スキップしてメイン コンテンツに移動

スウェーデン謎の潜水艇捜索はロシアとの緊張増大の最新事例


ロシア軍の活動が目立って活発になっています。これは北欧でのお話ですが、太平洋でも警戒が必要なことは言うまでもありません。日本の沿岸部に小型潜航艇が来るとしたら北朝鮮をまず疑うところですが、ロシアの新型ハードウェアは相当高性能になっているようです。他山の石と達観しているわけにいかないでしょう。

Sub Search Highlights Growing Unease With Russia

Oct. 25, 2014 - 05:11PM   |  
By GERARD O’DWYER   |   Comments
SWEDEN-MILITARY-SUBMARINE-RUSSIA-SEARCH
謎の潜水艦を追うスウェーデン海軍の海防艦ヴィスビュー、捜索5日目の10月21日ミシンゲン湾にて。スウェーデンは捜索を10月24日に打ち切った。 (FREDRIK SANDBERG/ / AFP/Getty Images)

HELSINKI — クリミア半島を巡るロシアとヨーロッパの対立が6か月以上となる中、今回のスウェーデン事件はバルト海近隣諸国がロシアに神経をとがらす事態を改めて浮き彫りにした。
  1. 各国政府とロシアとの緊張が今月に入り高まるきっかけになったのはスウェーデン海軍がロシア海軍と思われる潜航中の船体をストックホルム近郊で捜索したことだ。
  2. さらに10月23日には、デンマーク空軍所属F-16とスウェーデンのグリペン戦闘機がデンマーク、スウェーデン国境近くを飛行しエストニア領空に侵入したイリューシンIL-20情報収集機を追尾。同機は最終的にNATO空域からポルトガル空軍F-16にエスコートされて退去した。ポルトガルはリトアニアのNATO空軍基地を利用している。
  3. スウェーデン海軍の捜索活動は冷戦終結後で最大規模になった。きっかけは10月18日に沿岸近くで異常な動きがあると民間から報告されたことだった。スウェーデンは10月24日に捜索を縮小した。
  4. スウェーデン海軍は暗号電文がロシア軍の「救難信号」周波数で発信されるのを傍受したとの報道を否定した。
  5. 報道によればストックホルム近郊の島しょ部からカリニングラードに発信されているが、同地にはロシア海軍のバルト海艦隊の司令部がある。
  6. ロシアはスウェーデンに自国の「潜水艦部隊は全隻その動向を把握」していると発表。スウェーデン領海に侵入したロシア海軍艦船は存在しない、とも伝えた。
  7. さらにロシア国防省から国籍不明の「水中艦艇」とはオランダのウォーラス級潜水艦ブルインヴィスBruinvisで、スウェーデン領海を通過しエストニアのタリンへ移動していたと伝えてきた。オランダ国防省は直ちに否定している。
  8. バルト海ではロシア潜水艦がたびたび目撃されており、ラトビア海軍はキロ級潜水艦とCC-750支援艦を同国領海から10カイリ外で9月に撮影している。8月には同じラトビア海軍が海防艦ステレグシュチイStereguschiyとキロ級潜水艦一隻を識別したが、同国の排他的経済水域から2カイリ未満の地点だった。
  9. ロシア海軍がフィンランド海洋調査船の進路を妨害する事件が10月11日に発生しており、発生地点はスウェーデン側のバルト海の国際水域だった。
  10. 北欧諸国の各海軍トップはロシアが露骨に軍事力を誇示するのはNATOがバルト海で演習を強化しているのと関係があると見ている。
  11. 「NATOとロシアはともにバルト海で軍事活動レベルを引き上げている」と、フィンランドの国防トップ・ジェローム・インドベルグ大将 Gen. Jerome Lindbergは語る。「ロシアが活発になっており、NATOもバルト海のパトロールを増やしている。以前は航空機が数機の規模だったが4倍5倍になりバルト海全体に作戦区域が拡大している」
  12. 各国政府(スウェーデン、ノルウェー、エストニア、リトアニア)はこれ以上脅威が増加すれば国防支出を増額し、相互協力体制をとることとしている。
  13. スウェーデンの捜索活動の背景には100件以上の民間目撃があり、荒い写真で半分潜水した「物体」他が報告されていると同国海軍少将アンダース・グレンシュタッド少将Rear Adm. Anders Grenstad が述べている。
  14. スウェーデン海軍は捜索し、位置をつきとめ、武器を使用してでも「外国の」潜水艇を浮上させると少将はいい、さらに外国艦が遭難しているとの情報はない、と断言していた。
  15. スウェーデン海軍は2012年から軍事制限地区の海岸監視を強化しており、「外国による水中活動」や「外国船」が海図作成や軍事監視装置の設置、あるいは沿岸の防備状況を偵察する可能性があるとしていた。
  16. 捜索活動は10月23日に規模縮小している。一週間にわたる捜索で「外国船」を発見できなかったためだ。
  17. スウェーデン海軍は同時にロシアのタンカー・コンコルドの動向を監視し、沿岸警備隊が同船の「ジグザグ」航行を発見している。これはスウェーデン沿岸で待ち合わせをする際のパターン。
  18. スウェーデン沿岸警備隊によれば同船の所有者はSCF Novoshipでリベリア船籍で、バルト海のロシア側プリモルスクPrimorskへ向け航行しているという。
  19. ロシアと北欧諸国の緊張が高まりは冷戦時代への逆戻りだとベルギーの政治アナリスト、イェンス・ケスラーJens Kesslerは言う。
  20. 「当時はロシアのバルト海艦隊、北方艦隊は定期的に開発したばかりの水中艦のステルス性をテストしており、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドの各海軍の対潜防衛網を試すゲームをしている。領空侵犯も頻繁で北欧各国の空軍の頭痛の種だった」
  21. 今回スウェーデン海軍が水中の「外国船」を島しょ部で見つけられなかったのは、船体の大きさに加え同地へのアクセスが難しいことがあるとケスラーは言う。「藁の中で針金を見つけるのと同じだ。スウェーデン沿岸には3万の島があり、海底地形は大きく変化している。本当に潜航艇が潜んでいたら、またロシアの新型トリトンNN型なら、数週間も探知から隠れるのは可能」
  22. スウェーデン軍が「外国による水中活動」に反応したのはいかなる国境侵犯に対して迅速かつ効果的に対応する意図を「非常に明確に」示したものと国防トップ、スベルカ・ゴランソン大将Gen. Sverker Göransonは語る。
  23. 「今回は情報を基にした作戦だが目標は潜航中の対象を浮上させることで、必要なら武力行使もいとわない」とゴランソンは以前発言していた。
  24. 一方、ノルウェーは自国国境付近でロシア部隊増強の様子を監視中で、北方艦隊がコラ半島にK-560セヴェロドヴィンスク Severodvinsk 新型ステルス巡航ミサイル潜水艦の4号艦を第11潜水艦戦隊の母港ブロシャヤ・ロパトカ Bloshaya Lopatkaに配備した。同地はノルウェー国境から61キロメートル地点。■

コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...