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無人艦デファイアントのDARPA洋上実証が近づく(The War Zone) ― USVの開発はここまで進んできた。中国に対抗する米海軍艦隊が無人艦艇で構成される日が来るかもしれません。

 


USX-1デファイアント。DARPA

無人艦デファイアントのDARPA洋上実証が近づく(The War Zone)

無人艦USX-1デファイアントDefiantは、乗員なしで航行し、大量生産を想定した設計で、長期巡航に先立ち試験をこなしている

USX-1デファイアント中型無人艦は、戦闘艦のような船体形状をしており、数ヶ月にわたる洋上巡航を控えドックサイドでの試験を実施中だ。デファイアントは、乗員なしで航行できるように、また効率的な大量生産ができる設計で、最終的には米海軍に引き渡され、艦隊にさらに高性能なUSVを追加するという同海軍の取り組みとして実戦的な任務を視野に入れた追加試験が行われる。無人艦が今年初めにワシントン州のピュージェット・サウンドで目撃された後、本誌が最初にその進水を確認していた。

 サーコSerco社の海洋エンジニアリングマネージャー、ライアン・マータは、今週初めに海軍連盟の「Sea Air Space 2025」展示会の会場で、本誌にデファイアントの最新情報を提供した。USX-1は、米国国防高等研究計画局(DARPA)の「無人船舶(NOMARS)」プログラムで開発されたもので、マータはこのプログラムで副責任者も務めている。

「現在、船の引き渡し前のドック試験中です。その後、DARPAの典型的な実証試験を行い、技術的に彼らの期待に応えることができたことを証明する予定です」とマータは語った。「計画通りに進めば、今夏には海上に出る予定です。すべてがうまくいけば、長時間の耐久試験を行う予定です」。

デファイアントは現在、シアトルの北にあるエベレット市のピュージェット・サウンドにある海軍施設、エベレット海軍基地に係留されている。同無人水上船(USV)は、サウンドの向こう岸にあるウィドビー島にあるNichols Brothers Boat Buildersで進水した。

 DARPAは、デファイアントの洋上実証は数ヶ月にわたって実施される予定であると発表している。この長期間にわたる巡航をサポートするため、DARPAは海軍と協力し、洋上給油を必要としない新たな洋上給油システムをUSX-1用に開発している。

「DARPAの実証後、SURFDEVRON(米海軍ベンチュラ郡基地)に引き渡され、PMS 406がスポンサーとなる予定です」(マータ)。

 SURFDEVRONは、2019年にテスト部隊として設立された海軍の第1水上開発隊を指す。昨年、SURFDEVRONは正式に、より大きな第1水上開発グループ(SURFDEVGRU)へと発展した。現在、同グループには2つの無人水上艦艇隊(USVRON)が配属されています。また、同グループは現在海軍で就役中のズムウォルト級ステルス駆逐艦2隻を監督しており、最終的には3隻目となる将来のUSSリンドン・B・ジョンソンを受け入れる。PMS 406は、海軍海上システム司令部(NAVSEA)傘下の無人海洋システム部。

 「SURFDEVRONに引き渡す際、期待しているのは、ミッションシステムを使用した一連の演習です。なぜなら、DARPAのデモンストレーションにはミッションシステムが含まれていないからです」と、サーコのマータは付け加えた。「ですから、このような大きな『R』要件の有用性を証明したいと考えています。 それによってどのような効果があるのか?どのようなものを搭載できるのか?ミッションシステムとプラットフォームの統合が私たちの期待するところです」。

 デファイアントでは当初から、安全マージンを確保し乗員が搭乗せずに運用できるように設計されています。これまで海軍が実験してきたUSVは大型のもので、有人艦艇を転用したものか、あるいはオプションとして乗員を乗せることを想定して設計されたものだった。米軍は、USX-1のような中型USVを、全長200フィート未満、排水量500トン未満と分類しているが、スピードボートやジェットスキーをベースにした設計よりも大型だ。大型USV(LUSV)は、全長300フィート、排水量2,000トンに達する。

2023年、米海軍のUSV「マリナー」が後方、「レンジャー」が前方に並んで航行している。いずれも洋上支援船を改造したもの。米海軍

 NOMARSとともに、DARPAの中心的な提案は「1年間完全な無人で、90%の稼働率で海上に出ることができ、高速でターンアラウンドが可能で、運用コストが安価である」というものだ。また、サーコ社のマータによると、「Sea State 3」の条件下で最大速度「20ノット」で航行でき、有用なペイロードを搭載できる能力も備えている。ビューフォート風力階級でいうと、シー・ステート3は風速10ノット、平均波高約2フィートで、最大3フィートまで上昇することもある。

 マータは、デファイアントの仕様や現在の能力についてこれ以上の詳細は提示することはできないとし、詳しい情報についてはDARPAに問い合わせるよう求めた。しかし、同氏は「システムおよび航行の自律性」の両方が高いと説明した。

 デファイアントの実用化の可能性を探ることは、DARPAの当面の計画には含まれていないものの、USVはミッション用ペイロードの統合を念頭に置いて設計されている。

「ミッションシステムを中心に構築しています。つまり、ポッド型またはコンテナ型のシステムです。海軍にはすでにかなりの数があります」とマータは説明した。

 またマータは、2021年に海軍のレンジャーUSVに搭載されたMk 41垂直発射システムをベースとするコンテナ型ランチャーから多目的スタンダードミサイル6(SM-6)を発射するテストを特に強調し、その一例としてペイロードを挙げている。また、サーコはBAEシステムズ社の適応甲板発射システム(ADL)も提示しており、これはMk 41で使用されているのと同じキャニスターからミサイルを発射できる可能性のあるオプションのひとつだ。

陸上テスト中のADL。BAEシステムズ

 ミサイルを搭載したデファイアントは、「駆逐艦の外付け弾草として使用できる」とマータは強調した。「現在、CG-47級(タィコンデローガ級巡洋艦)は退役中です。 128(VLS)セル搭載の艦船です。そのミサイルギャップを何らかの方法で埋めなければなりません。

 海軍はティコンデローガ級の退役を間近に控えているが、昨年、そのうち3隻の耐用年数を延長する計画を発表しました。

 「想像できると思いますが、他にも多くの(ペイロードの)オプションがあります。C2ISR(指揮統制、情報、監視、偵察)や、そのようなペイロードです」とマータは指摘した。「デファイアントや一般的にMUSVと呼ばれる艦艇は、戦術的に有用なペイロードを搭載できるほど十分な大きさがあり、戦術的に有用な距離で、開けた海域で活動できることが特徴です」。

また、サーコでは過去にも、デファイアントの任務として後方支援が考えられると提案していた。

 「発射(弾薬)の際には常に人間による介入が必要ですが、装備や運動性能の一部は無人プラットフォームに積み替えることができるかもしれません。小型で安価なプラットフォームは離陸や離水、水平線の先への移動も可能なので、分散型後方支援や分散型攻撃能力という観点では非常に理にかなっています」と、 とマータは付け加えた。「そして、人々がこのプラットフォームで戦争ゲームを始めたら、このサイズ、耐久性、航続距離を持つものに多くの価値と用途を見出すことになると思います」。

2025年のシーエアスペースで展示されたデファイアントの模型。船首にADLが取り付けられている。ハワード・アルトマン

 コンテナ化ミサイル発射機を含むモジュール式ペイロード、およびMUSVが提供する幅広い運用上の関連性について、特に小型設計と比較した上で語ったことは、海軍がUSV計画で目指している方向性と一致している。1月には、海軍はMUSVやLUSVの艦隊よりも、小型でシンプル、かつ互換性のある無人艦の取得に重点を移すことを発表していた。

 また、海軍は近年、乗組員を乗せた軍艦や潜水艦のプログラムにおいて、深刻な遅延やコスト増に苦しめられている。 特に、中国との太平洋における潜在的なハイエンド戦闘に備える中で艦隊の強化を支援する低コストでより容易に生産可能なオプションとして、USVに新たな重点が置かれる可能性もある。 サーコは一貫して、デファイアントがこの点で特に優れた利点を提供するように設計されていると強調してきた。

 「当社は、現在ではやや珍しい、妥当な期間と妥当なコストで船舶を納入しました。当社は船舶の設計者であり、主契約者でもあり、ほぼすべての資材を産業基盤から調達し、それらを統合することで、それを実現してきました」とマータは語る。「造船所主導の主契約というよりも、政府とシステムインテグレーターが協力して資材を調達し、困難に直面した際には中心となって船を引き渡すというやり方でした。これは、1980年代の造船であり、現在のやり方ではありません。」

進水の直前または直後のデファイアント。DARPA


 「14人で14か月かけて船体を溶接しました。船体は、船内に人が乗らないおかげで非常にシンプルです。つまり、トイレも調理場も通路もありませんし、隔壁に穴を開ける箇所もほとんどありません。つまり、非常にモジュール化された構造で、素早い手作業での建造が可能です」と「デファイアントを建造できるレベル3の造船所は、米国に35箇所以上あります。搭載している大型エンジンは、3社で何万個も生産されています。

 また、サーコでは数年前から、デファイアントの設計をベースにした大型USVの可能性を模索していきた。これには、最大4基のADLまたはその他のコンテナ型ミサイル発射機、その他ペイロードを搭載可能な「Dauntless」と呼ばれるものも含まれる。

Dauntlessコンセプトのモデル。ハワード・アルトマン

 デファイアント、またはその他の派生型や派生品が最終的に海軍やその他の軍隊で運用されるかどうかはまだわからない。それまでの間、サーコとDARPAは、無人艦が数週間、あるいは数か月間、広大な海上で高度な自律性を保ちながら運用できるという、無人艦で核となる能力の実証に向け、着々と準備を進めている。■


Defiant Drone Ship Gets Closer To Months-Long DARPA At Sea Demonstration

USX-1 Defiant, which will sail without humans onboard and is designed for mass production, is undergoing trials ahead of its long-endurance cruise.

Joseph Trevithick

Updated Apr 10, 2025 8:28 PM EDT

https://www.twz.com/sea/usx-1-defiant-drone-ship-gets-closer-to-months-long-darpa-at-sea-demonstration


コメント

  1. 船首の写真を見ると、いい加減な溶接で、すぐ沈みそう?

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