スキップしてメイン コンテンツに移動

米海軍駆逐艦へのレーザー装備HELIOSの搭載が始まった

  

HELIOSが標的を破壊する想像図 Lockheed Martin illustration

 

軍艦艇への脅威は、ドローン群や対艦ミサイルの形で増え続けている。数十年にわたる実験の末、米海軍は海上で空からの脅威を抑止・防御できる低コストのソリューションの運用に近づいている。

 

 

海軍はロッキード・マーチンから、最初の高エナジーレーザー統合光学ダズラー監視システム(HELIOS)を2022会計年度の第3四半期に受領した。最大5マイル離れたターゲットに60キロワット以上の指向性エナジーを照射できるこのシステムは、改修中のフライトIIAアーレイ・バーク級駆逐艦に搭載されたと、同社広報は電子メールでNational Defenseに伝えてきた。

 

「HELIOSは、将来の脅威を抑止し、乗員をさらに保護し、艦の戦闘システムの有効性を強化するものです。HELIOSは、堅牢かつ強力なレーザー兵器システムの能力を段階的に提供する基盤となっています」。

 

海軍の予算書によるとHELIOSは、海軍のレーザーシステムファミリーの一部で、「レーザー兵器能力を増加させる増分戦略の基礎」として海軍が想定するプラットフォームの一部だ。

 

海軍は2023年予算で、このシステム群に約35百万ドルを要求しており、最初のシステムが海上運用される予想がある。

 

この兵器システムは、「対地戦や情報収集-監視-偵察の欠点に対応し、無人航空機を妨害・破壊し、高速攻撃艇を撃破する能力がある」と、文書に記されている。

 

この技術は、UAVや対艦ミサイルへの対抗用の現行システムや選択肢を大きく前進させる。米議会調査局は8月の報告書で、地対空ミサイルやガトリング砲では艦船の弾倉搭載数で制限があり、安価な無人機に展開した場合、コスト交戦比率が悪いと指摘した。

 

海軍の水上艦の弾倉を再装填するには、安全地帯まで数百マイル移動する可能性があると、報告書「海軍艦船レーザー」は述べている。

 

中国のような敵対国は、UAVと対艦ミサイル複数を投入でき、大量生産の「高い能力」を持つ。このため、海軍の防衛能力が無効になる可能性がある、と同報告書は述べている。

 

データ分析およびコンサルティング会社GlobalDataの陸上領域アナリスト、トリスタン・サウアーTristan Sauerは、「新たな脅威の包囲網に関し、現時点で最大の懸念は、マイクロUAVなど小型無人装備の大群や飽和攻撃、さらにどのようにターゲットを絞り、追跡し無効にするかということです」と述べている。

 

有人-無人チーミング(乗員付きプラットフォームと1機以上の無人機の連携)が実現的な技術になるにつれ、小資源国にも同技術が拡散していると、サウアーは指摘している。

 

「レーザー兵器は1発あたりコストが極めて低く、弾倉の制限もなく、出番が来たといえます」(サウアー)。

 

ロシアのウクライナ侵攻は、軍需品の備蓄不足がいかに疲弊させるかを浮き彫りにした。防衛関連企業には、COVID-19流行に関連したサプライチェーン問題に対処すると同時に、生産需要に追いつくのに苦労していると表明するところもある。

 

「これらの兵器は、わずかなエナジーで致死的、非致死的な効果を発揮するため、特に激甚紛争の場合、作戦の持続可能性を確保する上で非常に重要となる」とサウアーは述べている。

 

固体レーザー即応能力レーザー兵器システム(LaWs)の前回の導入は、USSポンセに一時的に設置された際だった。このシステムでは、最小クラスのドローンのような小型ターゲットの識別に苦労したという。

 

それがHELIOSで解決する問題の一つだ。ロッキード・マーチンによると、HELIOSは、利用可能な艦内電力を使用し継続動作するように設計だ。

 

同様に、新システムは出力と位置決めで従来のレーザー兵器より優れていると、同社広報は述べている。LaWsは30キロワットまでしか出力できず、長期的な設置は想定していなかったという。

 

HELIOSの設置は、カリフォーニア州サンディエゴで進行中のイージス艦の近代化改修と同時に行われていると、同社広報は述べている。イージス・ウェポン・システム(AWS)は、1980年代から運用されている海軍の指揮統制システムで、ロッキード・マーチンは、駆逐艦など複数艦船にまたがるシステムの近代化も請け負っている。

 

HELIOSは、イージス戦闘システムに統合され、恒久的な設置が可能になる。この兵器はスペクトルビーム複合ファイバーレーザーを使用し、LaWの「インコヒーレントに結合した」6つの高品質ファイバーレーザーより高いビーム品質を実現したと同社広報は述べている。

 

このレーザーには、破壊能力に加え衛星を妨害するオプションがあり、「ゲームを一変させる」戦争遂行能力を備えていると彼らは付け加えた。

 

ロッキード・マーティンが昨年発表した資料によると、このシステムは戦術的に拡張された距離で高速ターゲットを繰り返し攻撃できる能力を実証している。このシステムは、粗い光学追跡と細かい光学追跡を確立した後、水上戦闘システムセンターのイージス戦闘センサーが提供する軌道上で射撃管制ループを閉じたと、同資料は述べている。

 

Optical Dazzling Interdictor Navy(ODIN)は、敵プラットフォームが搭載する電気光学センサーと赤外線センサーを混乱させることで、システム妨害を可能する。HELIOSプログラムでは艦船の指揮統制アーキテクチャにこのシステムが完全に統合される初のケースとなる。

 

また、レーザー兵器は、レーザーによる破壊や目眩まし効果に加え、監視任務もこなす。監視能力がどのようにテストされているかについて同社広報はコメントを避けた。

 

「HELIOSはマルチミッションのレーザー兵器システムであり、監視を含むすべてのミッションは、海軍が海上作戦を行い、この新しい戦闘能力のための戦術、訓練、手順を開発するにつれて、時間をかけて進化していく」(ロッキード広報)。

 

この兵器が海上でどう使用されるかでは議論の余地がある。海軍がレーザー兵器の設置に他の艦船も検討しているかという質問に対して、同社広報は明言を避けた。

 

「HELIOSには拡張性があり、他の艦船や戦闘システムに適応できる 」と電子メールで述べている。

 

海軍は、各種艦船へのレーザー兵器搭載に関心を示している。昨年、サンアントニオ級USSポートランドで別のシステム - 固体レーザー - 技術成熟レーザー兵器システム実証機(LWSD)をテストした。2020年の海上テストでは、LWSDを使用してドローンを無効化した。

 

海軍の2023年の要求要求では、100キロワットのシステムの撤去とハードウェア処分をサポートするとある。

 

HELIOSプログラムで次のステップは、設置後のシステム試運転だ。予算要求によると、海上テストは2023年に開始されるとある。

 

「海軍は、戦闘員が[2023年]から運用中の海上環境でHELIOSを使い始めると、このゲームを変えるマルチミッション能力について多くを学び、得られた教訓は将来の開発努力に反映されます」と広報担当者は述べている。

 

このレーザーは、今年初めにバージニア州ウォーロップス島で陸上試験を完了したと、彼らは付け加えました。

 

このプログラムの最大の課題は、海軍の重層的な防衛への継続的な組み込みだ。

 

「艦船と戦闘システムの両方への統合と海洋化は、ストレスの多い海洋環境において指向性エナジー戦闘能力を提供するため重要である。「このシステムは、DDG51クラス駆逐艦のイージス戦闘システムのような層状防衛アーキテクチャで不可欠な部分として動作し、艦のスペース、重量、電力の制約内に収めなければなならない。

 

レーザーはアーレイ・バーク級のスペース、重量、電源の要件を満たす設計だが、別の艦種やイージス以外の戦闘システムを持つ艦船に組み込むには再設計が必要と指摘している。また、「本質的にスケーラブルでモジュール化された設計アーキテクチャ」でそのプロセスを可能にするとも述べている。

 

資料によれば、艦内スペースや電力の制限に応じ、120キロワット以上までシステムを拡張できる。これは、コンステレーション級の誘導ミサイルフリゲート艦や次世代誘導ミサイル駆逐艦DDG(X)のような将来の艦艇への導入を想定している。

 

「海軍の水上戦闘艦には大きなエナジー供給源があるので、米軍におけるレーザー兵器システム展開の自然な第一歩になると私は見ています」とサウアーは述べている。

 

しかし、小型艦船にレーザーを搭載するとなると、スペースと電力の制約が克服しなければならない重要な設計上のハードルであるとサウアーは述べている。

 

米国がレーザー技術の開発に取り組む間、敵国が指を加えてみているわけではない。中国やロシアは米国のような先進的レーザーシステムは持っていないが、レーザーは数年後により多くの領域で普及する可能性があると、戦略国際問題研究所主任研究員ミック・ライアンMick Ryanは述べている。

 

「船舶への搭載は一つの方法だが、陸上での使用は先の話だろう」と言う。

 

特にロシアは、ウクライナ侵攻時に実験用レーザーシステム「ザディラ」を使用したと自慢している、と指摘する。ロシアには自国の技術力を誇張する傾向があることから、このシステムが大きな影響を与えたとは考えられないが、紛争でUASが使用されることで、技術の進歩が促されると同氏は付け加えている。

 

海軍のレーザー兵器、陸軍の指向性エナジー機動短距離防空システムなど、国防総省の指向性エナジー技術は、敵対勢力に強いメッセージを送ると、彼は付け加えている。

 

「こうした先端技術を保有することで、潜在的な敵対者を抑止するわけですが、抑止力と影響力が働かない場合に戦わなければならない場合に、それが有効であることを確認したくなるのです」。■

 

 

Navy Destroyer Adds HELIOS Laser to Arsenal

10/19/2022

By Meredith Roaten

 


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...