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ISRで三機種を同時運用が必要とする米海軍の事情


空軍の新型機開発が(目に見える範囲では)パッとしないのに対し、海軍の活動が活発なのはこれまでもお伝えしている通りですが、その中身を見るとなかなか通用しにくい論理が働いているようです。とくにUCLASSの行方がはっきりしません。また、せっかくP-8が就役しても無人トライトンの遠隔操作予算がついていないなど情けない状態があるようです。

Triton, Poseidon, & UCLASS: The Navy’s ISR Balancing Act

http://www.google.com/url?q=http%3A%2F%2Fbreakingdefense.com%2F2014%2F10%2Ftriton-poseidon-uclass-the-navys-isr-balancing-act%2F&sa=D&sntz=1&usg=AFQjCNGExojjuqLdNF9dKDWvoTfPN-4igw
By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on October 01, 2014 at 4:00 AM
The first MQ-4C Triton drone to arrive at Patuxent River Naval Air Station. MQ-4C トライトン
PATUXENT RIVER NAVAL AIR STATION---米海軍の長距離偵察の未来を担うMQ-4Cトライトン無人機が当地の格納庫にあり、ボーイング737より翼巾は13フィート長く、機体重量は8割軽い。
  1. 高度50,000フィートで24時間超連続飛行する想定のトライトンは任務を単独で完結できない。高高度戦域全体を対象とした同機とは別に戦術偵察機として有人P-8ポセイドンと無人艦載偵察攻撃機(UCLASS)があり、海軍は三機種の同時運用を求めているが予算は厳しい。
  2. P-8はトライトンと共同作戦が可能。だがP-8乗員がトライトンを遠隔操作する機能は「予算化されていない」とジム・ホウク大佐Capt. Jim Hoke(トライトン事業責任者)は本誌記者に認めた。Triton program manager Capt. James Hoke.
トライトン開発を統括するジム・ホウク大佐
  1. トライトン三機が10月末にパックスリヴァーに揃いテストに備える。だが衝突回避レーダー開発が遅れている。2017年にグアムで作戦稼働を開始するが、当初の68機購入は微妙だ。ホウク大佐は高信頼性で整備所要時間が想定より少ないことで購入機数が減るのは確実という。
  2. UCLASS最終設計案の提出がいまだに業界に要求されていない。また、海軍の想定性能が「攻撃」より「監視」を重視していることが議論を呼んでいる。
  3. 「三機種すべてが必要だ」とマシアス・ウィンター少将Rear Adm. Mathias Winterは強調する。しかし記者が情報収集監視偵察 (ISR)で二機種必要な理由を問うと、少将はトライトンは戦域司令官のニーズに対応し、UCLASSは空母打撃群司令官が利用する、と回答。
A notional map of the areas Triton could cover from its five land bases.トライトンを世界5か所の基地から運用した際に監視対象となる地域を概念的に示した図

  1. 「空母打撃群では指揮命令と実行を迅速に行うことが肝要だ」とウィンターは記者に説明。UCLASSは空母から発進し、600から1,200マイルの範囲をパトロールするが、2,000マイル超の攻撃も可能だ。これに対し、トライトンは陸上施設五か所から発進し、作戦行動半径はほぼ2,000マイル。:
  2. 仮に十分な機数のトライトンを調達し、各空母を常時カバーできたら、また空母をトライトンの飛行対応範囲外に航行させないとどうなのか、ウィンターはそれでもUCLASSは必要だ、なぜなら性能が違うからと言う。
  3. 「トライトンは戦術攻撃用ではありません。武装を想定せず、UCLASSで想定の1,000ポンド爆弾も運べません。また空母打撃群での運用も想定外」なので指揮命令系統に入れない。これに対し「UCLASSはグラウラーと共同運用を想定しており、ホーネットやF-35とも攻撃に投入できるが、トライトンはできない」
Rear Adm. Mathias Winters, head of unmanned programs at Naval Air Systems Command (NAVAIR).
マシアス・ウィンター海軍少将は海軍航空システム本部(NAVAIR)の無人機事業を統括している。
  1. 行間からはUCLASSが高性能のようだ。長距離長時間飛行のカギは燃料消費効率だ。トライトンの主翼は長く、薄く、まっすぐで、P-8の20千フィート上空を飛行できる。「高度50千フィートだと燃料は大量に使いません」とホウク大佐は言う。空気が薄いためだ。その結果、トライトンの燃料消費はP-3のおよそ1割と言う。だが飛行距離と飛行時間のため機動性と速力が犠牲になった。UCLASSでも監視偵察ミッションに最適化すれば攻撃力が犠牲になるし、その逆もまた真である。
  2. トライトンの飛行高度では機体にストレスとなる操縦は発生しない、とウィンターは説明。それに対しP-3やP-8は低空・高Gの捜索や攻撃を行う。両機種は民間旅客機が原型で戦闘機の敏捷性はない。UCLASSでは要求性能が非公開あるいは変更中だが、発艦着艦というパイロットに一番負担を強いる機動が前提だ。
  3. 戦闘能力が優れるのはUCLASSで、トライトンンを補完できる。だが戦闘に投入できる性能がUCLASSに本当にあるのか。
A CSBA diagram shows the ranges needed to defeat a modern "anti-access/area denial" defense.
CSBAが作成した接近拒否領域阻止の防空体制における必要な飛行距離を示す概念図
  1. 記者はウィンター少将の説明内容をUCLASSに批判的な専門家2名に開示した。
  2. 「ISRを優先すべきではない」というのは戦略予算評価センター(CSBA)のロバート・マーティネージRobert Martinage。トライトンで空母をカバーできるとし、「MQ-4Cは海洋占有認識 maritime domain awareness (MDA)を空母打撃群で実現することを目的としている。世界各地にMQ-4C運用の基地を確保するのはMDAを一貫して実現するのが目的だ」
  3. 「空母近辺では戦術レベルのMDAとして、E-2Dホークアイと無人回転翼機M-8Cファイヤスカウトを組み合わせればよい」
CSBA scholar Robert Martinage.CSBA研究員のロバート・マーティネージ
  1. 偵察機材整備をすすめる海軍に長距離攻撃が不足しているという。「接近阻止領域拒否(A2/AD)の防衛体制をとる中国は機雷、潜水艦、攻撃機、長距離対艦ミサイルを駆使するので、米空母は沖合に留まらざるを得ない。これでは短距離しか飛べないF-18やF-35では内陸部を攻撃できない」と言う。A2/AD対抗には長距離重武装かつステルスが必要とマーティンネージは説明するが、UCLASSはこのいずれも目指していないという。
  2. 見識の高い某議会スタッフも同意見だ。ISR専用の無人機は「空母搭載機材として優れている」が、「空母航空部隊で一番必要な機材ではない」し、 新規案件への予算制約をすると、「どう考えてもは武力投射型UCLASSの優先順位が高くなるはず」という。
  3. 「ISR特化か攻撃型UCLASSかの議論からもっと大きな問題が見えてきた。そもそも、無人機を航空隊に組み入れる検討をしっかりしているだろうか」
  4. 空母運用型無人機を二種類準備する予算は確保できる可能性は低いので、海軍のもくろみは偵察用のULCASSを出し、あとで爆撃機に転用するのだろう。その実現はペンタゴンの文民幹部と議会が決めることだ。■

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