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2018年6月9日土曜日

北朝鮮侵攻作戦シナリオの最新検討内容から見えてくるもの

いよいよ迫った米朝首脳会談が吉と出るか凶と出るか世界が注視する中、シンクタンクRANDコーポレーションがウォーゲームで北朝鮮との開戦シナリオを検討し驚くべき結果がでました。しかしホテル代もなく、自国機材で会場移動もできない国がここまでこけおどしで各国をさんざん振り回したことの落とし前はどうつけたらよいと皆さんは思いますか。


A New Study Says a War with North Korea Could Be Hell (And Start a U.S.-China War) 北朝鮮との開戦になればこんな惨状になるとの新規検討内容が出た(米中開戦にもつながる可能性)


June 8, 2018


朝鮮と開戦になれば米軍は数々の問題に直面することがRANDコーポレーション実施の一連のウォーゲームで判明した。
北朝鮮へ進軍し金正恩の核兵器撲滅あるいはソウルを狙う砲兵陣地を制圧しようとすれば米軍韓国軍兵力を薄く延ばすだけではなく、中国の軍事介入のきっかけになりかねない。
今回のRAND研究では米軍特に発注元米陸軍の実戦能力に中心をおいた。北朝鮮の核兵器による脅威、北朝鮮通常戦力の実効力、北朝鮮外交による課題、さらに北朝鮮核兵器の制圧がどうなるかを北朝鮮体制崩壊、さらに国内が内戦状態になる場合を想定して検討している。
「北朝鮮各地に点在する核兵器を捜索制圧する兵力が足りませんしその他にも戦後処理あるいは政権崩壊シナリオでの各種ミッションでも人員不足です。さらに完全に任務を行うためには迅速に北朝鮮へ進軍する必要がありますが、これを行う能力がありません」とRAND研究員マイケル・マザーがNational Interestに語っている。
このうち核兵器について同報告では核兵器保有量が大きいため北朝鮮侵攻制圧が事実上不可能と指摘する。「5年から8年で北朝鮮がさらに核兵器製造に向かえば攻撃を受けても十分な核兵器を温存し、北朝鮮侵攻は画期的な核兵器対策手段が生まれない限り高くつく選択肢になる」とし、米政策の方向如何にかかわらず日本、韓国は北朝鮮による核報復攻撃の可能性により政策の幅を狭められる。
北朝鮮砲兵隊(1万門もの火砲があると伝えられる)でソウルが火の海になるとの脅威についてRANDでは空爆ないし砲撃により火砲をノックダウンする、または限定的国境線内侵攻作戦でケソン高地を制圧し火砲を破壊する作戦を検討した。空爆・砲撃攻撃では重度に防御された火砲の制圧に数週間かかる一方で地上侵攻は北朝鮮の核兵器投入のきっかけになりかねないとわかった。
大きな問題は限定的にせよ地上侵攻するには大規模兵力が必要なことで韓国陸軍二個軍団を想定している。また韓国がこの兵力を維持できるかも疑問だ。「今回のウォーゲームでは開戦後一週間で一個軍団が殲滅される犠牲が発生してやっと一か所から侵攻に成功という異例の結果になり、死傷者数万名ということになった」とRANDは記している。「これだけの死傷者規模となると韓国軍のその後の作戦に支障が出るはずで、南北統一やWMD拠点制圧が困難になる」
今回の結論はシナリオから得られたもので重装備防衛の狭い地点を攻撃しながら北朝鮮は化学兵器で防戦しており、ウォーゲーム関係者は「韓国軍は消耗してやっとケソン付近に侵攻するのがやっと」だと分かったのだとマザーは言う。「それでもROK(韓国)にはまだ余力が残りますが、防衛線制圧には足りません。大規模作戦の視点から見ればこれは高く評価できない内容です。個人的な感想ですが、ROKは平壌進軍の前に立ち往生してしまうと思います」
北朝鮮核兵器の制圧に関してはRANDは数種類のウォーゲームを実施しており、前提は金正恩死亡後に米軍が北朝鮮各地に進出し核兵器を確保するが、北朝鮮内部は内戦状態になっているというもの。だが毎回のゲームからわかったのは北朝鮮指導部の後継者は政治権力基盤として核兵器の掌握に動くはずで同時に核兵器を秘匿しようとすることだ。空軍力だけで全部を破壊しきれないのはイラクでのスカッド狩りの事例からもあきらかだ。
「米国・ROK両国が核兵器を捜索できなくするため北朝鮮は簡単に核や核物質を隠すことができるというのは驚き」とRANDでゲーミングを担当するステイシー・ペティジョンがNational Interestに感想を述べている。
金正恩体制を転覆すれば事が終わると信じる向きには今回のRAND報告書を見てもらいた。「毎回のウォーゲームで少なくとも一回は北朝鮮が核兵器を投入してきた。米国にとって北朝鮮核兵器制圧は限定ミッションとの観があるが、北朝鮮内勢力の役をしたウォーゲーム関係者は米国の介入は南北統一の前兆ととらえる傾向があり、北朝鮮国体への脅威と見ることがわかった。このことから体制保持の最終保証手段樽核兵器を使わないと敗戦するとの見方につながった」
さらに中国の問題が加わる。RANDウォーゲームでは中国軍が北朝鮮国内に侵攻し中国北朝鮮国境地帯を制圧したほか、北部の核関連施設も確保している。さらにケソン高地の砲兵部隊制圧で米韓地上部隊が展開すると中国国境への数少ない侵攻経路にもつながる。1950年に同じ状況が中国を刺激し中国軍が大量展開したが、同じ状況の再発可能性がある。
ただし、マザーは実際の展開は状況により大きく変わると釘をさす。「今回のゲームでの中国の動きから見えてきたのは中国政府は米朝対決からなるべく距離を置いておきたいと考えることです。中国としても影響力を増大させながら状況を追い求めていくはずなので重要な段階で自国の立場を弱める選択はしないはず。そこでもし北朝鮮がソウルを砲撃した場合にケソン高地制圧作戦の実施に移っても中国がおじけつくことはないはずです。ではこちらから先制攻撃し北朝鮮が反撃を迫られる状況の場合はどうなるでしょうか」■
Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook.

Image: Flickr

2016年8月4日木曜日

★★RANDが予測する米中戦の壊滅的結果

ここにきて米中開戦想定の記事が米側に増えています。中国国内ではなぜかKFCが襲撃を受けたりと民衆はアメリカへの反発を短絡的に示す一方、解放軍は動きを示していません。中国軍は共産党の機関であり、一部が言うような軍の暴走は考えにくいです。党の指示で機能する組織です。その共産党は今後100年の統治を想定しているはずで、今回の法廷決定を無視するのも大計に立った計画をしているからでしょう。西側が短絡的な動きを示せば北京の思う壺では。


New Report Details Why a War between China and America Would be Catastrophic



August 1, 2016


  1. 米中両国が開戦すれば両国に相当の被害が発生するが、今開戦となれば中国の損失の方が大きい。ただし中国が進める接近阻止領域拒否(A2/AD)整備で、中国有利が2025年に生まれる。それでも中国は米側より相当大きな被害を被るとRANDコーポレーションの最新研究成果が述べている。勝者は誰なのかあいまいになるのは軍事衝突は終わりなき人命損失へ悪化していくからだ。
  2. 「米側の軍事優位性が減少する中で作戦案が実現するか米国にも自信がなくなる」とこのたび出た報告書(David C. Gompert, Astrid Cevallos and Cristina L. Garafola)にある。「中国の交戦能力、特にA2ADが強化されると米国は主導権を握れず、中国防衛網の突破が困難になり、決定的な勝利は得られなくなる」
  3. 中国と開戦となれば戦場は海空が舞台となりそうだが、サイバーおよび宇宙装備が大きな意味を有すると報告書は述べる。RANDは通常戦のままと予測している。「両国とも部隊を広範囲に配備し相互に捕捉追跡し攻撃する能力が高いので西太平洋全体が戦闘地帯になり重大な経済的影響が発生する。」「核兵器使用は考えにくい。損害が極度に多い通常戦でも両陣営ともに核兵器の先制使用による放射能のリスクを恐れるはずだ」
  4. RANDは米国が中国本土を重点的に攻撃する前提としたが、研究員は中国の米本土攻撃手段はサイバーだけを想定した。「中国がサイバー除き米本土を攻撃できるとは考えにくい。中国の通常兵器能力に制約がある」とし「対照的に米国は中国国内の軍事施設を広範囲に攻撃するだろう」
  5. 米中戦は短期集中戦から長期にわたる消耗戦まで多様な形で勃発する可能性がある。双方が先制攻撃の誘惑にかられるはずだ。「センサー技術、兵器誘導技術、デジタルネットワーク他の情報技術で敵軍を捕捉できるので米中が相互に深刻な被害を与えられる」と報告書にある。「このため先制攻撃の手段と動機が生まれる。半面、開戦で双方とも深刻な損害を受ける恐れがあり、軍事的損失や経済費用が発生しても両国とも継戦能力が相当ありともに一方的な主導権は握れないだろう」
  6. 今日の時点なら短期戦も米側は相当の損害を受けるが、中国の損害は壊滅的規模になる。「米中いずれかの指導部が軍に猛攻撃を命じれば、きわめて大規模な戦闘となる」とし、「2015年なら米側の水上艦艇と航空機の損害は空母大破、空軍基地各地の能力喪失と甚大だが、中国の損失は本土でのA2AD体制の破壊含みはるかに大規模になる。数日内に開戦当初の低い米側損失も戦闘継続で拡大するのがわかるはずだ」
  7. 2025年までに中国軍事力はさらに拡大し、多大な損失は甘受できなくなる。「2025年までに米側損失規模が拡大するのは中国のA2ADの拡充によるところが大きい。中国側の損失は一定規模に収まるが、それでも米側損害を上回る。戦闘が長引けばどちらが勝利したか微妙になる」
  8. 長期戦なら損害ははるかに拡大し、両国の残存部隊は悲惨な形になるだろう。「2015年時点でも長期かつ深刻な戦闘が続けば、中国有利と予想される。2025年になると初期戦闘の不明瞭な成果から両陣営ともに大損害が発生することを知りながら戦闘を継続するだろう。そうなると米軍が勝利を収める可能性は現在より低くなるとはいえ、そのまま中国が勝利を収めることには結びつかない」
  9. 上記の場合では人命損失と経済被害が相当発生し、両陣営とも軍備を消耗するかもしれず、ともにその他国の脅威に無防備となる。「米中両軍が目標捕捉と攻撃を行う能力は前例がない規模なので、数か月で装備を使い果たす」とし、「当然両陣営とも補充しながら部隊立て直しを国力を賭けて競うだろうが、要素が多すぎ結果予測は困難だ。とはいえ費用だけ確実に上昇する」
  10. RANDは開戦リスクを下げるため以下提言をしている。


  • 米中の政治指導層トップは即時攻撃による相手陣営破壊以外の軍事選択肢を確保すべきだ
  • 米指導層は中国側と意思疎通手段を確保し、紛争激化の前に事態を鎮静させるべきだ。
  • 米国は中国のA2ADへの攻撃が自動的な実施にならないよう戦闘激化の予防策を作っておくべきだ。「フェイルセーフ」の仕組みを整備すれば軍事行動の前に政治面の承認が必須となる
  • 中国のA2AD効果を減らすため、米国は残存性の高い装備(例 潜水艦)やA2AD対抗装備(例 ミサイル)の開発に注力すべき
  • 米国は主要同盟国と緊急対策案を練るべきだ。特に日本が念頭
  • 戦闘に勝利しても破滅的な結果になると中国に認識させる必要が米国にある
  • 大規模戦を想定し継戦能力増強の必要が米国にある。
  • 開戦後に中国が重要資源や技術を入手不可能にする方策が米国指導層に必要
  • 中国から重要製品の輸入が途絶しても影響緩和する方策が米国に必要
  • A2ADに対抗し米陸軍は陸上配備装備を拡充すべきで、東アジアの米側各国(特に日本)へ防衛力増強、相互作戦能力向上を求め、米中軍事組織間の相互理解、協力へも支援を求め誤解や誤算による危険事態発生を防止する


  1. 戦争が米中双方の利益にならないのは自明の理とは言え、一方の防衛力整備が他方を不安にさせる「トゥキデテスの罠」が発生する。高名なハーヴァードの政治学者の権威グラハム・アリソンが著している。トゥキデテスの罠ではごく普通に行うことが大規模交戦のきっかけになる。台頭する側が既存支配に挑戦すれば、通常なら制御できる危機が雪崩のような反応を呼び、双方が望みもしなかった結果が発生する。アリソンは「戦争は不可避」とアトランティック誌で言い切っている。■
Dave Majumdar is the defense editor of The National Interest. You can follow him on Twitter @DaveMajumdar.

2015年2月13日金曜日

★RAND 「中国軍の深刻な弱点」を指摘する報告書を発表



敵にわざわざ克服するべき弱点を教える。いかにも大胆なアメリカ的発想ですが、裏には中国では指摘した弱点の克服はまず不可能だろうと見ているのでしょう。その根本には非民主体制の専制国家は勝利をおさめることはできないとの強い信念があるのではないでしょうか。報告書を見て発奮した中国が改革に乗り出せば逆にアメリカに有利になるとの読みもあるのでしょう。RAND報告書はぜひ見てみたいものですね。

RAND Spots China’s ‘Potentially Serious’ Weak Spots

By COLIN CLARK on February 11, 2015 at 11:58 AM

「PLA(人民解放軍)の弱点を発見した」とRANDコーポレーション簡潔ながら強力な主張をしている。議会が設置した米中経済安全保障検討委委員会U.S.-China Economic and Security Review Commission.の依頼で中国の軍事力を分析した。報告書は中国の弱点を簡潔に述べている。
  1. 「まず制度面だ。PLAは旧態依然の指揮命令系統の弊害に直面しており、人員の資質、専門的知見、組織内汚職でも同様。二番目は戦闘能力だ。兵站面での弱点、戦略空輸能力の不足、特殊任務用機材の不足、艦隊防空体制の不備、さらに対潜戦闘でも能力不足がある。」
  2. これだけ弱点があるとPLAは中国首脳部が想定する重要任務の実施がおぼつかない。例えば台湾危機、領海確保、海上交通路防衛、戦闘以外の軍事展開ミッションがある。「このためPLAは尖閣諸島の領有を宣言できず、哨戒活動もできない。スプラトリー諸島他各地の領土問題箇所でも共通」
  3. 人民解放軍の特筆すべき弱点として専門家の意見が共通する分野は米国の優位点となる。つまり、中国の指揮命令系統とその機能であり、人材の教育訓練とRAND報告書は指摘。中国はそれでも各軍合同運用を試みており指揮命令の一元化、装備と人員の統合を進めている。
  4. RAND評価ではPLAは「宇宙空間、電磁空間でも中国の権益を守り切れない可能性がある」と指摘している。ただし衛星攻撃実験や米国スパイ衛星へのレーザー照射で中国が注目を集める中で皮肉に聞こえる。
  5. 中国の軍事力外交力の増大に懸念を感じる向きにはさらに朗報がある。調達で中国は弱点を抱える。
  6. 「国防産業界では汚職の蔓延、競争状態の欠如、過度の独占状態、開発遅延・予算超過、品質管理、官僚主義での分断化、時代遅れの調達制度、海外技術知識へのアクセス不足が主な問題だ」と報告書はまとめる。
  7. 一方で注目すべき進展を見せているのも事実で、中国は湾岸戦争後に「多用途水上艦艇、高性能潜水艦、最新鋭航空機、通常型弾頭巡航ミサイル・弾道ミサイルを実用化しており、後者では対艦弾道ミサイル(ASBM )で米海軍の空母を狙っている」
  8. 報告書の出典は機密情報ではないが作成者は膨大な量の中国文献情報を調査している他、米政府公文書も参照している。
  9. 中国側も同報告書に目を通し、腐敗した独裁政治体制は弱点克服に必死になるはずである。報告書は一読の価値が十分ある。■