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2025年9月12日金曜日

中国の大規模ロケット軍は張り子の虎なのか?(National Security Journal)

 


DF-17ミサイル。画像提供:中国人民解放軍

中国の強大なロケット軍は「張り子の虎」では?

要点と概要 – 巨大な規模と派手なパレードにもかかわらず、中国人民解放軍ロケット軍(PLARF)は実際の紛争で「張り子の虎」になるかもしれない。

PLARFの有効性は、組織に根深い汚職、現代的な戦闘経験の完全な欠如、そして限られたミサイル備蓄によって深刻に損なわれている。

DF-21Dのような「空母キラー」ミサイルを誇示する一方で、移動中の高度に防御された米空母を標的化し撃墜することの困難さは、重大な作戦上の課題となっている。

一方、米国は先進的な対極超音速防衛システムを展開しており、中国の限られた資源を分散させ、ロケット軍の脅威認識を低下させている。

人民解放軍ロケット軍は「張り子の虎」か

白い英字識別記号が塗られた中国のDF-5Cミサイル運搬容器が、その他ミサイルと共に北京の街をパレードし、人民解放軍ロケット軍(PLARF)の力を誇示した。

PLARFは核・通常弾頭を含む約2,500発の弾道ミサイルを保有する世界最大の地上配備ミサイル部隊である。2015年に独立した軍となり、海軍、陸軍、空軍と同等の地位を獲得した。中国の新鋭ミサイルの大半を所有・運用し、中国国家主席習近平が率いる中央軍事委員会の直轄だ。

米軍の最高レベルの司令官たちは懸念していないと表明している。

「重要なのは我々が抑止されていないことだ」と米太平洋空軍司令官のケビン・シュナイダー空軍大将は述べた。同大将によれば、将来配備予定のB-21ステルス爆撃機、F-47戦闘機、連携戦闘機(CCA)などのシステムにより、米国は「潜在的な敵対勢力の行動に先んじて適応できる」という。

ここまで驚異的な増強にもかかわらず、PLARFの能力はその野心に追いついていない可能性がある。

たしかにPLARFは深刻な脅威ではあるものの、腐敗や運用上の問題にも悩まされており、実戦能力は宣伝されているほどには高くない可能性がある。

張り子の虎?

「張り子の虎」と呼ぼう。この表現は毛沢東が1946年のインタビューで初めて用いたもので、1950年代の台湾海峡をめぐる論争で定番となった。ニューヨーク・タイムズが1955年に説明したように、張り子の虎は「勇敢に唸り声を上げるが、結局は戦いを避ける」存在として描かれている。

第一に、中国の最新の戦闘経験は1979年のベトナムとの衝突時である。攻撃下での持続的共同作戦において、PLARFがどれほど有効かを知ることは不可能だ——同軍には実戦経験がない。一方、腐敗問題は「習近平が2027年までに人民解放軍に設定した目標達成に現実的な障害をもたらす可能性がある」と、元国防次官補マイケル・チェイスは戦略国際問題研究所(CSIS)主催のフォーラムで述べた

中国のミサイルの有効性は、自国の戦略によっても損なわれる可能性がある。発射機会の制限、標的捕捉の困難さ、そして米軍からインドの核施設まで広範な標的をカバーする必要性が、PLARFの任務を複雑にしている。

例えば中国は、DF-21DDF-26といった空母キラーミサイルを誇示する。対艦ミサイル型DF-21Dは、1991年から中国で運用されているDF-21を改良し、2006年に配備された。射程は2,150キロメートルで核弾頭を搭載可能だが、主たる弾頭は600キログラムの通常弾頭である。DF-26は二段式固体燃料中距離弾道ミサイルで、射程4,000km、終末誘導にアクティブシーカーを採用する。2020年8月、中国人民解放軍海軍(PLARF)は南シナ海で対艦型DF-26Bを発射した。DF-26は中国の精密打撃射程を第二列島線近くまで延伸させる。

しかし、空母を発見・捕捉・追跡・標的設定・攻撃しようとする場合、PLARFは困難な障壁に直面する。これは容易な標的解決策ではない。空母は放射管理で存在を隠蔽し、米原子力空母は約30分で700平方マイルの領域内を移動可能である。これはあらゆるミサイルの精密発射に重大な課題をもたらす。次に、PLARFミサイルは海上配備型ミサイル防衛網の封鎖を突破しなければならない。ニアミスでは不十分だ。空母ジェラルド・R・フォード(CVN-78)は模擬戦闘環境下での実戦規模衝撃試験において、実弾を用いた4万ポンド級水中爆破を3回経験した。最終爆破は空母から75ヤード(約68メートル)未満の地点で発生した。なお、この爆薬量は重量ベースで中国のDF-21ミサイル30発分の弾頭重量に相当する。

防衛システムの前に戦力が発揮できない

中国の最も危険な新型兵器に対抗するため、米国はキルチェーン全体にわたる極超音速ミサイル防衛システムの開発を加速している。宇宙追跡システムと改良型イージスシステムをSM-6ミサイルと組み合わせることで、極超音速攻撃を撃破する基盤能力を構築中である。

「迎撃ミサイルから、中国の目標捕捉センサーを混乱させ盲目化させる能力まで、あらゆるものを構築する」とロジャー・ウィッカー上院議員(共和党・ミシシッピ州選出)は述べた

ミサイル防衛庁が2025年3月に実施した「ステラー・バンシー」試験では、駆逐艦USSピンクニー(DDG-91)が最新イージスソフトウェアに組み込まれた「海上配備型末端迎撃システム第3段階(TBTI-3)」能力を用い、模擬先進極超音速目標の探知・追跡・迎撃能力を実証した

極超音速・弾道追跡監視システム(HBTSS)は、低軌道に展開された新たな衛星群を活用し、中視野角での運用を前提に、機動中の極超音速兵器を追跡する。米宇宙軍は空中移動目標指示器(AMTI)追跡を行う試作衛星を運用中である。この衛星群が完全なコンステレーションを形成すれば、目標が移動する間も継続的に追跡を引き継ぐことが可能となる。ミサイル防衛局は2025年4月、試験においてHBTSSが期待される性能を満たしていることを確認した

その他の課題の課題がある

ミサイル迎撃率の向上は中国にとって重大な課題となる。PLARFへのミサイル供給は無限ではない。米陸軍によれば、「PLARFは規模が大きいものの、中国のミサイル備蓄保有量には限りがあり、長期紛争ではPLARFの有用性は急速に低下する」という。

撃墜確率が低い標的に対し、PLARF司令官が大量のミサイルを投入する余裕はない。上記の米陸軍研究では「偽標的を攻撃させる欺瞞作戦は極めて有効である。前述の通りPLARFのミサイル備蓄は極めて限られており、無駄に消費されるミサイル1発ごとにPLARFの能力は著しく低下するからだ」と指摘している。

したがって中国は、米軍や同盟国の地対空ミサイル基地など、増加する陸上目標をカバーするためのミサイル優先順位付けと配分に苦慮するだろう。さらに、人民解放軍の文書は、2024年国防総省中国軍事力報告書が表現したように、「将来の紛争時に世界経済の重要拠点を攻撃することで国際的な戦略的効果を達成する」という曖昧ながら脅威的な任務のためにミサイルを温存したい意向を示唆している。

中国の潜在的敵対国は米国のみではない。インドのナレンドラ・モディ首相が最近北京を訪問したにもかかわらず、特に2024年にアグニVミサイルで複数独立目標再突入体システムの試験が実施されたことを踏まえると、PLARFは一部戦力をインド抑止に割り当てている可能性が高い。

PLARFが「張り子の虎」であるかは定かではない。しかし重大な太平洋戦争では、戦力は分散を余儀なくされ、戦闘経験不足に阻まれ、米国の優れたシステムの前に晒されるだろう。■


China’s Massive Missile Forces: A Paper Tiger?

By

Rebecca Grant

https://nationalsecurityjournal.org/chinas-massive-missile-forces-a-paper-tiger/


  • 著者について:レベッカ・グラント博士

  • レベッカ・グラント博士(Xでフォロー:@rebeccagrantdc)は、ワシントンD.C.を拠点とする国防・航空宇宙研究および国家安全保障コンサルティングを専門とする国家安全保障アナリストであり、レキシントン研究所の副所長を務める。国家安全保障に関する数百本の記事を執筆・発表し、数多くのフォーラムで講演。さらに、フォックスニュース、フォックスビジネス、CNN、MSNBCで国家安全保障の専門家として頻繁にテレビ出演し、スミソニアン博物館の『エア・ウォリアーズ』シリーズにレギュラー出演。フォックスニュース・オピニオンでは中国、ロシア、その他の技術・国家安全保障トピックについても執筆。著書に『75人の偉大な航空兵』(クリス・ミラー中将との共著)、『B-2爆撃機の戦場へ』、そして『実戦検証:アフガニスタンとイラクにおける空母』などがある。ウェルズリー大学卒業後、ロンドン大学ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスにて国際関係学の博士号を取得。本記事冒頭では、グラント博士の最新のフォックスニュース出演映像をご覧いただけます。



2021年11月9日火曜日

中国が米海軍空母などの艦艇実寸大ミサイル標的を砂漠に構築。弾道対艦ミサイルの精度を上げるためか。中国は真剣だ。

 

2021年10月20日の衛星画像で米空母を模した標的がタクラマカン砂漠に見つかった。 H I Sutton Illustration for USNI News Satellite image ©2021 Maxar Technologies Used with Permission

 

国軍が米空母の形を模した標的をタクラマカン砂漠に構築しており、標的演習場を新たに構築したのが衛星画像で判明した。画像はMaxar社が提供した。

 

米空母の実寸大輪郭に加えアーレイ・バーク級駆逐艦の輪郭少なくとも二つが演習場に見つかった。場所は 新疆ウイグルのRuoqiang若羌にあり、中国がいわゆる空母キラーのDF-21D対艦弾道ミサイル試射に以前使った演習地に近い。

 

タクラマカン砂漠で見つかった米駆逐艦を模した標的。H I Sutton Illustration for USNI News Satellite image ©2021 Maxar Technologies Used with Permission

 

空母標的は平面で空母のアイランドは構築されていないようで、航空機用エレベーター、兵装など詳細は省略されている。レーダーを使えば周りの砂漠からこの標的が浮き出るはずだ。

 

さらに標的二つがあり、空母標的より詳細に構築されている。柱数本があり、おそらく計器測定用だろう。レーダー反射をシミュレートするものかもしれない。

 

また同演習場内にはレイルが敷かれており、10月9日のMaxar衛星画像を見ると全長75メートルの標的に各種計装をつけて幅6メートルのレイル二本で移動させている様子がわかった。

 

同地区はこれまでも弾道ミサイル試験に使われていると地理空間情報提供企業AllSource Analysisが解説している。

 

「米艦艇を模した実物大標的に加え、レイル移動式の標的もあることから標的捕捉、照準のテスト用だろう」と同社は見ており、模型のすぐ近くに兵器が命中した形跡がないという。「艦艇を模した標的に各種センサーもついていることから、この演習場は今後各種試験に使う意図が見られる」

 

衛星画像履歴を見ると空母標的は2019年3月から4月の間に構築されていたことがわかる。その後、工事が続いたが2019年12月に解体された。その場所が今年9月再び工事が始まり10月初めにおおむね完成した。


Ruoqiang施設内に見つかった移動式標的のクローズアップ写真。 H I Sutton Illustration for USNI News Satellite image ©2021 Maxar Technologies Used with Permission

 

 

人民解放軍ロケット軍(PLARF)は対艦弾道ミサイル数種類の開発を進めており、陸上配備型のCSS-5 Mod 5 (DF-21D) の射程は800カイリ超といわれる。同ミサイルは飛翔制御可能な再突入体(MaRV)で艦艇を狙う。大型のCSS-18 (DF-26)は射程2千カイリ。

 

「PLARFは2019年7月に初の実弾発射を南シナ海に向け実施し、DF-21D対艦弾道ミサイル6発をスプラトリー諸島北側に発射した」とペンタゴンは中国軍事力報告で述べている。また長距離対応の対艦弾道ミサイルが2016年に出現している。

 

「多任務対応のDF-26は通常弾頭を短時間で核弾頭に変更が可能で精密対地攻撃のほか、対艦攻撃に使え、中国本土から西太平洋、インド洋、南シナ海を標的に収める。2020年、PRCは南シナ海上を移動する標的に対艦弾道ミサイル数本を発射したが、公式にはこれを認めていない」(報告書)

 

2021年11月5日に Capella Space が開口合成レーダーで米空母の輪郭を模した標的を撮影した。H I Sutton Illustration for USNI News

 

陸上配備型ミサイルに加え、PLANのH-6爆撃機に大型対艦弾道ミサイルを搭載している。2018年に初めて視認されたのがCH-AS-X-13で空中発射ミサイルとして最大の大きさがあり、極超音速弾頭の装着も可能な大きさだ。

 

さらに055型レンハイ級大型駆逐艦からの発射も考えられる。同艦は誘導ミサイル巡洋艦とも区分され、対艦ミサイルの発射が可能とペンタゴン報告書は述べている。

 

中国は以前も砂漠地方に空母標的を構築している。2003年に空母の大きさに近いコンクリート板が敷設され標的にしていた。同移設はShuangchengziミサイル試射場にあり、何度もミサイルの命中を受け、都度修理を受けていた。今回の新施設はそこから600マイル離れた場所にあり、もっと進んだ施設になっている。標的は実際の艦艇に極めて近い大きさになっている。

    DoD Graphic

 

新施設にどのミサイルを使うのか不明だが、施設が巧妙に作られていることからPLAが米海軍部隊の中国本土接近を阻止する手段の開発を進めているのは明らかで、空母部隊がその狙いであることはあきらかだ。

 

ペンタゴンは恒例の報告書を先週公開しており、PLARFの主任務に西太平洋に展開する米空母部隊の活動を制約することがあると記述している。■

 

China Builds Missile Targets Shaped Like US Aircraft Carrier, Destroyers in Remote Desert - USNI News

By: H I Sutton and Sam LaGrone

November 7, 2021 11:12 AM • Updated: November 7, 2021 12:58 PM

2019年7月6日土曜日

中国のミサイル発射は対艦弾道ミサイルの初の発射だった

China's Reported Anti-Ship Ballistic Missile Test In The South China Sea Is A Big Deal

The test fits within a larger trend of increasingly provocative Chinese efforts to assert their authority in the disputed region.

IMAGINECHINA VIA AP IMAGES

国が少なくとも一発の対艦弾道ミサイル発射テストを実施し、各国の思惑が交錯する南シナ海にしたとの報道が出た。真実なら中国軍がこの地区を標的にミサイル発射した初の事例であり、それ以上に中国の過激なまでの太平洋での権力拡大をさらにエスカレートさせることになりそうだ。
NBCニュースが、匿名米関係者の談として最初に報道したのが2019年7月1日のことだった。NBCの取材源はミサイルの種類を言及せず、最終的にどんな標的に命中したかも触れていない。中国政府、米国政府いずれも試射の事実を公式に認めていないが、先週末に実施したようだ。中国は航空関係者向けにNOTAMを南シナ海で二地点を対象に発出して、ミサイル発射と軍事演習について注意喚起していた。NOTAMの有効期限は6月30日から7月1日を有効期限としていた。
NOTAMのひとつが海南島からパラセル諸島まで広範な海域を指定していた。北にはスプラトリー諸島があり、中国が実効支配するウッディ島も範囲に含まれていた。この位置関係から中国軍はミサイルを本土から発射し、ミサイルが飛翔に失敗しても海中落下するよう設定したようだ。
人民解放軍のロケット軍(PLARF)には機動性を備え空母など大型艦を十分標的にできると言われる弾道ミサイルがすくなくとも二種類ある。DF-21D中距離弾道ミサイル(MRBM)とDF-26中間距離弾道ミサイル(IRBM)だ。
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2018年4月に民間衛星画像の解析からこれまで知られていなかった基地が海南島にあるとの指摘があり、今回のNBC報道や公表ずみNOTAMの内容とも合致する。DF-21ないしDF-26は海南島から発射すればスプラトリー諸島まで十分到達可能だ。中国は短距離射程の対艦ミサイルを別に開発中だがこれでは中国本土から発射しても南シナ海への到達は不可能だ。
中国がDF-21DあるいはDF-26をスプラトリー諸島付近に本当に発射したのであれはPLARFが海上目標にミサイルを初めて発射したことになる。中国はゴビ砂漠に空母大の目標をつくりミサイルを発射している。
今回の試射が単純にミサイルを中国本土から発射して南シナ海まで到達させられる能力を示すものであった可能性はある。これでも重要なデータが入手でき今後より実践的な標的を狙うのではないか。
GOOGLE EARTH VIA THE FEDERATION OF AMERICAN SCIENTISTS
ゴビ砂漠に作られた空母大の標的には大型ミサイル数発の命中した跡が認められる。
今回の試射は2019年1月にPLARFのDF-26部隊が短時間でゴビ砂漠及びチベット高原に展開し米海軍のアーレイ・バーク級駆逐艦USSマッキャンベルがスプラトリー諸島を通過した際に対応したことの延長線上に有るようだ。その時点で中国は敵艦艇には安全な場所から弾道ミサイルで対応する能力が有ることを示したかったのだ。実際には弾道ミサイルは一発も発射していないが。
今回のミサイル発射は同様に米海軍と海上自衛隊が南シナ海で2019年6月に実施した戦闘演習に対抗したものであった可能性もある。今回はニミッツ級空母USSロナルド・レーガン打撃群に日本の「ヘリコプター駆逐艦」JSいずもが加わった。
2018年に日本側はいずも級は当初から空母能力を想定して建造したことを初めて認め、F-35B共用打撃戦闘機の運用に対応させると発表した。中国は日本の防衛力整備に一貫して批判的で現行憲法の改正で自衛隊が現状を超えた軍事活動を実施することにも強く反対している。
JMSDF
USSロナルド・レーガンがJSいずもと南シナ海で2019年6月に共同訓練を展開した。

2019年3月にフィリピンに寄港した米海軍強襲揚陸艦USSワスプは、異例なまでのF-35で兵力搭載していた。ワスプはその後スカボロー礁沖合に進出し、中国とフィリピンが領有権を争う場所だ。
スカボロー礁は中国が目指す「戦略三角形」の一部で中国の領有権主張にとり重要だ。残りはウッディ島が北に位置し、スプラトリー諸島が南にある。中国は2014年から南シナ海で大規模な造成工事を展開し人工拠点づくりを続けてきた。
同時に中国は地対空ミサイルや沿岸部に対艦ミサイル他軍事装備を各拠点に持ち込んでおり、広い意味の接近阻止領域拒否体制を構築している。
GOOGLE MAPS
中国の南シナ海における「戦略三角形」、すなわちパラセル諸島のウッディ島(北西)、スカボロー礁(南東)、スプラトリー諸島(南)を示す地図.
南シナ海の標的に対艦弾道ミサイルを本土から発射できれば中国に新しい防御体制が生まれる。更に内陸部に移動させれば敵の一次攻撃から逃れる可能性も増える。
対艦弾道ミサイルが対艦巡航ミサイルによる防衛網に加われば、敵側に防御が困難となる。弾道ミサイルの探知発見は迎撃にまして困難で低空飛行する空気吸い込み式巡航ミサイルへの対応と大きく異なる。
中国が大型艦を想定した標的に命中させる技術を実証した事自体に大きな意味があるが、信頼性は別の話だ。同様に人民解放軍に艦艇を発見するセンサーと通信ネットワークがありPLARFが数百数千マイルの彼方からミサイルの照準をあわせられるのかも不明だ。
とはいえ2019年6月のミサイル試験は今年早々のDF-26演習とともにPLAがこの能力開発を依然進めていることを如実に示している。中国が空中発射式弾道ミサイル開発に関心を示しているとの報道もあり、実現すれば弾力的運用につながり、南シナ海での領有権をはばかることなく中国は主張していくだろう
DOD
スプラトリー諸島に点在する中国の人工防衛拠点

さらに中国軍が戦力を同地域近辺で整備するのと並行して海洋警備活動を強化していることに注意が必要で、中国が主張する海域を遥かに超えた場所で公船、民間船舶がパトロールを展開している。2018年9月には052C旅游II級駆逐艦蘭州が米海軍アーレイ・バーク級駆逐艦USSデカターとスプラトリー諸島で衝突寸前になった。
米中両国は貿易戦争で動きが取れない状態だが、台湾を巡っても両国の緊張が高まっている。G-20サミットが日本で開催されたがドナルド・トランプ大統領と習近平主席は関税追加を棚上げし交渉を再開することで合意した。トランプは中国通信家電大手のフウァエイへの制裁緩和にさえ言及し、二国間の貿易問題での緊張案件となっていただけに意義深い。
だがPLARFが南シナ海へミサイル発射したとすると、経済面で緊張が緩和しようが、南シナ海で広がる自国権益を撤回するつもりが中国にないことが明確だ。■
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