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日本も導入を検討中のトマホーク巡航ミサイルで性能改修の動き

海軍はトマホーク対地攻撃巡航ミサイルの全面改良を企画中だ。改修規模は合計一千発となる。残りは廃棄する。その結果、米巡航ミサイル配備規模は縮小されるが威力は増大する。

トマホークはレイセオンがアリゾナで生産する。単価は100万ドルを超える。2020年時点で海軍はトマホーク4千発を保有する。ただし、改修と並行して廃棄が進むとこの数字は小さくなる。

米海軍でトマホーク事業を統括するジョン・レッド大佐が2020年水上艦協会が開いたシンポジウムで内容を述べていた。「近代化でトマホークは将来にわたり重要性を維持する」

トマホークを運用できるのは駆逐艦巡洋艦89隻に加え攻撃型潜水艦54隻に及ぶ。トマホークは1983年供用開始している。

トマホークは水上艦のマーク41垂直発射装備あるいは潜水艦の垂直発射装置または魚雷発射管から運用する。米海軍のトマホーク発射対応装備は1,000基あるが、巡航ミサイルを常時搭載するのはわずかだ。

レッド大佐によれば ブロックIV仕様のトマホーク全部をブロックV仕様に改修し、誘導性能と射程が向上する。GPS、慣性航法、地形参照型航法を組み合わせたトマホークは最大1千マイル先の標的を狙える。

ブロックIVの供用開始は2004年で旧型ブロックIIIはそれより早く1990年代中ごろから運用開始していた。ブロックIVは二方向のデータリンクで飛翔中の経路変更を可能とし、標的も変更可能となった。耐用年数は30年のはずだった。

ただし15年経過し改修が必要となったとレッド大佐は説明。「未来を今実現する」と説明資料にもあった。

そこで海軍はブロックIV仕様のトマホーク全弾を中間で「再認証」することとしレイセオンが誘導装置の新型を追加していく。これでブロックVとなる。一方でブロックIII全数の用途廃止作業が始まっている。

ブロックVには型式が三種類ある。基本形は新型誘導装置を取り付けるのみとする。ブロックVaはシーカーモードを加え水上艦艇攻撃が可能となる。ブロックVbでは弾頭を変更し、地下施設攻撃を可能とする。

レッド大佐は海軍は年間90発のトマホークを近代化改修する計画にする希望があるという。これが実現すると2030年代中ごろまでにブロックV仕様のトマホークが1,400発そろう。議会から追加調達予算が認められないと、同時期に海軍のトマホーク備蓄は現在の半分以下になる。ここには海軍が実戦で発射するトマホークの代替調達は入っていない。ここ数年で米海軍はトマホーク100発以上をシリアに発射している。

現在の使用実績が続くと海軍は今後10年間で数千発のミサイルが必要となると試算する専門家もいる。

トマホーク生産へ議会が支援を継続しないと「いつの日か敵を攻撃しようと思っても手段がない事態が来る」と同専門家はみている。ただし、トマホーク以外にも海軍はミサイル整備を進めており、今後登場するSM-6の転用でトマホークの不足分を補うという計画だ。

海軍ではロッキード・マーティンの空中発射型ステルスミサイルを原型に長距離対艦ミサイルの開発も進めている。また新型極超音速対地攻撃ミサイルも2020年代中ごろに供用開始となる見込みだ。■

この記事は以下を再構成したものです。

July 14, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Reboot  Tags: U.S. NavyNavyMilitaryTechnologyWorld
 “Modernization ensures Tomahawk’s relevance now and in the future”
by David Axe 

David Axe serves as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad.

コメント

  1. 中国からのミサイル飽和攻撃は電磁パルス攻撃のようなやり方で対処できないもんですかね。技術的には十分可能だと思いますが、、、

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  2. 結局、肝心の「新型誘導装置」というのは、どのようなものなんですかね?
    従来からトマホークに備わっているINS、TERCOM、DSMAC、GPS、これらが更新される?又は追加される?
    又は、終末誘導を行うアクティブ、パッシブのレーダー、センサー、シーカーの類が追加・更新される?
    個人的には、GPSを代替・凌駕するような新型の航法誘導装置を期待しますが…そんなのあったら、別口でニュースになってるかな?

    返信削除
    返信
    1. 原子時計をJASSMに積むプランがあった気がする

      削除
  3. 米空軍かシンクタンクが「中国との戦闘では4~6万目標を破壊しなくてはならず、スタンドオフ兵器だけではとても足りない」との趣旨の提言をしていましたが、トマホークは4000から1000に減らされるのですか?

    返信削除

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