アメリカのF-35戦闘機は今年3月に太平洋上空で中国の第5世代機J-20と少なくとも1回接近遭遇したが、空軍関係者の反応はやや複雑だ。
太平洋空軍司令官は、戦闘機そのものは「眠れなくなるほどのものではない」としながらも、中国初のステルス機の運用について肯定的な見解を示した。
太平洋空軍司令のケネス・ウィルスバック大将Gen. Kenneth Wilsbach は、ミッチェル航空宇宙研究所が3月にアップロードしたビデオで、「向こうがJ-20で何をするつもりなのかを語るのはやや時期尚早だ。
「しかし、向こうがかなりうまく操縦していることに気づいている。最近、東シナ海でF-35がJ-20も比較的接近し、交戦ではないものの、J-20に関連する指揮統制に比較的感銘を受けた事案が発生した」と述べた。
J-20 Mighty Dragon (Wikimedia Commons)
2010年にロシアのSu-57フェロンが中国のJ-20を打ち負かしたにもかかわらず、ロシアの限られた防衛予算と苦しい経済のために、ステルス機プログラムの進展は遅く、何度も挫折している。その結果、2011年に初飛行した中国の成都J-20マイティドラゴンは、2017年にSu-57を3年の差で破り就航に成功した。それ以来、中国は150機ものステルス戦闘機を生産し、ロシアのSu-57の生産量を急速に追い越し、世界のステルス戦闘機で中国は堂々2位につけている。
J-20のルーツは、1990年代後半に始まった中国のJ-XX計画にさかのぼる。F-22ラプターの初飛行から約11年後の2008年に、成都のプロジェクト718が、中国初のステルス戦闘機の基礎として前進することが決定された。ここで選ばれた設計は、2014年に大幅修正を経て、2017年に「戦闘準備完了」と宣言され、生産が開始されることになる。
F-35 (top), J-20 (bottom)
中国製航空機多数と同様に、J-20はゼロから設計されたわけではない証拠がある。具体的には、アメリカのF-35とF-22プログラム、そして今は亡きロシアのMiG1.44である。しかし、MiGとの比較が主にデザインの類似性に基づいているのに対し、アメリカ製戦闘機との比較は、中国が両プログラムの大量の設計文書にアクセスしたことに基づいている。
2014年8月、カナダ在住の中国人、スー・ビン(スティーブン・スーともよく名乗っていた)は、中国政府のためボーイングやロッキード・マーチンといった米航空企業から63万点以上のファイルを盗むハッキング活動で逮捕されたが、証拠として提出された本人のメールによると「(中国は)アメリカのレベルに急速に追いつける...(そして)巨人の肩の上に容易に立てる」とあり、F-22とF-35の「青写真」などが、このハッキング活動により盗まれた。
Chengdu J-20 (Wikimedia Commons)
単座双発の中国の戦闘機は、F-22の44インチに少し及ばない42フィート以上の翼幅と、F-22の62インチよりかなり長い69フィート7インチの全長を持っている。中国は、WS-15と呼ばれる第5世代エンジンの整備に苦労している。このエンジンは、1基あたり推力約44,000ポンドを生み出すと予想されている。その結果、現在のJ-20の多くは、ロシア製のAL-31(推力33,000ポンド)か、より最近では、中国独自のWS-10Cを搭載し飛行している。
A pair of Chengdu J-20 Mighty Dragons (Wikimedia Commons)
最高速度マッハ2、航続距離は1,100海里、航続可能距離は6万6,000フィートである。中・長距離ミサイルを4発搭載できるほか、胴体の左右にある小型の二次ベイに短距離空対空ミサイルを2発追加搭載できる。
J-20はしばしばアメリカの制空戦闘機F-22ラプターと比較されるが、技術的に言えば、異なる役割を果たす設計だ。ラプターは常に空戦の支配すを目的としているが、J-20は敵地の奥深くまで飛び、F-35のような対地攻撃をめざしている。
ウィルスバック大将は今月初め、報道陣に「心配するほどのことではない」と語った。「我々は彼らを注意深く観察し、彼らがどう感じ、どう運用するかを見ている」。
J-20 Mighty Dragon (Wikimedia Commons)
中国は、F-22の空戦能力との差を埋めるため多大なエネルギーと資源を投入し、推力ベクトル制御などの新システムを組み込んで、よりダイナミックなドッグファイターに仕上げている。最近、J-20は空対空戦の役割を強調する演習で活用されている。中国は、同機をF-22やF-35のア米ステルス戦闘機への対抗手段として見なしているからだ。
ウィルスバック大将によれば、「我々は比較的専門的に見ているが、あちらが(J-20で)何を意図しているかを正確に伝えるにのはまだ早すぎる、多任務をこなすF-35のようになるのか、空対地能力を持つ制空権戦闘機F-22のようになるのか」。
J-20の空対空能力は、各種兵器システムによって強化されており、特に長距離空対空ミサイルPL-15で強化されている。PL-15はデュアルパルス固体燃料ロケットモーターによりマッハ4以上の速度を出すことができ、航空機、ドローン、巡航ミサイルと120マイルもの距離で交戦させることができると言われる。
もちろん、その距離から実際に空中の目標に命中させるのは並大抵のことではない。PL-15は、高速移動するターゲットを監視するため、ミッドコースの双方向データリンクを利用し、中国の陜西KJ-500のような付近の指揮統制機からの最新情報で小型アクティブ電子スキャンアレイレーダーシーカーを補強する。
「長距離空対空ミサイルの一部は、KJ-500によって支援されています。このキルチェーンを中断させることが大きな関心事です」。■
F-35s encountered China's J-20: Here's what the Air Force said about it - Sandboxx
Alex Hollings | October 4, 2022
Alex Hollings
Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University.
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