なるほど海中も空中も電子電磁空間と考えれば同じという発想ですね。潜水艦乗りは単独行動を好むはずなので協調作戦が可能になるまでに相当の価値観の変更が必要でしょうね。無人潜水機を運用、回収するとすればDARPAが検討しているUAVの空中母艦と同じ構想を海中で実現することになりますね。
Transparent Sea: The Unstealthy Future Of Submarines
潜水艦探知で新技術が出てきた。低周波ソナー、LED、ビッグデータ処理で探知は容易になる。だが同時に潜水艦間の相互通信も容易になる。
- 全く新しい戦術が生まれると海軍作戦部長の上級顧問をつとめ潜水艦勤務も長いブライアン・クラークは指摘する。複数艦のネットワークで行動するのだという。有人潜水艦は敵国の海岸線から200カイリ地点で脅威を気にせず行動し、無人のミニ潜水艦や無人機が接近阻止領域拒否の防衛体制を突破できる。
- ネットワーク化した潜水艦戦隊ではアメリカのコンピュータ技術の優位性が活用でき、通信技術、自律運行の技術も応用できる。クラークの新戦術が米国の空中戦闘構想における無人機、スタンドオフ兵器、ネットワークの応用と同じく聞こえても偶然ではない。
- 「センサー類の改良とデータ処理能力の向上で海中戦は空の戦闘と似てきます」とクラークは主張。「探知はより容易になります。潜水艦と外部の連絡を水平線の彼方から探知できます。音声は地球の湾曲に沿って伝わる」ので無線信号とは異なるのだという。
- ビッグデータも新しい探知方法になる。各国海軍は通常はアクティブ・ソナーで1,000ヘルツ以上の高周波を用いるが、低周波で情報量はもっと多くなる。低周波は長波長となるが精度が落ちるもののコンピュータ処理で情報は明確になる。ちょうど空の世界で低周波レーダーがコンピュータの力でステルス機探知が可能になったのと同じだ。
- ビッグデータは別の魅力ある技術も可能にする。ソナーのかわりにレーザーやLEDの点滅光を使って潜水艦を探知する。アクティブ探知のかわりにパッシブな監視に専念し、背景雑音から海中生物の立てる音と海中を進む潜水艦の立てる波を区別する間接的な探知方法だが、空の世界でも同様の例がある。「パッシブ・レーダー」でステルス機を探知するには背景の無線発信でわずかな乱れを見つけるのだ。これはすでに当たり前の技術になっている。
- 潜水艦探知技術は「ステルス機を探知する方法と類似している」とクラークは言う。空中、海中ともに「ステルスの優位は消える」。
- だからといってF-35戦闘機、潜水艦ともに重要性を失うわけではない。ステルス性能がない機体(艦体)ならもっと悪い結果しか待っていない。ただしステルスは戦闘地帯に進入する際に代償となり、探知されずに侵入する保証はないという。
- そのためスタンドオフとステルスの合体が必要とクラークは主張。有人ステルス潜水艦を一定の距離外に配備し、探知されても退避可能な場所を選ぶ、一方で無人ステルス艇を消耗品と覚悟の上で送り出し、接近戦を行わせる。水上艦から大型無人機や無人潜水機unmanned underwater vehicles (UUVs)の運用は可能だ。
- 運用で連携をとるため水中通信ネットワークが必要になる。「水中センサーの性能向上に役立つ技術が水中通信でも利用できる」とクラークは言う。高周波音波、レーザー、LEDのすべてが水中でも広帯域のデータリンクを実現する。ただし空中の無線よりは有効範囲がせばまる。コンピュータ処理でノイズを取り除いて受信できる。海中にケーブルや中継装置が敷設してあればネットワークは陸上基地まで延長できる。
- 潜水艦乗りにはカルチャーショックとなるだろう。潜水艦では長期間誰とも話さず、本国の司令部とも交信しないのが通例だ。水上艦部隊と同じ集団運用・微調整のコンセプトが海中にも適用されるだろうか。海中ネットワークの実現は容易ではない。クラークは海軍上層部に働きかけてきたが、今度こそ真剣に検討されそうだ。■
コメント
コメントを投稿
コメントをどうぞ。