スキップしてメイン コンテンツに移動

アメリカは空軍力でフーシ派を打破できるのか?(19fortyfive) ― カール・ヴィンソンCSGを東シナ海から紅海へ移動させているのは現状では不足という評価があるためでしょう。航空作戦だけではフーシの撃滅は難しいのでしょう

 


Gemini



2025年3月15日、米国はイランの支援を受けたイエメンのフーシ派に対する空爆作戦を開始した。米中央軍は、「アメリカの利益を守り、敵を抑止し、航行の自由を回復するため、イエメン全土でイランが支援するフーシ派の標的への精密攻撃含む一連の作戦を開始した」と発表した。

 フーシ派は、紅海で空母ハリー・トルーマンやその他の艦船を標的にしようとして反撃してきた。発射した弾道ミサイルはエジプトに着弾し、2発目のミサイルはイスラエルのネゲブ砂漠上空で迎撃された。

 新たな作戦はトランプ政権にとって試練となる。ドナルド・トランプ米大統領はイランに対し、フーシ派による攻撃の責任を問うと警告している。

 トランプ大統領は「フーシの野蛮人に多大な損害がもたらされた」と述べた。 また、フーシ派が「徐々に悪化」する一方で、アメリカは攻撃を強めていくと述べた。 最終的には「完全消滅させる」という。

 トランプは、目標を掲げても、米国や同盟国にとって有利に見える取引を得るためなら、それを取り下げることで知られている。ある意味では、威勢のいい発言もドクトリンの一部かもしれない。 しかし、フーシ派への攻撃は試練となる。

 そもそも航空戦力だけでフーシ派を打ち負かすことが可能なのだろうか?

フーシ派の活動

フーシ派はほぼ1年半にわたり紅海の海運を恐怖に陥れてきた。彼らは、ハマスが2023年10月7日にイスラエルを攻撃した後に攻撃を開始した。 フーシ派の作戦は段階的にエスカレートしている。

 彼らは2023年11月に船舶ギャラクシー・リーダーをハイジャックし、同船がイスラエルの商業会社と関係があると主張した。また、イスラエルに向けて無人機や弾道ミサイルを発射した。アメリカの軍艦や、イスラエルやさまざまな西側諸国と関係があると主張し商船を標的にした。

 基本的に、彼らは紅海とスエズ運河を封鎖しようとした。

 フーシ派はここ数年、その能力を高めている。反政府勢力として2015年に台頭し、イエメンの広範囲を占領し、サウジアラビアがイエメン政府を支援するため連合軍を率いて介入する原因となった。フーシ派はイランの支援を受けており、支援は、サウジとイランが対立していたイランとの取引協議中に行われた。

 さらにイランは、イラクのアサド政権と民兵への支援を強化した。 イランにとっては好機だった。結局、サウジはイエメンでの役割を縮小し、UAEなどのサウジのパートナーはイエメンでの共同作業から疎遠になった。

 イエメンにおけるサウジの役割や、UAEなど近代的な西側の防衛技術を使用する他の国々は、フーシ派のような敵に対して空爆や近代的な精密兵器を使用することの難しさを示している。

 フーシ派は、地上戦に秀でており、神風ドローンなどの新技術を効果的に使用しており、 リヤドに対しては弾道ミサイルを発射した。ペイトリオットなど防空ミサイルは有効だったが、それでもフーシ派は広く恐怖を撒き散らした。

 最終的に、フーシ派はイランのシャヘド136ドローンを手に入れたようだ。イランが2022年にウクライナに対して使用するためロシアに輸出したのと同じドローンだ。コンフリクト・アーマメント・リサーチは、フーシ派は今日、無人機に水素燃料電池を使用していると考えている。 新しい燃料源は、ドローンの技術革新が一歩進んだことを意味する。

 一方通行の神風ドローンは、アメリカの空母打撃部隊にはかなわない。フーシの弾道ミサイルも米海軍にはかなわない。しかし、だからといってイエメンでの戦争が楽勝ではない。イスラエルは2024年、攻撃の増加に対応してフーシ派へ空爆を実施したが、空爆でフーシ派を抑止することはできなかった。

 空爆は、特に現代の精密兵器の場合、成功の偽預言になりかねない。 こう認識されるのは、極めて高い精度がオペレーターに達成感を与えるからだが、課題は実際のダメージのカウントだ。 フーシ派が弾道ミサイルを洞窟に隠して作り続ければ、あとはキャンペーンを待つだけだ。

 航空作戦は過去に何度か成功している。1999年の対セルビア作戦は、セルビア軍が近代的なNATOの空爆作戦に立ち向かう準備ができていなかったため成功した。1991年にサダム・フセインのイラクに対する作戦がうまくいったのは、戦車を多用するソ連が支援した従来型のサダムの軍隊に対して、アメリカ主導の近代的な連合軍を配置したからである。 イラクの防衛は航空戦力の格好の餌食となった。

 フーシ派は何千台もの戦車を持っているわけではない。セルビアのような国家でもない。 彼らは何年もの間、西側が供給した航空機と弾薬による空爆を受けてきた。

 USSハリー・トルーマンや米国がこの地域に投入する他の資産の圧倒的な火力が、フーシ派を屈服させる可能性はある。イランの責任を追及するというトランプ政権の脅しが、テヘランに裏ルートを開かせる可能性もある。これまでのところ、イランはフーシ派と距離を置いてきた。 イランはフーシの武器に関して、もっともらしい否認を望んでいる。

ホワイトハウスが最近送ったとされる書簡によれば、トランプ政権はイランとの新たな取引の可能性を模索している。アメリカはウクライナとロシアの停戦も望んでいる。 一方、イスラエルは、米国が支援する停戦が、ハマスが第一段階の延長を拒否したために決裂し、ガザのハマスへの攻撃を再開した。


(2023年6月18日)空母ニミッツ(CVN68)近辺での飛行中、ストライク・ファイター飛行隊(VFA)22の「ファイティング・レッドコックス」のF/A-18Fスーパーホーネットが音の壁を破る。 ニミッツは通常作戦を実施中。 (米海軍撮影:ケビン・タン3等通信兵)


 トランプ政権がフーシ派に焦点を絞ったのは、低空飛行の果実を狙うためかもしれない。 紅海の海運を開放し、脅威を減らすことは、米国の海軍力の勝利とみなすことができる。そうなれば、イランとの関係も改善され、イラクにおけるイランの民兵支援を抑制できるかもしれない。 ハマスに対するイスラエルの戦争や、レバノンの安定に対するアメリカの支援にも影響を与えるかもしれない。ロシアも注視するかもしれない。

 米国が本気だとモスクワが判断すれば、ウクライナ協議に影響が出るかもしれない。これらすべてが機能するためには、ホワイトハウスはイエメンで何かを達成したことを示す必要がある。この作戦を成功させるために、USSハリー・トルーマンの紅海でのプレゼンスが、米中央軍とともに注目されている。■



The Big Question: Will American Airpower Crush the Houthis?

By

Seth Frantzman

https://www.19fortyfive.com/2025/03/the-big-question-will-american-airpower-crush-the-houthis/?_gl=1*vs8x1j*_ga*MTcwODc0ODc2Ni4xNzQyNjExNDMw*_up*MQ..


著者について セス・フランツマン

セス・フランツマンは、『The October 7 War: Israel's Battle for Security in Gaza』(2024年)の著者で、Foundation for Defense of Democraciesの非常勤研究員。 エルサレム・ポスト紙のシニア中東アナリスト。 現在は19FortyFiveの寄稿編集者。



コメント

  1. ぼたんのちから2025年3月28日 23:42

    米国のフーシへの攻撃の目的は、航空攻撃の威力を見せつけ、テロ組織に指定したフーシの武器と人員に損害を与え、恐怖を植え付けることであろう。そして、最も重要なことは、フーシを支援するイランカルト教団とその手先、革命防衛隊(IRGC)を脅し、フーシへの支援を続けるならば、武力使用も辞さないと言っている。
    フーシを壊滅させるためには、航空攻撃のみでは困難であることは明らかであり、だからと言って占領を伴う攻撃を行う訳にはいかない。そのため空母2隻からの現在望みえる最大限の力で攻撃しているのだろう。
    その結果、カルト教団の指導者は、早々に「イランは中東地域に代理勢力を必要としていないとし、イエメンの親イラン武装組織フーシ派は自らの動機に基づいて行動している」とフーシを突き放すような発言を行っている。
    イランもまた、イスラエルからの攻撃の痛手から回復せず、米国と戦いを起こす状況で無いのだろう。イランからのミサイル供給が止まれば、フーシの攻撃も萎むことになる。
    また、フーシの幹部は、24時間無人機からの攻撃にさらされるようになるだろう。
    フーシが今後、タンカーや商船への攻撃を繰り返すならば、陸上からのイエメンへの侵攻を実行することになるかもしれない。その部隊は、恐らく米軍と中東諸国との連合軍になるだろう。

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...