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嘉手納基地のUSAFイーグル飛行隊が撤収へ。以後はローテーション分遣隊が対応。南西シフトを続ける自衛隊にもあらたな展開となるか。中国への抑止力への影響も心配。

  

U.S. F-15s To Leave Okinawa Without Permanent Replacement: Report

Getty Images

 

米空軍が2023年から嘉手納基地の戦闘機部隊をローテーション戦闘機分遣隊に置き換える計画であるとの報道がある

 

ィナンシャル・タイムズ報道によると、沖縄の嘉手納基地にある米空軍唯一の国外配備F-15C/Dイーグル部隊が来年撤収する。この動きは、第18航空団隷下の現在の常設部隊が、ローテーション戦闘機分遣隊に取って代わられることを意味する。当然ながら、このニュースは、中国の軍事力と政治的野心が地域内で拡大しているときに、逆行措置との批判がすでに出ている。

 元太平洋空軍副司令官で、自身も元F-15パイロットであるデビッド・デプテューラは、FTに「中国へのメッセージは、米国は本気で軍事力低下を逆転させようとしていない、ということになる」と語った。「中国の劇的な行動を促すだろう」。

 

嘉手納基地で離陸前の飛行前手順を確認し、パイロットと連絡する米空軍第67航空整備隊のF-15イーグルのクルーチーフ。 U.S. Air Force photo by Senior Airman Maeson L. Elleman/Released

 

 

「状況をよく知る6名」を引用した報告書によると、嘉手納からF-15C/Dを撤去する決定は、各機の機齢が原因のようで、「近代化プログラム」の一部として考えられている。また、F-15EXイーグルII戦闘機の購入計画を、当初予定の少なくとも144機から80機に削減する計画にも関連している可能性が高い。米空軍の「レガシー」イーグルは1979年9月に初めて嘉手納基地に到着し、それ以来、同基地に駐留している。

 

嘉手納基地の衛星画像 GOOGLE EARTH

 

 

嘉手納の2つのF-15C/D搭載飛行隊、第44戦闘飛行隊(FS)"ヴァンパイア "と第67FS "ファイティング・コックス ”の去就は以前から不明だった。

 しかし、嘉手納は太平洋空軍のトップであるケネス・ウィルスバック大将によって、すでにF-15EXの優先受領地として指定されていた。同大将は、嘉手納基地で運用中の2個飛行隊のF-15C/Dに代わりイーグルIIを希望しているという。

 今年3月に行われたミッチェル航空宇宙研究所のイベントで、ウィルスバック大将は「幸運にも代替機を手に入れることができたら、その用途は制空権と長距離兵器能力です」と説明していた。

 

 空軍の当初計画では、少なくとも144機のF-15EXを購入し、空軍州兵飛行隊に配備されているイーグルと1対1で代替し、さらに同機の訓練用飛行隊と試験・開発用の機体も追加するはずだった。嘉手納のイーグルは、フロリダ州部隊のひとつがF-35Aステルス機に変更されるため、その代替も可能だったろう。

 しかし、F-15EXが80機に減らされそうな今、嘉手納にイーグルを持ち込む望みは薄くなってきた。削減は他のF-15C/D部隊にも大きな影響を与え、最終的に飛行運用を停止する部隊も出てくるかもしれない。

 

2021年3月、フロリダ州エグリン空軍基地に到着した米空軍向けF-15EX初号機。 U.S. Air Force photo/1st Lt. Karissa Rodriguez

 

戦闘機飛行隊のローテーション配備は、アジア太平洋地域や欧州戦域、さらに戦闘地帯における空軍の作戦態勢の一部として馴染み深い。

 しかし、ジア太平洋地域に存在する特別な緊張で、沖縄から戦闘機2個飛行隊を撤収させる決定を特に物議をかもすものにしている。

 フィナンシャル・タイムズによると、日本政府と国防総省の一部の関係者は、この動きが「抑止力について中国に危険なシグナルを送りかねない」と懸念している。

 沖縄から米軍戦闘機の常駐を解除することを懸念する人々にとって、同記事に希望となり得る項目がひとつある。それは、「空軍は近いうちに(嘉手納のF-15C/Dを)常駐させるつもりはない」というものだ。これは、後日F-15EXを購入してから、あるいは全く別の機種の戦闘機を常駐させる可能性を残しているように思われる。

嘉手納第18航空団が現在脅威にさらされているという兆候はないが、イーグル飛行隊の撤収に伴い、KC-135R空中給油能力が減少する可能性は十分にある。嘉手納は現在、KC-135R飛行隊のほか、E-3 AWACSレーダー機、RC-135情報収集機、MC-130J特殊作戦輸送機、HH-60G戦闘捜索・救助ヘリコプターの飛行隊を擁している。

 本州の三沢基地にはF-16の2個飛行隊が配備されている。F-15は、バイパーとは異なるハイエンド長距離の制空戦闘機だ。中国軍機が台湾周辺や南シナ海、東シナ海でますます活発になる中、この能力は特に重要である。また、F-15は巡航ミサイル防衛でも重要な役割を担っており、この地域でも大きな課題となっている。AESA(アクティブ・エレクトロニック・スキャン・アレイ)レーダーを持たない三沢のF-16などは、この点での能力がはるかに劣る。

 このことを考えると、嘉手納基地の新計画でF-15が基地を明け渡した後、6カ月間F-22ステルス戦闘機の分遣隊を送ることになっているのは驚くことではない。ラプターは、同じく太平洋空軍隷下のアラスカ州エルメンドルフ空軍基地から派遣される。

 空軍の主要制空戦闘機であるF-22が、沖縄のF-15C/Dに取って代わることは明らかである。しかし、半年間のローテーションの後、何が起こるかはまだ明らかではない。F-22は、空軍全体で不足気味で、世界各地への定期配備や有事の際に需要がある。

 現在、ウクライナをめぐるロシアとの緊張の中、アラスカのF-22は一時的にポーランドに配備中だ。また、F-22の即戦力率は比較的低く、50%程度が完全に任務遂行可能な状態が続いている。F-22が約125機しかなく、他の約55機の多くが完全戦闘能力を持たず、訓練や試験作業に使用されている事実のため悪化している。その上、空軍はアップグレードされていないF-22はすべて退役させたいと考える一方で、議会の一部では巨額費用で前線に対応できるようにアップグレードしたいと考えている。

 

アラスカ州エルメンドルフ・リチャードソン統合基地第3航空団第90戦闘飛行隊に所属するF-22は、2022年7月、ポーランドへのローテーションを前に、立ち寄ったイギリスのレイケンヒース空軍に着陸する U.S. Air Force photo by Airman Seleena Muhammad-Ali

 

F-22の嘉手納ローテーション継続に疑問があるのは明らかだ。しかし、どのような戦闘機であれ、沖縄に長期派遣することは、空軍全体、そしてその任務に関わる航空機や人員に大きな負担をかける。ローテーション分遣隊は、効率的で結束力が高まる利点がある一方で、常設部隊が持つ現地知識はない。現地の常駐部隊は、その地域と脅威を熟知し、各国部隊と広範な訓練を行い、その過程で長期関係を築いている可能性が高い。

 心配なのは、空軍がラプターの初回配備以降、「将来のローテーションは未定」との報道だ。本誌は、この計画について明確にしようと空軍にコンタクトを取った。

 ある飛行隊が嘉手納に到着し、別の飛行隊が出発するという「ヒール・トゥ・トゥ」のローテーションを希望しているようだが、FT紙取材に応じたデプトゥーラは、その実現性に疑念を表明した。

 「嘉手納に到着した戦闘機隊が別の戦闘機隊に交代する。だからローテーションを組んでいるのです。そのギャップを埋めるためF-22をローテーションさせて補うこともできるが、その場合、部隊にストレスがかかってしまう」。

 

 しかし全体的に見れば、嘉手納基地に関する明らかな変更は、ロイド・オースティン国防長官の言葉を借りれば、米国の防衛計画の「ペースメーカー」である中国に、国防総省がより焦点を当てている姿勢と矛盾するように思われる。

 中国の幅広い戦略的野心に関する現在の懸念の中心は、嘉手納の西方約370マイル台湾の状況だ。ナンシー・ペロシ米下院議長の訪問をきっかけに、中国が台湾上空でミサイルを発射するなど大規模軍事演習を行い、日本の防衛省によると、うち5発が日本の排他的経済水域(EEZ)に着弾し、東京が外交的抗議を行う事態に発展したことから、台湾を取り巻く緊張は夏以降特に高まっている。

 一方、ここ数カ月、記録的な数の中国軍機と軍艦が台湾海峡に入った。北京の軍当局は、「米国と台湾が政治的駆け引きを続け、台湾海峡の平和と安定を損なうことへの厳しい抑止力」と表現するように、すべては軍事態勢の一部だ。

 このような背景と、この地域における中国の幅広い軍事活動を考えれば、沖縄から戦闘機常駐部隊を撤収させるのは不可解に思える。しかし、もう一つの要因として考えられるのは、嘉手納の戦闘機が特に人民解放軍の長距離ミサイル攻撃に脆弱であることだ。中国のミサイルによる既設の空軍基地への脅威は、アジア太平洋地域で起こりうる紛争に備える米空軍をすでに変化させており、条件の悪い飛行場からの飛行を含む分散作戦に重点を置くようになっている。

 しかし、分散作戦を中心とした戦闘機の新しい「ヒール・トゥ・トゥ」ローテーション・プランの導入は、少なくとも嘉手納のようにインフラと支援資産が確立ずみの基地に展開する場合と比較して、訓練とロジスティックスの面で新しい需要をもたらすだろう。より広く言えば、この計画に内在する問題は、戦闘機隊がますます縮小する中で空軍が直面する問題が大きくなっていることを反映している。

 また、日本がこの動きにどう反応するかという問題もある。これは、米国が沖縄や九州とその周辺への防空提供について真剣でないことを示すだけでなく、アジア太平洋地域全体への取り組みにも疑問を投げかける可能性がある。日本の戦闘機が、中国やロシアなどの航空機に対応するため、迎撃回数を増やして対応に苦慮している現在、これは特に差し迫った懸念である。

 

 近年、自衛隊は「南西シフト」を行い、東シナ海における中国の脅威に再び焦点を当て、中国軍機に対するスクランブル発進の回数が著しく増加している。この姿勢の変化には、那覇基地にあるF-15J戦闘機の数を増やすことも含まれている。米軍のイーグルが沖縄から撤退することになり、日本は沖縄の航空資産をさらに強化する決定を下すかもしれない。一方、航空自衛隊は民間空港と施設を共有しているため、今でもスペースが限られている。

 嘉手納のイーグルが撤退しても、沖縄とその周辺地域の防空に悪影響が出ないよう、空軍がどれだけ強固なローテーション計画を準備できるか見守る必要がある。■

 

U.S. F-15s To Leave Okinawa Without Permanent Replacement: Report

BYTHOMAS NEWDICK|PUBLISHED OCT 27, 2022 3:58 PM

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