Russian President Putin. Image Credit: Creative Commons.
ロシアのプーチン大統領は、不法に併合したウクライナの4地方に戒厳令を布告した。対象はザポリージヤ県、ケルソン県、ルハンスクとドネツクのいわゆる「人民共和国」だ。なぜ戒厳令を発したのか、ここに来ての戒厳令は何を意味するのか?
なぜ戒厳令なのか?
最初の質問については、答えは明白だ。ロシアはウクライナとの戦争に負けつつある。2月24日に侵攻開始したが、ロシア軍は占領地から押し戻されている。特に、ドニプロ川西岸のケルソン県の一部では、ウクライナ軍が奪還を目前にしている観がある。ロシア行政官や市民は東岸の安全な場所へ集団避難を始めている。プーチンは、戒厳令を発令することで、ウクライナの進出を止める、あるいは遅らせ、ロシアがまだ占領している地域の支配を維持できると明らかに期待している。
戒厳令はどう役立つか
まず、ロシア軍が一貫して無能さを示してきた戦場の実情には、何の影響も与えないだろう。また、ロシアによるウクライナへの大量虐殺的な砲撃にも影響はない。戒厳令のねらいは、ロシア占領当局がすでに行っていることだ。反対意見や政治活動を取り締まり、戦争努力のため資源を動員し、大量虐殺を追求し、組織的なレイプを可能にする。国内外で違法行為を行うならず者国家では、戒厳令で現在進行中の抑圧的な手段を技術的に合法化しても、ほとんど意味がない。
しかし、戒厳令は当局が次の抑圧的・動員的措置を導入し、強化することを認めている。
1) 「経済的、社会的、文化的に重要な物」は移動可能で、民間人は 「安全な地域 」に再定住させることができる。ロシアは工場やプラントを解体しロシアに輸送し、ウクライナ人をロシアに移住させることで占領地の民族浄化を期待する
2)「市民」は、防衛支援や緊急時の支援などのため労働力として徴用される可能性がある。ロシア当局が路上で一般市民を拉致し、占領地の危険な分野で無報酬で働かせることができる
3)「組織や市民の財産」は、防衛上の必要性から「奪取」できる。占領当局は、手に入れられるものすべてを没収し、盗み、略奪できる。汚職や密輸が盛んになりそうだ
4) 住民は、「必要なときはいつでも」呼び止められ、検査される。民間人への嫌がらせが増加し、それによりロシアへの強制送還に同意する動機が強まると予想される
当然ながら、プーチンは上の評価に反対するだろう。逆に母なるロシアを守るため資源と人民を大量動員することが勝利につながると考えているのだろう。しかし、その可能性は、戦争末期にヒトラーのフォルクスシュトゥルム(老若男女を武装集団に動員した「人民の嵐」)が、東の赤軍と西の連合軍を阻止できたかを考えればよい。
これらの措置は、当局が急成長するウクライナの地下抵抗運動と戦うのに役立つだろうか。現存する抑圧的な手段を合法化する限りにおいてのみ有効、つまり、ノーだ。
最終的に言えば、戒厳令発動は、ウクライナ軍とウクライナ・ゲリラの阻止にほとんど役にも立たないだろう。プーチンの大量虐殺政策に法的な面影を与え、軍や秘密警察の取り巻きを潤すだけだ。その意味で、戒厳令はウクライナにおけるロシア支配の劣化を早める可能性もある。
バイデン大統領の評価が的を得ている。「プーチンは信じられないほど困難な状況に置かれているのだろう。そして、唯一の手段は、ウクライナ市民を残忍に扱い、脅しで屈服させようとすることのようだ。市民は屈しないでしょう」。
プーチンの絶望の高まりを見て、ウクライナ人が降伏を考えるだろうか?戒厳令により、ロシアと占領地への戦略を変更させるだろうか?もちろん、その可能性はない。■
Why Putin Declared Martial Law in Parts of Ukraine: Desperation - 19FortyFive
Dr. Alexander Motyl is a professor of political science at Rutgers-Newark. A specialist on Ukraine, Russia, and the USSR, and on nationalism, revolutions, empires, and theory, he is the author of 10 books of nonfiction, including Pidsumky imperii (2009); Puti imperii (2004); Imperial Ends: The Decay, Collapse, and Revival of Empires (2001); Revolutions, Nations, Empires: Conceptual Limits and Theoretical Possibilities (1999); Dilemmas of Independence: Ukraine after Totalitarianism (1993); and The Turn to the Right: The Ideological Origins and Development of Ukrainian Nationalism, 1919–1929 (1980); the editor of 15 volumes, including The Encyclopedia of Nationalism (2000) and The Holodomor Reader (2012); and a contributor of dozens of articles to academic and policy journals, newspaper op-ed pages, and magazines. He also has a weekly blog, “Ukraine’s Orange Blues.”
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