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2019年11月18日月曜日

そうりゅう級最終型が搭載したリチウムイオンバッテリーに注目が集まる


Japan’s Got a Stealthy New Submarine (With Some Very Interesting 'Batteries')

by David Axe 

2019年11月6日、日本で進水した潜水艦は従来型と異なるバッテリーを搭載し、潜航時の行動半径が拡大する。
川崎重工業がそうりゅう級ディーゼル電気推進攻撃型潜水艦とうりゅうを神戸で進水させた。全長275フィートの同艦はそうりゅう級12隻の最終艦であるとともに、姉妹艦おうりゅうに続きリチウムイオンパッテリーを搭載した。各艦はディーゼル発電機も補助動力用に備える。
そうりゅう級の潜航時最大速力は20ノット、浮上時は12ノットとされる。艦首533ミリ発射管6門から国産89式大型魚雷の他、ハープーン対艦ミサイルも発射できる。
とうりゅうは海上公試を経て海上自衛隊に早ければ2021年3月に編入される。日本は潜水艦19隻を運用中で、今後は22隻まで増強し中国の潜水艦増強に対抗する。
とうりゅうが搭載する新型バッテリーで哨戒期間が長くなるが、リスクもある。「リチウムイオンバッテリーというとスマートフォン、ノートパソコン他消費者向け製品でおなじみです」とH.I.サットンがフォーブスに寄稿している。
出力密度で従来型バッテリーを凌ぎ、小型化が可能となり、形状の自由度が高いため艦内におさまる。それでも潜水艦での普及は迅速とは言い難い。
それには理由がある。サムソンがギャラクシーノート7で苦しんだようにリチウムイオンバッテリーは発火しやすい。バッテリー発火が潜水艦で発生すれば直ちに深刻な事態となる。直近ではロシアのエリート潜水艦乗組員14名がバッテリー区画の火災で死亡している。
ただしこの事故は従来型で安全度が高いと言われる鉛バッテリーの場合だ。日本はリチウムイオンバッテリーの安全度を担保して洋上に出動させる方策を見つけたにちがいない。
潜水艦用の新型バッテリー開発では日本以外に、韓国も2020年代初頭の就役をめざす新型潜水艦にリチウムイオンバッテリー搭載を企画している。KSS-IIIバッチIとして3隻の建造が予定され、初号艦は2018年9月に進水している。
韓国の新型潜水艦は魚雷の他、垂直発射管を備え、対地攻撃用巡航ミサイルを発射する。同艦の潜航時最大速力は20ノットになる。
韓国は民生部門に続き潜水艦建造でもリチウムイオンの利点を活かしたいとする。だがリチウムイオンバッテリー技術があっても日本はオーストラリア向け潜水艦建造案件を受注できなず、オーストラリアはフランス案を採択した。
台湾は日本からの技術援助を期待している。同国は1980年代の旧型艦の更新にむけ苦しんでいる。台湾は潜水艦戦での遅れを自覚しており、米国、日本他の技術支援が必要と痛感している。
台湾政府が予算全額を計上すれば、海外技術を応用した潜水艦建造が始まり、台湾海軍の新世代潜水艦1号艦は早ければ2026年に就役する。
日本は次世代潜水艦用バッテリー開発に取り組んでおり、さらに技術面で進展が生まれそうだ。リチウムイオンバッテリーの改良により、ディーゼル発電機が不要となる潜水艦を日本が建造するようだ。
日本が進める次世代艦29SSはリチウムイオンバッテリーのみを搭載するとサットンは報じている。■

David Axe serves as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad.

2018年10月12日金曜日

★初のリチウムイオン電池搭載そうりゅう級11号艦おうりゅうが進水!

Japan launches first Soryu-class submarine equipped with lithium-ion batteries 

そうりゅう級のリチウムイオン電池搭載一号艦が進水

Gabriel Dominguez, London - IHS Jane's Defence Weekly
08 October 2018
  
建造主三菱重工が海上自衛隊向けおおりゅうを10月4日進水させた。同艦はリチウムイオン電池を搭載。Source: JMSDF


菱重工業(MHI)が海上自衛隊向けそうりゅう級ディーゼル電気推進攻撃型潜水艦(SSK)ではじめてのリチウムイオン電池搭載艦を進水させた。
同艦はおうりゅうと命名され艦番号をSS511とし10月4日、MHIの神戸造船所で進水式を迎えた。
同艦は同型艦11隻目かつMHI建造では6号艦となる。残り5隻は川崎重工業が建造している。おうりゅうは2015年3月に起工され、海上自衛隊へ2020年に編入される予定だ。
バッテリーメーカーGSユアサ(本社京都市)が2017年2月に日本は従来型鉛電池より大容量のリチウムイオン電池を初めて搭載したSSKを導入すると2017年2月に発表していた。また新型電池はそうりゅう級の最終建造艦SS511、SS512に搭載されると同社は述べていた。
Jane's Fighting Shipsによればそうりゅう級は全長84メートル、潜航時排水量4,100トン。
以前建造された同級艦は川崎重工製12V 25/25ディーゼル発電機2基、川崎コックムスV4-275Rスターリング大気非依存推進(AIP)エンジン4基が搭載され、鉛電池で電力を貯蔵していた。各艦の最大速力は潜航時20ノット、浮上時12ノットだ。
533ミリ魚雷発射管6門で日本が開発した89式大型魚雷を発射する。またUGM-84Cハープーン中距離対艦ミサイルも運用する。また水中対抗手段発射管2門も搭載している。■

いよいよそうりゅう級も最終建造段階に入ったのですね。そこで次世代につながる新型二次電池が導入されるわけですがどれだけの性能の相違を見せてくれるのか興味深いものですが、機密性が高い潜水艦だけにわれわれがその詳細を知ることはなさそうですね。

2017年10月31日火曜日

★★米海軍が通常型潜水艦建造に向かう可能性



この記事では通常型潜水艦の優位性がいまいち明確にとらえられていないと思うのですが、まず原子力潜水艦ありきの米海軍が考え方を変えたとしても通常型潜水艦建造の技術基盤がない米国が日本に協力を持ち掛けてくるはずなので潜水艦事業に大きな変化をもたらすのは必至でしょう。
そうりゅう級(あるいは後継艦)を米海軍が採用すれば日本の防衛産業にとっては画期的な事態となりますね。ただしこれは東アジアでの安全保障を見直したいという米国の一部の流れとは逆に日本との協力関係の強化になってしまうので、日本には好都合と言えるのですが、米国本流のの考え方にはなじまないでしょう。日本の地理的優位性を精一杯活用すべきでしょうね。

 


Is It Time for the U.S. Navy to Start Building Non-Nuclear Stealth Submarines?

米海軍は通常型潜水艦建造に踏み切るべき時に来たのか
October 29, 2017

  1. 米議会とトランプ政権がウォールストリートジャーナルのロシア海軍潜水艦の記事を読めば、米国も真剣に通常型潜水艦調達を検討すべきと言い出すのではないか。
  2. ジュリアン・E・バーンズ記者の記事ではロシアの通常型潜水艦とNATOの間で追跡劇が3か月続いたと暴露している。バーンズは「ロシアの攻撃型潜水艦クラスノダールKrasnodar,は5月末にリビア沿岸を離れ地中海を東に向かい、その後潜航し、シリアに巡航ミサイル数発を発射した」と伝えている。
  3. バーンズ記者はNATO部隊が同艦を一貫して追跡していたと明らかにした。まずオランダが北海で同艦を捕捉し英仏海峡まで追尾した。ジブラルタルからは米巡洋艦がP-8の支援で地中海で追尾した。
  4. モスクワは同艦がリビアに向かい演習参加すると発表していた。実際には到着する前に浮上し5月末にシリアに向け巡航ミサイルを発射している。問題は米空母打撃群が6月はじめに同じ地域に向かっており、対ISIS作戦の実施を始めようとしていたことだ。このためロシア潜水艦の位置確認は特に重要になった。米関係者は「潜水艦一隻でも空母のような主力艦に脅威になる」ためと説明している。
  5. バーンズは詳細に触れており、米海軍や同盟国が潜水艦を追尾する方法各種や潜水艦が追尾から逃れる戦術も書いている。ただし記事からは西側海軍部隊がロシア潜水艦追尾にどこまで成功したか不明だ。米海軍関係者は同艦の二回目ミサイル斉射の様子はフランス海軍フリゲートが把握し、米海軍も空中監視していたと述べている。NATOがこのロシア潜水艦の追尾に苦労したのなら、中国やロシアが米潜水艦の追尾はできないことは明らかだ。
  6. 記事から明らかなのは米国や同盟国は相当の努力を投入してクラスノダールを追尾したことだ。これは相当困難な仕事だ。米国は世界最高の対潜戦能力を有すると自負しており、同艦追尾に必要な前方配備基地や同盟諸国を有していることが重要だ。もし米およびNATOが潜水艦追尾可能ならロシアや中国では西側潜水艦の追尾は不可能となるはずだ。
  7. クラスノダールがとくに高性能通常型潜水艦でない点が要注意である。同艦はプロジェクト636.3ヴァルシャヴャンカVarshavyanka級潜水艦だ。ロシアは世界で最も静粛な潜水艦と自慢する636.3型はキロ級を改良し低価格が特徴だ。2009年にはヴィエトナムに同型艦6隻をわずか20億ドルで供給する契約に調印している。(価格には乗員訓練および予備部品を含む)対照的に米国は原子力潜水艦一隻で27億ドルを支払う。通常型で最大かつ最高性能と言われる日本のそうりゅう級は単価5億ドル超といわれる。つまり原子力潜水艦一隻の単価でディーゼル電気推進型潜水艦が5隻ないし7隻建造できる。
  8. 355隻艦隊を整備しようとする米国 には通常型潜水艦調達を真剣に検討し原子力潜水艦の補完機能を実現する必要がある。これは大きな変化となる。米海軍の最後の通常型潜水艦建造は1950年代で、1990年以降は運用していない。ここにきてディーゼル電気推進式潜水艦建造構想に勢いがついてきた。今年初めには議会の求めに応じ2030年代の海軍艦船構成を検討したMITREコーポレーションが通常型潜水艦の配備を求めた。
  9. 米海軍側がこの要望をはねつけ、通常型潜水艦では海中環境、補給面、性能面で制約があると反論したのは自然な反応といえる。だがこれに対しいずれも制約条件ではないとの主張が出てきた。ジェイムズ・ホームズJames Holmesが海中環境は潜水艦を米国配備した際にのみ制約となると主張。日本への前方配備なら米本土配備の原子力潜水艦に対して有利だと述べている。同様にホームズの指摘では補給面でも日本を利用すれば克服可能という。ディーゼル電気推進式潜水艦だけでなく海軍の他の艦艇にもメリットが生まれるという。
  10. 性能面で高性能ディーゼル電気推進式潜水艦は特に脆弱なわけではない。ホームズは日本のそうりゅう級は二週間に一度浮上するだけでいいという。原子力潜水艦並みの潜航期間は無理だが、ヴァージニア級攻撃型原子力潜水艦一隻の値段でそうりゅう級5隻を導入できると主張。単艦の性能で原子力潜水艦にかなわなくても数の威力でカバーできるとした。
  11. たしかに大洋なら原子力潜水艦の性能が活用でき、長期間展開能力、潜航深度で他の追随を許さない。一方で浅深度海域や閉鎖系海域のペルシア湾や南シナ海では大気非依存型推進(AIP)搭載の潜水艦が望ましい選択になる。この事から議会、トランプ政権に対し原子力潜水艦のみの調達方針を再考すべきと求めたい。■
Zachary Keck (@ZacharyKeck) is a former managing editor of the National Interest.
Image: A Russian made Iranian navy Kilo class submarine takes part in Iranian naval exercises in the Persian Gulf November 2, 2000. Iranian navy maneuvers on both sides of the strategic strait of Hormuz will continue until November 6, 2000.

2016年10月6日木曜日

★そうりゅう級潜水艦がオーストラリアに採用されなかったのは航続距離の不足が理由なのか



なるほどオーストラリアの求めた長距離性能が現行型では不足して、居住性でもケチを付けられていたわけですか。でもそんなことはオーストラリア版改修設計で対応できていたはずなので、選外となったのは別の理由があるのでしょうね。

The National Interest

Why Japan’s Soryu-Class Submarines Are So Good

October 1, 2016

  1. 第2次大戦で日本が得た教訓はふたつ。そのうち自ら開戦すべきでないという教訓はしっかりと生きているようだ。もうひとつが戦時中の連合国による海空の封鎖体制で日本は飢餓一歩手前まで追いやられたことだ。資源に乏しく耕作地も限られた日本にとって次の戦争を生き残り、海空の交通路を確保することが必須であり、そのため日本は第一級の海空部隊を保持する必要がある。
  2. 戦後の日本潜水艦部隊は世界有数の実力を備えるに至っている。海上自衛隊の潜水艦部隊は22隻までの潜水艦を保有を許され、隻数も世界有数の規模だ。すべて国産で三菱重工業と川崎重工業が神戸で建造している。
  3. 日本の潜水艦は反復建造が特徴で新型潜水艦がほぼ20年サイクルで現れるまでは既存型の建造を続ける。現在のそうりゅう級はおやしお級のあとに出現し、二型式だけで潜水艦部隊を構成する。そうりゅう級は自動化を高めたのが特徴で、乗員数も幹部9名科員56名と以前のはるしお級から10名の削減が可能となった。
  4. そうりゅう級は潜行時排水量4,200トンで9隻が在籍中で戦後日本最大の潜水艦だ。全長275フィートで全幅はほぼ28フィードである。航続距離は6,100カイリで最大深度は2,132フィートと伝えられる。そうりゅう級の特徴にX型尾部があり、一説では海底近くでの操艦性を高める効果があるという。このため浅海域で運動が優秀となり、日本への侵攻ルートに想定される主要海峡を意識しているのだろう。
  5. 各艦には電子光学式マストとZPS-6F水上監視・低高度対空レーダーを備える。ただし潜水艦として主センサーはソナーでヒューズ・沖電機によるZQQ-7ソナーは艦首のソナーアレイと、艦側部につけたアレイ四本活用する。また曳航式ソナーアレイも装備し艦尾方向の探知に活用する。
  6. 533ミリ魚雷発射管6門を艦首につけ、武装は89式大型ホーミング魚雷で射程27カイリあり、実用上は2,952フィート深度で発射できる。魚雷発射管は米国との強い関係で共通化しており、そうりゅうはUGM-84潜水艦発射方式のハープーンミサイルも運用できることになる。Combat Ships of the World では各艦は兵装30本の搭載可能と未確認のまま掲載しており、旧型の20本より多くなっている。
  7. また自艦防御装備も充実し、ZLR-3-6電子対抗装置および3インチの水中対抗装置発射管二本で音響装置を放出する。パッシブ防御として艦体は音響タイルで覆い、艦内騒音の漏出が減るとともに敵のアクティブ・ソナーにも効果を発揮する。
  8. 推進方式でも注目を集める。浮上時13ノット、潜行時20ノットを出す。動力には川崎重工製12V 25Sディーゼルエンジン12基と東芝製タンデム配置電動モーター一式を利用する。静粛潜行にはスターリングV4-275R Mk大気非依存推進システムをスウェーデンのライセンスで搭載し、最大2ノットでの潜行中移動が可能だ。最終号艦ではリチウムイオン電池の搭載が噂されている。
  9. ただし、そうりゅう級も完璧とは言い難い。一つの問題がオーストラリア潜水艦調達競合で明らかになった。作戦航続距離が比較的短いことだ。6,100カイリという性能はもともとそうりゅう級が日本近海の防衛任務の想定であったためだ。
  10. オーストラリア向けそうりゅうはオーストラリアから台湾まで3,788マイルを移動する想定のため途中一回は燃料補給が必要となる。おそらく2回になっていただろう。オーストラリア向け商戦では乗員の快適度ならびに航続距離を延長するため全長を6メートルないし8メートル伸ばすことになっていた。ただしオーストラリア向け仕様改修は日本に逆効果だっただろう。
  11. 長距離ステルス性能、センサー性能、最新型魚雷やミサイルを組み合わせるとそうりゅう級は高性能ハンターキラーになる。ただし特化したハンターキラーでオーストラリアにとってはいささか取扱に困る艦となっていただろう。
  12. 後継艦の建造が今後数十年に渡り始まると見られるが、日本は無人水中潜行機の可能性を模索しており、水中通信や水中無線電力送電技術も検討いているのだ。そうりゅう級の後継艦がどんな形になるのか注目したい。■

Kyle Mizokami is a defense and national security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and the Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.
Image: Japan Maritime Self Defense Force submarine Hakuryu arrives at Joint Base Pearl Harbor-Hickam for a scheduled port visit. Wikimedia Commons/U.S. Navy



2015年10月2日金曜日

防衛省>そうりゅう級潜水艦のオーストラリア国内建造を認める提案書を作成中


Japan prepares 'Australia-build' programme for Future Submarines

Jon Grevatt, Bangkok - IHS Jane's Defence Weekly
30 September 2015

防衛省(MoD)はオーストラリア政府向け潜水艦建造案を準備中で、オーストラリア海軍(RAN)から選定されればそうりゅう級潜水艦のオーストラリア国内建造を認めるとMoD広報がIHS Jane’sに10月1日に確認している。
同広報官によればオーストラリア国内建造案はMoDが準備中の3案の一つで、2016年に契約先をオーストラリア政府が絞り込むという。
10月1日にMoD広報官は「オーストラリア政府は①オーストラリア国内建造、②日本国内建造 ③オーストラリアと日本で建造分担 の三案を検討するよう求めている」と語った。■


2015年9月9日水曜日

★中国元級潜水艦の性能、運用思想を推測する



ソ連時代のように現代の中国装備を限られた情報から性能や運用想定を推測する仕事が重要になってきました。中国語の壁のため西側は情報に振り回されている観があります。日本でも似たようなものですが、文化的な近似性を活かして日本ならではの情報解析ができるといいですね。その場合に必要なのが下の著者のような深い専門知識に基づいた観測です。おそらくONI海軍情報部にもパイプがある著者と思われますが、論理的に展開していく様は非常に参考になりますね。それにしても日中がそれぞれ大型通常型潜水艦を整備しているのはヨーロッパからは理解できないでしょうね。

Essay: Inside the Design of China’s Yuan-class Submarine

By: Capt. Christopher P. Carlson, USN (Retired)
August 31, 2015 2:13 PM • Updated: August 31, 2015 5:39 PM

People's Liberation Army's Navy (PLAN) Yuan-class submarine.
人民解放軍海軍(PLAN)の元級潜水艦

伸張めざましい中国の潜水艦部隊は真剣な検証と議論にふさわしい対象だ。議論は政策決定者のみならず一般市民にも有益で、その際は健全な分析を元に正確な事実を議論すべきだ。ただ残念なことに英語による人民解放軍海軍(PLAN)報道ではその両方が欠けている。直近のUSNI Newsでもこの傾向が見られる。ヘンリー・ホルストはタイプ039A/B元級潜水艦は「対艦巡航ミサイル(ASCM)を搭載し、長時間潜姿を隠すことができ、アクセスが困難な浅海で潜むことができる」と書いている。

ホルストは元級が大気非依存型出力(AIP)を搭載し、長距離ASCM発射能力を有するので沿海部の浅海域作戦に適しているとする。タイプ039A/Bが優れた対艦戦用の潜水艦であることは著者も同意するが、上記記事のポイントはデータの読み間違いによる誤解だ。本稿では同記事の誤謬を検証し、タイプ039A/B元級潜水艦は実は深海作戦用でPLANの海洋戦略では本国に近い海域で積極防衛を実施する手段だと指摘する。また同艦は台湾の沿海部での作戦行動だけを考えたものではない。

艦の大きさは

タイプ039A/B元級潜水艦が小型で水深の浅い沿海部での作戦用なのかが論点である。その根拠として元級を日本のそうりゅう級と比較している。そうりゅう級もAIPを搭載するが、問題は元級がずっと小さい、としている点だ。

ホルストはそうりゅうの喫水を10.3メートルとしてるが疑わしい。潜水艦の喫水が船幅より長いときはデータを確かめたほうがよい。10.3メートルというのはそうりゅう級の船幅ではなく、同艦の最深部であり、竜骨から甲板までの垂直長である。喫水はこの最深部の一部だ。公開情報ではそうりゅうの喫水は8.5メートルで、同艦の写真を見ると8.3メートルとあり、公表さ数字にかなり近い。

同様にタイプ039A/B元級潜水艦の寸法も不正確だ。ただし、これは西側情報源がいつも不正確であることを反映しており、ホルストもこう言っている。「PLANの建艦技術陣は宋級と同じ寸法でAIPシステムを搭載させた」。 ホルストは元級の設計ではその大きさから代償も発生したというが、具体的に何かを示していない。PLANの建艦部門は必要なスペースの確保に成功したと言っているだけだ。この言い方では鋭さが欠けていると言わざるをえない。

潜水艦とはもともと小型で内部容積も限られる。大型推進機関を入れてもAIPの空間を確保できるほど事は簡単ではない。特に冷却酸素タンクは相当の空間を必要とし、潜航時間が長いとタンクも大きくなる。宋級にそれだけの容積がそもそもあれば、もっと小型になるはずだ。宋級の内部に利用していない空間があるとの証拠はない。タイプ039Gの画像を見ると本当に艦に余裕がないことがわかる。宋、元ともに二重船殻型式なので設計陣は燃料タンクが圧力船殻の外部タンクに積められているのだろう。元級はAIPを搭載するため大型化が必要になった。

Google Earthや手持ちカメラ写真からこのことがわかる。両方の級の潜水艦が横に停泊しているのを見れば、元の全長が宋級より長いのがわかる。タイプ039G宋級の艦幅が7.5メートルと狭いのはほぼ正しいといえる。さらに手持ち写真から元級は全長のみならず喫水も宋級より大であることが伺われる。

Soryu-class submarine, Hakuryu during a visit to Guam in 2013. Note the bow draft markings show the submarine’s draft is about 8.3 meters. US Navy Photo
そうりゅう級のはくりゅうがグアムへ2013年寄港した際の写真では艦首の喫水表示から同艦の喫水が8.3メートルだとわかる。US Navy Photo

中国潜水艦はロシア式のマーキングを採用しているため艦の外側に喫水表示がない。中国潜水艦では長い白線で浮上時の水線を表示し、喫水との差を0.2メートル刻みで示す。手持ち撮影写真からタイプ039A/Bでは海上およびドック内の例から全長を72メートルとは水線の全長だとわかる。元級の全長は各種解析から77.2メートルで、中国国内のウェブサイトが言う77.6メートルとほぼ一致する。同じように通常の浮上時の喫水は約6.7メートルで、これまで西側が言っていた5.5メートルより深い。

まとめると元級は通常動力潜水艦として大型で、そうりゅう級よりわずかに小さい程度だ。むしろPLANの別の通常型大型潜水艦であるロシア製プロジェクト636・キロ級と比較したほうがいいだろう。元級はキロ級よりわずかに大きい。本稿に出た潜水艦各級の物理的な大きさを下表にまとめた。キロ級とそうりゅう級のデータは公式発表をつかった。元級および宋級は上記の解析結果を使っている。

ホルストの主張と異なり、タイプ039A/B元級は決して小型潜水艦ではないことがわかる。PLAN保有の通常型潜水艦で最大級であり、そうりゅう級やキロ級と同様に水深が浅い海域では制御が難しい。仮に「沿岸警備用の潜水艦」(SSC)を整備するのならドイツのタイプ205や206級でいいはずだ。また北朝鮮にはSango級があり、それぞれ潜水時に500トンを上回らない大きさだ。

Type 039B Yuan-class submarine during rollout at the Jiangnan Shipyard on Changxing Island. Note the long white line in the draft markings, which designates the submarine’s normal surface waterline. Also note the low-frequency passive flank array just above the keel blocks.
タイプ039B元級潜水艦が江南造船所で完成している。喫水関連で長緯線に注意。通常浮上時の海水面を示している。また低周波パッシブアレイがブロックの上の側面に付いていることに注意。







プロジェクト636 Kilo
Type 039A/B Yuan
Type 039G Song
Soryu
全長
73.8 m
77.6 m 1)
74.9 m
84.0 m
全幅
9.9 m
8.4 m
7.5 m
9.1 m
喫水
6.6 m
6.7 m 2)
5.7 m 4)
8.3 m 5)
浮上時排水量
2,350 tons
2,725 tons 3)
1,727 tons
2,947 tons
潜水時排水量
3,125 tons
3,600 tons
2,286 tons
4,100 tons

注:
1) Type 039A/Bでしばしば引用される全長72メートルは水線長であり、艦の全体長ではない。
2) Type 039A/B の喫水は報じられる5.5メートルを上回りやや艦サイズが小さいType 039G 宋級とほぼ同じ。
3) 元級の潜水時、浮上時の排水量は中国語ウェブサイトが出典だが定義に混乱が見られる。浮上時排水量を2,300トントとするものが多いが、これには予備浮力50パーセント以上が含まれており、実際の数字ではない。推定浮上排水量は表中では予備浮力32パーセントで以前のタイプ035や039Gと合わせてある。
4) 伝えられるタイプ039Gの喫水5.3メートルは疑わしい。乾ドック入りした同艦の手持ち写真から5.7メートル近くあることがわかる。
5) そうりゅう級の喫水も8.5メートルあると伝えられているが、実際の写真を見ると艦首、艦尾の表示は8.3メートルに近いことがわかる。


浅水域の環境条件


非常に水深が浅い海域用の潜水艦での課題は艦の制御だけではない。ホルストがいみじくも沿岸部の音響特性は混沌とし困難だと指摘している。対潜部隊には元級がそんな場所に潜んでいれば探知は困難だろう。だが逆もまた真なのだ。

航行する船舶の出すノイズははるかに大きく、海底や水面で何度も反射して潜水艦のソナーに入る。元級には獲物を探知識別し追跡するのが極度に困難となり、潜望鏡を上げないと目標雷撃の解は得にくいはずだ。ただしそうすると探知される可能性も増える。そこで潜水艦は浅い海域で海底にへばりつくが水上のASW艦と同様に探知が困難になるのだ。だが宋級以降が浅海での運用を想定しているのであれば、なぜ低周波側面アレイが各艦に装着されているのか。

H/SQG-207の系列の水中聴音機が取り付けられており、長距離で大きなノイズを出す目標を探知するのが目的だ。低周波ノイズは音波吸収ロスも少なく、水中を長い距離移動できる。ただしこの種のアレイが効果を発揮するのは水深の深い部分で海底による干渉が少ない部分だ。H/SQG-207アレイが元級に搭載されているのは想定する作戦水域が深海でこのパッシブソナーが同艦の主要ソナー装備であることを示す。

PLAN潜水艦の兵装思想


PLAN潜水艦兵装についてのホルスト解説ではC-802 ASCM (対艦巡航ミサイル)が元級に搭載されているとの誤解が繰り返し出てくる。まずC-802 は潜水艦発射型ではない。もともとC-802とは輸出用の巡航ミサイル(射程120キロ)の呼称で、ホルストが言うような180キロの射程はない。またC-802がPLANに採用されたとの証拠もない。またこの型はPLAN潜水艦が搭載するYJ-82とは別のミサイルだ。YJ-82は固体燃料方式でYJ-8/8A型水上発射式ASCMが原型だ。YJ-82はカプセルに入ったまま発射される点で米パープーンと同様だ。YJ-8/8Aの有効射程は42キロにすぎないが、ブースターがないYJ-82は更に短く30から38キロ程度だろう。ここまで射程が短いと発射した時点で相手方に探知され、水面から出て高度10メートルになった時点でレーダーに探知される可能性が高い。つまり発射した潜水艦の位置も判明し、照準を合わせて対抗措置が実施されることになる。そのためPLANはYJ-18の実戦配備に期待している。同ミサイルの有効射程は220キロといわれる。

国防総省による議会向け2015年度報告ではYJ-18の射程を290nm (550km) としているのは誤植だ。SS-N-27Bシズラーより小さいミサイルが逆に2倍以上の射程を有するのは不可能だ。また2015年度版報告書では YJ-18AとYJ-62でも有効射程の記述が間違っているのは不正確なオープンソース情報を元にしているためだろう。

The YJ-82 is the submarine launched version of the solid-rocket propelled YJ-8/8A. CPMIEC
YJ-82は固体燃料ロケット式のYJ-8/8Aを潜水艦発射型にしたもの。
China Precision Machinery Import-Export Corporation Photo


さらに元級を「対艦巡航ミサイル搭載手段」とホルストは明記している。IHS Jane’sではASCM発射艦はすべて「G」表記としているが、同艦は巡航ミサイル運用を一義的に想定したものではない。米国の情報コミュニティ、NATO、それにロシアによる呼称では専用の発射管を有するものを誘導ミサイル潜水艦としている。このためタイプ093B あるいは095に垂直発射管があるのかで大論争が起こったが、魚雷よりも巡航ミサイル(対艦、対地攻撃両用)が主な兵装になったことのあらわれである。

もう1点興味をそそる点としてタイプ039A/B元級とタイプ039G宋級で搭載する兵装は同一なのにホルストは宋級に同じ兵装を搭載していると言及していない。タイプ039A/B元級のほうがASCM搭載艦として威力が大きいことには疑いがない。高いソナー能力とAIP搭載による柔軟な戦術運用力が理由だが、ASCMが二次的な兵装の扱いなのは搭載本数が少ないのが理由で、中国はロシアの戦術を真似て6本の魚雷発射管のうち2本にYU-6魚雷を自艦防御用に装填している。残り4本でYJ-18 ASCMを集中発射しても最新鋭艦船の防空体制の圧倒はできないだろう。YJ-18の速度はマッハ3だが、防空体制を圧倒する飽和攻撃にはもっと本数が必要だ。

まとめ


結論としてホルストは誤った戦術データと不正確な分析からタイプ039A/B元級潜水艦の設計思想を間違って解釈している。タイプ039A/B元級潜水艦は通常型としては大型艦であり、ロシアのキロ級および日本のそうりゅう級に匹敵する大きさがある。搭載ソナー装置は深海運用を想定し、長距離で敵船探知が可能だ。ただし垂直発射管がないため元級・宋級ともにASCMを運用する発射管に制約があり、ミサイル攻撃は同時に4本ないし5本どまりとなる。またYJ-82 ASCMの射程距離が短いことからタイプ039A/B元級潜水艦は15キロ地点からYU-6魚雷を使用することが多いはずだ。ただしYJ-18運用が始まっても魚雷室の大きさによる制約は残り、発射管数の制約はそのままだ。PLANはこの制約から将来の原子力潜水艦の設計では最初から16発ほどの垂直発射管を想定するだろう。

タイプ039A/B元級潜水艦の設計から同艦が近海の深水度運用を想定したもので、台湾航路もその視野に入っており、高性能ソナーとAIPで標的となる船舶を探知追跡攻撃するのが任務だろう。また今より高性能で長距離射程のASCMに換装しても魚雷攻撃が主になると見られる。
 
クリストファー・P ・カールソンはハープーン戦術ウォーゲームの共同考案者で、ベストセラー著作がある



2015年8月6日木曜日

オーストラリア>水上艦艇国内建造方針、次期潜水艦調達決定は数ヶ月以内


ここのところオーストラリア向け潜水艦案件はおおきな動きがありませんでしたが、まず水上艦は国内建造になりました。ということは国内での潜水艦建造は断念するのではないでしょうか。背景には複雑な国内事情があることがわかりますね。


Australia To Build New Naval Fleet in $65B Package

Agence France-Presse4:14 p.m. EDT August 4, 2015
SYDNEY — オーストラリアは890億オーストラリアドル(650億ドル)で新型フリゲート艦、巡視船を国内建造することを発表した。なお、次期潜水艦の海外調達先は「数ヶ月以内に」決定するとしている。
  1. 「建造継続」案ではフリゲート艦、巡視船、潜水艦の後継艦を今後20年で整備するとしており、国内で2,500名の雇用を実現する内容でトニー・アボット首相の言では「歴史的な発表」だという。
  2. 「歴代のオーストラリア政権は国内建造を続けると表明してきた」とアボット首相は報道陣に語った。「基本的に艦隊建造は国内で行い、中心は南オーストラリアとする」
  3. ただし首相は進行中の次世代潜水艦の海外調達先については多くを語らなかった。現行のコリンズ級潜水艦の退役は2026年から始まる。
  4. オーストラリア向け潜水艦はフランス、ドイツ、日本が受注を狙い、総額500億ドルとオーストラリアで史上最大の防衛調達事業になる。
  5. ただし、海外建造とした場合は国内産業の保護をめぐり国内で議論を巻き起こしていることもあり、契約交付は一筋縄ではいかない。
  6. 「これまで各国に国内建造にした場合の費用総額、国内国外建造を組み合わせた場合の価格、完全海外建造の価格開示を請求している」(アボット首相)「回答が今後数ヶ月で到着すれば、最終決定に入る」
  7. 今回の建艦事業は「次世代フリゲート」により現行のアンザック級を2020年に交代させるもの。また巡視船はアーミデイル級の後継艦となる。またケビン・アンドリュース国防相によれば「連続建造」を国内で維持することはオーストラリアの将来の海軍力が「わが国の戦略の中心であり、次回国防白書でも中心に取り上げる」ことの反映だという。
  8. 建艦案の発表は南オーストラリアの有権者向メッセージと受け止められている。同地は失業率が8.2%と最も高く同時に国内主要造船産業が集中している。■

2014年10月3日金曜日

☆☆ そうりゅう級の電池変更でオーストラリア商戦に影響はあるか



当ブログの方向性でお尋ねしたところ早速多数のコメントありがとうございました。海軍関係など独立すべしとのコメントは皆無でしたのでこのまま継続することにします。AIP機関からリチウムイオイン電池に切り替えて大幅な水中性能アップを狙う海上自衛隊潜水艦そうりゅう型(改、になるのでしょうね)の話題ですがオーストラリアにも変更の点は事前に知らされているようです。潜水艦技術の輸出第一案件になるのか今後も注目ですね。なお、以下記事では在外専門家がJapanese Navyとしっかり言っていますのであえて海上自衛隊と訳していない部分があります。あしからず

Japan To Make Major Switch on Sub Propulsion

Lithium-ion Batteries Will Power Soryu-class Boats

Sep. 29, 2014 - 03:45AM   |  
By PAUL KALLENDER-UMEZU   |   Comments
The Japanese submarine Hakuryu visits Guam last year. The Soryu-class boat was built with air-independent propulsion technology, which Japan plans to replace with Lithium-ion batteries for the remaining four boats in the 10-ship class.
海上自衛隊潜水艦はくりゅうがグアムに入港した。2013年撮影、 そうりゅう級潜水艦は大気非依存型推進技術を取り入れたが、日本はこれをリチウムイオン電池技術に切り替えようとしている。 (MC1 Jeffrey Jay Price / US Navy)

TOKYO — 日本は今後建造するそうりゅう級潜水艦で大気非依存推進(AIP)をやめリチウムイオン電池を採用する。同種類のバッテリーがボーイング787で問題を起こしているだけに驚きを呼んでいる。
  1. ただし専門家は懸念を退け、むしろ性能が向上し保守点検は容易になると指摘する。日本製潜水艦の輸出可能性が高まるという。.
  2. 海上自衛隊によれば変更対象は今後に建造するそうりゅう級4隻。そうりゅう級は全10隻建造する。
  3. オーストラリアは6月に日本と技術協定を締結済みだが、同国高官はDefense NewsにLiイオン電池切り替えを承知しており、日本の潜水艦技術に引き続き関心があると発言した。そうりゅう級の完成品購入も視野に入っているという。
  4. 日本製潜水艦にはオーストラリア海軍が多大の関心を示しており、350億オーストラリアドル(330億ドル)で現行のコリンズ級6隻の後継艦を調達する事業がはじまっている。旧式化し整備が大変なコリンズ級を新型の大型潜水艦に置き換え南シナ海、東シナ海の通商路を防衛する構想である。
  5. オーストラリアのビショップJulie Bishop国防相、ジョンストンDavid Johnston外相は小野寺防衛相、岸田外務相と潜水艦の共同開発で6月に合意している。
  6. 「次世代潜水艦の方針は未決定のまま」とジョンストン国防相は声明を発表している。「国防調達は首相の言うとおり、国防の観点で決定すべきであり、産業や地域振興政策の観点ではない」
  7. 現行のそうりゅう級ディーゼルエレクトリック潜水艦(16SS)ではAIP技術にコックムズ社 Kockums のスターリングエンジンを川崎重工業がライセンス製造している。これで長期潜水が可能となった。スウェーデンのゴットランド級潜水艦が5ノットで2週間潜航できるが小型艦だ。
  8. そうりゅう級の大型電動機には電源が三種類ある。ディーゼルエンジン、主蓄電池、AIPエンジンである。ディーゼルエンジン運転には大気が必要なので浮上中またはシュノーケルで蓄電池に急速充電する。AIPエンジンは少量のディーゼル燃料と液体酸素を使用し長時間低速の潜航移動が可能。その間に蓄電池は完全充電される。蓄電池は超静粛移動や高速水中機動に使うが急速に消耗してしまう。
  9. リチウムイオン電池に切り替える新型そうりゅう級はディーゼル機関は残し、強力かつ手入れが簡単な電池を搭載する。
  10. そうりゅう級潜水艦の建造期間は約4年で計画10隻中6隻が完成している。防衛省は644億円を要求し、27年度から一隻を建造するが、この新造艦含む4隻にリチウムイオン電池を搭載する。
  11. そうりゅう級バッテリーはジーエス・ユアサが供給するが、同社はボーイング787にも供給中で、バッテリー発火事故によりFAA連邦航空局が1979年以来という機種全体の全面飛行停止措置に動いた。
  12. オーストラリアがAIP搭載のそうりゅう級購入に向かうとの現地報道もあるが、海軍関連専門家はバッテリー問題は重要視していない。むしろ切り替えを歓迎している。
  13. キングスカレッジ(ロンドン)の軍事研究科で日本海軍論を専門とするアレッシオ・パタラーノAlessio Patalanoは推進力の選択枝で各国がAIPを最初に注目したのは燃料電池やLiイオン電池が技術的に未成熟だったためと指摘する。
  14. 「潜水艦が日本にとって最前線の攻撃手段であり、速度と持続性が潜水艦作戦の核心部分となる中で、推進力性能から日本海軍には魅力と映ったのだろう」.
  15. 海上自衛隊はAIP技術では潜航中数ノットしか確保できず、戦略的活用には低速すぎると受け止め、また保守点検で負担が大きいとしている。
  16. 海軍関連コンサルタント企業AMI InternationaIのボブ・ヌージェントBob NugentもLiイオンバッテリーで速度、出力両面で得られるものは大きいと見ており、そうりゅう級がAIP搭載のヨーロッパ潜水艦より3割ほど大きいと指摘し、バッテリー容量、エネルギー密度の大型化で作戦期間が延び、速度瞬発力が向上するという。
  17. 「リチウムイオンバッテリーは熱暴走問題を克服し安全を確保できます。その他、燃料電池とAIPの組み合わせや高性能コンデンサと言った別の選択肢もありますが、技術リスクがあるのは事実です」
  18. AMIインタナショナル社長ガイ・スティット Guy Stitttは海上自衛隊は運用能力が高く、リスクを嫌う傾向から今回の技術導入で潜水艦動力は「大きな前進」をし、作戦運用も変わる可能性があると指摘。
  19. 「AIPを取り外すのは二次発電を不要と日本が判断し、かわりに蓄電能力を拡大するため鉛電池をリチウムイオンに切り替えるわけです。リチウムイオン電池はエネルギー密度が高く、安全確保のため電子装備を複数配置し、各セルの安定度を監視するのでしょう」
  20. さらにオーストラリア海軍の次期潜水艦について「調達方針の正式決定はまだ先」とし、もし海上自衛隊での実績が良好であれば各国も同じ技術の導入に前向きになるはずだと指摘する。
  21. パタラーノは「通常型・大型潜水艦の開発では日本が世界最先端。すき間市場として期待できる」ともいう。.
  22. 「優れた水準をさらに引きあげた高性能潜水艦がオーストラリア向け商談でどう扱われるか実に興味深い」 ■