘受できよう。だがワシントンが魅力的な提案をするとすれば、韓国から全米軍部隊を撤退すると中国と合意することだ。具体的な撤退期日を示すことだ。米韓同盟関係の基礎は北朝鮮の存在が唯一の理由であり、脅威が消滅すれば同盟の存続理由もなくなり、米軍のプレゼンスを維持する意味がなくなる。また仮に北朝鮮が存続できる場合でいまよりものわかりのよい脅威度の少ない国家体制になった場合、ソウルは自国のみで脅威を抑止する効果を十分持つことになる。
無論のこと、以上の選択を米国がとれば、大きな物議を引き起こすのは必至だ。だがワシントンが北朝鮮の核兵器開発、弾道ミサイル装備導入を防げなかったのは大失策だ。米国は東アジア内の同盟各国と厳しい選択に直面している。核武装した北朝鮮と共存を迫られても、このまま行けば北朝鮮は米本土の攻撃手段も手に入れるだろう。あるいはワシントンは北朝鮮の脅威を減らすことが可能な唯一の国の気を引いてついに意味のある行動を引き出すことができるかもしれない。だが北京を各国協調行動に引き出すには相当の条件が必要となる。もし米指導層が必要な犠牲を甘受するつもりがないのであれば、中国の不作為を非難するのはやめるべきだ。
Ted Galen Carpenter, a senior fellow at the Cato Institute and a contributing editor at the National Interest, is the author of ten books on international affairs, including (with Doug Bandow) The Korean Conundrum: America’s Troubled Relations with North and South Korea (Palgrave Macmillan).

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