EWの話題が急に増えてきました。それだけ米国で能力のギャップが認識されていることでしょう。F-35にこれ以上予算を消費されると大変だという危機感もあるのでしょう。かねてから空軍はこの分野で手抜きをしており、海軍に頼らざるを得ない状態ですが、当面このままで続きそうですね。
EW Needs $2B More A Year; ‘Major Deficiencies’ Found By Defense Science Board
WASHINGTON: 国防科学委員会 Defense Science Board (DSB)が極秘検討結果を国防副長官ロバート・ワークに届けた。電子戦に備え、年間20億ドルを追加支出し、上位執行委員会にEW関連支出を監督させるべきとの提言が出ている。
- 「過去20年間で電子戦能力が大きく低下しています」とボール・カミンスキー Paul Kaminski が述べている。今回の検討を提案した本人で、報告書は仮題として『21世紀の軍事作戦環境を複雑な電磁環境で考える』となっており、18か月前にカミンスキーが国防科学委員会の座長を務めていた時に開始した作業だ。カミンスキーは1990年代に国防調達を取り仕切った伝説的な人物で、その職位は現在務めるフランク・ケンドール国防次官提案されている執行委員会を束ねるとみられる。また統合参謀本部副議長ジェイムズ・ウィネフェルド提督 Adm. James “Sandy” Winnefeld も参加する見込みだ。
- カミンスキーは検討中に「大きな欠陥を見つけた」という。.
- 米国はソ連崩壊後一貫してEW軽視を続け、9/11後はアフガニスタン、イラクの低技術脅威を対応の重点とした。その間にF-22ラプターやF-35が予算を食いつぶし、投資が手薄になった。反対にロシア、中国、イラン他は潤沢な予算で技術を進歩させ、米軍のセンサー類、ネットワーク、GPSを妨害、盗聴、欺瞞する能力を確立。電磁環境下でも戦闘を調整する能力が必要とカミンスキーはまとめている。
- 「多方面で努力が必要ですが、EW問題はこれまでの軽視もあり解決策は相当高価になるでしょう」とカミンスキーは言い、「予算以外にも上層部がもっと関心を寄せるべきです」
- カミンスキーの発言をまとめると、DSBの結論として現状のEW関連投資に20億ドル追加が必要としている。
- それだけ追加資金を投入しても「何かを犠牲にすることになるでしょうね。機材調達数を減らし別の支出を増やす、とか」
- 厳しい決断は上位組織が下す。ケンドール、ウィネフェルド、各軍代表、関連機関のトップがここに参加する。
- では戦略軍の役割はどうなるか。同軍はEWの推進役であるが、作戦担当責任者は実際の推進には権限も予算も足りないと嘆いている。
- 「戦略司令部と太平洋軍司令部の役割を拡大する余地はありますね」とカミンスキーは記者に語る。各軍のEW能力を向上させ新戦術と技術を実用化することを想定している。太平洋軍が実施中のNorthern Edge演習がモデルになると見ている。
- 「モデル化とシミュレーション、さらにテストと演習が必要です」(カミンスキー) だが、公の席ではこのモデル化とシミュレーションが作戦レベルで弱いと発言していた。演習だけが複雑なモデルの有効性を実証できるのだ。
- 訓練が中途半端なことで「意思決定者が電子戦の意義を理解できていない」と、カミンスキーは講演している。またEW開発の努力はあるが各軍バラバラになっている状態で、共同作業や相互運用は存在していない。空軍と海軍が主導するエアシーバトル構想には期待できるが、「統合司令部や地域司令部の意向が強く働いている」とし、特に太平洋軍司令部を意識している。
- また、調達業務の仕組みがあまりにも遅すぎるとする。ムーアの法則でコンピュータ処理が18ヶ月で二倍に成長し、ソフトウェアが電磁プロファイルそのものを変えてしまう事態を想定している。
- 「ソフトウェアが中心のデジタル世界への移行に高性能電子製品が加わり、世界のパラダイムが変わります」(カミンスキー) 冷戦時ならソ連の新型ハードウェアを発見し、研究の上、公式に「文書で認定された脅威」と分類してから対抗手段を開発、テスト、配備していた。「10年から12年後にその対抗手段を第一線に配備していた」といい、これでは今日には通用しない、成功の可能性はない、と述べた。■
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