観閲式に参加する航空自衛隊のF-35戦闘機。(Photo credit should read KAZUHIRO NOGI/AFP via Getty Images)
世界第3の軍事大国としての日本
日本は軍備を増強し、「二国間主義プラス」で世界の安全保障を担えるだろうか。
今後5年間の予算目標を達成すれば、日本は軍事力(戦力、防衛費でそれぞれ5位、7位)から、米国、中国に次ぐ世界第3位の軍事大国になる。
GlobalDataによれば、日本の防衛費は来年の531億ドルから2027年に704億ドルに増加すると予想されている。ここでは年平均成長率7.3%を想定している。
冷戦後の日本は「デュアルヘッジ」を維持し、中国と米国双方との関係を促進し、自国の自主性を維持してきた。第二次世界大戦後の吉田ドクトリンの下、日本は防衛と経済を主に米国に依存し、自国の軍事力増強の許容範囲は限定的で、軍事費の上限はGDPの1%としてきた。
このような状態は、冷戦時代、脅威に対する西側同盟国のバランスで維持されていた。冷戦終焉とともに、日本は中国との貿易関係を強化し、アメリカからの経済的自立を目指したが、アメリカとの軍事的な結びつきを強化しつつ、中国との関係深化は棄却した。
日本はヘッジに終止符を
ウォーリック大学副学長で日本研究・国際政治学教授のクリストファー・ヒューズDr. Christopher Hughesは、9月7日、東西センターEast-West Centerのオンライン討論会で、「日本は米国依存をもはやヘッジしていない」と述べた。グローバルな経済外交と米国への軍事的依存という吉田ドクトリンを、日本の政策立案部門は、今日の防衛・安全保障上の課題へ有効な戦略だと考えていない。
吉田は日本が永久に非軍事大国とすることを意図していたわけではなく、経済発展を優先し、軍事力整備はその後でいいと考えていた。地域的な脅威が存在する現代の多極化世界では、日本の反軍事的な傾向は支持されなくなっている。2015年以降の主要戦略は日米二国間同盟の強化に回帰した。
ヒューズが著書『Japan as a Global Military Power: New Capabilities, Alliance Integration, Bilateralism-Plus』で提示した日本の軍事面に関する新しい分析では、日本は「一層能力が高く、信頼できる、不可欠なまで統合された米国の同盟国」となることで、厳しい外部セキュリティ環境に対応しようとしていると論じている。
グローバル展開に向けた自衛隊の整備
自衛隊は作戦能力と共同作戦能力の向上を目指すことで、多次元的な防衛力へ移行しつつある。近代化により、陸、海、空三軍はより緊密に連携し、サイバー作戦や宇宙など新領域にも踏み込んでいる。
三軍は、グローバル展開の可能性を秘めた先進能力を大幅に整備している。航空分野だけでも、日本は2013年より川崎P-1を導入し、現在33機を供用中で、さらに60機がP-3Cの後継機として発注中だ。また、2013年に日本はロッキード・マーチンとF-35A機導入の契約を締結し、その後2019年に契約を拡大てF-35Aを合計105機、F-35Bを42機取得することになった。最近では、2020年に第6世代ステルス戦闘機F-Xを100機近く開発する契約を三菱重工業と締結している。
海軍の分野では、日本は、いずも型ヘリ空母をF-35B戦闘機運用可能な本格的空母に改装することにより、ブルーウォーター能力を拡大している。水上艦隊は40隻以上のフリゲート艦駆逐艦を保有し、「そうりゅう」型潜水艦も保有している。
これは世界展開できる強力な艦隊である一方、東京は能力の多くを国土防衛、特に中国の侵略の危険にさらされる南西諸島の防衛に充てている。自衛隊と米軍は、米国の全体的な戦略に統合され、島嶼防衛、そして潜在的に台湾防衛において、行動を「ミラーリング」し始めている。「もう一つの重要な変化は、必要であれば、日本がグローバルな責任を負う可能性があるということです」とヒューズは述べている。
国際関係と集団的安全保障
北朝鮮の軍事的脅威への抑止力の強化への取り組みの一環として、韓国、米国、日本の3カ国が対潜水艦演習を実施。(写真:韓国国防省 via Getty Images)
「日本の軍事政策についての過去の分析多数は時代遅れの見解のままだった」とヒューズは言う。日本が国際的な安全保障協力を通じ、米国から自立性を高めると期待すれば、国際協力を期待する楽観的なパートナーにとって失望することになる。
日本は、日米同盟と米国の安全保障システムを通じ、ある程度までの地域防衛を含む防衛責任をさらに受け入れる方向にシフトしている。
しかし、東京がパートナーと共に行う活動や、地域的・世界的な軍事協力の拡大は、量的には増加しているものの、本質的には米国中心の自国防衛アーキテクチャを強化するためのものである。「日本はグローバルな軍事大国となりつつあるが、それは非常に選択的であり、これらのパラメータの範囲内」とヒューズは言う。
「日本は世界に打って出るだろう。他のパートナーとの協力も増えるだろう。しかし、あくまで日米同盟と自国の安全保障のためにのみ行われる」。
日本の関心領域が狭くても、米国の地域的・世界的安全保障システムを支え、支援し、再投資するため、日本は集団的自衛権の責任を負う必要が生まれる。ヒューズはこれを、2015年以降に初めて現れた「大きな変化」と捉える。
二国間主義プラスと「プラグアンドプレイ」同盟
「吉田ドクトリンから安倍ドクトリンへ、そして平和への積極的な貢献という話へとシフトしている」。
日本はこの数十年、他国と多くの横の安全保障防衛関係を構築し、新たに二国間、多国間、ミニ横の関係を構築してきた。機能的には、これらは日米同盟システムの延長で機能し、同盟をテンプレートとした統合抑止を実現する。
他の同盟国を日米中心の同盟システムに統合できる、「プラグ・アンド・プレイ」とヒューズは言う。
日本では国際貢献という言葉を使うが、本質的には米国との関係を強化をめざしている。
ヒューズはこのアプローチを「二国間主義プラス」と表現する。このアプローチは、多国間のアイデンティティを求めたり、米国から離反することを意味しないが、既存の日米安全保障関係を強化するネットワークや新しい関係を構築する。「日本は、米国がこの地域や日本の防衛にコミットすることに疑念を抱くたびに、それを倍加させます」とヒューズは言い、米国含む他の国々と安全保障協定を結び、同盟を再投資して強固なものにする。
安倍晋三は首相としてこれを新たなドクトリンとして確立し、米国との協力を深め、他国とのヘッジを減らしてきた。改訂版の日米防衛ガイドラインを見ると、日本が同盟の内外で得たヘッジの利益の多数を断念しようとしていることは明らかとヒューズは見る。
日本の二国間主義に対する牽制機能の潜在性
カリフォーニア大学サンディエゴ校グローバル政策戦略学部名誉教授エリス・クラウス博士Dr. Ellis Kraussは、ヒューズの論評を受け、日本が日米同盟を通じグローバルパワーとして活動する上で課題に直面していると指摘する。「日本が経済的に中国に依存していることは、二国間主義への最大の制限、あるいは牽制の一つだろう」とクラウスは、日本の米国への軍事的依存とその同盟内での行動能力は、中国のため地域内の貿易関係やある程度の良好な関係を維持する必要性で抑制されていると推測している。
東西センター討論会でヒューズは、日本の関係は経済的関与で複雑になっており、日本は重要な技術や投資などの主要分野で中国にとって「不可欠の」存在になりつつあると認めた。「日本は、米国の一部の人々が言うようなデカップリング(切り離し)は望んでいない」。
しかし、経済安全保障、主要サプライチェーン、主要技術、レアメタルなどについては、中国は日本の「敵」であることを認識している。
経済面の懸念を他の優先事項との関連で考慮されなければならず、強制力を有する最終決定を下すのは、経済であるとヒューズは主張する。インド太平洋地域における軍事態勢の強化が、その背景になる。「中国は、日本の領土でも、シーレーンのある台湾でも、日本の国家安全保障のレッドラインを越えてきている。これは、日本にとってかなり深刻な問題です」。■
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