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2022年10月5日水曜日

ボルトン大使寄稿 プーチンの退場とロシアの政権交代を望む

 

Vladimir Putin 2017 New Year Address to the Nation.

 

 バイデン大統領は、ロシアによる2度目の無謀なウクライナ侵攻の1カ月後の3月、プーチン大統領について「頼むから、この男に権力の座に留まってほしくない」と述べ、ワシントンポスト紙は「ロナルド・レーガン以来最も反抗的で攻撃的なロシアに関するアメリカ大統領によるスピーチ」と評した。しかしバイデンのスタッフは、「大統領が言いたかったのは、プーチンが近隣諸国や地域に対して権力を行使することは許されないということだ」と即座に撤回し、「ロシアにおけるプーチンの権力や政権交代に触れたのではない」と述べた。その後、バイデン自身は律儀に政権交代を撤回している。

 ロシアの政権交代なしに、ヨーロッパの平和と安全の長期的展望はない。ロシア人は、明白な理由のため、それを静かに議論し始めている。米国やその他の国にとって、この問題をなかったことにすることは、はるかに多くの害をもたらすだろう。

 最近のウクライナの軍事的な前進にもかかわらず、西側諸国はまだウクライナにおける「勝利」の定義を共有していない。先週、プーチンはウクライナの4州を「併合」し、2014年に「併合」されたクリミアに合流させた。戦争は激化し、ロシア人戦死者多数と経済的痛みを生んでいる。プーチンへの反発は高まり、若者は国外に脱出しつつある。もちろん、ウクライナの民間人・軍人犠牲者も多く、物的被害も甚大だ。NATOを威嚇するため、モスクワは再び核兵器のレトリックを振りかざし、ノルドストリーム・パイプラインを妨害している。欧州は来る冬を心配し、誰もが欧州の決意の耐久性を心配している。目先の停戦や実質的な終戦交渉、その後のプーチン政権との「正常な」関係をどうするのか、誰も予想できない。

 戦争がいつまでも続くのを避けるため、われわれは今の計算を変えなければならない。ロシア反体制派による政権交代を慎重に支援することが、答えかもしれない。ロシアが核保有国であることは明らかだが、それはウクライナの自衛を支援するのと同様に、政権交代を目指すことへの反論にはならない。ホワイトハウスの道徳的価値観の発信でクレムリンは力を得ており、こちらを「悪魔崇拝」と非難し、バイデンがしていないのに、アメリカがロシア政府を転覆させようとしていると主張している。 言っておくが、クレムリンは何十年もの間、われわれに対してこのようなことをしてきたのだ。われわれはすでにクレムリンを転覆させたと非難されているのだから、なぜその恩返しをしないのだろうか?

 ロシアの体制転換を阻む障害と不確定要素はかなり大きいが、乗り越えられないわけではない。なぜなら、プーチンを交代させるだけでは済まないからだ。プーチン側近も後継者候補が何人かいるはずだ。問題は、一人の人間ではなく、過去20年間に構築された集団指導体制だ。キューバ危機後、ニキータ・フルシチョフを引退させたような政治局の姿はない。政権全体が退場しなければならない。

 政権交代が最も難しい問題であることは間違いないが、それに外国の軍隊は必要ない。重要なのは、ロシア人自身が、真の権威者であるシロビキ(権力者)層の分裂を悪化させることだ。反体制派がその気になれば、権威主義的な政権と同様に、意見の相違や反感はすでに存在しているので、それを利用できる。 1991年にロシアのホワイトハウスの前で戦車の上に立ったボリス・エリツィンは、ソ連支配層の分裂を証明した。政権の一貫性と連帯が崩れれば、変革は可能だ

 ロシアの軍部、情報部、国内安全保障部の内部では、今回のウクライナ侵攻前後におけるモスクワのパフォーマンスに、衝撃、怒り、困惑、絶望があることはほぼ間違いない。政権交代を主導するのは、プーチン政権に個人的に深く関与する軍幹部や官僚ではなく、下士官や下級官僚であろう。プーチン政権を変えるため最も協力的なのは、大佐や一ツ星将官、そしてそれに相当する文民機関である。反体制派が政権交代を実現するために特定し、説得し、支援しなければならない意思決定者は、この人たちである。もちろん、望まれる暫定的な成果は、完全な軍事政権ではなく、新憲法が制定されるまでの間、土俵に立てる暫定的な権威であることは明らかだ。この段階だけでも非常にリスキーなビジネスだが、現在のロシア国内政治の構造を考えれば避けられない。

 外部支援としては、反体制派の内部およびディアスポラとのコミュニケーションの強化、ロシアへの情報発信プログラムの大幅な強化(米国の情報技術力の長年の低下のため複雑化している)などがある。また、ロシア経済の状況を考慮すれば、必ずしも多額ではない資金援助も重要であろう。政権交代に関してワシントンが公言することは、反体制派や他の外国の同盟国と協調して行うべきである。われわれの行動を秘密にすることは不可能かもしれないが、大げさに宣伝する必要はないだろう。

外国の関与は反体制派を危険にさらし、プーチンにプロパガンダの機会を与えることになると反対する人もいるだろう。手短に言えば、彼はすでにこの点を指摘しており、われわれが何を言おうが何をしようが、それを続けるだろう。私たちの指標は、反体制派自身が外部からの援助に価値を見出すかどうかである。おそらく、彼らの費用便益分析では、プーチンの反米暴言を恐れるより、支援を歓迎するはずだ。ロシア人は、以前からそれを聞いている。

 プーチン政権のその後が、最重要問題となるが、ロシア人はすでに選択肢を考えている。当然ながら、後継政権を作るのは一義的には自分たちの仕事だからだ。ソ連邦崩壊後、多くの失敗を経験しただけに、今回は謙虚な姿勢で臨むべきで、早急な調査・計画が必要だ。

 

 

ロシア連邦とベラルーシ共和国の軍隊によるザパド2021年合同戦略演習を見守るプーチン大統領。

 

 ワシントンの明白な戦略的目的は、ソ連崩壊後と同様に、ロシアを西側へ同盟させ、NATOの適合候補とすることだ。しかし、そのような新ロシアに不満を持つ勢力もあろう。中国は、完全な衛星国とまで言わないまでも、北京のジュニアパートナーになりつつある現政権の崩壊は歓迎できない。中国が軍事含めプーチンを支援する可能性は否定できない。

 ロシアの体制転換は困難とはいえ、アメリカが100年以上にわたり偶発的に追求してきた平和で安全なヨーロッパという目標が、国益の中心であることに変わりはない。遠慮している場合ではないのだ。■

 

Putin Must Go: Now Is the Time For Regime Change in Russia - 19FortyFive

ByJohn Bolton

 

Ambassador John R. Bolton served as national security adviser under President Donald J. Trump. He is the author of “The Room Where It Happened: A White House Memoir.” You can follow him on Twitter: @AmbJohnBolton.

In this article:featured, Putin, Russia, Ukraine, War in Ukraine

WRITTEN BYJohn Bolton

Ambassador John R. Bolton served as national security adviser under President Donald J. Trump. He is the author of “The Room Where It Happened: A White House Memoir.” You can follow him on Twitter: @AmbJohnBolton.


2022年4月7日木曜日

ウクライナ戦争についてヨーロッパ、ロシアへの米国の知識の欠如で警鐘を鳴らすボルトン大使のエッセイを御覧ください。

 

John Bolton: Putin’s 30 Or 100 Year War For Ukraine

WRITTEN BYJohn Bolton

 

プーチンはウクライナを30年、100年戦争と見ている。

シアによる2度目のウクライナ侵攻から6週間、モスクワの圧倒的なまでの軍事的失敗へ西側諸国の関心の的だ。そのため、誤った認識が常識となりつつあり、今後の米国の政策が歪められ、現在より効果が下がる可能性がある。以下、あくまで例示であり、すべて網羅的する意図はない。

これはプーチンの戦争ではない、ロシアの戦争だ。西側諸国の指導者たちは、プーチン一人が侵略の責任を負うと考えることで、自ら欺いている。ロシア大統領として最終決定を下すのは当然だが、ウクライナ(ベラルーシなどかつてのソビエト共和国は言うに及ばず)は母なるロシアに返すべきだと熱く信じているのは、プーチン一人だけではない。

プーチンの顧問団の中核をなす「権力者」シロビキも同様で、「ウクライナは破綻した非合法国家だ」とを彼らから直接聞いたことがある。

クレムリン指導者たちは、失われた帝国を再び取り戻すことに30年にわたり執念を燃やしてきた。今日の戦争に関する報道は、しばしばクリミア併合やドンバス侵攻に関する2014年のニュース記事のように不気味で混乱したものに写るが、これは西側の歴史的無知と注意力の欠如を反映したものにすぎない。シロビキには血生臭い欠点が多数あるが、注意力は欠如していない。

米メディアやバイデン政権が、プーチンに対するロシア国民の支持が高まっているのを示す独立世論調査の結果に戸惑うのも無理はない。すべてのロシア人が、プーチンの非同盟主義を彼ほど深く感じているわけではない。しかし、十分多数の国民がプーチン支持を表明し、プーチン政権を脅かすものが何であれ、世論は政権を支えている。

プーチンはいかれているわけではない。情報が不十分で不正確で悩んでいるわけでもない。プーチンの顧問団のすべてが、真実を伝えるのを恐れて、ひれ伏し、自慢しているわけでもない。

バイデン政権による反対分析は、ロシアに対抗する情報戦の一部かもしれないが、クレムリンの実態を説明しきれていない。

独裁政権でも、ライバルの失敗を指摘し、彼らを悪者扱いするために十分な証拠を提供する補佐官は常に存在する。

アメリカ同様、ロシアにも複数の情報機関があり、官僚主義で影響力と注目度を競い合っている。それに、西側メディアの報道をモスクワに伝えるためにはロシア情報庁は不要だ。プーチン大統領に媚びる補佐官が、明らかな失敗の責任を負わされる人たちを庇っても、何の得にもならない。

ペンタゴンは、「プーチンは無知で少し頭がおかしい」とし、本人の情報不足がウクライナとロシア間の和平交渉の妨げにならないかと推測している。 モスクワにとって、交渉は単なるプロパガンダであり、好戦的な立場に合理性の美学を与えるものだ。 皮肉なことに、バイデン大統領はこのような話を一蹴した。「現時点では、確たる証拠がないため、あまり重視したくない」と述べたのである。

欧米はプーチンとその取り巻きがどれだけウクライナを重視しているか理解していかもしれないが、それはこちらの問題であって、向こうの問題ではない。これと同じ精神分析を2014年にも聞いたことがある。アンゲラ・メルケルらは、プーチンが 「現実から乖離している」と考えていると報じられた。現在米国にいる元プーチン側近のアドバイザー、アンドレイ・イラリオノフがメルケルを訂正した。 「西側諸国の人々は、プーチンが非合理的だとか、狂っていると考える。実は自分の論理で非常に合理的であり、準備も万端だ。現実離れしているのはプーチンではなく、欧米の方だ」。

この発言には真実がある。プーチンは何度も筆者に「あなたにはあなたの論理があり、我々には我々の論理がある」と語っていた。

問題の一端は、取り巻きではなく、プーチン自身にあるのかもしれない。彼は自分の先入観に反する厳しい事実を見過ごしたかもしれない。これは人間としてよくある失敗だ。しかし、アメリカが、プーチンは健全ではないと考えると、同じように重大な誤りとなる。さらに、ロシアの戦場での失敗は、軍部全体に蔓延する腐敗と無能に起因している可能性がある。 下級将校が部隊の戦力や即応性について虚偽報告を行い、給与や武器、配給、物資が闇市場に流れる「幽霊兵士」の存在が露呈している。20年間、ロシアは軍を改革し、近代化しようとしてきたが、ウクライナ紛争はその努力が成功とほど遠いものであったことを示している。

ロシアは戦略的ミスで大きな犠牲を払っているが、まだ敗戦したわけではない。ロシアは今回の侵攻を単独の目的で行っているのではない。クレムリンは、戦争の進展に応じて、選択肢を考えていたと思われる。キーウを占領し、ゼレンスキー政権を転覆させ、モスクワの支配下にあるクイスリング Quisling政権に置き換えることが、戦略上の最重要目標だったのだろう。 この戦略的失敗により、ロシアはウクライナで多くの機会を失い、その結果、モスクワは優先順位の高い目標を追求することになった。しかし、一度に多くをやろうとしたために、モスクワの到達目標は能力を大幅に上回り、広範囲にわたり失敗した。

広範囲にとしたが、致命的ではない。

将軍は常に前回の戦争を戦うという決まり文句がある。2014年、ロシアはほぼ発砲することなくクリミアを占領した。ウクライナ海軍の大部分がロシア側の手に渡った。ドンバス地方での戦闘はロシアにとって成功したとは言えないが、軍事的コストは高くなく、その後の欧米の制裁も効果的であった。モスクワの指導者たちは、2022年に同じようなシナリオを描いていたことは容易に想像できる。しかし、明らかに間違っていた。

さらに重要なのは、2月24日以降のロシアは戦力集中という基本的な軍事ドクトリンに違反したことだ。少数の重要目標を圧倒的兵力で狙うのではなく、モスクワは不十分な人員、火力、兵站で広範囲な攻撃を仕掛けた。ウクライナの英雄的抵抗は全く予想外であった。その結果、重要目標を達成できなかった。キーウ、ハルキフ、オデーサなどである。ロシア軍はウクライナ南部と東部で成功を収めたが、前進も圧倒的というにはほど遠い。

現在、ロシアは遅ればせながら、キーウ周辺やウクライナ北部都市から撤退し、おそらくベラルーシやロシアに戻り、再編成、強化、補給を行おうとしている。モスクワは北部で再挑戦するか、これらの軍を東部と南部に再展開することになる。グルジア、中東、その他の地域に展開する軍から援軍が到着している。メディアは、シリア兵がアサド政権に対するロシアのこれまでの好意に報いるため、ジュネーブ条約の講習を受けることなくウクライナに到着したと報じている。

クレムリンの現在の目標は、ウクライナ南部と東部の軍事的・政治的支配を最大化すること。ウクライナを完全征服する目標には、今のところ手が届かないが、それに代わる補助的な目標はたくさんある。 もしプーチンがこうした下位目標を達成できれば、ロシア国民に戦争は価値があったと説得し、欧米を「通常の」経済・政治関係へ復帰する誘導ができるだろう。

ほぼ間違いなく、第二段階の重要な目的は、ウクライナ国内で実質的にロシア寄りの地域を支配し、同国を二つに分割することである。クレムリンの目標は、ウクライナ南部、特に黒海の戦略的に重要な北部沿岸の支配と、ドニエプル川の東側からドニプロペトロフスク市、さらに北のロシア国境までのウクライナ東部である。大まかに言えば、(クリミアの他に)ウクライナの8つの州が関与している。ハリコフ、ルハンスク、ドネツク、ドニプロペトロフスク、ザポリジヤ、ケルソン、ミコライフ、オデーサの8州である。

これらの州は、ウクライナ語系、ウクライナ正教系、カトリック系が多い地域と比べ、ロシア語系、ロシア正教系が多い、あるいは実質的に多い。もちろん、これはクレムリンの見解であり、ウィルソン的な民族自決の実践に反する。ウクライナの人口分布はまだらであり、市民は宗教的忠誠心で両義的であったり葛藤があったりするため、こうした特徴づけは明確な線引きにならない。ロシアは領土すべてを征服できないかもしれないが、征服地が増えれば交渉力が強まる。

今のところ、ウクライナ東部におけるロシアの軍事的地位は比較的強固であり、「勝利」は十分に可能だ。しかし、黒海沿岸では、オデーサは今のところ手中にないようだ。しかし、モスクワが軍を再編し、陸海空を連携させ、欧米によるウクライナ軍への支援が不十分であれば、オデーサの奪取は可能であろう。 東部と南部の大部分が確保されたことで、ロシアは北部地域から撤退することで領土を「譲歩」できたが、もはや長期的には不可能だ。 プーチンは、西側諸国の関心と結束が弱まると期待している。そうなれば、ロシアを現在の国境付近とクリミアから追い出すことは不可能ではないにせよ、困難でコストのかかることになる。 占有物保有の原則Uti possidetisは依然として強力な外交的惰性の一形態である。

米国はリーダーシップを、NATOはパフォーマンスを強化する必要がある。NATOは完全に結束しているわけではない。

西側諸国は、ロシアに対する経済的な締め付けを強化し、ウクライナへの軍事支援を拡大・迅速化する上で、今より良い行動を取らなければならない。これまでのパフォーマンスはまちまちである。 同盟の結束に賛辞を送りながらも、西側諸国はほころびを見せている。英国・米国はハードウェアや情報の提供でリードしてきたが、フランスやドイツなどは遅れをとっており、ドイツの軍用ヘルメット5000個に始まり、30年以上前の旧東ドイツのシュトレーラ・ミサイルを提供したが機能しなかったなど失態が続いた。バイデン大統領は自ら率先した行動は示さず、議会や連合国の圧力を受けて遅ればせながら対応するか、まったく行動を起こさなかった。ポーランドのミグを譲渡する許可を出さない例もあった、

戦争が続く日々は、NATOの根本的で変えがたい恥を毎日示しているのを忘れてはならない。そもそも、信用がずたずたになりロシアを抑止できなかったこと(2008年のジョージア、2014年のウクライナ、2021年のアフガニスタン撤退)、選択的で不十分な制裁を通じて将来的に罰を与えるという著しく不十分な脅迫、まさに何もせずに米軍の可能性をも否定したバイデンの12月初旬の無理解があった。

このパターンは、早急に覆されなければならない。ロシアの失態を考えれば、ロシアがうまく一歩下がり、チャンスを待つreculer pour mieux sauteのに賭けるのは愚かだが、少なくともその可能性はある。 したがって、ウクライナ軍が(西側メディアによって不完全に伝えられた)緊張に耐えられなくなる前に、モスクワがその背中から離れるスローモーションの競争になっている可能性がある。 時間はモスクワの味方で、西側の補給努力が遅かったり不十分だと、破滅的な事態になりかねない。

欧米は制裁で統一できていない。欧州はロシアの石油とガスを買い続けており、中国、インドなどはロシア経済を支える金融のライフラインを提供中だ。制裁の実効性を高めるには、厳格な執行と、ロシアが作る抜け穴を塞ぐ強化が必要であろう。制裁体制は発表された日が最良の日であり、制裁実行国が少なくとも創造的でなければ、急速に低下する。歴史的に見ると、米国の制裁の実施と強化は明らかにまちまちであり、欧州は、礼儀正しく言えば、勤勉とは程遠い。現代史で最も効果的かつ包括的だった制裁は、1990年にクウェートに侵攻したイラクに課されたものだった。米国と同盟国が実施したが、それでもサダムの侵略軍を追い出すには不十分だった。

同盟にとって最大の試練は、モスクワが本格的な交渉に踏み切る瞬間に、外交的な結束を維持することであろう。シロビキは、西側諸国が金に弱いことを見抜いており、共産主義者の先達のようなイデオロギー的理由とは異なる。すでにフランスとドイツは、一方の勢力が決定的な勝利を収める前に軍事的な敵対関係を終わらせ、紛争を実質的に解決せず凍結する方法を模索している。確かにヨーロッパらしいアプローチであろう。しかし、もしロシアが今回の軍事的大失敗から少しでも勝利の香りを漂わせれば、ヨーロッパや世界、特に北京に大きな影響を与えるだろう。NATOの結束について語ると、ワシントンのエリート層の心は温まるかもしれないが、そのような話はすべて代償に見合うだけの価値がある。アメリカのリーダーシップとNATOのパフォーマンスは、これまで不十分だった。それを直視すべきだ。

明確な教訓として、アメリカ人は早合点してはいけない。これはヨーロッパの紛争である。三十年戦争や百年戦争を考えるべきだ。プーチンはそう考えている。■

John Bolton: Putin's 30 or 100 Year War For Ukraine - 19FortyFive

Ambassador John R. Bolton served as national security adviser under President Donald J. Trump. He is the author of “The Room Where It Happened: A White House Memoir.” You can follow him on Twitter: @AmbJohnBolto