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2021年3月14日日曜日

中国の弱み 規模こそ巨大だが中国の空軍力にはまだ実力が不足しているのが現状だ。

 


 

ハイライト PLAAF ・PLANAFあわせた戦闘機材の三分の一が旧世代機で戦闘性能に制約がつく。一斉飽和攻撃しか活躍の余地がないといってよい。28%の機材が戦略爆撃機など性能は高いが第3世代設計の旧型機だ。

 

人民解放軍空軍PLAAF、人民解放軍海軍航空隊PLANAFと合計1.700機と相当な規模の戦闘機材を運用している。これを上回るのは3,400機供用する米国だけだ。中国は多様な機種を運用しており、一部は西側も把握できていない。

 

ただし、中国の軍用機は大部分がロシア、米国の設計をもとにしており、出自がわかれば性能の推定も困難ではない。

 

ソ連機のクローン

ソ連と共産中国は1950年代に最良の友好関係にあり、ソ連は戦車、ジェット戦闘機など大量の技術を移転してくれた。中国生産の初期機体にJ-6があり、これは超音速MiG-19のクローンだった。J-6は大量生産され、一部を除き今日でも供用が続いている。同機の派生型南昌Q-5は対地攻撃機で供用中で、精密誘導弾運用の改修を受けている。

 

ところが中ソ関係は1960年ごろから怪しくなった。それでも1962年にソ連は最新のMiG-21戦闘機を友好の証として贈与している。中国は甘い言葉にはつられず機材をリバースエンジニアリングで堅牢かつ重量を増やした成都J-7に変えた。文革の影響で生産開始が遅れたが、1978年から2013年にかけ数千機が生産され、現在も400機近くがPLAAF、PLANAFで供用中。

 

J-7は1950年代設計としては操縦性、速力がすぐれ、F-16並にマッハ2飛行も可能だが、燃料兵装の搭載量が少ない。J-7Gは2004年に登場し、イスラエル性ドップラーレーダー(探知距離37マイル)、改良型ミサイル、視界外対応能力、デジタル「グラスコックピット」を備える。

 

こうした機材では第4世代戦闘機へ対応は苦しいだろう。敵機には遠距離探知能力がある。仮説だが、一度に大量投入し敵を圧倒する攻撃形態を想定しているのだろう。

 

中国のB-52

もうひとつソ連時代のクローン機材が西安H-6双発戦略爆撃機で原型は1950年代初頭のTu-16バジャーだ。米B-52、ロシアTu-95ベアのような大型機と比べれば性能は劣るが、空中給油対応となったH-6Kは今も有効な機体で長距離大型巡航ミサイルを敵の防空圏外から発射できる。ただし、PLAAFはこの想定で同機への期待を捨てたようで、西安航空機では新形H-20戦略爆撃機の開発を進めていると言われる。だが同機の情報は皆無に等しい。

 

国産戦闘機の開発

中国は国産戦闘機開発を1960年代中に開始し、1979年に瀋陽J-8が生まれた。大型双発超音速迎撃機のJ-8は最高速度マッハ2.2を実現し、MiG-21とSu-15の中間の存在となった。ただし、エイビオニクスは旧型で操縦性も劣った。とはいえ、J-8IIではイスラエル製レーダーの導入でエイビオニクスを改良し、大量兵装を運用するところはF-4ファントムを思わせる。現在も150機が活躍している。

 

1992年に供用開始した西安JH-7飛豹は200機以上が第一線にあり、大型複座の海軍用戦闘爆撃機として20千ポンドのミサイル等を搭載し最大速度はマッハ1.75だ。ドッグファイトには不向きだが、対艦ミサイルを長距離発射すれば安全だ。

 

成都J-10猛竜は対照的に中国のF-16で、高度の操縦性能の軽量多任務戦闘機でフライ・バイ・ワイヤのエイビオニクスで空気力学上の不安定さを補正している。エンジンはロシア製AL-31Fターボファンに頼らざるを得ず、J-10B型が21世紀にふさわしいエイビオニクスとして赤外線探知追尾装備やアクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダーを搭載し、後者はF-16でも一部にしか搭載されていない。250機ほど供用中のJ-10で死亡事故が数件発生しているのはフライ・バイ・ワイヤ関連で問題があるのか。

 

フランカーの導入

ソ連崩壊後のロシアはキャッシュほしさにイデオロギー対立は捨てて、当時最新鋭のスホイSu-27を求める中国の要望を受け入れた。Su-27は双発で高度の操縦性を誇り、F-15イーグルに匹敵する長距離運用とペイロードを実現した。これが運命的な決定になった。今日、Su-27原型の各機が中国の新鋭戦闘機部隊の中心となっている。

 

Su-27を輸入した中国は国内生産ライセンスを購入し、瀋陽J-11が生まれたが、ロシアにとって悲報は中国がより高性能のJ-11B型、D型を勝手に製造したことだった。

 

ロシアは怒りつつ、さらに76機の新型対地攻撃仕様のSu-30MKK、海軍仕様のSu-30MK2を売却した。問題は中国がSu-30からも独自の派生型を瀋陽J-16紅鷲としてAESAレーダー搭載、空母運用用の瀋陽J-15飛鮫を製造したことだ。後者はウクライナから調達したSu-33が原型で約20機を001型空母遼寧で運用中。さらにJ-16Dはジャミングポッドを搭載した電子戦用機材で米海軍のEA-18グラウラーに匹敵する。

 

中国のスホイ派生型各機は理論上は第4世代機のF-15やF-16に対抗可能のはずだが国産WS-10ターボファンエンジンが整備性の悪さ、推力の性能不足で足を引っ張っている。ジェットエンジン技術が中国軍用機で大きな制約条件となっている。2016年に高性能版フランカーSu-35の24機を購入したのは、AL-41Fターボファンエンジン取得が目的だったのだろう。

 

ステルス戦闘機

驚くべき短期間で中国はステルス戦闘機2型式を開発した。成都J-20は20機がPLAAFで2017年から供用されている。J-20はF-22、F-35のいずれとも異なり大型双発の機体でスピードと航続距離、大量兵装を運用する狙いで操縦性は二の次にしている。

 

J-20は対地対艦の奇襲攻撃に最適だろう。ただし、機体後部のレーダー断面積の大きさが問題になりそうだ。あるいは敵陣営に忍び込み、脆弱な支援機材の給油機やAWACSレーダー機を狩るねらいがあるのか。任務特定型のステルス戦闘機として高度な作戦内容の実行を始めたばかりの中国には意味のある機体になりそうだ。

 

他方で、小型の瀋陽J-31シロハヤブサ(別名FC-31)はF-35ライトニングを双発にしたような機体だ。ロッキード社のコンピュータに侵入して得たデータを流用している可能性が高い。中国は垂直離着陸用の構造など空気力学を洗練させているが、ライトニング並みの高性能センサーやデータ融合機能は搭載していないはずだ。

 

J-31は今後登場する002型空母に搭載をするようだ。また輸出用にはF-35より相当低価格に設定されるだろう。ただし、同機もロシア製エンジンを搭載しており、中国製WS-13エンジンが信頼性十分になるまで本格生産はお預けのようだ。

 

展望

PLAAF・PLANAFの戦闘機材のほぼ三分の一が第2世代戦闘機や戦闘能力に限定がつく機材で、一斉攻撃に投入するしか使いみちがないはずだ。28%が戦略爆撃機など一定の性能はあるものの第3世代機だ。第4世代機は38%でF-15やF-16に対決可能な機材で、ステルス戦闘機は1%相当だ。

 

だが、機体の性能だけがすべてではない。同様に重要性を持ってくるのが訓練であり、組織の運用思想であり、支援体制だ。

 

中国にも情報収集機材があり、空母攻撃用のミサイルや機材があるのは事実だ。だが、各機材を一体運用しキルチェーンを構成するのは簡単ではない。2016年のRAND研究所レポートでは中国の訓練方法には現実的な状況設定が欠如し、地上海上部隊と一体化した運用経験は未確立とある。

 

いずれにせよ、中国に旧型機の更新を急ぐ様子はない。国内航空産業が実力をつけるまで大規模な新型機調達事業は待つという考えなのだろう。■

 

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Size Isn’t Everything: Why China’s Huge Air Force Is Not That Scary


March 10, 2021  Topic: China Air Force  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: ChinaMilitaryTechnologyWorldAir ForceJ-20J-10

Size Isn’t Everything: Why China’s Huge Air Force Is Not That Scary

by Sebastien Roblin

 

Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring. (This first appeared several years ago.)

 


2021年2月12日金曜日

中国の弱み④ ジェットエンジン技術が追いつかない。リバースエンジニアリング、盗作に走るのは結果だけ求める中国の思考形式の限界を反映している。

 中国の弱み④ 

https://www.reutersconnect.com/all?id=tag%3Areuters.com%2C2009%3Anewsml_GM1E5B4126I01&share=true

 

国は海外の兵器技術に過剰依存の傾向がある。国内産業育成に走る中国がロシアからの輸入や米国技術の盗作に頼らる必要のない日が来るだろうか。だがその日は当面やってこない。

 

中国の国防産業界は外国設計の「借用」で悪名高い。特に航空宇宙産業にこれがあてはまる。中国で供用中の戦闘機は大部分が無許可のコピーが原型だ。J-10はイスラエルIAIのラヴィであり、もとをたどれば米国のF-16だ。J-11はロシアSu-27のクローン、JF-17はソ連MiG-21を近代化した機体、J-20にはF-22との類似性があり、J-31はF-35共用打撃戦闘機の技術を借用していると広く信じられている。海外技術の盗用で中国は研究開発費用と時間を節約し、PLAAFは安価に近代化が可能となった。ただし、盗用戦略ではテストデータがなく、産業基盤も揃っていないため肝心な技術に成約が生じる。この例が当てはまるのがエンジンの国産化で、まともなジェットエンジンがいまだに生産できない。

 

技術ミスマッチの根源は技術知識の欠如であり、人財の不足だ。このため、海外システムの摸倣が結果として高い代償につき、多大な時間の消費につながり、結局ゼロから製造工程を整備しなくてはならなくなる。最悪の場合は粗悪部品となり、性能が大幅に低下する。中国は1990年代2000年代にロシアのジェットエンジンをリバースエンジニアリングしたが、結果は極端に低寿命でロシア製より低出力のエンジンだった。現在も中国のジェットエンジンがPLAAF戦闘機材の近代化で足かせとなっており、最新型でも依然として出力不足の傾向だ。問題をさらに複雑にするのがSu-27搭載のAL-31エンジン以上の出力があるエンジンの供与にロシアが慎重になっていることだ。それでも中国には別の打開策もある。

 

オプションとしてまず、国産エンジンの性能を引き上げることがある。2016年に第13次5カ年計画で戦略的新興産業の育成が叫ばれ、国産ジェットエンジン設計の向上とあわせ航空宇宙産業の底上げを狙った。その成果が一部にせよ現れ、J-20試作型に改良版のWS-10エンジンが搭載され、当初のAL-10よりステルス性能、出力が向上したはずだった。しかし、中国国産エンジン関連の情報は不足気味で性能の確認ができない。WS-10初期型が中国製フランカーに搭載されたがAL-31より圧倒的に性能が劣っていた。成都航空宇宙高性能合金技術(CASTC)がターボファン技術で大きな飛躍を可能とし、高温域で高性能を発揮するエンジンに道を開いたが、この成果がPLAAFの現役機材に届くまでまだ時間がかかりそうだ。

 

 

民生部門が航空宇宙分野の技術の突破口を開けば、政治面でその後に成果が続くはずだ。国営航空機メーカー各社は政治面で力をつけつつあり、一部企業の首脳陣には裁量権が認められている。一方で、CASTCのような民間企業が優れた結果を実現すると、政治面での影響力が生まれ、既存の国営企業が民間企業と提携関係を樹立するようになるかもしれない。いずれにせよ、CASTCの成果は中国国防産業界ならびにイノベーション分野で深い意味を持ってきそうだ。

 

もっと簡単な方法は外国製戦闘機で高性能エンジンを搭載した機材を調達することで、この例がSu-35をロシアから導入したPLAAFだ。Su-35にはAl-41F1S(ALS-117S)が搭載されており、推力偏向方式を採用した強力なエンジンでAL-31から数段先をゆく技術になっている。中国はAL-117単独での導入を想定したが、ロシアがエンジン単体の輸出を拒み、さらにALS-117の知的財産の保護を強く主張した。

 

しかし、中国の知財遵守の実績はきわめて疑わしく、ALS-117を部分的にリバースエンジニアリングしてくるのは間違いない。ただし、これはそんなに簡単なことではない。ロシア筋は同エンジンの核心技術は分解しないかぎり見られないとしている。さらに中国がWS-10でも手こずった事例を見ると、外国製エンジン設計を入手したからと言って同等性能の製品の即実現には直結しない。

 

さらに中国がロシアの知財保護対策を守ると言いながら、破ればロシアの先端技術の利用を今後一層難しくなりかねない。更にALS-117の中核技術は分解しないとわからないというロシアの言い分が正しければ、リバースエンジニアリングしてもPLAAFにはエンジンの欠けた機材しか手に入らなくなる。そうなると、ALS-117のリバースエンジニアリングで短期的な成果を追求するのは、金の卵を生むガチョウを殺すのと同じだ。ただし、ロシア軍需産業の見通しが暗いため、ロシアとしても中国市場を失う損害を考え別の道に走るかもしれない。

 

たしかにロシアの優位性は縮まりつつあり、中国の技術、産業の基盤が強化される一方、ロシア技術の導入は減りそうだ。中国は自信を深めるだろうが、ロシアとの友好関係にひびが入るリスクが生まれれば、外交面の投資が無駄になりかねない。

 

最後に、中国は民生ジェット産業の発展をバネに軍事用途も一気に発展を目指すかもしれない。民生航空分野の強化が西側企業との協力関係につながれば、中国航空技術の輸出市場も生まれる。ドイツはタービンブレイドの購入を中国から狙っており、ドイツ製品より優秀な出来上がりとなっているからとする。皮肉にも中国はドイツから同技術を習得したのだが。さらに、中国国内の需要に応えれば民生航空機分野で世界最大の規模の中国市場に参入できる。とはいえ、欧米企業は技術移転の厳しい条件で操業を続けているのが現実で、そこに政治圧力や知財窃盗が加わり、西側企業は中国事業への投資に及び腰だ。知的財産の保護が鍵となり、米中関係が冷え、貿易戦争を加熱しかねない。その結果として中国が拡大近代化をめざす産業基盤に損害が生まれかねない。

 

こうした障害にもかかわらず、中国の軍事航空での進展は今後も続くはずで、中国が技術面でいつまでも遅れたままとなる可能性は低い。3Dプリント技術によりジェットエンジンの試作、製造、開発が加速化される日が来るかもしれない。とはいえ、3Dプリント技術はすでに各国で利用されており、航空機部品の製造にも応用されている。が、ジェットエンジンの複雑さを考えると、3Dプリント技術を広く応用するまでまだ数年かかりそうだ。中国は戦闘機用エンジン技術の習得という困難な選択に当面取り組み、空軍機材の戦力向上を狙うのではないか。■

 

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Engine Trouble: Why China Needs a Domestically-Produced Air Force

February 10, 2021  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: ChinaAir ForceMilitaryTechnologyWorld

by Robert Farley 

 

Robert Farley, a frequent contributor to TNI, is a Visiting Professor at the United States Army War College. The views expressed are those of the author and do not necessarily reflect the official policy or position of the Department of the Army, Department of Defense, or the U.S. Government. This article first appeared earlier and is being reposted due to reader interest.

Image: Reuters.


2021年2月1日月曜日

中国の弱み③ 実戦経験が欠如し、硬直した訓練を繰り返す中国空軍部隊には西側の新戦術に対抗する技量が不足している。突き詰めれば形式主義の中国式思考習慣そのものに弱点があるのではないか。

 

 

機材が最新鋭でも、パイロット訓練内容に欠陥があり、実戦経験が欠如する国は性能を駆使できない。

 

 

2015年のタイとの合同演習で中国航空戦術の大きな欠陥が露呈した。

 

運用機材こそ新型だが、中国パイロットは遠距離からの攻撃に反応が遅れ、積極的な行動を取れず脆弱さを示した。▼この演習はファルコンストライク2015で同年11月に二週間に渡りコラット王立タイ空軍基地で展開され、初の両国共同訓練だった。

 

 

 

中国はJ-11戦闘機を持ち込んだ。▼タイ空軍はF-16に加え、グリペンも動員した。タイ空軍はJAS-39C/D型グリペン12機を供用する。

 

航空サイトAlert 5がその際の経緯をまっさきに報じた。最初の7日間にわたりJ-11はグリペンを苦しめた。▼J-11はロシアSu-27が原型でドッグファイターとして優秀性を見せつけた。▼模擬航空戦闘初日にJ-11とグリペンは視界距離で交戦した。結果は中国側の圧勝だった。▼強力な双発エンジンを搭載するJ-11は機関砲と赤外線誘導ミサイルPL-8でグリペン16機を撃破し、被撃墜は皆無だった。

 

一方、単発のグリペンは近接戦ではAIM-9赤外線ミサイルと機関砲を使用する。▼グリペンは推力重量比では他機種より劣り、ドッグファイトで制約がつく。▼だがグリペンには長距離攻撃性能が付与されている。

 

二日目になり中国パイロットは撃墜成果がなくなる。▼その後演習が進むと中国は初日の成果を再びあげようと必死になった。▼演習は視界外交戦のシナリオとなり、グリペンはAIM-120中距離ミサイルを搭載し、J-11の中距離ミサイルPL-12より性能がまさることを証明した。

 

三日目、タイ側はJ-11を19機「撃墜」し、グリペンの損失は3機だった。▼終盤の3日間でタイは中国の22機を撃破し、自軍の損失は3機だった。▼最終的に軍配はタイ空軍に下り、グリペンはJ-11を42機撃墜し、J-11はグリペン34機を撃墜した。

 

総合するとタイの撃墜成果の88%は19マイル以上の射程で発生しているが、同じ距離で中国の撃墜は14%だった。▼グリペンは31マイル以上の距離でも10機を撃墜しているが、この距離でJ-11は一機も撃墜できなかった。

 

Alert 5は「中国軍パイロットは状況認識力が劣っていた」とし、「機体周囲より前方に注意を払いすぎた」と報じた。▼演習でJ-11は僚機をエスコートしていたが、「協調性が不足」していたという。▼中国パイロットについて「ミサイル攻撃の回避の経験不足」があったという。▼反応があまりにも機械的で、場面に応じたミサイルへの回避行動の判断を正しく下せなかった、とAlert 5にある。

 

中国もパイロット訓練の改善の必要は認識している。2005年頃の中国空軍は米空軍のレッドフラッグ演習に刺激を受けたため現実的な航空演習を採用している。▼だが演習から熟達した技量のパイロットが生まれておらず、中国製機材の性能を活かしきれていない。

 

「専門文献や中国軍高官の発言から従来の訓練では実戦に対応出きないことは承知しているようだ」と米国防情報局は2019年1月公表の中国軍事力評価で解説している。▼「非現実的な訓練内容により中国空軍の航空戦闘能力の発展が遅れている」▼中国軍も「自軍パイロットと『強豪国空軍部隊』パイロットの技量の差を認識している」とDIA評価が続く。▼「訓練の弱点を克服するべく、司令官の一人が空軍演習は威容を見せつけるのではなく『戦闘に備える』内容にすべきと発言した」とある。

 

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How a 2015 War Game Showed the Chinese Air Force’s Flaws

January 30, 2021  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: ChinaMilitaryAir ForceJ-11JAS-39 Gripen

by David Axe 

 

David Axe served as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad. This first appeared earlier and is being reposted due to reader interest.

Image: Wikipedia


2021年1月26日火曜日

中国の弱み② 海外基地が確保できない、真の同盟国ネットワークがないまま、艦艇を長期間海外で活動させられない(とりあえず今の時点では)

中国の弱み ② カンボジアで海軍基地確保の動きがありますが、中国は価値観の共有といった同盟関係の深化に至らず、場所だけ利用して使い捨てするイナゴのような勢力にではないでしょうか。トランプ政権はPRCをOC(組織犯罪集団)と認定しようとしましたが、まさしくここに中国の弱みがあると思います。


タンザニアの首都ダル・エス・サラームに寄港した中国軍艦。Aug. 16, 2017. Xinhua Photo

 

「世界最大の海軍」の大きな弱点は国外に造船所や港湾施設を正しく運用できる人員が確保できず、艦艇の遠隔地派遣が継続できない点だと中国の弱みを研究した共著者が明らかにした。

 

戦略予算分析センターのオンラインフォーラムでトシ・ヨシハラは「中国国内のアナリストには米国が享受する横須賀やインド洋のディエゴガルシアの技能員は夢のレベル」と指摘した。

 

中国は人民解放軍海軍を支援してくれる「遠隔地」国を確保するのに苦労しており、有事となれば弱点を露呈するだろう、という。さらに米国が第二次大戦後に構築してきた基地、整備施設、同盟国を超える内容を入手するのは中国には極めて困難で、巨額費用が必要となる。

 

ヨシハラは「全ての場所で中国と競うことは不可能」とし、このため米国は同盟国協力国と「中国の狙いを困難にさせる」選択肢を追い求めるべきと主張した。例として「インド洋の防衛能力の実証」があり、中国の弱みを突くべく「ディエゴ・ガルシア防空能力」を示すのが「ピンポイントで具体的な効果を生む」という。報告書では画期的技術を運用すれば中国式思考の裏をかくことが可能とある。

 

報告書では中国を局地大国かつグローバル大国と位置づけていると当日司会したジョン・リーが紹介している。

 

「中国の強みと弱みは時代ともに変化して」おり、米国の同盟国・協力国により状況が動けば同時に変化していく。オーストラリアから参加したリーは習近平主席が「ハイリスク、ハイペイオフ戦略」を追求しており、中国は「遠隔地、近隣地、大陸周辺部にあまねく資源を配分している」とする。

 

中国がグローバル軍事大国を目指すのは「大規模な経済権益」追求のためとヨシハラは述べた。中国は10年近く前のリビア危機から教訓を得て、内戦発生国で「自国民を保護する」必要を痛感した。中国指導部は自国に「自国民とその財産を保護する資源も意思双方が存在する」と見ているという。

 

だが「中国の基地構築は負債」になると見るのは“Seizing on Weakness: Allied Strategy for Competing with China’s Globalizing Military”(中国の弱みを逆手に取る:中国のグローバル拡大する軍事力に対抗する西側戦略)の著者ジャック・ビアンキだ。

 

基地受け入れ国は自国と関係ない有事でも危険に巻き込まれる。この弱みを和らげようと「新しく約束すれば別の約束を招き」有事対応はできても、費用はどんどん上昇するというのがビアンキの意見だ。

 

Chinese sailors. Xinhua Photo

 

現在、中国はジブチに基地を持ち、アフリカ東海岸と南太平洋で利用可能な施設を模索している。パネルディスカッション参加者から中国はまず商用利用を持ちかけ、ダム、高速道路、空港や港湾といったインフラ構築を提案するのが常套手段との指摘が出た。

 

中国が持ちかける巨額借款返済案で返済不履行が実際に発生しており、低品質医療製品で医療従事者が危険になる事態もあり、中国の言うままに実施に移し、中国製品を購入することへ警戒心が高まっている。

 

最近は「デジタル版シルクロード」構想で世界の通信ネットワーク近代化を中国が提案しており、他国で追随できない規模だ。米国はファーウェイはじめ中国企業との事業はスパイ活動に道を開くとの警告を各国に出している。

 

ビアンキからは中国は新規施設の立ち上げコストを負担することで海軍用の港湾施設等を維持しているとし、中国の負担コストは米国の同等施設より高額になっている可能性があると指摘している。

 

報告書ではこうした関係から「成果が即座に出る」ことはないとし、信頼や価値観の共有、相互作用の仕組みが構築されていること、さらに密接な関係の実績といった目に見えない成果があってこそ結果が出るとある。中国が受入国候補と見る各国との関係にこうした必須条件は不在とある。

 

ヨシハラは中国が遠隔地に海軍基地を持つ問題の要点は機能の質、受入国の耐久性、信頼性に加え、該当国の施設や人員そのものと指摘する。

「グローバル展開はとても困難」とビアンキも発言した。

 

ビアンキは中国共産党が海外基地保有問題に直接関与する事態が来ると見ている。その理由として中国指導層が「包囲陣への恐怖心」を陸上海上双方で抱く歴史的背景を上げた。

 

報告書では「中国には逃げ場のないジレンマが大陸と海洋の2方面にあり、世界規模の野望への制約となっている」とあり、中国の戦略思考家は海上への動きを「ロシアとの和合で海洋進出の余裕が生まれたこの三十年の変化のたまもの」と表現している。

 

ヨシハラは「近隣地区の安全保障課題が」陸海での中国の拡張主義の「重しになる」可能性に言及した。「沖合での引火点になりそうなのが、台湾、尖閣諸島、スプラトリー諸島でこうした場所を想定した装備ではグローバル規模のミッションには投入できない。たとえば短距離弾道ミサイルや沿岸配備の戦術戦闘機、さらに沿岸戦闘艦艇では遠隔地での運行に支障が出る」という。

 

「第一列島線」の課題では台湾が筆頭で、米国が航行の自由を掲げ台湾海峡を通行する計算済みリスクを取る、台湾に軍事装備販売を増やす、非対称防衛体制に重点を移す、あるいは米高官の台湾訪問が増えることが想定される。

中国はこうした動きはすべて「一つの中国原則」に反すると非難するのが常だ。中国の解釈は台湾は中国の地方省にすぎず、最終的に本土へ再統一されるとする。米海軍艦艇の台湾海峡通過で中国は空母を同じ海峡で通行させた。

 

ビアンキ、リーの両名は台湾は中国対応で自らの役目の重要性を認識すべきと主張し、従来型装備への予算投入を非対称型防衛体制に切り替えるべきとする。中国の脅威に対抗し、日本との協力関係を深化させる政策も必要との意見だ。

 

米国と条約上の同盟国であるフィリピンも第一列島線に位置する。トランプ政権は2020年初頭に中国の過剰な領土主張を一蹴し、スプラトリー諸島問題でフィリピンを有利にるる見解を発表した。

 

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Chinese Navy Faces Overseas Basing Weakness, Report Says - USNI News

By: John Grady

January 22, 2021 4:19 PM

 

2019年1月22日火曜日

地政学で考える。 中国のA2AD戦略を中国に向け使えばどうなるか


Time to Use China's A2/AD Military Strategy Against Them

中国のA2/AD戦略を逆に中国に使う時が来た

A U.S. access-denial strategy, then, would impose a hard fate on China. Which is the point. Threatening fearful consequences could deter Beijing from aggression tomorrow morning, and the next.
米国が接近阻止戦略を取れば、中国に深刻な影響を与え、強硬な態度は取れなくなる
January 20, 2019  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaAmericaA2/adSouth China SeaU.S. Navy

週はペンタゴンから中国に関する資料が二点続けて公開された。まず国防情報局(DIA)が中国の軍事力報告を冷戦時のソ連の軍事力評価にならう形で発表した。人民解放軍(PLA)に詳しい筋には同報告書には驚く内容は少ないが初心者やしばらく情報に接していない方には有益だろう。興味のある向きは下リンクを参照してもらいたい。
DIA報告に続きペンタゴンが「中国のグローバルアクセス拡大に対応する米国防体制の評価」を発表し、中国の「大戦略」を評価している。こちらのほうが短く、一読の価値はあるだろう。
「大戦略」の言葉を編み出したのは英国の軍人著述家B・H・リデル=ハートで大作「戦略論」(1954年)で大戦略とは外交力、経済力、文化、軍事力を使いこなして「平和状態」を向上していくことにあり、武力を用いずにこれを実現するのが望ましいとした。大戦略思考では高所から大局を捉える。
「中国のグローバルアクセス」の編者は「アクセス」の用語を正しく選んでいる。中国の大戦略は世界各地につながるアクセスを確保することにかかっているからだ。中国も海上輸送での物資輸送に依存する点で他の交易国と変わらない。貨物船には海外の寄港先がなければ貨物の積み下ろしができず本国への輸送もできない。
海洋戦略とは大戦略を海上で展開することにほかならない。
そこでアルフレッド・セイヤー・マハン大佐が登場する。中国の海洋戦略の先祖と言って良い大佐にとって海洋戦略の目的ならびに原動力はアクセスそのものだ。米国を海洋国家に導いた思想家としてマハンは商業、政治、軍事それぞれのアクセスを重要な交易相手に確保しておくことが海洋戦略の目的と説いた。
マハンは商業取引を最上段においた。海上交通を重要視する各国は交易アクセスに有益なアクセスを外交で求めるが、軍事アクセスで外交、交易のアクセスが容易になることもある。アクセスにより動きのサイクルが生まれる。国内製造業は海外市場で製品を関税を払ってでも販売して収入を確保し、これを海軍力整備にまわす。海軍は商品の海上輸送を守り、敵対勢力には海上交通路を閉鎖する。
大戦略での海上交通関連部分ではこの相互作用が産業、外交、軍事各面の活動に見られる。中国政府はこれを骨身にしみるほど熟知している。
マハンの時代のアメリカと違い中国にとってアクセスは容易ではない。当時も今と同じく、政治地図では米国は大西洋、太平洋で邪悪な隣国から自由であった。逆に中国には地理が逆作用となる。当時でも中国は上海や天津に遠隔地から到来する船舶に苛立っていたはずだ。
それは中国の船舶往来は必ず「第一列島線」として日本南部から台湾、フィリピン、インドネシアにつながる島しょを通過する必要があるからだ。この島しょ部分に強力な米海軍空軍部隊が駐留しており、各国は米国の同盟国友邦国であり、中国の敵となる。
言い換えれば、中国に経済、地政学の恩恵をもたらすはずの船舶航空機は敵性国の軍事力の影を意識して往来する必要がある。戦略地図では大国としては珍しい形で中国の野望が妨害を受けているのだ。
.PLA海軍創設時の戦略家劉華清Liu Huaqing提督たちが第一列島線を「金属の鎖」と表現し、これを突破しないと習近平主席が好んで使う「中国の夢」は達成できないと考えたのは当然だろう。第一列島線を突破すべく一部の占領や台湾あるいは米国の同盟国を外交手段ででたらしこむことが戦略的勝利に欠かせない。
アクセスが成功を呼ぶ。このマハン流の考えは「中国のグローバルアクセス」に一貫して流れている。
植民地時代を扱う歴史家は交易が先で国旗が続いたのか、国旗に交易が続いたのかを問うことが多い。商業上の利益追求から交易地につながるアクセスが生まれ、外交軍事面の保護が必要となった、つまり国旗だが、あるいは外交団や軍人が先に乗り込んで安全を確保してから商業活動が続いたのかという議論である。
マハンは同時に実現可能と主張していたようだ。米国が産業基盤と商業活動を確立し、商船隊と海軍部隊を建造し遠隔地の海港へのアクセスを追求すべきと熱く説いた。また商業活動、艦船、港湾拠点を海洋力の「鎖」の3つの「リンク」と好んで呼んでいた。3つを同時にリンクしたかったのだ。
今回の報告書をまとめた専門家は意図的かは別に中国がマハン教義を忠実に守る立場を捨てたと暗示している。中国が外交経済両面で外界へのアクセス確保をめざしているのは事実だが軍事アクセスがその後を追うこともある。その例としてPLA海軍がアデン湾に戦隊を十年近く配備しており、また世界各地に遠洋航海をしている。ただし西インド洋を除けば中国海軍はプレゼンスを常時確保できていない。
そこで中国の東アジア以遠での大戦略の護り手は非軍事手段である、いまのところは。
このパターンは地理条件から生まれた。中国が「遠隔海域」のインド洋や地中海でなにか達成しようとれば商船隊や海軍艦艇を本国周辺の「近海」から現地に派遣する必要がある。遠隔地での活動を考えると中国周辺海域から西太平洋へのアクセスの確保が必須と判明した。
.興味深いことに「中国のグローバルアクセス」は米国による戦略対応策に触れていない。当然必要だろう。ユーラシアへの商業、政治、軍事各面のアクセスこそマハン時代から一貫して米国の大戦略の中心課題であり、マハン自身がこれを主張していた。
中国、ロシア、その他沿岸国が「接近阻止領域拒否」に役立つ兵器を展開し米海軍を近づけまいとしているためアクセスが今や危険に立たされている。在日米軍基地他列島線上の軍事施設へのアクセスがなければ米国は意味のある戦略上の役割を果たせなくなる。
アクセス確保こそ米軍の最重要課題と考えるだろう。
.逆にペンタゴンが接近阻止領域拒否戦略を打ち出せば良い。PLAと中国共産党が海洋アクセス確保に必死になるのは列島線でアクセスを否定されれば中国は世界と貿易できなくなるためだ。
マハン教義を応用して列島線内の水路を封鎖すれば植物の根を枯らすと同じ効果になる。中国の商船隊やPLA海軍が外洋に出られなくなる。中国の夢の実現には貿易が死活的な意味を持つのだ。
  • この過程で地理上の利点は消える。
  • 米国がアクセス拒否戦略を取れば中国の運命は悲惨だ。これが重要だ。恐ろしい結果をちらつかせれば中国は強硬策を翌日に引っ込める。その次の日も。習近平一味が忍耐するしかないと気づくのではないか。中国、アジア、世界は共存に向かう。
  • アクセスの重要性を再認識することで道は開く。■
  • James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College, coauthor of Red Star over the Pacific (new in print last month), and author of A Brief Guide to Maritime Strategy (forthcoming this November). The views voiced here are his alone.​
  • Image: Flickr

コメント: マハン、なつかしいですね。米国よりも熱心にマハンの著作を貪るように呼んでいたのは帝国海軍士官でしたが、PLAでも熱心な読者がいたのですね。中国があれほど強硬な態度に出るのはそれだけ自国が不利な条件にあるからであり、自由主義圏はこれを意識した「封じ込め」で中国を「正しい」方向に導き、軍拡をやめ、経済の活性化に資源をまわす、というシナリオでしょうか。