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2020年3月22日日曜日

画期的な小型ターボジェットエンジンの登場で装備品の様相に変化が生まれる

巡航ミサイルのエンジンはもともと小型でしたが、さらに小型化を目指しているのですね。ただしスウォームに応用するにはもっと小型化が必要なのでしょう。小型化といえば日本の得意分野ですね。クレイトスはここに来て登場頻度が高くなってきました。

空軍は低コスト巡航ミサイル開発のため低コスト小型エンジンの開発を進めているが、同エンジンは広く応用されそうだ。

米空軍は画期的な小型・低コストのターボジェットエンジンのテストの成功を発表した。テストはグレイウルフGray Wolfと呼称される事業の一環で安価な巡航ミサイルの実現を狙う。

テストに成功したのはテクニカルディレクションズTechnical Directions Inc. (TDI)のTDI-J85エンジン。同社は無人機メーカー、クレイトスの事業部。空軍研究実験本部(AFRL)がグレイウルフに携わり、F-16ヴァイパーに同エンジンを搭載した写真を公開した。写真ではグリフォンエアロスペースのロゴが写っている。AFRLは2017年にグレイウルフ事業を発表し、ノースロップ・グラマンロッキード・マーティン両社にテスト機材の提供で契約交付していた。

「今回のテスト成功で同エンジンさらにウェポンシステム全体への信頼性が増進した」とAFRLがまとめた。「TDI-J85開発は巡航ミサイル開発と並行作業で難題だったがAFRL、TDI、ノースロップ・グラマンとの共同作業が大きな成果を示した」

USAF
TDI-J85を推進手段に導入したノースロップ・グラマンのテスト機材がF-16ヴァイパーの主翼下に搭載された。

TDI-J85は推力200ポンドで本体重量はわずか28ポンド。これに対しウィリアムズF107ターボファンエンジン(AGM-86B空中発射式巡航ミサイルALCM他トマホーク対地攻撃巡航ミサイルに採用)の推力は600ポンドで重量は67ポンドある。

TDI
TDI-J85エンジン


「TDI-J85エンジンは飛行中始動に成功したほか、高高度での作動も実証した。同エンジンは性能要求を満たし、燃料消費率も予測通りの実績を示した」「累計作動時間から設計耐久性へ信頼度が高まった」とAFRLは発表。

「エンジン設計では最終価格と整備性に主眼を置き大量生産を想定した。エンジン性能が実証された」「この大きさ、価格のエンジンでこの高度で作動に成功したのは初」(AFRL)

AFRLはTDI-J85の単価を発表していないが、上記F107では2014年時点で190千ドルだった。

TDIは小型ジェットエンジン技術の開発に注力しており、2013年に空軍予算150万ドルを交付され、「小型低コスト推進手段」の名称で開発を開始していた。契約は2016年まで継続され、その後グレイウルフ事業が立ち上げられた。

低コストで燃料消費率が高いエンジンが同事業の中核で空中発射式巡航ミサイルの全体コスト引き下げを目指す。最新の2021年度予算要求ではAGM-158A共用空対地スタンドオフミサイル(JASSM)とAGM-158BJASSM-射程拡大型(JASSM-ER)の概算単価は126.6万ドルで批判の的となっていた。

コスト削減以外に燃料消費効率が引き上がれば搭載燃料を増やさず長距離を飛翔でき、燃料搭載を減らした分だけペイロードを増やしても有効射程が犠牲にならない。

空軍は「250カイリ超の巡航性能」を有する低コスト巡航ミサイルの実証をめざす。この距離はJASSMの有効射程に近いが、JASSM-ERや今後登場するAGM-158DのJASSM-XR、AGM-86BALCM、トマホークの性能より短い。

エンジン改良は空中発射式巡航ミサイル以外にも可能だ。TDI-J85はその他の新世代装備、おとり、無人機に応用できる。

空軍が目指すグレイウルフの全体像ははっきりしない。2019年6月に空軍は当初想定していたネットワーク化大量投入小型装備への応用は断念しゴールデンホードGolden Hordeと呼ぶ別事業を立ち上げると発表した。

USAF
グレイウルフ事業の当初の説明資料

グレイウルフ事業が終了しても、画期的なTDI-J85が別事業に応用されるのは確実だ。TDIは米軍の別契約で低コストかつ低燃費エンジンの開発に取り掛かっている。

いずれにせよ、空軍が画期的な低コスト巡航ミサイル開発をめざしているのは確実で、その他装備の開発にも大きな影響が出そうだ。■

この記事は以下を再構成したものです。

Air Force's Gray Wolf Program Tests Game-Changing Small Low-Cost Jet Engine
The Air Force funded the development of the engine as part of a project to develop low-cost cruise missiles, but it could have wider applications.
BY JOSEPH TREVITHICKMARCH 20, 2020


2017年12月25日月曜日

★ロッキードが開発するグレイウルフ巡航ミサイルはどこが違うのか

Aerospace Daily & Defense Report

Lockheed To Develop ‘Gray Wolf’ Cruise Missile

ロッキードが開発する「グレイウルフ」巡航ミサイルとは
ロッキード・マーティンのミサイル火器管制部が競合6社を破りAFRLの「グレイウルフ」巡航ミサイル開発実証契約を獲得した。
Dec 20, 2017James Drew | Aerospace Daily & Defense Report

空軍研究事件部門(AFRL)がロッキード・マーティンに開発させる巡航ミサイルは多数一斉発射し高度防空網を突破できる自律運用を目指す。
同社のミサイル火器管制部門(在ダラス)が競合6社を破り、5か年で納期数量未定の契約を110百万ドルで勝ち取り、AFRLが目指すグレイウルフGray Wolf巡航ミサイル実験に取り組む。
契約ではAFRLが2017年3月発表の仕様書の低コスト遷音速巡航ミサイル試作型の「設計、開発、製造、試験」を実施し、ネットワーク技術の応用で高度の航法性能と残存性を発揮しながら特定目標の攻撃を行う想定だ。
AFRLは110百万ドルを二社に執行させるつもりだったがロッキードが全額契約を勝ち取ったようだ。
国防総省の12月18日発表では前渡金2.8百万ドルを提供し発注時期は2022年まで延長可能としている。上記の仕様書は5月に改訂されグレイウルフ契約は二年延長可で2024年までとしている。
国防産業界はグレイウルフについてコメントを積極的に出していないが、米空軍文書から情報の一部が判明している。
AFRL仕様書ではスパイラル状に変化する開発形態を想定しており、目標は低コスト生産工程を駆使した生産方式と個体間で協同作動した形の攻撃をともに実証するものとある。
AFRLは産業界が消耗品扱いの巡航ミサイルを小規模納入かつ期限超過でも低価格にできるか見たいとし、現在の単価数百万ドルと比較する。また新方式の運用、戦術、技法、手順、規制方針が自律能力の付与兵器グレイウルフに適用できるか確認したいとしている。
ロッキードの巡航ミサイルにはペイロード多数が搭載され、運動性エネルギー攻撃、電子攻撃や情報収集監視偵察機能も試されるはずだ。
攻撃効果の実現にはネットワーク化したミサイルが統合防空体制の各種手段を使用不能にしながら突入する必要があり、敵の地対空ミサイル、レーダー、通信機能への対抗を想定している。
「低単価で調達しやすいミサイルは損耗を前提で敵には高コスト対応をさせる」とAFRLのプレゼンテーションで説明していた。「スパイラル状に本体を進展させれば迅速技術試作に繋がり一層多くの発展性が実現する」
これと似た方法をAFRLが以前実施している。低コスト損耗可能攻撃用無人航空機実証事業 Low-Cost Attritable Strike Unmanned Aerial System Demonstration がそれで2016年にクラトスディフェンス&セキュリティソリューションズKratos Defense & Security Solutions がXQ-58Aヴァルキリーで契約交付を受けている。DARPAにはグレムリン事業がありダイネティクスDyneticsジェネラルアトミックス両社が契約を獲得し、無人航空機をロッキードC-130ハーキュリーズでの発進回収する予定だ。

グレイウルフは空軍にとって使い勝手の良い兵装になる見込みで爆撃機や輸送機以外に戦略能力室提案の「兵器庫(重武装)」機からも発射することになるかもしれない。■