米下院委員会が1兆ドル国防予算案を可決し、 「戦争省」への名称変更案も可決
長年親しまれた国防総省の名称はこれからは戦争省に変更されることになります。もちろん上院での法案通過と大統領署名が前提ですが。Breaking Defense 記事からのご紹介です。
米下院歳出委員会は6月24日、2027会計年度の国防予算案(総額1兆ドル)を可決した。審議では少数党・民主党が提出した修正案がすべて多数党・共和党の反対によって否決され、最終的に国防総省の名称を「戦争省(Department of War)」に改称する法案が含まれたまま、34対27の党派ラインに沿った投票で採択された。
約8時間に及ぶ審議で可決された修正案はわずか2つであった。1つは超党派の合意による論争のない一括法案、もう1つは「戦争省」への改称を含む共和党主導の文化戦争(イデオロギー対立)関連の修正案である。いずれも国防小委員長を務めるケン・カルバート議員(共和党、カリフォルニア州選出)が提示した。
民主党側は、名称変更は無駄な歳出を招く上に、米国が戦争を望んでいるかのような誤ったシグナルを国際社会に送りかねないと猛反発した。ベティ・マコーラム議員(民主党、ミネソタ州選出)は、議会予算局(CBO)の試算を引用し、改称に伴う省内コストが最大1億2500万ドル(約200億円)に達すると指摘。「この費用を捻出するために、国防長官はどのプログラムを犠牲にするつもりなのか」と批判した。
一方、改称を支持したベン・クライン議員(共和党、ヴァージニア州選出)は、現在の「国防(防衛)」という表現はペンタゴンの任務の一側面しか強調していないと反論した。「歴史的な名称である『戦争省』の方が、戦う精神や、米国の国益を守るために必要に応じて戦争を抑止・遂行するという省の責務をより直接的に反映している」と主張した。
「トランプ級戦艦」の予算めぐる攻防
審議の初期に共和党はマコーラム議員が提出した「トランプ級戦艦」の先行調達予算10億ドルを削除する修正案を否決した。マコーラム議員は、海軍による基本設計も完了していない段階での予算計上を問題視し、「設計図もない段階で家を建てる料金を払う人がいるだろうか。1隻あたり170億ドルともされる戦艦に巨費を投じるべきではない」と訴えたが、比較的短い議論の後に発声採決で否決された。
そのほか、前年の調整法案(通称:One Big Beautiful Bill)で承認された1520億ドルの国防資金に対して通常と同様の議会監視を義務付ける民主党案や、ワシントンD.C.への州兵展開予算の削除、在欧米軍の兵力水準が7万6000人を下回った場合の資金凍結、議会の承認なきイラン作戦への資金流用禁止といった民主党側の修正案は、ことごとく共和党の反対で否決された。また、ピート・ヘグセス国防長官が女性や少数派の将官昇進に介入したとされる疑惑をめぐり、省側が説明を果たすまで長官の旅費を制限する案も与党ブロックによって阻まれた。
予算案が示す主要兵器プログラムの動向
今回可決された1兆ドル予算案は、ペンタゴンが当初要求した水準に合致している(軍事建設関連の予算などは別法案として扱われるため、裁量的経費の要求総額1.15兆ドルとも整合している)。しかし、今週公開された委員会報告書からは、一部の兵器計画における大幅な予算の組み替えや、弾薬調達・F-35戦闘機に対する懸念が浮き彫りになった。
主要弾薬の複数年調達:ウクライナやイラン周辺での紛争激化に伴う増産体制構築のため、重要弾薬に114億ドルを計上。「SM-6」「LRASM(長距離対艦ミサイル)」「JASSM-ER(拡張射程型統合空対地スタンドオフミサイル)」「AMRAAM(発展型中距離空対空ミサイル)」「トマホーク」などに5年から7年の複数年調達権限を付与した。ただし、歳出委員会は、通常の手続きの歳出法案ではなく「財政調整法案」を通じてこれらの予算を確保しようとしている政府のアプローチを「不調和で高リスク」と批判している。
F-35戦闘機への懸念:予算要求が通常予算(32機分、6.9億ドル)と調整法案(53機分、9.8億ドル)に分断されている点を問題視している。予算管理管理局(OMB)による資金の切り分けに論理的な厳密さが欠けていると批判し、現在の見積もり前提では通常予算枠だけでは実質6機分しか調達できない可能性があると指摘した。
E-7 ウェッジテイルの復活:空軍は予算要求で早期警戒管制機「E-7」計画の中止を試みたが、イラン周辺での作戦から能力不足が露呈したため一転して存続となった。委員会は、海軍のE-2Dから予算を削ってE-7を補填しようとした政府案を退け、最終的にE-7とE-2D双方に満額の資金を割り当てた。
その他の主な予算増減
陸軍航空戦力:「ブラックホーク」ヘリコプターに4億9300万ドル、「チヌーク」に4億5600万ドル、無人機「MQ-1C グレイイーグル」に2億4000万ドルを追加。一方で、将来型垂直離着陸機(FVL)ファミリーへの調達資金はゼロにされた。また、ブラッドレー戦闘車の後継「XM30」歩兵戦闘車は、時期尚早として5億4700万ドルから3300万ドルへと大幅削減された。
海軍戦力:「トランプ級戦艦」の先行調達予算10億ドルは維持されたが、海軍に対して設計要件や、フォード級空母やヴァージニア級原子力潜水艦の建造を妨げない建造計画の提出を義務付けた。次世代戦闘機「F/A-XX」の予算は6800万ドルから9億1500万ドルへ急増され、2026年8月の製造開発(EMD)契約締結に向けた加速を促した。一方で、「P-8 ポセイドン」哨戒機は42億ドルから28億ドルへ、極超音速兵器「CPS(共通低高度滑空兵器)」は開発遅延を理由に2億3900万ドル減の5億1000万ドルへ削減された。
空軍・宇宙軍:空軍の戦闘救難ヘリコプター「HH-60W」は2億1500万ドル増の総額2億8400万ドルとなり、追加調達へ道を開く。次期大統領専用機(エアフォースワン後継機)「VC-25B」は5億4700万ドルに微減。宇宙軍の安全保障宇宙打ち上げプログラムは、打ち上げ回数が2回減らされ、33億ドルから29億ドルに削減された。■
House appropriators approve $1T defense bill, adopt ‘War Department’ renaming
:Breaking Defense
Valerie Insinna
2026年6月24日 9:15 PM(米国東部時間)