スキップしてメイン コンテンツに移動

北朝鮮発射のIRBMを日本が今回迎撃しなかった理由。ミサイル防衛の実相をより良く理解する必要をなぜメディアは伝えず、Jアラート誤作動を取り上げるのか。

 Why Japan Didn’t Try To Intercept The North Korean Ballistic Missile

日本のイージス駆逐艦JSこんごうでのスタンダードミサイル-3発射の様子 U.S. Navy photo

日本には中距離弾道ミサイル迎撃能力があるが、撃ち落とさない正当な理由がある

 10月4日に北朝鮮が発射し日本上空を通過した「火星12」中距離弾道ミサイル(IRBM)を撃破する能力があるものの、日本は避難勧告を出し、列車を一時的に停止させるにとどまった。東京が迎撃しない選択をした理由がある。

飛翔してくるIRBMの迎撃能力があることの意味は大きい。しかし、実際に北朝鮮が発射したミサイルに迎撃発射したことは、一度もなく、多くの問題を提起している。オクラホマ州フォートシルにある陸軍防空砲兵学校の前司令官退役陸軍大佐デビッド・シャンクDavid Shankは、火曜日の朝The War Zoneに以下語った。

「弾道ミサイルが太平洋に着弾するのであれば、交戦理由にならない」。シャンクは、ミサイル防衛についてNational Institute for Public Policyで論文を共同執筆したことがある。

シャンクによれば、宇宙、海、地上のレーダーやその他センサーが豊富にあり、発射を素早く検知し、大体の軌道や高度を割り出すことができるという。

日本は弾道ミサイルの探知、対応をこうすると説明した防衛省の広報資料。(Japanese Defense Ministry graphic)

弾道ミサイル発射の軌道と高度はレーダーや人工知能を搭載した他のセンサーで「発射後5分間とかなり早く認識でき」、その後更新できるとシャンクは述べた。

浜田靖一防衛大臣は、東京時間午前7時22分に発射された月曜日のミサイル飛翔は、約22分間続いたと記者団に語った。

最大高度約1,000km(約620マイル)で約4,600km(約2,900マイル)飛行し、午前7時28分頃から午前7時29分頃まで青森県上空を通過した」と述べた。「7時44分頃、日本の東方約3,200km(約2,000マイル)の日本の排他的経済水域外に落下したと推定されます」。

今回、日本が北朝鮮のIRBMを迎撃しなかったのは、自衛隊が「自衛隊の各種レーダー」を使い、日本に着弾する危険性がないと確認したためと浜田防衛相は述べた。

「ミサイルが我が国に飛来する危険性はないと判断したため、自衛隊法第82条の3に基づく弾道ミサイルの破壊措置はとらなかった」。

同法は、防衛大臣の勧告と首相の承認を得て、自衛隊がいつ、どのように迎撃を開始できるかを明記している。

いつ撃つべきか

シャンクは、月曜日の状況で迎撃ミサイル発射をためらう理由として、4つ挙げている。

第一は、着弾地点が太平洋上のどこかである場合、迎撃ミサイルを発射すると「状況をエスカレートする恐れがある」ということ。

2つ目は、「交戦することで日米の能力(早期警戒やイージス巡洋艦や駆逐艦のシステムが標的と交戦する場合など)を示すことになる」点だ。

3つ目は、失敗した場合、「アメリカ、日本、世界各地の同盟国や協力国に大きな懸念を与え、北朝鮮に勢いを与える」ことだ。

4つ目は、人口集中地などの重要インフラ上空での交戦は、「交戦による破片の落下で」被害をもたらす可能性があることだ。

HS-12ミサイルを視察する金正恩。同ミサイルの発射風景。 (KCNA)

日本には弾道ミサイル迎撃手段が2つある。1つは艦載型SM-3迎撃ミサイルで、高高度で目標に向かい巡航中のミサイルをミッドコース迎撃し広範囲防衛が可能だ。もうひとつはペイトリオット(PAC-3 MSE)ミサイルで、弾道ミサイルが目標に向かい超高速で降下する最終段階で迎撃する。

シャンクは、日本のミサイル防衛でのペイトリオットシステムの有効性には悲観的だ。

ペイトリオットシステムは、「可能性はあるが、命中確率は非常に低い」。「そうなるとSM-3がIRBM迎撃で唯一のシステムだ」と言う。

ペイトリオットは、短距離弾道ミサイルの最終飛翔段階での迎撃に適していると知られており、SM-3のようなミッドコース迎撃ミサイルのような広範囲での防御能力はない。

「SM-3はミッドコース防衛、パトリオットPAC-3はターミナル防衛を担当する」とワシントンDCの航空自衛隊駐在官菅井博之空将補Maj. Gen. Hiroyuki Sugai,はThe War Zoneに語っている。「それぞれ別の領域をカバーします。一般的に言って、ミッドコースディフェンスは広いエリアをカバーし、イージス艦は広いエリアの迎撃ができます」。

日本は自信たっぷりだ

菅井空将補は火曜日の朝、The War Zoneに対し、核兵器搭載可能な「火星12」のようなIRBMを「迎撃」に自衛隊は「自信がある」と述べた。

スタンダードミサイル3(SM-3)迎撃ミサイルがこの種の攻撃を防御する能力を日本に与えており、同ミサイルの設計更新でさらに多くの能力が実現した。

SM-3迎撃ミサイルは、イージス艦の弾道ミサイル防衛に対応した基幹システムで、ヒット・トゥ・キルの動力学キル・ビークルを使用する。

現在、海上自衛隊のイージス艦は、まや級2隻、あたご級2隻、こんごう級4隻で構成している。まや型はあたご型の発展形で、こんごう型は米海軍のアーレイ・バーク級駆逐艦の日本での派生型。

菅井空将補は、日本が2017年より購した新型迎撃ミサイルSM-3ブロックIIAの運用状況はコメントしなかった。新型は実戦配備中のSM-3より交戦範囲が広くなり、広範囲のミサイルの脅威に対応する。同ミサイルは、日米共同開発で生まれた。

一方、日本はSM-3迎撃ミサイルの陸上配備を断念している。

陸上配備型イージス・アショアシステム計画は、技術的な問題、コストの上昇、国内の批判の中、2020年に作業が中断された。後者には、迎撃ミサイルの破片が日本領土に着弾し、損害や負傷を引き起こす可能性があるとの懸念があり、システムのミサイル部分のテストが危険にさらされる恐れがあった。また、イージス・アショアシステムの強力なレーダーの放射線が健康に与える影響でも、国民から大きな懸念が寄せられた。

そこで日本はイージス弾道ミサイル防衛能力を持つ艦船を増強する。

 

イージス艦まやは同級駆逐艦の一号艦だ。Japan Ministry of Defense

日本政府は、巨大な新型艦船2隻の建造を計画している。まだ名前のないミサイル防衛艦は、標準排水量が約2万トンになる見込みで、現在のイージスまや型護衛艦の2倍以上となり、第二次世界大戦後の日本で最大の水上戦闘艦になりそうだ。

日本以外にアメリカもイージスシステムを装備した駆逐艦と巡洋艦の一部にSM-3を配備している。また、韓国とグアムにはTHAAD(Terminal High-Altitude Area Defense)システムを保有している。これも最終段階の迎撃システムだが、能力はペイトリオットよりはるかに優れており、IRBMからの特定地域防衛に適している。

無言の反応

北朝鮮のミサイルに対して、米国も日本も迎撃ミサイルを発射しなかった。しかし、米国と同盟国日本、韓国は、発射を受けて行動を起こした。

韓国時間の水曜日、アメリカと韓国は「北朝鮮の中距離弾道ミサイル(IRBM)発射の翌日、合同訓練で東海に4発の地対地ミサイルを発射した」と、聯合ニュースは韓国軍発表を引用して報じた。

聯合ニュースは「双方はそれぞれ陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)ミサイル2発を発射し、模擬標的を正確に打ち、同盟国がさらなる挑発を抑止する能力を示した」と報じている。

しかし、そのうち1発が誤射となり、江陵基地で爆発が発生した。

その前日、米インド太平洋軍と韓国空軍は韓国時間10月4日に西海上で合同演習を行い、「両国の相互運用性を示しながら、複合抑止力と動的攻撃能力を披露した」という。演習では、無人島の竹島にある射撃場で「共同直接攻撃弾(JDAM)の実弾攻撃を行った」。

 

 

北朝鮮の弾道ミサイル発射を受けて、日米韓空軍部隊が共同訓練を行った。米空軍第8航空団F-16ファイティング

ファルコンが韓国空軍第11航空団のF-15Kと共用直撃弾(JDAM)の実弾投下を行った。 (ROKAF photo)

さらに10月4日には、米海兵隊のF-35統合打撃戦闘機が航空自衛隊戦闘機と日本海上空で二国間演習を行った。

日米両国は北朝鮮IRBMを迎撃する能力があると主張しているが、実際に発射されたことはなく、デビッド・シャンクが指摘するように、火薬を乾いた状態にしておく理由はたくさんある。ミサイル防衛は、多くの人が認識しているような盾ではない。ミサイル防衛が機能するためには、多くが完璧に機能しなければならない。テストは粘り強く行われており、ある意味心強いが、実際の状況下でどの程度機能するかは疑問が残る。特に、複数ミサイルが一度に目標に向かって発射された場合、そうなる。

しかし、ある時点では、ミサイル発射をきっかけに、動力学的対応が必要となる時が来るかもしれない。北朝鮮の実験を動力学的に否定することが、ミサイル発射を未然に防ぐ重要な抑止力になると多くが考えている。特に、日本上空にミサイルを飛ばし、そ現実的な危険がある場合はそうである。

今のところ、北朝鮮情勢に関する他の多くのことと同様、日米は金正恩の弾道ミサイル発射実験を阻止することに関しては、現状維持にとどまっているようだ。■

 

Why Japan Didn't Try To Intercept The North Korean Ballistic Missile

BYHOWARD ALTMAN| PUBLISHED OCT 5, 2022 2:17 PM

THE WAR ZONE


コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ