スキップしてメイン コンテンツに移動

ボルトン大使寄稿 プーチンの退場とロシアの政権交代を望む

 

Vladimir Putin 2017 New Year Address to the Nation.

 

 バイデン大統領は、ロシアによる2度目の無謀なウクライナ侵攻の1カ月後の3月、プーチン大統領について「頼むから、この男に権力の座に留まってほしくない」と述べ、ワシントンポスト紙は「ロナルド・レーガン以来最も反抗的で攻撃的なロシアに関するアメリカ大統領によるスピーチ」と評した。しかしバイデンのスタッフは、「大統領が言いたかったのは、プーチンが近隣諸国や地域に対して権力を行使することは許されないということだ」と即座に撤回し、「ロシアにおけるプーチンの権力や政権交代に触れたのではない」と述べた。その後、バイデン自身は律儀に政権交代を撤回している。

 ロシアの政権交代なしに、ヨーロッパの平和と安全の長期的展望はない。ロシア人は、明白な理由のため、それを静かに議論し始めている。米国やその他の国にとって、この問題をなかったことにすることは、はるかに多くの害をもたらすだろう。

 最近のウクライナの軍事的な前進にもかかわらず、西側諸国はまだウクライナにおける「勝利」の定義を共有していない。先週、プーチンはウクライナの4州を「併合」し、2014年に「併合」されたクリミアに合流させた。戦争は激化し、ロシア人戦死者多数と経済的痛みを生んでいる。プーチンへの反発は高まり、若者は国外に脱出しつつある。もちろん、ウクライナの民間人・軍人犠牲者も多く、物的被害も甚大だ。NATOを威嚇するため、モスクワは再び核兵器のレトリックを振りかざし、ノルドストリーム・パイプラインを妨害している。欧州は来る冬を心配し、誰もが欧州の決意の耐久性を心配している。目先の停戦や実質的な終戦交渉、その後のプーチン政権との「正常な」関係をどうするのか、誰も予想できない。

 戦争がいつまでも続くのを避けるため、われわれは今の計算を変えなければならない。ロシア反体制派による政権交代を慎重に支援することが、答えかもしれない。ロシアが核保有国であることは明らかだが、それはウクライナの自衛を支援するのと同様に、政権交代を目指すことへの反論にはならない。ホワイトハウスの道徳的価値観の発信でクレムリンは力を得ており、こちらを「悪魔崇拝」と非難し、バイデンがしていないのに、アメリカがロシア政府を転覆させようとしていると主張している。 言っておくが、クレムリンは何十年もの間、われわれに対してこのようなことをしてきたのだ。われわれはすでにクレムリンを転覆させたと非難されているのだから、なぜその恩返しをしないのだろうか?

 ロシアの体制転換を阻む障害と不確定要素はかなり大きいが、乗り越えられないわけではない。なぜなら、プーチンを交代させるだけでは済まないからだ。プーチン側近も後継者候補が何人かいるはずだ。問題は、一人の人間ではなく、過去20年間に構築された集団指導体制だ。キューバ危機後、ニキータ・フルシチョフを引退させたような政治局の姿はない。政権全体が退場しなければならない。

 政権交代が最も難しい問題であることは間違いないが、それに外国の軍隊は必要ない。重要なのは、ロシア人自身が、真の権威者であるシロビキ(権力者)層の分裂を悪化させることだ。反体制派がその気になれば、権威主義的な政権と同様に、意見の相違や反感はすでに存在しているので、それを利用できる。 1991年にロシアのホワイトハウスの前で戦車の上に立ったボリス・エリツィンは、ソ連支配層の分裂を証明した。政権の一貫性と連帯が崩れれば、変革は可能だ

 ロシアの軍部、情報部、国内安全保障部の内部では、今回のウクライナ侵攻前後におけるモスクワのパフォーマンスに、衝撃、怒り、困惑、絶望があることはほぼ間違いない。政権交代を主導するのは、プーチン政権に個人的に深く関与する軍幹部や官僚ではなく、下士官や下級官僚であろう。プーチン政権を変えるため最も協力的なのは、大佐や一ツ星将官、そしてそれに相当する文民機関である。反体制派が政権交代を実現するために特定し、説得し、支援しなければならない意思決定者は、この人たちである。もちろん、望まれる暫定的な成果は、完全な軍事政権ではなく、新憲法が制定されるまでの間、土俵に立てる暫定的な権威であることは明らかだ。この段階だけでも非常にリスキーなビジネスだが、現在のロシア国内政治の構造を考えれば避けられない。

 外部支援としては、反体制派の内部およびディアスポラとのコミュニケーションの強化、ロシアへの情報発信プログラムの大幅な強化(米国の情報技術力の長年の低下のため複雑化している)などがある。また、ロシア経済の状況を考慮すれば、必ずしも多額ではない資金援助も重要であろう。政権交代に関してワシントンが公言することは、反体制派や他の外国の同盟国と協調して行うべきである。われわれの行動を秘密にすることは不可能かもしれないが、大げさに宣伝する必要はないだろう。

外国の関与は反体制派を危険にさらし、プーチンにプロパガンダの機会を与えることになると反対する人もいるだろう。手短に言えば、彼はすでにこの点を指摘しており、われわれが何を言おうが何をしようが、それを続けるだろう。私たちの指標は、反体制派自身が外部からの援助に価値を見出すかどうかである。おそらく、彼らの費用便益分析では、プーチンの反米暴言を恐れるより、支援を歓迎するはずだ。ロシア人は、以前からそれを聞いている。

 プーチン政権のその後が、最重要問題となるが、ロシア人はすでに選択肢を考えている。当然ながら、後継政権を作るのは一義的には自分たちの仕事だからだ。ソ連邦崩壊後、多くの失敗を経験しただけに、今回は謙虚な姿勢で臨むべきで、早急な調査・計画が必要だ。

 

 

ロシア連邦とベラルーシ共和国の軍隊によるザパド2021年合同戦略演習を見守るプーチン大統領。

 

 ワシントンの明白な戦略的目的は、ソ連崩壊後と同様に、ロシアを西側へ同盟させ、NATOの適合候補とすることだ。しかし、そのような新ロシアに不満を持つ勢力もあろう。中国は、完全な衛星国とまで言わないまでも、北京のジュニアパートナーになりつつある現政権の崩壊は歓迎できない。中国が軍事含めプーチンを支援する可能性は否定できない。

 ロシアの体制転換は困難とはいえ、アメリカが100年以上にわたり偶発的に追求してきた平和で安全なヨーロッパという目標が、国益の中心であることに変わりはない。遠慮している場合ではないのだ。■

 

Putin Must Go: Now Is the Time For Regime Change in Russia - 19FortyFive

ByJohn Bolton

 

Ambassador John R. Bolton served as national security adviser under President Donald J. Trump. He is the author of “The Room Where It Happened: A White House Memoir.” You can follow him on Twitter: @AmbJohnBolton.

In this article:featured, Putin, Russia, Ukraine, War in Ukraine

WRITTEN BYJohn Bolton

Ambassador John R. Bolton served as national security adviser under President Donald J. Trump. He is the author of “The Room Where It Happened: A White House Memoir.” You can follow him on Twitter: @AmbJohnBolton.


コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ