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7月, 2020の投稿を表示しています

強襲揚陸艦が小型空母になる----いずも級改装は正しい方向のようだ

中 国がこれまでにない形の強襲揚陸艦の建造に向かいそうだ。電磁カタパルトで高性能固定翼機を運用し、米F-35Bへ対抗する。 証拠の裏付けもある観測記事として中国共産党の環球時報が伝えている。新型艦は076型とされ、供用中の075型に続く。中国は075型二号艦を建造中で揚陸作戦能力を拡充中だ。 「中国軍の装備品調達ウェブサイト weain.mil.cn の調達要求公告から人民解放軍海軍(PLAN)が新型強襲揚陸艦の建造に向かいそうだとフォーブスが報じている」(環球時報) 米フォード級空母に採用された電磁カタパルトを使い、固定翼機運用が可能な新型強襲揚陸艦になるのか。 環球時報は強襲揚陸艦でF-35Bを運用する米国を意識している。新しい脅威環境で強襲揚陸艦は小型かつ機動性の高い空母として認識されるようになっており、航空攻撃兵力を投射しつつ上陸作戦を展開する装備の位置づけになった。 米強襲揚陸作戦は新しい脅威環境に対応する形へ明確に軌道修正されている。ワスプ級アメリカ級の強襲揚陸艦にオスプレイやF-35Bの搭載を進める米海軍は強襲揚陸艦から攻撃偵察型の小型無人装備を運用する作戦を開発中だ。この構想で大型艦は指揮統制任務を受け持ち、揚陸作戦は安全な距離をとった地点で展開する。無人舟艇が敵の沿岸で脆弱な地点をあぶりだす、あるいは直接攻撃を加える。また揚陸艦にレーザー他攻撃手段の搭載も進めている。 無人舟艇やF-35はデータ中継にも投入し、水平線越しの敵識別に使える。新技術高性能技術を遠距離で分散投入することで脆弱性を下げる狙いがある。艦艇の密集配置が敵攻撃に脆弱になるのは当然だ。 無人装備の利用構想が中国にもあるのは驚くにあたらない。環球時報は中国の攻撃型無人機GJ-11と同様の装備が076型に搭載されると伝えている。 小型高軌道空母型艦艇は空母を狙う対艦ミサイルで射程が延長傾向にあることにも対応できそうだ。中国の目指す戦略は米海軍の機動修正と方向が同じだ。 「076型は最新鋭の中型空母に近づくだろう」と環球時報はまとめている。■ この記事は以下から再構成したものです 。 China's Plan to Take on the F-35B Stealth Fighter J

歴史に残る機体(27)ダグラスA-3スカイウォーリアー(ホエール)

歴史に残る機体27 1 972年5月10日、ジェット時代でも最も熾烈な空戦がハノイ、ハイフォン上空で展開した。海軍のF-4Jファントム編隊とヴィエトナムのMiG編隊がミサイル攻撃の応酬を繰り広げる中、空には対空射撃とSA-2地対空ミサイルが猛烈な攻撃を展開した。 24時間で双方の十数機が撃墜された。リック・モーガン著の A-3 Skywarrior Units of the Vietnam War  がファントムパイロットのカート・ドセ大尉が遭遇した状況を次のように伝えている。 「SA-2ミサイルが下方から出現し、ブースターを分離していた。私は機首を押し下げ逆Gでミサイルの標的をチェックしたところSAM二発も方向を下げた。つまりこちらが標的だったのだ。7Gで機首を上げたが遅すぎた。こちらに狙いを定めマッハ2で向かってくる。こちらに命中するだけでなくボールペアリングの弾頭部がコックピットを貫通するだろう。 「ミサイルの小型カナード翼が最終調整するのが見え、死ぬ覚悟を決めたが、不発だった。最初のSA-2はキャノピーの5フィート下を通過し、二発目は機首の20フィート前だった。私は右にロールしSAM二発がまっすぐ飛翔するのを見ていた」 ドセは無事空母に帰還した。事後報告で無事生還できたのはEKA-3Bスカイウォリアー電子戦機のジャミングのおかげと知る。 ハノイ周辺にはファンソンミサイル誘導レーダー多数が配備され、EKA-3Bのシステム操作員はミサイル信管へ爆破信号を伝える周波数にジャミングをかけた。無事帰還できたドセは同機搭乗員に感謝の念を込め自分が残していたウォッカ半ケースを贈ったのだった。 ダグラス A-3スカイウォリアー別名「ホエール」は空母運用機材では最大の大きさを誇った。当初は核兵器による戦略爆撃任務を想定したが、これは長続きしなかった。A-3は各種型式が生まれ、米海軍への貢献を長く続けた。爆撃機として生まれ、給油機にもなったが今回は偵察任務や電子戦機材としての側面に触れる。 スカイウォリアーでは給油機として海軍各機をヴィエトナム上空で支援した貢献のほうが爆撃機任務より大きい。ヴィエトナムの地対空ミサイルに狙われる海軍パイロットに電子戦支援は喉から手が出るほど必要だった。そこで1967年に給油型34

米陸軍野砲射程が70キロまで伸びる。戦闘の様相はこう変わる

米 陸軍の超長距離砲兵隊が敵の補給ラインを先に寸断し兵力集積地点にも砲撃を終えてから地上戦を展開すれば、敵部隊の排除は容易になるはずだ 。 さらに、敵の届かない地点からスタンドオフ砲撃すれば米軍部隊は安全かつ自信を持って敵軍を駆逐できるのではないか。 との想定で陸軍は155mm砲を改良し有効射程を従来の二倍の70kmに延ばす。 この事業は射程延長砲撃戦力 Extended Range Cannon Artillery (ERCA)と呼ばれ、迅速な実現をめざし進められてきた。陸軍技術部門は威力を高め残存性を高くした新型155mm砲の開発試験に動いている。 ERCAは米陸軍次世代装備本部 Army Futures Command が試験中で、62km先への着弾を実現しながら必要な精度は維持した成果を上げている。最新のM777迫撃砲ではGPS誘導方式のエクスキャリバー砲弾を運用し、最大射程は30から40kmとなる。この射程を二倍に延ばすERCAでは戦術戦略両面の要求を実現する狙いがある。狙いは敵を「アウトレンジ」することだと陸軍関係者が語ってくれた。 従来型装備に対しERCAは30フィートの砲弾を発射し、遠距離を狙う。 「ERCAでは 約30フィートで 58口径砲弾を運用します。内部容積が増えているため推進剤や砲尾を変えられます。初速は砲身長に依存します」とジョン・ラファティ准将(長距離精密火力機能横断チーム長)が今年初めのTNI取材に答えていた。 ラファティ准将からは砲弾の背後に強力な推進剤があり、スライド式尾栓は長距離砲用に改良したとの説明もある。 「砲の後部は強靭な鉄鋼で封印します。火薬系列は電子点火方式で薬室は拡大しており、砲身を長くしたことで初速はずっと高くなります」 ERCAは既存155mm用砲弾も運用しながら、精密誘導技術を応用した新効果を上げる。陸軍はエクスキャリバー砲弾のメーカー、レイセオンと飛翔修正可能な砲弾の開発をめざしている。これが実現すれば発射後に修正を加え普通なら攻撃不可能な標的も狙える。この原理を「弾道変更技術」と呼び、橋の下に隠れる敵や山の背後にいる敵を攻撃する。 「勾配を隠れ蓑にする敵は砲兵隊には難題です。弾道の最終部分が逆勾配に邪魔されるからです。

海自を追い越したPLANへ日本はこう対抗する

中 国は海軍力整備を加速し、日本は追いつく側になった。 長年の友人であり共著者のトシ・ヨシハラが共産中国の戦略思考家・実行者が日本の海軍力をどう見ているかを紹介するレポートを発表した。見通しは暗い。人民解放軍海軍(PLAN)はここ十年で海上自衛隊(JMSDF)を多くの面で追い越した。日本は真剣に追いつく必要がある。米国も手助けすべきだ。 ヨシハラはレポートの題名を「太陽に挑む巨龍」とし、第二次大戦の太平洋方面を扱った軍事歴史家ロナルド・スペクターの「太陽に挑む鷲」を意識している。スペクターが80年前の日本の台頭に苦慮する米国を描いたのに対し今回のレポートは中国の台頭に苦慮する日本を描く。当時の日本帝国は太平洋の反対側の敵と対峙し、この敵は経済規模がはるかに大きく、日本の勢力圏周辺部のフィリピンに拠点を置いていた。今日の民主国家日本に立ちふさがるのは日本の経済規模を上回る規模に成長して10年が経過した敵だ。長距離精密攻撃手段が登場してきたこの時代に両国は狭い区域を占拠し合っている。 PLANとJMSDFを艦艇だけで比較すれば結論を誤る。1941年の日本帝国海軍の機動部隊は今日の空母打撃軍に相当し、悪天候の中で遠距離を航行し真珠湾攻撃を敢行した。燃料その他補給品のため機動部隊は攻撃が継続できなかった。中国から見れば真珠湾は横須賀あるいは佐世保だが容易に到達可能だ。PLAロケット軍は日本国内の基地や艦艇をボタン一つで攻撃できる。 日中の海軍力の比較では沿岸配備ミサイルや航空機も勘定に入れる必要がある。その結果、日本はさらに不利となる。 ヨシハラはPLANは驚くべき速度で成長してきた存在として描く。20年前の西側にはPLANを嘲笑する傾向が強く、中国が外洋海軍を構築するのに長期間が必要とみていた。そもそも実現不可能な構想とみる向きもあった。だが中国の海軍力整備が現実とわかると懐疑派は今度はPLANが対艦弾道ミサイルや最新鋭誘導ミサイル駆逐艦さらに空母を建造できるはずがないと言い始めた。だが中国技術陣はこうした見方をひとつずつ否定していった。 過去の海洋対決での挑戦者の実績を調べると、ゼロから域内海軍力の整備を始めると15年かかっているのがわかる。外洋海軍の整備が完了するにはさらに15年かかっている。合計30年だ。共産中国の指

主張 技術だけで戦闘の構図は変えられない。有望な新技術はこれだ。

資金が潤沢で、未来志向の考え方の軍組織なら戦闘の様相を一変しそうな技術に投資する余裕があるが、当然とはいえ新技術すべてが期待通りの効果を上げるわけではない。 2 018年4月、S・ラジャラトナム国際研究スクールの客員研究員リチャード・ビツィンガー Richard Bitzinger がエイシアタイムズ紙上に寄稿し、画期的軍事技術の概念そのものを批判した。驚異的なまでの威力の装備以外の要素のほうが影響力があるというのだ。例として2017年11月に筆者が発表した中国のJ-16Dが敵レーダーを妨害し防空網を突破する性能を有するとの記事を取り上げた。 ビツィンガーが 筆者も同意できる点を 取り上げていると素直に認める。軍事史を通じ、経験則や物資面の要素ならびに組織力が技術面での優位性を上回る効果を示している。 ただし筆者にJ-16Dを革新的兵器とする意図はない。戦闘の様相を一変させる装備とは性能であれ、効率であれ、過去からの延長線を一気に突破した存在のことであり、従来の装備品と一線を画する存在だ。 筆者はJ-16Dを中国がめざす米装備品の一部性能を模し特殊機能を実現する一例とみており、中国側のいうようなイージス艦への「悪夢」にはならないと自信を持って言える。ロシアのメディアもSu-24がUSSドナルド・クック上空を通過飛行した2014年に同じような言い方をしていた。ただし、中国がその方向に向け技術開発中であることに要注意だ。 ビツィンガーと大きく意見が異なるのは「戦闘の様相を一変させる」問題で、ビツィンガーはこれに大いに懐疑的で、技術そのもので軍事対決の構図が変わることはめったにない、技術に戦術、教義や物資面の支援があってこそだとする。 確かにそうだ。F-35ステルス戦闘機、V-2弾道ミサイルや戦闘員の即席爆発装置(IED)も突き詰めれば金属の塊に過ぎない。戦闘の様相を一変させるのは技術そのものではなく、技術要素を運用可能なシステムに洗練させ、性能を発揮できるよう配備することだ。例として対ゲリラ戦でIEDは画期的な兵器かもしれないが、F-35は違う。装備を有効に活用するための作戦構想がその上にある。 技術要素のフル活用には数年どころか数十年かかることがある。ただし、いったん活用できれば文字通り「構図を一変させる」効果