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2025年8月1日金曜日

シリアの崩壊が始まった(National Security Journal)—民族宗教が入り乱れた中東でシリアについて日本人が理解に困難を感じるのは当然かも知れませんが、無視していいわけではありません。

 

地域内大国のイスラエルとトルコが暗躍を始めています。地政学は冷酷です。ともすれば内向きな日本の有権者が世界市民としての自覚と責任を感じ始めるのはいつなのでしょうか。

リアでは新イスラム主義政権下で暴力が加速しており、民族的・宗教的少数派への迫害も激化している。この悲劇は完全に予測可能なものだった。バラク・オバマ政権の最初から警告が批判派から出ていた。ワシントンのスンニ派アラブ過激派への接近と支援が悪影響を及ぼすだろうと。それでも、ジョー・バイデン政権は、バシャール・アル=アサドの世俗政権を打倒するため、その方針を変えなかった。米国の政策立案者の立場からすれば、アサドは2つの許し難い罪を犯した。シリアをイランの最も近い地域同盟国に変貌させ、ウラジーミル・プーチン率いるロシアとの結びつきを強化したことだ。2016年にシリア政府軍がスンニ派主体の反乱軍を撃破し、シリアの主要地域を再掌握する際に、ロシアの空軍力は重要な役割を果たした。

政権の支えと打倒

しかし、テヘランとモスクワがアサド政権を支える能力は、年月を経るにつれ徐々に衰えていった。

特にモスクワからの支援は、クレムリンが主要な戦略的焦点をウクライナ紛争に移すにつれ、信頼性が低下した。バイデン政権の最終年、アメリカ、イスラエル、サウジアラビア、トルコからなる事実上の同盟は、シリア反政府勢力を権力に就かせるための努力を強化した。

その動きは最終的に成功した。2024年12月、アルカイダ系組織だったハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)を率いるスンニ派イスラム主義連合が、アサド政権を打倒した。ワシントンとその同盟国は、2011年からこの目標に向け尽力していたが、その努力は60万人を超える死者や1300万人以上の避難民を伴う内戦を引き起こした。

バイデン政権の当局者や、確立されたメディアの帝国主義支持派の代弁者たちは、反政府勢力の勝利を「抑圧されたシリア人民の解放」と描きいた。2024年12月15日放送のCBS番組「60 Minutes」はこの典型的な例だった。このようなプロパガンダは、最も腐敗し、悪質な権威主義者たちさえも、自由と民主主義の支持者として描写するというワシントンの長く不名誉な伝統を引き継いだものだ。

敵の敵は

HTSが軍事的に勝利するまでは、米国政府は、この運動をテロ組織として指定していた。しかし、米国指導層は、この運動を大々的に美化し、不愉快な過去がまったくなかったかのように、新政権は欧米の界隈で称賛されている。

シリアに関する米国指導者のこのような政策の盲目さは、長年にわたり恥ずべきものである。シリア内戦の初期、一部の米国政策立案者やオピニオンリーダーは、特にオバマ政権時代にアルカイダとその同盟者たちとの協力を公然と提唱していた。例えば、元CIA長官のデビッド・ペトレイアスは、この組織の「より穏健な」一部は米国にとって有用な同盟国となり得るため、彼らに接近すべきだと主張していた。後にバイデン大統領の国家安全保障担当補佐官となるジェイク・サリバンも、同様の考え方を支持していた。

民族宗教国家

これは、ナイーブで破壊的な戦略だった。

シリアは、今も昔も、脆弱な民族・宗教のモザイクのような国だ。アラブ系住民が大部分を占め、内訳はスンニ派(アラブ人口の約 60%)、キリスト教徒(10~12%)、アラウィ派(シーア派の分派、同じく 10~12%)、そしてシーア派、キリスト教、ユダヤ教の要素を融合した宗派であるドルーズ派(約 5%)に分かれている。残りの人口は、主にスンニ派の少数民族で構成され、その大半はクルド人(シリア総人口の約10%)だ。

40年以上にわたり、アサド家はアラウィ派の基盤の強い忠誠心と、その派閥がキリスト教徒、ドルーズ派、その他の小規模な民族・宗教グループとの同盟関係を維持していたため、権力を維持してきた。理性的で合理的な人間なら、数十年にわたり鉄拳でシリアを支配してきたアサド家が、残虐な支配層であったことを否定する者はいないはずだ。しかし、既成の独裁政権の残虐性が、その反対勢力がより優れていることを自動的に意味するわけではない。

与党

その不快な現実が今や明らかになりつつある。

HTS支持派の宣伝の信憑性は、前例のない速度で崩壊している。新政権は、アルカイダ元メンバーの暫定大統領アフメド・アル・シャラーアが率いる政権で、報道によると多数の政治的反対派をほとんどまたは全くの法的手続きなしに処刑したとされている。また、数千人の(主に民間人)の命を奪う残虐な軍事攻撃を開始した。

重要な段階は2025年3月初旬に始まり、政府軍が地中海沿岸の主要なアラウィ派の故郷に対して攻撃を開始した。攻撃は1,500人以上の犠牲者を出した、ほとんどがアラウィ派だった。4月の政府軍の第二波攻撃はキリスト教徒とドルーズ派を標的とした。このエピソードで数百人の追加の犠牲者が出た。イスラム過激派の同調者たちも、キリスト教徒とドルーズ教徒の民間目標(教会を含む)に対し、テロ爆弾攻撃やその他の攻撃を実施した。

イスラム主義政権は、ベドウィン民兵のスンニ派同盟勢力と協調したと見られる新たな攻撃を初夏に展開した。この戦闘で、1,000人以上(主にドルーズ教徒)が死亡した。イスラエルがその後介入し、シリア政府の目標に対して空爆を実施、表向きは苦境にあるドルーズ教徒を保護するためだった。

アサド政権がテルアビブの怒りの対象ではなくなった今、これまでアサドのスンニ派のライバルたちと協力してきたイスラエル指導層にはダマスカスの新しいイスラム主義の支配者と協力する動機がほとんどない。

シリアは分割されるのか?

シリア国内で顕在化しつつある悲惨な国内情勢に加え、同国の地域的なライバルであるトルコとイスラエルという少なくとも 2 カ国が、傷ついた隣国を犠牲にして領土の奪い合いを行っているようだ。

イスラエルが、同国が数年前に併合したシリア・ゴラン高原に隣接する、主にドルーズ教徒が住むシリア南部のスワイダ県に地上部隊を派遣したことは、テルアビブがシリア南部の広大な地域を事実上支配下に置こうとしていることを示唆している。

トルコも少なくとも同程度に露骨な行動を取っている。トルコ政府(ワシントンの支援を受けて)は、アサド政権の弱体化を背景にクルド人が実現していた自治権の野心を放棄させるよう圧力をかけ、成功を収めた。イスタンブールはシリアの国境沿いの広大な緩衝地帯を事実上支配している。

次に何が起こるか?

米国と主要な中東同盟国がシリアで追求してきた政策は、人道的な面でも地政学的な面でも、恐ろしい失敗となる可能性が出てきた。アサドの退陣は、新たなスンニ派主導政権による宗教的・民族的少数派の迫害を特徴とする、より悪質な独裁体制の扉を開く可能性がある。またアサド退陣はまトルコとイスラエルの危険な拡張主義的野心を刺激する可能性がある。

ワシントンのシリア政策は、またしても小国を破滅に追い込み、不安定な地域でさらに多くの人道的な悲劇を招く条件を創出してしまった。

トランプ大統領は、米国をシリアから撤退させりべきだ。シリアにはさらに問題が迫っているように見え、ワシントンは状況をさらに悪化させないよう努めるべきだ。



The Collapse of Syria Has Begun

By

Ted Galen Carpenter

著者について:テッド・ギャレン・カーペンター

テッド・ゲイルン・カーペンターは、ケイトウ研究所の防衛と外交政策研究のシニアフェローでした。カーペンターは1986年から1995年までカト研究所の外交政策研究ディレクターを務め、1995年から2011年まで防衛と外交政策研究の副所長を務めました。


The Ruins of Syria

The Ruins of Syria. Image Credit: Creative Commons.


2025年1月29日水曜日

ロシア海軍がシリアのタルタス海軍基地へのアクセスを失った好機を米国は活かせるか(19fortyfive)―米海軍が同基地を使用できるか不明ですが、少なくとも中国が利を得る結果だけはごめんです。

 


Wikipedia Commons



ロシアがシリアのタルタス海軍基地から撤退を余儀なくされたことは、米国にとって戦略的好機だ


-シリア新政権はアサド政権より優れていないかもしれないが、基地を失うことは、地中海におけるロシアの戦力投射能力を阻害する

-軍事基地の世界的な状況は常に変化している

-アメリカは、単に自国のプレゼンスを拡大するのではなく、敵対国の基地の閉鎖を促したり、機会あれば占領する戦略を検討すべきだ

-このアプローチでアメリカの影響力を高めると同時に、直接的な軍事介入の必要性を減らし、より安定した世界秩序を促進する可能性がある




ロシアのタルタス海軍基地撤退が米国に教えること

アフメド・アル・シャラア政権とヘイ・アト・タハリール・アル・シャム政権下のシリア政府は、アサド政権に取って代わるほどの悪政を敷くことになるかもしれないが、シリアの地中海に面したタルトゥス港にあるロシア海軍基地の租借権を剥奪するとの決断は、アメリカにとってプラスに働く。ロシアの租借権を引き継ごうとアメリカが努力すれば、さらに大きなプラスになるかもしれない。

 確かに、ドナルド・トランプ大統領は、米軍の海外派遣を見極めることを公約に掲げ当選した。トランプ大統領は、米国があまりにも合法性や広範な知恵を無視したまま米軍を海外に派遣してきたと主張し、多くの米国人もそれに同意している。近接する競争が激化していることが、アメリカの勢力拡大を促し、自己推進的なダイナミズムを生み出した: ロシアと中国は海外でのプレゼンスを拡大し、アメリカのプレゼンス拡大を正当化した。

 単純にプレゼンス拡大のため基地争奪戦を繰り広げるよりも、トランプの時代により適した焦点は、競争相手の基地を閉鎖させ、米国のプレゼンスをより強固なものにする必要性をなくすか、あるいは単に彼らの戦略的景観を引き継ぐことだろう。結局のところ、基地を手に入れるのにタダより良い方法があるだろうか?

 国民は米軍が戦争に参加することを望まないものの、空白を埋めることは紛争の可能性を低くする。抑止力には配備が必要だが、撤退は敵対勢力を刺激する。


タルタスがなぜ重要なのか

タルタスにおけるロシアの歴史は、ロシアの力の浮き沈みを反映している。1967年、ソ連は第5地中海戦隊を編成し、東地中海で活動する米第6艦隊に対抗するとともに、エジプトにおけるソ連の野望を支援した。ソ連崩壊後、ロシア海軍は一時的に地中海から撤退したが、プーチン大統領は2013年5月に16隻の地中海機動部隊を創設し、タルタスに基地を置いた。ロシアが現在、少なくとも一時的に東地中海から撤退したことで、この地域ははるかに安全になった。ロシアの軍艦はまだこの海域を航行することができるが、近隣に物流拠点がなければ持続的な作戦は難しくなる。

 ロシアのキューバ基地は2002年に閉鎖され、ベトナム基地はその2年後に閉鎖された。ロシアは現在もスーダンとエリトリアに基地を求めているが、ほとんど計画中のままである。実際、ロシアが紅海での基地建設に近づいているように見えても、サウジアラビアやアラブ首長国連邦を通じた巧みな外交と資金提供によって、スーダンやエリトリアの政府高官は基地建設から遠ざかっている。

 ロシアが失った最初の基地はタルタスではない。ソビエトは1970年代半ばにベルベラの飛行場と深海港を建設したが、その10年後にソマリアが冷戦に翻弄され、それらを失っただけだった。


歴史が教えるもの

基地の譲渡は、多くのアメリカ人が思っている以上によくあることだ。 イタリアは1923年、リビアのトリポリのすぐ東にメラハ飛行場を建設した。イタリア軍とドイツ空軍は、英国がリビアを占領するまで、北アフリカ作戦で同基地を使用した。ウィールス空軍基地に改築されたこの基地は、1970年にリビアの指導者がアメリカ軍を追い出すまで、冷戦時代の地中海における米軍の主力基地だった。

 北ベトナムが南ベトナムを征服した後、アメリカはベトナムのカムラン湾に建設した基地をソビエトに奪われた。翌年、英国がバーレーンを去り、基地を米国に譲渡したことで、米海軍は地政学的な風向きの変化の恩恵を受けた。タリバンは現在、バグラム飛行場を含むアフガニスタンの米軍基地を支配しており、この施設を中国に貸し出す可能性がある。

 中国はまた、他の場所でもプレゼンスを拡大している。 人民解放軍-海軍は2017年にジブチに初の海外海軍基地を建設し、中国はこれを活用して米軍を妨害し、地域の安全保障を妨げている。例えば、米軍機のパイロットにレーザーを照射したり、中国船への攻撃を免除する代わりにフーシ派に武器を提供したとされる。

 アメリカはシリアでのロシアの敗北を喜ぶことができるが、今後ロシアが勝利したり、他の場所でアメリカが敗北すれば、西側諸国が得るメリットやクレムリンが被るデメリットを鈍らせる可能性がある。支配的な大国は栄枯盛衰を繰り返し、その運勢の変化に応じて拠点を獲得したり失ったりする。

 アメリカの戦略家にとっての疑問は3つある: 第一に、アメリカはいかにして敵対国の基地を閉鎖させることができるか。シリアの新政権はロシアを追い出した。ジブチでの政権交代以外に、中国と同じようなことができるのだろうか? 第二に、米国は敵対国が既存の基地を押収したり、機能不全に陥ったりするのを防ぐことができるのか。ロシアは2002年になりキューバのルルドSIGINT基地を去った。


中国はシリアの基地を奪うのか?

中国がシリアに進出してくるのを防ぐため、どのような政策があるだろうか?トランプ大統領は、中国がパナマ運河にもたらす課題に正しく焦点を当てるかもしれないが、フロリダ沖の中国基地はさらに脅威となる可能性がある。最後に、米軍基地のメリットを計るためにどのような計算が存在するのか。ソマリランドのベルベラに租借地を求めることは、戦略的な条件をすべて満たしている。グアムも同様だ。しかし、カタールとトルコに基地を維持することは、地域全体の安定を損なうホスト国の体制を免責するという点で、大きなコストをもたらす。米国はとっくの昔にフィリピンの基地を放棄しているが、中国の地域侵略は、その決定を再考する価値がある。

 米国防総省は米国のグローバルプレゼンスにあまりにも頻繁に行き当たりばったりの策で取り組み、敵対国の基地配置図に不変であるかのようにアプローチしている。どちらの姿勢も間違っている。もしトランプ大統領の国防チームが官僚的な集団思考とトンネル・ビジョンに挑戦したいと本当に望むのであれば、敵国の撤退を画策し、米軍の海外駐留をより計画的な戦略とすることから始めるべきかもしれない。■


Written ByMichael Rubin

Michael Rubin is a senior fellow at the American Enterprise Institute and director of policy analysis at the Middle East Forum. A former Pentagon official, Dr. Rubin has lived in post-revolution Iran, Yemen, and both pre- and postwar Iraq. He also spent time with the Taliban before 9/11. For more than a decade, he taught classes at sea about the Horn of Africa and Middle East conflicts, culture, and terrorism, to deployed US Navy and Marine units. Dr. Rubin is the author, coauthor, and coeditor of several books exploring diplomacy, Iranian history, Arab culture, Kurdish studies, and Shi’ite politics.


The Russian Navy Is Getting Kicked Out Of Its Tartus Naval Base in Syria

By

Michael Rubin

https://www.19fortyfive.com/2025/01/the-russian-navy-is-getting-kicked-out-of-its-tartus-naval-base-in-syria/


2024年12月26日木曜日

地中海で沈没したロシア貨物船はシリアとも関連(The War Zone)―あらためてロシアの発表は嘘ばかりだとわかりますね。しかしこんなに簡単に沈むとはロシア造船工学のレベルは大丈夫?

 A Russian cargo ship claimed to be heading to Syria, to take part in the Kremlin’s military withdrawal from that country, has sunk in the Mediterranean. The Ursa Major went down overnight between Spain and Algeria, with 14 crew members rescued and another two still unaccounted for. The incident comes amid uncertainty over the fate of the Russian naval base at Tartous on the Syrian coast, which provides Moscow with a vital foothold on the Mediterranean.  

via X



ウクライナの情報では、貨物船はロシアの物資を国外に持ち出すためシリアに向かっていたと主張しているが、モスクワは別の説明をしている


リアからのクレムリンの軍事撤退に参加するため向かっていたといわれるロシアの貨物船が地中海で沈没した。貨物船アーサ・メージャー Ursa Majorはスペインとアルジェリアの間で一夜にして沈没した。この事故は、モスクワに地中海での重要な足場となっているシリア沿岸のタルトゥス海軍基地の行方が不透明な中で発生した。

 ロシア外務省は、貨物船が機関室で爆発を起こし沈没したことを確認したが、原因は不明のままである。付近(ロス海)のタンカーから撮影されたビデオには、月曜日のGMT12:00から13:00の間に、ロシア船が右舷側に大きく傾き、船首が水面に低くなっている様子が映っていた。 その後、GMT午前1時20分頃に沈没した。

 スペインの海難救助機関Salvamento Marítimoによると、月曜日にアルメリア沖約57マイルの地点にいたアーサ・メージャーから遭難信号を受信した。 2隻の船とヘリコプターが救助に向かった。 スペインのパトロール艇が14人の乗組員を救命ボートから救出し、スペインのカルタヘナに運んだ。ロシアの軍艦も援助を提供し、後に救助活動を担当した。 ロシア外務省によると、乗組員2名が行方不明となっている。

 Salvamento Marítimoは、「難破船の残骸の可能性」をこの地域の船舶に警告し、「警戒を怠らず、広い海域を航行し」、目撃情報があれば当局に報告するよう促している。

 公開情報の船舶追跡データによると、同船はもともと12月11日にサンクトペテルブルク港を出港しており、最終目的地はロシア極東のウラジオストクであったとロシアは主張している。ロシアの説明では、全長467フィート、総排気量12,679トンの同船は、新しい原子力砕氷艦の建造に使用される380トンのクレーンや、建造に使用されるその他の部品を積んでいたという。

 しかし、ウクライナの軍事情報機関GURは、バッシャール・アル=アサド政権の崩壊後、この船はロシアの「武器と装備」をシリアから持ち出すためにシリアに向かっていたと主張している。

 GURは昨日、貨物船がジブラルタル海峡を通過した後、テレグラム・チャンネルでその主張を行った。

2024年12月17日、シリアのロシア・タルタス海軍基地の桟橋の端に密集する車両やその他の設備。 衛星画像 ©2024 Maxar Technologies


 同船を所有するオボロンロジスティカは、「ロシア国防省の軍事建設事業の一部」とされるロシアで有名な軍事請負業者だ。

 2009年に建造された同船は、クレムリンが本格的なウクライナ侵攻を開始した後の2022年3月、船主とあわせ米国による制裁下に置かれた。  それ以来、アーサ・メージャーは頻繁にシリアへ行き、軍事機材を輸送している。

 アーサ・メージャーは、もう1隻の制裁対象ロシア船スパルタと地中海の同じ海域にいた。両船は先週、ロシア海軍の護衛を受けながら英仏海峡を通過していた。

 週末、ポルトガル国防省は、ポルトガル空軍が沖合で4隻のロシア船を監視していたことを確認した。スパルタのほか、掘削作業船バベニット、ロシア海軍の揚陸艦2隻(アレクサンドル・オトラコフスキーとイヴァン・グレン)である。

ロシア海軍の揚陸艦「イワン・グレン」(同級の主力艦)は週末、ポルトガル沖を航行した。 ポルトガル国防省


ロシア海軍の揚陸艦アレクサンドル・オトラコフスキー。ポルトガル国防省


 今月初め、ウクライナのGURは、スパルタがシリアから軍事装備品を移動させるため、シリア沿岸のタルタスにあるロシアの海軍基地に向かっているとも報じた。しかし、ロシア当局によると、スパルタはエジプトのポートサイドに向かっているという。

 昨日の事件では、2隻のうち1隻がポルトガル沖で故障したらしい。  GURはその船をスパルタと報じたが、実際にはアーサ・メージャー(以前はスパルタIII号と命名されていた)であった可能性もある。 ウクライナの軍事情報機関は、「メインエンジンの燃料パイプが故障した」と発表したが、この問題は比較的すぐに解決され、同船は再び動き始めた。


週末、ポルトガル沖を航行中の貨物船スパルタ。 ポルトガル国防省


 アーサ・メージャーとスパルタがタルタスに向かっていたことは独立機関によって確認されていないが、今回の事故は、ロシア軍がシリアから重要な装備を移動させるためにオボロンロジスティカのような請負業者に依存していることを補強している。ウクライナがロシア海軍の黒海艦隊の揚陸艦に多大な損害を与えて以来、この事態はさらに深刻になっている。

 まだ不明なのは、ロシア軍がシリアから完全に撤退するのか、それともタルトゥスやラタキア県フメイミムの空軍基地への何らかのアクセスを継続するのかということだ。

 昨日、クレムリン当局者は、ロシアがシリアの新支配者と接触し、シリアの2つの軍事施設の将来について話し合っていることを確認した。


2024年12月15日、シリアのラタキアにあるロシアのフメイミム空軍基地を離陸するロシアのIl-76キャンディッド輸送機。 背後で武装見張りをしているKa-52に注目。 写真:Izzettin Kasim/Anadolu via Getty Images


 ロシアにとって唯一の地中海の港であるタルトゥスの重要性は、いくら強調してもしすぎることはない。そのことを考えれば、モスクワが現在、アサド政権に対する攻撃を主導したイスラム主義組織ハヤト・タハリール・アル・シャーム(HTS)と交渉し、継続的なアクセスを確保しようとしているのは驚くべきことではない。

 一方、ロシア軍はシリア内陸部からの撤退を完了し、タルトゥスとフメイミムにのみ存在感を残している。


TOPSHOT - Russian soldiers stand by military pickups as they prepare to evacuate a position in Qamishli in northeastern Syria on December 12, 2024. Islamist-led rebels took the Syrian capital Damascus in a lightning offensive on December 8, ousting president Bashar al-Assad and ending five decades of Baath rule in the country. Assad was propped up by Russia, where he reportedly fled, as well as Iran and Lebanon's Hezbollah militant group. (Photo by Delil SOULEIMAN / AFP) (Photo by DELIL SOULEIMAN/AFP via Getty Images)

2024年12月12日、シリア北東部カミシュリの陣地から撤退する準備をするロシア軍兵士。 写真:DELIL SOULEIMAN / AFP DELIL SOULEIMAN


 以前シリアにあった装備の一部はリビアに移されており、ロシアが代替案として、より長期的な軍事プレゼンスを確立しようとしている可能性を示唆している。一部のアナリストは、アーサ・メージャー」がリビアの港に向かい、そこで380トンのクレーン2台を荷揚げし、リビア国民軍司令官ハリファ・ハフタルを支援するか、ロシアの恒久的な基地設立を支援する計画だったのではないかとさえ指摘している。

 HTSはロシアに対し、2025年2月20日までにタルトゥスとフメイミム両基地から最後の軍事部隊を撤収させるよう要求しているとの情報もあるが、これは未確認だ。この措置は、シリア新政権が自国に対する国際的制裁を解除することを目指していることと一致するだろう。

 最終的には、シリアにおけるロシア軍のプレゼンスに関する決定は、シリアの新しい統治者に委ねられる。何が起ころうとも、ロシアはシリアからの撤退を完了させるか、シリアの新指導者の下で軍事的プレゼンスを再確立するために、海運に大きく依存することになるだろう。■



What We Know About The Russian Cargo Ship That Sank In Mediterranean

Ukrainian intel claims the cargo ship was headed to Syria to take Russian materiel out of the country, but Moscow says otherwise.

Thomas Newdick

https://www.twz.com/news-features/what-we-know-about-the-russian-cargo-ship-that-sank-in-mediterranean


2024年12月25日水曜日

ISIS指導者、米軍の空爆で死亡(The Hill)―あわせてシリア国内に残るIS勢力への対抗として米軍部隊が一時的に増派されている事が判明しました。ただしシリアにはISの囚人が8千名残っています

 




軍は12月19日木曜日、シリアでの空爆でISISの指導者ともう一人のメンバーを殺害したと、ペンタゴンが金曜日に明らかにした。

 米中央軍(セントコム)部隊は、かつてバッシャール・アサド政権とロシアの戦闘員が支配していたダイル・アズ・ザウル県で、アブ・ユセフ(別名マフムード)を標的にしたと声明で発表した。

 セントコムによれば、空爆でISISの正体不明のもう一人も死亡したという。

「 前にも述べたように、米国は同盟国や地域のパートナーと協力して、ISISがシリアの現状を利用して再編成することを許さない」と、セントコム司令官マイケル・エリック・クリラ大将Centcom Commander Gen. Michael Erik Kurilla は報道発表で述べた。

 「ISISは、現在シリアの施設に拘束されている8000人以上のISIS工作員を脱獄させる意図を持っている。我々は、シリア国外での活動を行おうとしている者を含め指導者や工作員を積極的に標的にする」。"

 この空爆は、シリアに2,000人の米軍が駐留していることが明らかになったのと同じ日に行われた。

 国防総省のパット・ライダー報道官は、増派は「しばらくの間続いている」と述べ、部隊は「最低でも数カ月は」駐留していると述べた。  しかし、増派は対ISミッションの支援のためであり、12月8日のアサド政権崩壊とは無関係だと強調した。

 ライダー報道官によれば、「中核的な米軍兵士900名が9ヶ月から12ヶ月の公式展開の一環としてシリアにおり、さらに1100人の兵士が "任務要件の変化に対応するため "30日から90日の臨時ベースでシリアにいるという。

 この更新された数字は、権力の空白が懸念される中、米国がISISの復活を防ぐため、シリアにおけるISISの標的への空爆を強化していることによる。■


ISIS leader killed in US airstrike

by Ellen Mitchell - 12/20/24 4:31 PM ET


https://thehill.com/policy/defense/5051558-pentagon-strike-isis-leader/


2024年12月11日水曜日

シリアでのロシア人傭兵との戦闘について、米特殊部隊隊員が初めて詳細を明らかにした(The War Horse)

 Members of 5th Special Forces Group (A) conduct .50-caliber weapons training during counter-ISIS operations at Al Tanf garrison in southern Syria in November 2017. Photo by Staff Sgt. Jacob Connor, courtesy of the U.S. Army.


2017年11月、シリア南部のアル・タンフ駐屯地で、第5特殊部隊グループ(A)の隊員が、対ISIS作戦の一環として、.50口径の武器訓練を実施。 写真:ジェイコブ・コナー軍曹撮影、米陸軍提供



ーフラテス川上空に立ち込める霧の中に夏の嵐を思わせる爆発が閃いた。

 ロシア軍の銃砲が鳴り響き、シリア東部の焼け落ちた天然ガス精製所のアメリカ軍陣地を襲った。 追跡弾がシリアの空を縦横無尽に飛び交った。 特殊部隊の兵士たちは、トラックの装甲キャビン越しに爆発の轟音を感じた。

 上空では、アメリカ軍の最も強力な航空機F-15E ストライク・ファイター、AH-64 アパッチ攻撃ヘリコプター、MQ-9 リーパーが、ロシア軍の砲火と眼下の敵部隊を攻撃していた。


U.S. Army Spc. Joshua Dixon, an aircraft structural repairer with 90th Aviation Support, 11th Combat Aviation Brigade, sits on the side of an AH-64 Apache helicopter in the Operation Inherent Resolve Combined Joint Operations Area, which provides support against ISIS in Syria, May 28, 2022. Photo by Cpl. Nicholas Fuel, courtesy of the U.S. Army.

2022年5月28日、シリアのISISに対する支援を行う「不朽の決意統合共同作戦地域」で、第90航空支援部隊、第11戦闘航空旅団に所属する航空機構造修理士のジョシュア・ディクソン米陸軍特技兵は、AH-64アパッチヘリコプターの側面に座っていた。 写真:ニコラス・フュエル二等兵撮影、米陸軍提供。


特殊部隊チームはそれまで数か月間、ISISの戦闘員と戦闘を続けていたが、今回は異なっていた。ISISは、ほとんどの場合、迫撃砲数発か、AK-47による散弾銃の乱射だった。今回は、砲兵と装甲車両を備えた訓練されたロシア軍だった。

 これは公平な戦いで、米軍はそれに突入していった。

 「大晦日のニューヨークのようだった」と、精製所への即応部隊(QRF)の指揮を助けた元特殊部隊チーム軍曹のチャンスリーは本誌に語った。「これまで目撃した、いや、参加した中でも、圧倒的に最も混沌とした戦闘の光景だった」

 兵士たちの名字は、身元を保護するために伏せられている。

 2018年2月、米特殊部隊は、2015年に始まったISISに対するキャンペーンの一環でシリアに派遣された。しかし、数か月にわたってISISに対する作戦を成功させてきた後、チームは新たな敵に直面した。シリア政府支持派の軍勢約500人(ロシアの傭兵部隊ワグネル・グループを含む)が、シリア東部のコノコ天然ガス精製所で、米軍特殊部隊40人とシリア民主軍(SDF)の同盟軍の小部隊に対し、4時間にわたる攻撃を開始した。 その地域では最大規模の施設で、建物が良好な隠蔽場所となっていた。 ロシア軍は川の東側に足がかりを得た。

 米国の情報当局者によると、ワグネル・グループはシリアの石油・ガス田を占拠し、アサド政権のためにそれらを守り、傭兵たちが生産収益の一部を得ていた。ニューヨーク・タイムズが入手した文書には、製油所の戦闘員たちはシリアのバッシャール・アル・アサド大統領に忠誠を誓う「親政権部隊」と記載されていた。この部隊にはシリア政府軍兵士や民兵も含まれていたが、米軍および情報当局者は、その大半はロシアの民間人傭兵であり、おそらくはロシア政府と直接的なつながりがあるように見えないまま目的を遂行するためにクレムリンが頻繁に利用する企業、ワグネル・グループの所属と判断していた。

 この戦闘に参加した3人の元特殊部隊兵士との独占インタビューにより、現地にいた米軍兵士から戦闘に関する初めての詳細の一部が明らかになった。これは、オバマ政権下の2014年9月にISISとの戦闘のためにシリアに派兵されて以来、米軍がシリアで直面した最も致命的な戦闘のひとつに参加した者たちによる、公式の証言としては初めての公の報告である。

 シリアで7年にわたり続く内戦で敵対する立場のロシア軍と米軍が衝突する可能性は常に懸念されていた。2018年2月の戦いは米露の戦闘員が銃撃戦を交わした数少ない事例のひとつとなった。

 砲撃の小休止中に、グリーンベレーと海兵隊で構成されたQRFがようやく製油所に到着し、銃撃の集中砲火を浴びせ、戦況を一変させた。しかし、QRFの成功は長く続かなかった。尾根の向こう側で、特殊部隊の兵士のひとりが最悪のシナリオを目撃した。

 ロシア軍の戦車がゆっくり製油所に向かい進軍するのを発見した。

 「これから起こることに私は折り合いをつけた」

 ロシアの民間軍事会社ワグネル・グループは、世界各地の紛争で戦争犯罪を犯したとして非難されている。

 ワグネル・グループに対する告発はメディアで広く報道され、さまざまな人権団体による調査の対象にもなっている。最近、ワグネル・グループのリーダーは、傭兵たちは「肉を挽く」のに十分な量の弾薬をロシアから受け取っていないため、ウクライナのバフムートを去ると述べた。また、同社はウクライナで「数万人」を失ったとも述べた。

 米国政府もワグネル・グループに制裁を課している。2023年1月、米国は同グループを「国際犯罪組織」と名指した。

 非難にもかかわらず、ロシア政府はワグネル・グループとの公式なつながりを否定し、戦争犯罪の申し立てを根拠のないものとして退けた。

 シリアの戦場は、米軍と防衛隊の同盟がISIS戦闘員と戦う一方で、親シリア派の軍勢とワグネル・グループの同盟国もテロリストを追っていたため、混乱した三つ巴の戦場と化していた。石油資源が豊富なデイル・アル・ゾール州はイラクと国境を接していた。ユーフラテス川が対立する派閥を隔てていた。ロシアは川の一方の側に、米国とISISはもう一方の側にいた。味方と敵を見分けるのは困難な場合が多かったと、ジョシュは言う。




An M2 Bradley, with Alpha Troop, 1st Battalion, 6th Infantry Regiment, 2nd Armored Brigade Combat Team, 1st Armored Division, scans for threats near an oil refinery in northeast Syria in 2020. Photo by Spc. Jensen Guillory, courtesy of the U.S. Army.

2020年、シリア北東部の石油精製所付近で脅威を探知する、第1機甲師団第2機甲旅団戦闘チーム第6歩兵連隊第1大隊アルファ小隊のM2ブラッドレー。 写真提供:米陸軍、ジェンセン・ギロリー兵長


特殊部隊の士官として初めての派遣任務に就いたばかりの新人チームリーダーのアンドリューは、さらに南の地域を確保した特殊部隊チームを率いていた。しかし、ほとんど活動がないことを確認すると、彼らは再び出発した。製油所攻撃までの数日間、ロシア軍と米軍が川を挟んで対峙した状態が続いた。

 アンドリューによると、ロシア軍はデイル・アル=ゾール県に到着後、製油所の占拠を計画していた。統合特殊作戦コマンドの兵士約30名からなるチームが製油所に駐留し、アンドリューのチームと海兵隊小隊は、そこから20分の距離にある作戦支援拠点に配置され、無人機からの映像を監視していた。

 午後3時、ロシア軍を中心とする部隊が製油所付近に集結し始め、夕方には500名以上の兵士と戦車や装甲兵員輸送車を含む27台の車両が配置された。

 この状況は、無人偵察機からの映像を見ていた地域の軍関係者やワシントンの情報分析官たちを困惑させた。地域のパイロットや地上要員は警戒態勢に入り、アンドリューとチャンスリー(特殊部隊チーム軍曹)はチームを集め、即応部隊の準備を始めた。

 兵士たちは、M-ATV装甲トラック3台とMRAP装甲トラック1台に装備、弾薬、食料を積み込んだ。兵士と海兵隊員がトラックに駆けつけ、すぐに発車できるよう輸送隊を編成した。各自の武器を確認し、予備の弾薬とサーマル・オプティクス(暗視装置)が装備されていることを確認した。アンドリューによると、追加の医療支援を伴ったブラック・ホークが輸血用の予備血液を乗せて到着した。

 日没までに、全員が戦闘に備えたが、そうならずに済むことを願っていた。特殊部隊の装甲トラックはロシアの戦車には敵わない。

 午後8時30分、重量約50トン、125ミリ砲を装備したロシア製のT-72戦車3台が製油所から1.6キロ以内まで接近した。アメリカ軍は砲兵隊が砲撃の予行演習を行うのを目撃したが、砲弾を装填することはなく、装甲兵員輸送車の近くに兵士たちが集結し、攻撃態勢に入った。これにより、戦闘員が実際にロシア軍であることがアメリカ軍に知らされた。

 「ロシアのドクトリンでは、直前まで演習のように見えることを行うとされている点も、その証拠の一部だと思います」と、無人偵察機からの映像でワグネル・グループの動きを監視していたジョシュは言う。

 午後10時頃、前哨基地にいた米兵たちは、発見されないように集まろうとしていた近隣地域から、戦車やその他の装甲車両が列をなして製油所に向かって走り去るのを目撃した。アンドリューとチャンスリーはチームが待機場所へと急いだ。その日の夕方にはすでにトラックに荷物を積み込んでいた。

 「みんな、下にいる連中が攻撃されている。俺たちも応戦しに行かなきゃ」とチャンスリーが言った。

 5台の装甲トラックは前哨基地から道路へと出ていった。彼らはヘッドライトを点灯させないまま走った。防衛隊隊員が乗る装甲のないピックアップトラックが先導した。防衛隊員は暗視装置を持っていなかったため、瓦礫やクレーター、検問所周辺に蛇行するバリケードとして設置された巨大な土の盛り土が散乱する道路を走るのは困難だった。

 「暗闇の中を走っていると、突然、盛り土にぶつかり、急ブレーキをかけながら蛇行して盛り土を避け、また走り出すんです」とジョシュは言う。

 特殊部隊の車列が製油所に近づくと、ロシアの傭兵とシリア軍は戦車砲、大型砲、迫撃砲を混ぜ合わせた攻撃で前哨基地を攻撃した。 空気は粉塵と破片で満たされた。 ロシアの傭兵が砲撃の雨を浴びながら前進する中、特殊部隊員たちはトラックや土の盛土の後ろに身をかがめた。

 攻撃が始まったとき、プレデター1機が現場に待機していた。 そのプレデターはヘルファイア・ミサイル全弾を発射し、敵の砲兵部隊を破壊したため、米軍は地上戦に集中することができた。 その後、プレデターは戦場上空にとどまり、戦闘の様子を撮影したビデオを司令部の戦闘指揮官やワシントンの当局者に提供した。


Members of 5th Special Forces Group (A) conduct .50-caliber weapons training during counter-ISIS operations at Al Tanf garrison in southern Syria in November 2017. Photo by Staff Sgt. Jacob Connor, courtesy of the U.S. Army.

2017年11月、シリア南部のアル・タンフ駐屯地で、対ISIS作戦中に5th Special Forces Group (A) の隊員が.50口径の武器訓練を実施。 写真:Staff Sgt. Jacob Connor、米陸軍提供


ワシントンの米軍当局者は最初の15分間、ロシア軍当局に連絡を試み、攻撃の中止を促した。ロシア側が自軍の攻撃ではないと否定したため、米軍は車両と榴弾砲の一団に向け警告射撃を行ったが、部隊は前進を続けた。

 ワグネル傭兵部隊は地対空システムを保有しており、米軍機による攻撃を続けることは不可能だった。ワシントンの当局者がロシア側と協議した後に初めて、地対空システムは停止され、米軍機が戻り攻撃することが可能となった。

 特殊部隊の車列の先導を務める防衛隊のトラックは、砲弾が製油所に降り注ぐ中、施設の手前で停車した。前方では、空が爆発と曳光弾で閃光を放っていた。車列の先導を務める無装甲のトラックに乗った防衛隊の兵士たちは、一瞥すると引き返し、逃げ出した。

 戦場一の賢者チャンスリーはそう思ったことを覚えている。

 他の者も同じ反応を示した。無線から製油所内の米軍特殊部隊の声が聞こえてきた。特殊部隊がマイクをオンにするたびに、飛来する銃弾の爆発音が彼らの通信を掻き消した。まるでアリーナのロックコンサートの最前列にいるような気分だった。特殊部隊は胸の中で音を感じていた。

 「これから起こることに私は折り合いをつけた」とジョシュは言う。「無線から流れてくる内容から『仲間たちのためにそこに行かなければならない』と思いました」とジョシュは言う。

 施設内では、特殊部隊と防衛隊の仲間たちが身を潜めていた。重火器がないため、彼らにできることは身を潜めることだけだった。砲撃の合間の小休止の間に、アンドリューは特殊部隊の指揮官と無線で連絡を取り、指揮官は赤外線レーザーを使って彼らを周辺に誘導した。トラックから飛び降りて特殊部隊司令官と話したアンドリューは、砲弾が着弾した6フィートのクレーターの隣に、特殊部隊員や防衛隊員が配置されている土手の防御陣地を見つけた。

 奇跡的に、米軍の小部隊は無傷で、負傷したのは同盟国のシリア人兵士1人だけだった。特殊部隊の司令官は、彼らに会えて安心した。

 「俺たちはただトラックの後ろに隠れて砲撃を食らっているだけだ」と彼は特殊部隊に告げた。

 しかし、それは始まりに過ぎなかった。ロシア軍には約500人の兵士からなる混成歩兵大隊があり、戦車、装甲兵員輸送車、砲兵部隊、支援部隊が控えていた。一方、アメリカ軍は6台のトラックと50人足らずの兵士しかなかった。

 「この事態の規模が大きな要因となり、航空支援が非常に重要となったのです」とジョシュは言う。

 さらに戦闘部隊が向かっていたが、ロシア軍の進撃により、まだ到着していなかった。

 「彼らはしばらくはここに来ない」とコマンド部隊の指揮官はアンドリューに言った。「見えるか?」

 特殊部隊は軽武装で、ロシア軍に実質的なダメージを与えるには射程距離も火力も不足している機関銃や小銃しか装備していなかった。 5台のQRFトラックは、50口径の機関銃を装備しており、戦場全体を見渡すことができ、製油所に向かって進軍するロシア軍と交戦できる射程距離もあった。 特殊部隊のトラックは、進軍してくる親シリア派の部隊とワグネル・グループの傭兵部隊に向かい、土手の後ろに並んだ。

 敵は対空自動砲の2連装砲で攻撃を開始し、敷地内に砲弾を次々と撃ち込んで来た。

 トラックが防御ラインに到着すると、チャンスリーはトラックの無線でチームを招集した。

 「おい、これが俺たちが給料をもらっている理由だ」と、彼は他の3人の特殊部隊兵士に言ったことを覚えている。「全員が警戒し、注意を怠らないように。何か見たら、距離、方向、見たものの説明を教えてくれ。見たものを叫び、俺たちが即座に判断して行動する」

 「彼らは何も撃っていない」

 ロシア人傭兵たちは車両を離れ、徒歩で前哨基地に向かい移動した。特殊部隊は、屋上の遠隔操作砲塔に設置された重機関銃をジョイスティックで操作した。

 「おい、こいつらはこの場所を全滅させたと思っているに違いない」と、ロシア人たちが近づいてくるのを見て、チャンスリーは思ったことを覚えている。彼らはただ歩いて行って、それを奪うつもりだ。

 前方には味方の部隊はいないため、砲手たちは民間人を撃つ心配をする必要がなかった。動くものは敵である可能性が高く、攻撃を開始する許可が下りた。

 「撃ちまくって我々の存在を知らせよう」と、チャンスリーは言った。

 トラック2のジョシュのチームは、トラックから約1,000メートル離れた場所で、傭兵の小集団を追跡していた。砲手は、屋根にロボット制御で固定された.50口径の機関銃を回転させた。 1,000ヤード以上離れた標的にも、何千発もの弾丸を命中させることができる。 弾切れになるまで撃ち続ける連射モードでも、小型車のボンネットに命中するような弾のまとまりを維持できる。

 「狙って撃ち落せ」とジョシュが言った。

 チームに同行していた爆発物処理技術者の砲手が引き金を引いたが、安全装置を解除していなかった。数回の試行の後、ジョシュがコントローラーに手を伸ばした。ジョシュはロシア軍とシリア政府軍の戦闘員グループに照準を定め、発砲した。トラック上部の50口径機関銃が轟音を響かせ、土手に近づく男たちの白熱したシルエットが黒い砂の上に飛び散る破片となって爆発した。

 ジョシュが集団を撃ち倒した数秒後、水平線全体が機関銃の閃光に照らされた。 空爆後に急ごしらえの戦闘態勢をとった残りのロシア軍部隊は、小銃と機関銃で防波堤を攻撃した。 特殊部隊の砲手はロシア軍の車両と戦闘陣地を標的にした。アメリカ軍の機関銃が「喋り出す」のに時間はかからなかった。つまり、異なる銃がロシア軍の陣地に向けて発砲し、銃撃の間隔がほとんどない状態になった。 火の壁は絶え間なく圧倒的であり、ワグネル傭兵部隊と親シリア派部隊は身を隠さざるを得なかった。

 「こっちのうほうがずっと正確だった」とチャンスリーは言う。「金属が撃たれて飛び散る火花が見える。銃撃されて戦闘態勢が崩れるのも見える。良い効果が出ているし、敵兵を殺していることも分かる」

 地形は野球のダイヤモンド同様に平らだった。傭兵と親シリア派部隊が前進するにつれ、土手から巻き上げられた土がトラックの前に舞い上がった。しかし、トラックには命中しなかった。特殊部隊の兵士たちは、シリア兵とロシア兵には暗視能力がないと考えた。

 「彼らはそんなに射撃が上手くない。何も命中していない」とジョシュは言った。

 間もなく、ジョシュのトラックの機関銃の弾薬が底をついた。 銃の横には約400発の弾丸を収容できる巨大な容器が置かれていた。 再装填するには、誰かが榴散弾や機関銃の銃弾の飛び交う中、トラックの外に登って、弾薬ベルトを容器に投入しなければならなかった。

 トラックにはジョシュを含む3人の兵士が乗っていた。運転手はトラックを移動させる必要がある場合に備え、その場を離れるわけにはいかなかった。EOD技術者は銃の再装填の訓練を受けていなかった。残されたのはジョシュだけだった。トラックの屋根にあるハッチは開けることができる。しかし、密閉性が非常に高いため、開けるにはジョシュが中央の座席に仰向けに寝て、それを蹴り開ける必要があった。さらに、屋根には追加の装備や物資が所狭しと置かれていた。

 銃弾や破片の危険に身をさらさなければならない。

 ジョシュは装甲の助手席側のドアを開け、トラックの屋根に登った。 EOD技術員は、コンテナに銃を収納するためにデイジーチェーンに繋ぎ、S字型に折りたたむ弾薬ベルトを彼に手渡した。そうしないと銃が作動しなくなる。

 ジョシュは作業に取り掛かり、キャニスターに弾薬を再装填したが、暗視スコープは一定の距離に焦点を合わせるため、近距離での作業は困難だった。 彼は弾薬ベルト(約100発)2つを接続し、別のベルトに手を伸ばしたその時、砲弾が近くに着弾した。 衝撃波がジョシュの胸を直撃し、続いて地響きが轟いた。

 より迅速に再装填する必要があった。

 暗視ゴーグルを跳ね上げ、首からぶら下げた赤いレンズのヘッドランプを点灯し、最後のベルトを装填した。ライトを点灯してから数秒後、「チョップ」という音を聞いた。

 対空砲の弾がトラックと並行に上昇していく。

 なぜ彼らはトレーサーを撃っているのだろう? ジョシュは不思議に思い、トレーサーが自分の赤灯を狙っていることに気づいた。

 彼はライトを消し、大砲からの最初の砲弾が飛来する中、身をかがめた。騒音はライフル銃の鋭い音ではなく、もっと深い音だった。

 のどの奥から響くような音。

 そして、大きな音だった。

 あまりにも大きな音だったので、砲弾が頭上を通り過ぎて後ろに無害に着弾する間、自分がキャッキャッと笑う声が聞こえなかった。ジョシュは自分がピンチに陥っていることを理解した。もう一度外すとは思えなかった。

 トラックに乗り込む必要があった。

 「バカ野郎」と彼は思った。 ヘッドランプを点灯する。 奴らはハッタリを言っただけだ。 ライトを点灯する。 狙撃手が狙いを定めるのに十分な時間があっただろう。 銃を再び構えなければ。 レッドブルの缶ほどの弾丸を食らう前に。


The team that took on the Wagner Group in Syria. Photo courtesy of the author.

シリアでワグナー・グループと対峙したチーム。 写真提供:著者。


 彼は最後の弾薬バンドを容器に折りたたみ、装甲乗員区画に再び身を隠した。

 数台離れたトラックで、チャンスはチームの陣地図を取り出し、ワグネル・グループの陣地がどこにあるかを推定した。自信があった。なぜなら、彼らは勝利を収めていると確信していたからだ。すると、チームのトラックの1台から連絡が入った。

 「やあ、ズール」と特殊部隊の隊員が言った。チームの軍曹のコールサインである。

 「どうした?」とチャンスイは言った。「どうぞ。トラフィックを送れ」

 「おい、でかい車両を見つけたぞ」

 チャンスイはそれが何であるか知っていたが、誰もそれを口にしようとはしなかった。

 ロシアの戦車が進軍していたのだ。

 「ここに留まって戦う」

チャンスリーは地平線上に10台の戦車を確認した。それらは1台ずつ ゆっくりと前進していた。

 「あのでかい車両に5発撃ち込め」とチャンスリーは戦車を発見したトラックチームに指示した。

 旧式の戦車なら、50口径で装甲に穴を開けることができるかもしれない。しかし、新型の戦車ではそうはいかない。弾丸は跳ね返されてしまう。もし新型の戦車なら、特殊部隊チームは苦境に立たされる。

 「了解」と砲手が無線で答え、発砲した。

 チャンスリーは、黒い空を横切る弾痕を目にした。5発が的の真ん中に命中した。ドーン、ドーン、ドーン、ドーン、ドーン。

続いて、ピン、ピン、ピン、ピン、ピン。

チャンスリーは砲手の足を叩いた。

 「おい、右の西の戦車に5発撃ち込め」

 「了解、5発だ」

 砲手がマシンガンをチャンスリーの頭上に回転させ、発砲した。5発命中。5発跳ね返された。

 「おい、トラック2、中央の車両を狙え」とチャンスリーがジョシュに無線で指示した。

 「了解」

 「5発撃ち込め」

 同じ結果だった。

 彼らは窮地に立たされた。

 ロシア軍戦車は約2,000メートル離れた場所にあり、戦車戦では至近距離を意味する。しかし、ロシア軍の乗組員は迅速に移動するための暗視能力が欠けていた。アンドリューとチャンスリーは急遽、航空機による援護がなければ、そのプラントを放棄せざるを得ないという計画を立てた。



2014年9月23日早朝、シリアでの空爆任務を終えた米空軍のF-15Eストライクイーグル2機がイラク北部上空を飛行。 写真提供:米空軍

 「おい、航空機はどうなってる?」と、チャンスリーはアンドリューに尋ねた。

 彼は航空機を現場に飛ばすために奮闘していた。アンドリューは特殊部隊に呼びかけた。

 「おい、何か分かったか?」と彼は言った。

 航空機について答えられる者は誰もいなかった。アンドリューは、ロシア軍が対空ミサイルシステムで領空を封鎖していることを知らなかった。一方、地上では助けなしでは特殊部隊が死ぬことになる。

 彼らは戦車を減速させ、チームとコマンド部隊が戦力を集結させて航空支援を待つ必要があった。

 しかし、アンドリューは彼らを残しては行けないことを知っていた。  そうすれば、ロシアの大部隊がアメリカ軍の支援基地に到達し、彼らのチームが数か月かけてISISを一掃した地域を支配するのを阻止するものは何もなくなる。 また、それはこの地域にある石油と天然ガスの精製所のネットワークへのアクセスを彼らに与えることにもなる。

 「航空機が確認するまで、追跡弾で装甲を撃ち続け、マーキングしておいてください」とアンドリューは言った。

 チャンスリーは、チームが団結していることを知っていた。何かが起こった場合、全員が一緒に沈むことになるため、チームを海賊船と呼んでいた。そして今、戦車と対峙している。それは現実的な可能性だった。ウクライナの戦場での最近の出来事にもかかわらず、戦車は依然として戦場における頂点捕食者である。米軍特殊部隊には、戦車を止める武器はなかった。まるで亀に忍び寄られているようなものだった。分が経つごとに、戦車はゆっくりと近づいてきた。

 チャンスリーはマイクのスイッチを入れた。

 「ここに留まって戦う」と彼はチームに告げた。

 誰もその命令に異議を唱える者はなかった。しかし、ジョシュは内心、この戦いで2度目となる自らの生存の可能性について考えた。すでに彼はヘッドランプで運命を試していたのだ。戦車がMAT-Vトラックに命中するまでには時間の問題であり、装甲を施したトラックといえども、戦車の125mm砲には太刀打ちできない。

 「これまで成し遂げてきたことすべて、そしてすべてはここで終わる」とジョシュは本誌に語った。「戦車を持つロシアの傭兵たちに対して。戦うために来た敵でさえも。私たちは生きて帰れない可能性と折り合いをつけなければならなかったが、友人を守り、やるべきことをやっていると考えると、その方が受け入れやすかった」。

 それでも、アメリカ軍のトラックは、迫り来る戦車とロシア軍陣地に向けて発砲し続けた。砲弾が頭上を飛び交う中、暗視ゴーグルの緑色の光に照らされて戦車の砲身が光る。 特殊部隊のトラックは土手に停車しており、夜間であればロシア軍にとって格好の標的であった。 距離は縮まっているものの、どの砲弾も命中しない。

 しかし、アメリカ軍のトラックから絶え間なく砲弾が撃ち込まれる中、戦車は1キロメートル以内まで接近していた。


The Blackbeard logo used by the special forces team that went up against the Wagner Group in Syria. The team called themselves “pirates,” because if they got in a fight, they were all going down together. Photo courtesy of the author.

シリアでワグネル・グループと対峙した特殊部隊が使用した「黒ひげ」のロゴ。 戦闘になれば全員が一緒に倒れるため、この部隊は自らを「海賊」と呼んでいた。 写真提供:著者


チャンスリーは視界の隅で閃光を目にした。 1キロ以内まで接近していた最初の戦車が巨大な火の玉となって爆発した。

 「一体何だ?」

 彼は首を伸ばして、小さな防弾窓から外を見た。チャンスリーが答えを得る前に、2機の攻撃ヘリコプターが上空を飛行する中、さらに西の戦車が爆発した。 土手から離れた後、攻撃ヘリコプターは操縦席の下の連装機関砲でロシア軍の陣地を掃射した。 特殊部隊は、攻撃ヘリが旋回して再度攻撃を行う間、戦車に機関銃を浴びせた。

 「何かを発射したのが見えると、すぐに爆破した」とチャンスリーは語った。「彼らは戦車を切り抜け、そのまま突っ込んで来て、おそらく45分間は荒らしまわった。すべてを破壊したんだ」

 アパッチはまさにぎりぎりのタイミングで到着した。ジョシュは、チェーンガンが発射され、さらにロケット弾が戦車に命中するのを鮮明に覚えている。

 「上空で応戦してくれた航空部隊がなければ、シリアの油田地帯に並ぶグリースの染みになっていたと確信しています」


「ヘルメットをしっかり締め、ドアをロックしろ」

戦況が好転した矢先、司令センターの戦闘指揮官がアンドリューに無線連絡してきた。

 「おい、爆撃機が来るぞ」と戦闘指揮官は言った。

 「了解」とアンドリューは答え、航空支援が増えると喜んだ。

 「いや、違う」と戦闘指揮官は言った。「ロシアの爆撃機が接近中だ」

 アメリカ軍機はシリア上空で優勢を保っていたが、ロシアが爆撃機を派遣するとなると、戦況は一変する。アンドリューはチームネットに接続し、爆撃機の接近を警告した。

 「好きにしていいが、何もできないぞ」とアンドリューは言った。「ヘルメットをしっかりかぶり、ドアをロックしろ」

 それから数分間、アンドリューは爆撃機を待っていた。爆弾を落とすのか、それともただ低空飛行するだけなのか? 戦車戦を生き延びたが、それよりもひどい状況だった。500ポンドの爆弾が落ちれば、チーム全員が死ぬ。爆撃機が到着する直前に、戦闘指揮官から電話がかかってきた。

 爆撃機は来なかった。

 ロシア軍は引き返した。

 1時間後、ロシア軍が撤退を開始した。ロシアとアメリカの当局者が停戦を宣言し、特殊部隊は傭兵とシリアの戦闘員が死体を回収するために戻ってくるのを見守った。死体と焼け焦げた車両が彼らの目の前に並んでいた。

 夜明けまであと2時間だった。チームは土手から、ロシア軍が戦場を片付ける様子を見守った。チームは弾薬の点検を行い、物資を相互に積み替えた。アンドリューは部下たちに休息を取り、食事をとるよう命じた。交代で仮眠を取れるならそうするように。しかし、ほとんどの者はアドレナリンが過剰分泌された状態だった。

 翌日、チャンスリーはCNNで戦闘の報道を目にした。 それは冷静で淡々とした内容だった。 前夜の経験とまるで違っていた。

 「あの夜、私たちは4,000発か6,000発の(.50口径の)銃弾を撃ち尽くしました」とアンドリューは言う。「事後評価による戦闘による損害総数は350人(の死者)だったと思います」

 2月7日の戦闘による正確な死傷者数は不明だが、情報筋によると、この戦闘で100人から300人のロシア人およびシリア政府派の戦闘員が死亡または負傷したと推定されている。ロシア政府はロシア国籍の死者数は5人だけだと主張しているが、ワグネル・グループ兵士の音声録音によると、傭兵が数百人死亡したことが示唆されている。ワグネル・グループの退役軍人の一人は、録音の中でアパッチの攻撃を確認しており、「重機関銃によるクソ楽しいメリーゴーランド」と表現している。

 「手短に言えば、こちらは完膚なきまでにやられたのです」と、ワグナー・グループの退役軍人は録音の中で語っています。「私たちをズタズタに引き裂かれました。...まるで私たちがクソみたいな小さな破片であるかのように、打ちのめされたのです」

 戦車10輌のうち9輌が破壊され、6門の砲もすべて破壊された。特殊部隊は数日後、唯一生き残った戦車を破壊した。

 「負傷者は一人も出ませんでした。死者は出ませんでした。みんな多少は怪我をしましたが、あの戦闘でPTSDを患った者もいました。しかし、全員が家に帰ることができました」とチャンスリーは語っている。■


この記事は、ケビン・マウラーが報告し、ケリー・ケネディが編集、ジェス・ローハンが事実確認、ミッチェル・ハンセン・デュワーが校正を行いました。見出しはアビー・ベネットによるものです。



Special Forces Soldiers Reveal First Details of Battle With Russian Mercenaries in Syria

May 11, 2023| Kevin Maurer


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