敵にわざわざ克服するべき弱点を教える。いかにも大胆なアメリカ的発想ですが、裏には中国では指摘した弱点の克服はまず不可能だろうと見ているのでしょう。その根本には非民主体制の専制国家は勝利をおさめることはできないとの強い信念があるのではないでしょうか。報告書を見て発奮した中国が改革に乗り出せば逆にアメリカに有利になるとの読みもあるのでしょう。RAND報告書はぜひ見てみたいものですね。
RAND Spots China’s ‘Potentially Serious’ Weak Spots
「PLA(人民解放軍)の弱点を発見した」とRANDコーポレーション簡潔ながら強力な主張をしている。議会が設置した米中経済安全保障検討委委員会U.S.-China Economic and Security Review Commission.の依頼で中国の軍事力を分析した。報告書は中国の弱点を簡潔に述べている。
- 「まず制度面だ。PLAは旧態依然の指揮命令系統の弊害に直面しており、人員の資質、専門的知見、組織内汚職でも同様。二番目は戦闘能力だ。兵站面での弱点、戦略空輸能力の不足、特殊任務用機材の不足、艦隊防空体制の不備、さらに対潜戦闘でも能力不足がある。」
- これだけ弱点があるとPLAは中国首脳部が想定する重要任務の実施がおぼつかない。例えば台湾危機、領海確保、海上交通路防衛、戦闘以外の軍事展開ミッションがある。「このためPLAは尖閣諸島の領有を宣言できず、哨戒活動もできない。スプラトリー諸島他各地の領土問題箇所でも共通」
- 人民解放軍の特筆すべき弱点として専門家の意見が共通する分野は米国の優位点となる。つまり、中国の指揮命令系統とその機能であり、人材の教育訓練とRAND報告書は指摘。中国はそれでも各軍合同運用を試みており指揮命令の一元化、装備と人員の統合を進めている。
- RAND評価ではPLAは「宇宙空間、電磁空間でも中国の権益を守り切れない可能性がある」と指摘している。ただし衛星攻撃実験や米国スパイ衛星へのレーザー照射で中国が注目を集める中で皮肉に聞こえる。
- 中国の軍事力外交力の増大に懸念を感じる向きにはさらに朗報がある。調達で中国は弱点を抱える。
- 「国防産業界では汚職の蔓延、競争状態の欠如、過度の独占状態、開発遅延・予算超過、品質管理、官僚主義での分断化、時代遅れの調達制度、海外技術知識へのアクセス不足が主な問題だ」と報告書はまとめる。
- 一方で注目すべき進展を見せているのも事実で、中国は湾岸戦争後に「多用途水上艦艇、高性能潜水艦、最新鋭航空機、通常型弾頭巡航ミサイル・弾道ミサイルを実用化しており、後者では対艦弾道ミサイル(ASBM )で米海軍の空母を狙っている」
- 報告書の出典は機密情報ではないが作成者は膨大な量の中国文献情報を調査している他、米政府公文書も参照している。
- 中国側も同報告書に目を通し、腐敗した独裁政治体制は弱点克服に必死になるはずである。報告書は一読の価値が十分ある。■
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