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2018年10月23日火曜日

ハリケーン襲来でF-22の10%が運用不能になった。21世紀の気候変動と軍事作戦体制の関係を考えよう



The Two Things Air Force F-22 Raptors Can't Defeat 米空軍F-22ラプターが勝てないふたつのこと

The weather and the fact that Washington does not have enough of them. 天候条件と配備機数が不足していることだ
October 20, 2018  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: MilitaryTechnologyWeaponsWarJetsF-22


F-22ラプターは史上最強の戦闘機かもしれない。レーダー断面積はガラス玉程度で、緊急時にマッハ2.5で窮地を脱出できる。その速度では大気との摩擦でレーダー波吸収材が溶解する。だが今月に入り空軍はラプターの問題を見つけた。
フロリダ半島沿岸に位置するティンダル空軍基地はラプターパイロット養成の中心で29,000エーカーに広がる広大な施設に10月初めにF-22ラプター55機が325戦闘機航空団所属として配備されていた。これはラプターの三分の一の規模だ。空中戦闘の標的としてQF-16無人機、T-38超音速練習機があり、三菱重工Mu-2双発多用途機をAWACS乗員の訓練用にも使う。
10月9日にハリケーン・マイケルがカテゴリー4に成長し、風速は海抜14フィート地点で毎時130マイルから150マイルになった。ティンダル基地は海抜12フィートしかない。空軍は機体退避の余裕が数日間しかなかった。
ラプターの33機はオハイオ州のライトパターソン空軍基地に移動できた。基地人員及び家族の40千名はハリケーン直撃の前に避難して基地には若干の基幹要員が残った。
だが22機がハンガー内に残った。基地整備陣が直撃前に若干の機体を飛行可能に戻したが、うち一機が離陸中に作動不良となった他、部品不足のため他の機体から部品をとって飛行可能となった機体もあった。
ティンダル基地はハリケーン上陸地点となった。基地内に展示中だった機体重量14トンのF-15がひっくり返され、基地内住宅全棟が破壊された。トレーラーはマッチ箱のように破砕され、木々は寸断され金属屋根も無残に引き剥がされた。ティンダルの無人機用滑走路、フライトライン等は壊滅状態になった。

関連(翻訳はありません、あしからず、希望あればリクエストください)

Screenshot. U.S. Air Force

F-22、F-35の次に来る機体第六世代戦闘機の姿は

F-22やF-35など目じゃない、第六世代戦闘機は革命的な機体になる

F-22ラプターの唯一の問題はふさわしい相手戦闘機が存在しないこと

直後撮影の写真から第五格納庫の屋根が崩壊しドアが吹き飛び、その他小型格納庫でも窓が破砕していることがわかる。残骸下に少なくともF-22三機が見える。Mu-2とQF-16少なくとも5機がこの画像で見える

被害の実態は今後明らかになるが、直後の発表ではF-22のうち17機から19機が基地内にあったとしており、「全機無傷」で「飛行再開可能」とあった。では残る3機ないし5機が事前退避したのか基地内に残っていたのか不明だ。
マティス国防長官は報道陣に「修理可能か断言するのは時期尚早だが被害の直後評価は予想より良い」と語った。10月16日にはF-22の損傷は「心配していたほどではない」としハンガーがハリケーンに耐えたとした。ロッキード・マーティンが被害状況の調査中だ。
とはいえ、今回の損害はラプター生産が終了しているため気になるところで、同機生産再開が期待できない中で米空軍の作戦機材は120機しかなく、その他64機が予備機材、訓練用、試験用に確保されている。つまり、今回のハリケーンだけで現役機材の10%が運用できなくなったことになる。小規模のラプター部隊は運行費用が高い(毎時58千ドルでF-16の三倍)が、第5世代戦闘機は米軍としても最新の4.5世代戦闘機たるロシアSu-35や中国のステルス機J-20やJ-11Dへの対抗手段の中心として期待せざるをえないのだ。
飛行不能のラプターをティンダル基地から移動できなかったのは危機管理として失策だ。米第四世代ジェット戦闘機では飛行時間ごとにおよそ20人時間の整備が必要となるのが通常だ。ラプターでは40時間になる。しがたって機材多数を飛行可能状態に保ちたくても同時に基地要員多数が避難してしまえば兵站業務が困難になる。飛行不能機材を空輸あるいは地上輸送するためには数日に渡る準備や兵站装備も必要ですぐ実施できる仕事ではない。ハリケーン・マイケルの危険が現実になった時点で準備時間の余裕はなかった。
ただし今回の事案から貴重な教訓が得られ今後の計画立案の参考になる。例としてティンダル基地が沿岸にありハリケーン直撃を受けやすいことは既知の事実だ。以前のハリケーン・アルバート襲来時にはラプターをティンダルに配備してハンガー内に詰め込んでいた。国防総省では温暖化の影響を憂慮しており、不毛の地となった地域での紛争激化のみならず沿岸各地に点在する米軍基地への影響も心配のたねだ。
2016年度の調査報告では海面水位の上昇で海軍基地128箇所への影響が懸念されるとし、21世紀中に洪水の頻度は10倍になると結論づけている。基地四箇所が完全水没するという。ティンダル基地の経験から今後の計画立案では高価装備品のF-22他は過酷な天候条件が予想される地点に配備しない配慮が生まれることを期待したい。
また今回の事案からペンタゴンが作戦即応体制の維持に腐心している状態が浮き彫りにされた。ティンダルのラプター55機のうち数日前に飛行できたのは6割しかなかった。難易度の高いラプターは稼働率が59パーセントしかなく、F-15やF-16の70%、75%を下回る。
マティス長官は最低80パーセントを達成可能な目標として2019年8月までの実現を命じた。残念ながら短期間で数字を急改善すると長期的に装備の維持で悪影響が出かねない。
損傷を受けたF-22の修理は数年間かかり費用も数億ドル規模だろう。日本がF-2でほぼ20パーセント(18機)を2011年の大津波で損傷した例では7年間8億ドルで15機の復帰に成功した。ティンダル空軍基地の経験からペンタゴンが高額装備品の長期保存を最大にする策を考えつつ気候変動の影響とともに沿岸基地へ大損害をもたらす想定を十分考えることを望みたい。■
Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.


MU-2が米空軍で供用忠? たしかに米国に同機は輸出されていますが、国内で用途配しになった三菱重厚の製品がまだ稼働中とは。米空軍に直接輸出された機体ではないはずで、おそらく委託業者の所有機と思いますが妙に興味を覚えてしまいます。

2014年10月28日火曜日

ペンタゴンの気候変動対応戦略



気候変動戦略と言うには中身が貧弱な気がしますが、軍も対応を迫られるのは必至ということなのでしょうか。温度上昇で一番影響が出るのが極地に出現する作戦水域だと思うのですが。BRACは基地に経済を依存する地方には死活的な話題で時あたかも中間選挙の年ですから特に敏感なのでしょうね。

Hagel Debuts DoD Climate-Change Strategy

Rising Sea Levels Could Affect BRAC Decisions

Oct. 13, 2014 - 01:39PM   |  
By PAUL McLEARY   |   Comments
http://www.defensenews.com/article/20141013/SHOWSCOUT04/310130024/Hagel-Debuts-DoD-Climate-Change-Strategy
513197487
チャック・ヘイゲル国防長官が気候変動への対応策づくりを発表したのは13日に開かれた米州国防相会議(リマ)の席上。(Saul Loeb / AFP)
WASHINGTON —リマで開催された米州国防大臣会合 Conference of the Defense Ministers of the Americasで米国防長官チャック・ヘイゲルが気候変動へのペンタゴン対応戦略案を明らかにした。
関連してペンタゴンが「国防総省版気候変動対応ロードマップ」 “DoD Climate Change Adaptation Roadmap.”を発表し、海面水位の上昇、気候パターンの変化、食糧・飲料水の欠乏等が発生する中で同省が企画立案を今後どう進めるかを示している。
編集に関与した関係者からはヘイゲル長官が就任直後から「気候変動の安全保障への影響に高い優先順位」を付けて、「広範な安全保障の各段階で優先順位を高くすべき」と位置づけたという。
文書では気候変動を「軍活動に大きく影響し、軍が民間各局の支援に回る機会が増える、人道援助・災害援助への出動が自然災害の発生増に応じて増えるだろう」としている。
注目すべきは米海軍の沿岸部基地施設が「海面上昇の前に無力で浸水の危険があり、干ばつ、自然発火、気温の極端な変化が訓練活動そのものを困難にする。補給網も影響を受け、現在以上に過酷な気候条件でも重要な補給を維持する工夫が必要となる。従来から軍事活動は天候条件に左右されてきたが、気候変動により軍事作戦の実施方法を変更・縮小する必要が出るかもしれない」
ただしペンタゴン関係者からは同報告書はすべての沿海部基地施設が基地再編 BRAC 検討で閉鎖されるのではなく、海面上昇による洪水の可能性を考慮すべきと主張したにすぎないと追加説明があった。
「気候変動は注目するトレンドの一つで今後の作戦環境を決定する要素となる」とペンタゴン関係者はまとめる。
同関係者からはペンタゴンの作戦立案者は「将来の作戦の実施場所を想定し、実施条件の変化を考える」ため戦略に盛り込む必要があると説明する。
CNA研究所 CNA Corp の相談役で軍事諮問委員会のシェリー・グッドマン Sherri Goodmanによれば「国防総省版気候変動適応ロードマップで最高位の優先順位がつくのは作戦遂行上不可欠な基地施設へのリスクを減らすことで、大幅な海面水位上昇、大規模な暴風雨、洪水から守ると同時に北極での緊急事態に対応し、気候変動で猛威を増すはずの自然災害への人道援助、緊急対応の実務想定と関連能力整備です」としている。■