スキップしてメイン コンテンツに移動

☆☆ そうりゅう級の電池変更でオーストラリア商戦に影響はあるか



当ブログの方向性でお尋ねしたところ早速多数のコメントありがとうございました。海軍関係など独立すべしとのコメントは皆無でしたのでこのまま継続することにします。AIP機関からリチウムイオイン電池に切り替えて大幅な水中性能アップを狙う海上自衛隊潜水艦そうりゅう型(改、になるのでしょうね)の話題ですがオーストラリアにも変更の点は事前に知らされているようです。潜水艦技術の輸出第一案件になるのか今後も注目ですね。なお、以下記事では在外専門家がJapanese Navyとしっかり言っていますのであえて海上自衛隊と訳していない部分があります。あしからず

Japan To Make Major Switch on Sub Propulsion

Lithium-ion Batteries Will Power Soryu-class Boats

Sep. 29, 2014 - 03:45AM   |  
By PAUL KALLENDER-UMEZU   |   Comments
The Japanese submarine Hakuryu visits Guam last year. The Soryu-class boat was built with air-independent propulsion technology, which Japan plans to replace with Lithium-ion batteries for the remaining four boats in the 10-ship class.
海上自衛隊潜水艦はくりゅうがグアムに入港した。2013年撮影、 そうりゅう級潜水艦は大気非依存型推進技術を取り入れたが、日本はこれをリチウムイオン電池技術に切り替えようとしている。 (MC1 Jeffrey Jay Price / US Navy)

TOKYO — 日本は今後建造するそうりゅう級潜水艦で大気非依存推進(AIP)をやめリチウムイオン電池を採用する。同種類のバッテリーがボーイング787で問題を起こしているだけに驚きを呼んでいる。
  1. ただし専門家は懸念を退け、むしろ性能が向上し保守点検は容易になると指摘する。日本製潜水艦の輸出可能性が高まるという。.
  2. 海上自衛隊によれば変更対象は今後に建造するそうりゅう級4隻。そうりゅう級は全10隻建造する。
  3. オーストラリアは6月に日本と技術協定を締結済みだが、同国高官はDefense NewsにLiイオン電池切り替えを承知しており、日本の潜水艦技術に引き続き関心があると発言した。そうりゅう級の完成品購入も視野に入っているという。
  4. 日本製潜水艦にはオーストラリア海軍が多大の関心を示しており、350億オーストラリアドル(330億ドル)で現行のコリンズ級6隻の後継艦を調達する事業がはじまっている。旧式化し整備が大変なコリンズ級を新型の大型潜水艦に置き換え南シナ海、東シナ海の通商路を防衛する構想である。
  5. オーストラリアのビショップJulie Bishop国防相、ジョンストンDavid Johnston外相は小野寺防衛相、岸田外務相と潜水艦の共同開発で6月に合意している。
  6. 「次世代潜水艦の方針は未決定のまま」とジョンストン国防相は声明を発表している。「国防調達は首相の言うとおり、国防の観点で決定すべきであり、産業や地域振興政策の観点ではない」
  7. 現行のそうりゅう級ディーゼルエレクトリック潜水艦(16SS)ではAIP技術にコックムズ社 Kockums のスターリングエンジンを川崎重工業がライセンス製造している。これで長期潜水が可能となった。スウェーデンのゴットランド級潜水艦が5ノットで2週間潜航できるが小型艦だ。
  8. そうりゅう級の大型電動機には電源が三種類ある。ディーゼルエンジン、主蓄電池、AIPエンジンである。ディーゼルエンジン運転には大気が必要なので浮上中またはシュノーケルで蓄電池に急速充電する。AIPエンジンは少量のディーゼル燃料と液体酸素を使用し長時間低速の潜航移動が可能。その間に蓄電池は完全充電される。蓄電池は超静粛移動や高速水中機動に使うが急速に消耗してしまう。
  9. リチウムイオン電池に切り替える新型そうりゅう級はディーゼル機関は残し、強力かつ手入れが簡単な電池を搭載する。
  10. そうりゅう級潜水艦の建造期間は約4年で計画10隻中6隻が完成している。防衛省は644億円を要求し、27年度から一隻を建造するが、この新造艦含む4隻にリチウムイオン電池を搭載する。
  11. そうりゅう級バッテリーはジーエス・ユアサが供給するが、同社はボーイング787にも供給中で、バッテリー発火事故によりFAA連邦航空局が1979年以来という機種全体の全面飛行停止措置に動いた。
  12. オーストラリアがAIP搭載のそうりゅう級購入に向かうとの現地報道もあるが、海軍関連専門家はバッテリー問題は重要視していない。むしろ切り替えを歓迎している。
  13. キングスカレッジ(ロンドン)の軍事研究科で日本海軍論を専門とするアレッシオ・パタラーノAlessio Patalanoは推進力の選択枝で各国がAIPを最初に注目したのは燃料電池やLiイオン電池が技術的に未成熟だったためと指摘する。
  14. 「潜水艦が日本にとって最前線の攻撃手段であり、速度と持続性が潜水艦作戦の核心部分となる中で、推進力性能から日本海軍には魅力と映ったのだろう」.
  15. 海上自衛隊はAIP技術では潜航中数ノットしか確保できず、戦略的活用には低速すぎると受け止め、また保守点検で負担が大きいとしている。
  16. 海軍関連コンサルタント企業AMI InternationaIのボブ・ヌージェントBob NugentもLiイオンバッテリーで速度、出力両面で得られるものは大きいと見ており、そうりゅう級がAIP搭載のヨーロッパ潜水艦より3割ほど大きいと指摘し、バッテリー容量、エネルギー密度の大型化で作戦期間が延び、速度瞬発力が向上するという。
  17. 「リチウムイオンバッテリーは熱暴走問題を克服し安全を確保できます。その他、燃料電池とAIPの組み合わせや高性能コンデンサと言った別の選択肢もありますが、技術リスクがあるのは事実です」
  18. AMIインタナショナル社長ガイ・スティット Guy Stitttは海上自衛隊は運用能力が高く、リスクを嫌う傾向から今回の技術導入で潜水艦動力は「大きな前進」をし、作戦運用も変わる可能性があると指摘。
  19. 「AIPを取り外すのは二次発電を不要と日本が判断し、かわりに蓄電能力を拡大するため鉛電池をリチウムイオンに切り替えるわけです。リチウムイオン電池はエネルギー密度が高く、安全確保のため電子装備を複数配置し、各セルの安定度を監視するのでしょう」
  20. さらにオーストラリア海軍の次期潜水艦について「調達方針の正式決定はまだ先」とし、もし海上自衛隊での実績が良好であれば各国も同じ技術の導入に前向きになるはずだと指摘する。
  21. パタラーノは「通常型・大型潜水艦の開発では日本が世界最先端。すき間市場として期待できる」ともいう。.
  22. 「優れた水準をさらに引きあげた高性能潜水艦がオーストラリア向け商談でどう扱われるか実に興味深い」 ■


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...