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2023年1月22日日曜日

民間クラウドサービスに模擬攻撃をかける、DoDのゼロトラストによる厳しい姿勢があってこそセキュリティが保証される.....

今回の記事は難解かもしれません。ただし、軍の活動も情報セキュリティがあってこそ可能となるのでこうした厳しい検証が必要なのですね。なお、レッドチームとは既存の枠組み規制にとらわれず行動を許されるトップ直轄の組織で、技術に長けた専門家が必須です。DoDやDARPAあるいはNSAにはいつでも使える人材がプールされているのでしょう。「文系」偏重の日本の行政組織では手も足も出ず、結局外部リソースに依存するのでしょうね...

Cloud storage graphic.  (Getty Images)


今春開始のテストは、Joint Warfighting Cloud Capability 契約の要件ではなく、ペンタゴン CIO の Zero Trust オフィスによる「独立した」実験だと、担当ディレクターが述べている


Zero Trust, but verify (信頼せず実証する): これは国防総省が新しい民間のクラウドプロバイダーに試行する戦略である。

国防総省のゼロトラスト・オフィス責任者によれば、今春から、国家安全保障局のレッドチーム・ハッカー(場合によっては軍のレッドチームも)が、Amazon Web Services、Google、Microsoft、Oracleの各社が運営するクラウドでのゼロトラストのセキュリティシステムに対し数カ月にわたる連続攻撃を開始する。

 ゼロトラスト・ポートフォリオ管理室長のランディ・レスニックRandy Resnickは、本日午後、Billington Cybersecurityのウェブキャストで、「レッドチームが侵入してデータを搾取できるかを判断する敵の攻撃となる」と述べた。「ゼロ・トラスト・オーバーレイが正しく実装されているか、非常に良い感触を得ることができるだろう」。

 また、「クラウドでゼロトラストを実現できるかどうか、国防総省に提言する道筋を示すものとなる」と述べた。「もし......実際にそれが可能だという結論に達すれば、革命的なことになる」。

 なぜこの4社なのか?12月7日に発表されたJoint Warfighting Cloud Capability (JWCC) 契約の対象であり、失敗したJEDIプログラムの後継であったからだ。

 「JWCC契約で将来サービスを提供する CSP(クラウドサービスプロバイダ)4社があるので、JWCCと関係なく、4 社にゼロトラストの話題を持ちかけ、こちらのゼロトラストの定義を説明し、各社のクラウドインフラで目標レベルのゼロトラストができると思うかどうか聞いてみたい」と、レズニックは説明している。

 ただし、要請であって義務ではないこと、そしてレズニックのゼロトラスト基準はJWCC契約自体の要件ではないことを理解する必要がある。これは、ハイエンドの商用CSPが、国防総省のゼロトラスト戦略で設定された基準をどれだけ早く導入できるかを見るための実験だ。これはレスニックのオフィスが作成した5ヵ年計画で、軍のネットワークを、ファイアウォールを通過すれば誰でもフルアクセスできる境界防御に依存する現状から、すべてのユーザーの行動と認証情報を継続的に監視しダブルチェックする多重防御に移行させるためのものだ。

 レスニックは、指定された保護機能少なくとも91項目を必要とする基本的な「ターゲット」レベルまでは実現できると確信している。4社のうち1社以上は、さらに61項目が要求される厳しい「Advanced」レベルへ到達する可能性がある。

 ベンダーは、4社とも「ターゲット」レベルを達成できると言っている。「完全なゼロトラストとまではいかなくても、ほぼ全体に近づくことができる 」。

 しかし、それは「紙の上」の話だとレスニックは強調している。証明してほしいという。

 「私たちが計画しているのは、各社の主張を実際にテストすること」と言う。「今年の春から夏にかけて、あるいはラウンド2に戻るかどうかにもよりますが、秋にも、4つのCSPすべてをテストするつもりです」。

 「NSAのレッドチーム、そしておそらくサービスのレッドチームにも攻撃させます」。

 なぜか?国防総省がゼロトラストのクラウドを苦労して自前で構築したり、民間企業が既存のサービスにゼロトラストのプロトコルを重ねるのを待ったりするのではなく、軍は既製のクラウドサービスを購入すればよいからだ。例えばJWCC契約に基づいて、ゼロトラスト保護が組み込まれていると完全に確信できればよい。

 「ゼロトラストは、基盤の一部として組み込まれている」とレスニックは熱く語る。「ルールやポリシー、ユーザー側の作業はまだ必要ですが、すべてまとめて、私たちが戦略で話しているすべての機能を統合する大変な作業は、すでにほとんど終わっています」。

 「ゼロ・トラストの実現で、これは劇的な変化です。リスクを減らせます。コストを削減する。ゼロトラスト移行を大幅に簡略化することができます。

 民間CSP4社のレッドチームテストと並行して、NSAは米国サイバー司令部のDreamPort構想の一環として政府が開発したNative Zero Trust Cloud(NZTC)のレッドチームも行う予定だとレスニックは付け加えている。NZTCは、ゼロトラスト保護の「Advanced」レベルの要件をすべて満たすことができるはずで、国防総省に最高レベルのセキュリティを備えた自社製の代替クラウドを提供する。

 その目的は、軍隊や防衛機関、その他DoD組織に、拘束力のある選択肢のかわりに、選択肢を豊富に与えることだとレスニックは述べている。ミッションクリティカルな機能には、クラウドへの移行が全くできないものもあるかもしれないという。その場合、ゼロ・トラストプロテクションを既存のオンプレミスシステムに移植する必要があるが、この手間は2027年までかかるとレスニックは予想する。「そのため5カ年計画があるのです」。

 DoDの既存システムをゼロトラストにアップグレードすることを、レスニックの戦略&ロードマップでは「行動コースCOA 1」と呼ぶ。COA2は、ゼロトラストのクラウドサービスを民間から購入するもので、JWCC以外に他ベンダーのサービスも利用できる。そして最後にCOA3は、CYBERCOMのNZTCのように、DoD自身が構築・運用するゼロトラスト・クラウドを求めるものだ。

 「現在利用中のネットワークの一つひとつを見直す必要があるため、各サービスはCOA1、2、3のいずれかを組み合わせて利用することになるだろう」とレズニックは述べ、「万能のソリューションはありません。柔軟な選択肢を最大限に提供しているのです」。■


NSA red team will attack JWCC providers to test zero trust security - Breaking Defense

By   SYDNEY J. FREEDBERG JR.

on January 19, 2023 


2021年10月12日火曜日

ペンタゴンR&Dトップが見る重要技術分野の展望。極超音速技術、プロセッサー、バイオ技術等。こうした技術開発と迅速な実戦投入が自由世界の防衛に重要だ。

 企業ではCTOという立場なのでしょうか、技術分野を横断的にホリスティックに見られる人材が必要です。自由と繁栄を守るためにも技術分野の進歩が必要であり、当然ながら防諜活動を強化して成果を易々と盗まれないように守る必要もありますね。

 

Heidi Shyu speaks during her confirmation hearing to be Defense undersecretary for research and engineering in Washington on May 25, 2021.

ワシントンで開かれた国防次官任命聴聞会でのハイディ・シューMay 25, 2021. CAROLINE BREHMAN/CQ-ROLL CALL, INC VIA GETTY IMAGES)

 

 

ィディ・シューHeidi ShyuR&D担当国防次官は整理すべき技術分野を模索したところ、これまで軽視されてきたが重要な分野を把握できという。

 

研究開発担当国防次官に任命されたシューは陸軍で調達幹部を務めた経験を活かし、開発優先リスト上の各種技術から削減対象を絞り込んだ。

 

だがこうした技術は中国の封じ込めに有効と理解するに至った。極超音速、人工知能、サイバーセキュリティ等である。

 

「当初は減らせると思っっていたが、結局増えることになった」(シュー)

 

防衛産業にとっては逆に頭痛になりかねない。業界では研究開発支出を優先順位に応じて整理しようとしている。リストは時の経過で変化しており、研究目標も科学技術上の突破口となる内容よりむしろ中庸なゴールを目指すことが多い。

 

だがシューは変革を目指す大胆な姿勢だ。上院での任命を巡る聴聞会でっシューはペンタゴンでは兵器開発費用の3割が開発調達にまわり、残る7割が維持に使われていると述べ、これを逆転させたいとした。

 

本人へのインタビューのポイントは以下の通り。

 

極超音速技術

シューはペンタゴンが極超音速装備複数事業へ多額の予算を投じることに反対との批判勢力の意見を共有する。

「負担可能な極超音速兵器開発をどう実現するかに焦点をあてている。そのため次の課題がある。適正な素材を使っているか。適正な試験施設があるのか」

 

国防総省は2022年度予算で28.65億ドルを要求し、極超音速技術開発を進めたいとする。直近では陸軍、海軍がそれぞれ極超音速関連予算を倍増させながら、空軍は40%削減している。空軍は空気吸い込みのジェット発進式極超音速体の実現に成功しており、陸軍は極超音速ミサイル配備を始めている。

 

研究開発上の課題が解決すれば、生産が伸び、単価が下るとシューは見ている。

 

シューは極超音速プロジェクトを整理統合し、実現確実な案件に絞り込むべきとみている。

 

「軍は実用化のため予算を計上する。そうなるとプロジェクトの成功度合に応じてどれに注力すべきか判断するのがよい」

 

人工知能

 

シリコンバレーで人工知能に莫大な予算が投じられており、ペンタゴンもAIツールの役割を理解すべくR&Dを独自に進め、安全かつ効果的な活用をめざすべきだ。

 

「業界はAIのML(機械学習)や自律運用に巨額を投じている。信頼できるALのML、信頼できる自律運用性能を実現したい。念頭にあるのは低価格、消耗覚悟で残存性が高い無人装備だ。このため、ALのMLと自律運用性能が信頼できる水準に鳴ることが肝要だ」

 

ここから新水準の性能を単に実現するだけでは十分ではなく、テスト活動、安全性、設計に従来より高い重点を置く必要が生まれる。これにより技術系企業大部分は実験活動の在り方を一変し、人工知能や機械学習ツールを活用できるはずだ。

 

サイバーセキュリティ

シューの考えるサイバーセキュリティは高度にネットワーク化され脅威を迅速に探知することによりファイヤーウォールを過信しない。

 

「国防総省のニーズを考えると各種センサーはいまのまま使えないと思う。必要なのはサイバー戦、電子戦と関連して作動させることで情報戦や通信もここに加わる。ごくごく短時間で探知して対応する必要がある」

 

その意味でオープンアーキテクチャの重要性が増しているという。

 

「一種類のアーキテクチャに固執することは避けなければならない。脅威も進化していくので旧式アーキテクチャを抱えることになっては困る。そこでモジュラー方式のオープンアーキテクチャにする。プロセッサーを安全なまま民生技術同様のスピードで進化させることがこれから重要となる」

 

マイクロプロセッサー

シューはCHIPS法に賛成しており、マイクロプロセッサー生産を米国に呼び戻す動きを支援する。だが国防総省は半導体の利用方法をもっと学ぶ必要があると指摘。「リアルタイム運用ではマルチコアのプロセッサを購入しているがプログラム方法を熟知しているからと正当化している。だからこそ研究費を増やしたい。16コアのプロセッサーあるいは32コアが生まれたら活用方法をあらたに探求する必要が生まれるからだ」

 

こうしたプロセッサをどう利用すべきなのか。一つは低帯域環境で処理能力を増やすことだ。ハイテク敵勢力が通信妨害に向かう際の対応だ。だが、シューは3D画像処理の向上が訓練に応用できると強調し、同時に通信、指揮統制にも使えるという。

 

「インタラクティブな3Dの実現に集中してききたい。3-D作戦センターを使い、各地に分散した部隊の指揮統制を低帯域環境で実施する」「これにより作戦立案が迅速になりミッション指令も行える。きわめて強力になる。技術はすでにある。新規投資が必要なわけではない。あと一押しすれば完成し、実戦部隊が活用できる」

 

宇宙

シューはバイデン政権は宇宙配備兵器の整備の可能性を排除しておらず、中国やロシアの衛星攻撃手段の排除構想はシューの前任者も想定していた。

 

「すべて極秘事項です」とするが、現政権の宇宙戦略では回復力に重点をおき、低コストで多数の衛星を投入することをめざしている。

 

バイオテク

シューはバイオテクノロジー特に高機能素材が将来の作戦でカギとなると述べている。8月に行われたDARPAの実証実験に触れている。

 

「48時間以内で水、砂、生物技術を応用してヘリコプター発着パッドを完成させた。すごい成果だ。兵たん経費が大幅に減り、現場で完成させた」

 

だが国防総省はバイオテクノロジーの応用範囲を広げる必要があり、兵員の身体活動へ健康状態のバイオメトリックデータ収集を実現し、指揮官が部隊の状況を適正に把握する状況を作りたいとし、これは軍のみならず一般社会にも応用できるという。

 

新分野New Focuses

シューは新素材がこうした各分野の突破口を開く上で重要となるとみている。

 

各案件を構想段階から実現に向かわせるカギは実戦部隊の手に早く渡すこととシューは述べた。

 

国防副長官キャスリーン・ヒックスが当方が仕切るイノベーション部会を準備してくれた。そこで急いで取り組んでいるのが迅速な開発とともに実験予算の確保だ。文字通り期待が高まる構想を取り上げ、実験で統合戦闘構想が求める内容とのギャップを埋めていく」「共同実験で単独では実行できなくても各軍のニーズに対応させていく。実戦部隊のトップと密接に作業しており、統合参謀本部とも連携している」と述べた。■

 

Pentagon’s Top Science Official Adds to Tech-Breakthrough 

Wishlist

BY PATRICK TUCKER

OCTOBER 11, 2021 03:46 PM ET

 

https://www.defenseone.com/technology/2021/10/exclusive-pentagons-top-science-official-how-dod-will-pursue-breakthrough-technology/186008/

 

 

 


2015年1月28日水曜日

国防情報畑のトップは世界をどう見ているのか 





ここで紹介するヴィッカーズ次官ですが、陸軍特殊部隊、CIA作戦要員(アフガニスタン、チャーリー・ウィルソン下院議員で調べてください)の経歴を持つ人物です。記事では情報統制のため肝心のことは発言していない気味もありますが、国防総省を支える重要人物と見ましたがいかがでしょうか。

6 Threats, 6 Changes, & A Brave New World: Intel Chief Vickers

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on January 21, 2015 at 5:00 PM

国防総省の情報活動トップの安眠を妨げる原因はひとつではない。マイク・ヴィッカーズ国防次官(情報担当) Mike Vickers, under secretary for intelligence はテロリズム、サイバーセキュリティ、イラン、北朝鮮、ロシア、中国に対応を準備している。
Mike Vickers マイク・ヴィッカーズ国防次官
ヴィッカーズ情報担当国防次官はNATO大西洋協議会の席上で「課題の合算が大きな課題」と発言。「一つひとつの課題が大したことなくても6つ重なりあうと脅威だ。それぞれ別の問題だが、一様に重要で、同様に持続しそうだ」
「冷戦まで一貫した大きな脅威は単一で、そのほかに一過性の脅威数件があっただけだった。だが現在は長引く脅威が複数になった」とし、「ここ数年前で状況が悪化している」と発言。
Sen. John McCain ジョン・マケイン上院議員 
「ズビグネフ・ブレジンスキーZbigniew Brzezinski がいみじくも言ったように現在の国際状況は前例のない不安定なもの」(ヴィッカーズ)
危機感は共有されている。ブレジンスキーとブレント・スコウクラフトが上院軍事委員会で本日午前に証言した。これは新委員長ジョン・マケイン議員の初の采配となり、ふたりの長老政治家を冷徹なことばで歓迎した。
「リベラルな世界秩序の価値観が今までにない危機に直面している」とマケインはオバマ大統領の年頭教書演説は「非現実的な甘い考え」と一蹴、ヴィッカーズとほぼ同じ内容の脅威対象のリストを読み上げた。ロシア、中国、イラン、イスラム過激主義で、北朝鮮とサイバーセキュリティーの言及がない。
テロリズムに関し、マケインはイエメンに対する現政権の政策に触れている。イエメンではシーア派武装集団ホーシ Houthis が米国が支援する政府施設を占拠し、譲歩を引き出した。「イエメンはかつてオバマ大統領が対テロ成功例と持ち上げていた国だが、アルカイダは世界規模でテロ活動を活発化しており、パリでの残虐な襲撃を見たばかりで、今度はイラン支援のもとホーシ反乱勢力が同国を崩壊の一歩手前に追い込んでいる」と発言した。
シーア派で米国の影響が過大と声をあげる一方でアルカイダに対する嫌悪が強くなっていることは注目に値する。「ホーシは反アルカイダ勢力だ」とヴィッカーズは発言。「わが方はアルカイダに対する対テロ作戦をここ数ヶ月に渡り実施している」
「ホーシは確かにイエメンでは昨年9月以降影響力を強めており、ここ数日で大きく勢力を伸ばしている」とヴィッカーズは控えめに発言。「その目指すところはまだ見えず、同国を掌握し作り変えようとしているのか不明」

世界各地で暴力事件が起こっているのはアルカイダ(今や古手となった)とイスラム国の間でスンニ派過激主義者の獲得競争があるためと次官は解説。パリの新聞社シャルリー・エブド襲撃でイエメンのアルカイダ派が犯行を認めている。アフガニスタンのタリバン指導者反主流派はイスラム国に亡命したという。
一連の危機で共通事項はないのか。「テロリズムにサイバーが加わるのが緊急の脅威となる」(ヴィッカーズ)
国家による脅威で一番緊急度が高いのはサイバー空間だ。ロシア、中国、イラン、北朝鮮で過激なサイバー活動があり、ソニー・ピクチャーズ事例があったばかり、とヴィッカーズは指摘。
「この分野では国家活動が優勢」とヴィッカーズは言い、「サイバー野心」がある非国家組織は「限定的妨害活動」はできるが、サイバー空間の攻撃は不可能とする。「通信技術の進歩とソーシャルメディアがテロリストの能力向上に貢献している」が、サイバー攻撃そのものの実施能力はまだないというのだ。
とはいえ、技術発達の効果が世界に広がる一方でアメリカの優位または独占は消えつつある。衛星画像技術や高度な暗号技術は今や広く普及しているとヴィッカーズはいい、米国の行動が見られている反面米国が他国の情報を読み取ることは困難になっている。一方で生体識別技術 biometric technology の発達で特定の人物の追跡が容易になり、「同様にデジタル上の痕跡digital dust 」でも特定できるという。情報収集の面で米国にとって有利にも危険にもなることを意味する。
では変化しつつける世界においてどこに多重的な危機が一度に発生する可能性があるのか、ヴィッカーズはどう対応するつもりなのか。次官は焦らすように次のようなヒントを示した。「過去数十年で最大級の国防情報機能の変化...在任中に代表作といわれるもの...」になるという。
ヴィッカーズは衛星、暗号解読、人的情報活動、戦闘、対テロ作戦、サイバーセキュリテイの6分野を想定する。
1) 衛星では「この十年で大きく進歩したが、もっと大きな変化が実現する。詳しく言えないが従来より長く軌道にとどまり、システム統合度が進み、(脅威に対する)弾力性が増える」という。
2) 衛星に並ぶ米国の情報活動の大きな柱は暗号解読であるが、今や高度な暗号解読技術は国家、集団のみならず、個人レベルでも可能になっている。だが優位性を確保するため「今後も高性能暗号解読システムへの投資を継続」すべきだとする。
3) 衛星や信号といった「技術手段」の対極が人的情報活動(ヒューミント)で9・11の情報部の失態以降は予算が増えている。ヒューミント強化に10年以上予算を増額してきたアフガニスタンとイラクの戦術作戦レベルが一段落し、「世界規模で戦略能力を再整備中」という。
4) 高性能な「接近阻止領域拒否」の防衛体制を打ち破る方法としてヴィッカーズも国防総省の主流意見を支持する。中国と規模は小さいがイランが典型で、長距離ミサイル、航空機、艦艇、高性能レーダーの組み合わせで米軍の侵攻を食い止めようとする。ヴィッカーズは情報活動がこのような場所で軍の進出をどう助けるのかを明確に説明していないが、U-2を投入してソ連の対空防衛の有効射程の上空を飛翔した1950年代から情報法活動は一貫して有効性を発揮しているとだけ発言。
5) 戦闘形態として下位に位置づけられることが多い対テロ作戦だが、ヴィッカーズは「対テロ作戦能力はひきつづき拡大中」とし、ドローン無人機を指していると思われる。国防総省は飛行距離、センサー能力を向上しつつ、機数を増やしていると発言。米空軍が無人機操縦者の過労状態でテコ入れに動いたことは「非常に喜ばしい」という。
6) ヴィッカーズは国防総省による省内ネットワーク防衛をめざすサイバーミッション部隊新設の進捗度が「3分の2」だという。まだやり残しがあると指摘し、「情報インフラを整備し作戦部隊の支援が必要だ。また国防情報分野では「連続的評価」“continuous evaluation” により内部の機密漏洩の脅威への防護を固めねばならない。ブラドレー/チェルシー・マニングBradley/Chelsea Manningやエドワード・スノウデン Edward Snowdenの例を想定している。■