スキップしてメイン コンテンツに移動

日本のスーパー駆逐艦ASEVの詳細が海外展示会で明らかになりました(Naval News)―PLANの055型を上回る艦容は巡洋艦とすべきで、海自はそろそろ護衛艦という欺く用語を廃止すべきではないでしょうか

 Japan ASEV Super Destroyer 1IDEX2025のロッキード・マーチン・ブースに展示されたASEV駆逐艦のスケールモデル。

Japan ASEV Super DestroyerJapan ASEV Super DestroyerJapan ASEV Super Destroyer


Japan’s MoD Unveils Latest Image Of ASEV





ブダビで開催されたIDEX25で、ロッキード・マーチンは日本が建造を進める先進的な大型ステルス誘導ミサイル駆逐艦(ASEV)の模型を初めて展示し、同艦の最終構成で新たな詳細が明らかになった。


 弾道ミサイル防衛(BMD)に特化したこのステルス誘導ミサイル護衛艦は、米海軍のズムウォルト級を除き世界の駆逐艦で最大となり、海上自衛隊(JMSDF)のいわゆる "スーパー護衛艦 "の構成に関する興味深い詳細が明らかになった。中国のレンハイ級(055型)180メートル巡洋艦を凌ぐ性能と大きさを持つASEVは、海上自衛隊が誇る象徴になりそうだ。

 海上自衛隊の将来のイージスシステム搭載艦(ASEV)は米海軍のズムウォルト級に勝るとも劣らない極めて大型のステルス誘導ミサイル駆逐艦でその模型がIDEX2025で展示された。

 防衛省によると、ASEVは全長190メートル、全幅25メートル、標準排水量1万2000トン(満載排水量は1万4000トンを超える可能性がある)。これに対し、海上自衛隊の最新型「まや」型駆逐艦は全長170メートル、全幅21メートル、標準排水量8,200トンである。また、ASEVは、米海軍の最新型アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の重さである。

 スペインのアルバロ・デ・バザン(F100)級対空駆逐艦や、その派生型であるオーストラリア海軍のホバート級と同様の構成だ。 

 さらに、日本の現行イージス駆逐艦8隻(こんごう級、あたご級、まや級)に搭載されているAN/SPY-1レーダーシステムと異なり、新型艦には、より先進的なAESA多機能レーダーAN/SPY-7が搭載される。AN/SPY-7はカナダのリバー級護衛艦やスペインのF-110フリゲート艦にも搭載されることが決まっている、

 ASEVは、艦橋上部にレーダー・パネルが搭載される日本初のイージス艦となる。 大きなAN/SPY-7レーダーパネルとマスト上のAN/SPQ-9Bレーダーに注目。巨大なレーダーパネルの前方、艦橋の上にはAN/SPG-62 FCRがあり、マストの両側には電子戦用のAN/SLQ-32(V)6モジュールがある。

 現行の日本のイージス駆逐艦と同様に、この艦は3つのAN/SPG-62 Xバンド・レーダー照射器を装備し、主にセミアクティブ・レーダー・ホーミングを利用した防空ミサイルによる最終迎撃のために目標を指定する。マストにはAN/SPQ-9Bレーダーも搭載され、水平距離スキャンを行いながら、低空飛行する対艦巡航ミサイル(ASCM)、地表の脅威、低速の航空機、UAV、ヘリコプターを同時に自動探知・追尾することができる。さらに、ASEVは、表面電子戦改良プログラム(SEWIP)ブロック2 AN/SLQ-32(V)6モジュール(およびマスト上のSEWIPブロック1B3 HGHSレーダーアンテナ・レドーム)を搭載している。 模型では船体搭載型ソナー(HMS)も見える。

 兵装では、日本のイージス艦で初めて、前部VLSは後部VLSと同じセル数(前部64セル(8×8)、後部64セル(8×8))を備え、合計128セルとなる。これらのセルには、SM-3やSM-6地対空ミサイル(SAM)のほか、巡航ミサイルや極超音速兵器などの高度な脅威に対抗するための将来の滑空位相迎撃ミサイル(GPI)、島嶼防衛作戦で敵の脅威範囲外から地上目標を長距離攻撃するトマホーク巡航ミサイルが搭載される。128セルを搭載する日本のASEVは、韓国の世宗大王級と並んで、中国の055型巡洋艦の16セル、最新の170メートル級「まや」型護衛艦の32セルを上回り、現在世界で最多のVLSセルを搭載する。

 もうひとつの注目すべき点は、Mk46 30mm砲ウェポンシステム(GWS)に似ていると思われる、小型砲塔が2基、艦の中部にあることだ。これらの砲塔は、日本の駆逐艦として初となる遠隔兵器システム(RWS)の可能性もある。これまでの設計とは異なり、ファンネルの間にある2基の4連装12式対艦ミサイルランチャーは、側面構造物で部分的に囲まれており、ミサイル発射のため上面だけが露出している。

 艦尾のAN/SPG-62 Xバンド・レーダー照射器、64セルVLS、後部ファランクスCIWS、ツイン・ヘリコプター格納庫を紹介するASEVモデルのリアビュー。 Mk46 30mm GWSに似ていると思われる2基の小型砲塔にも注目。

 艦首のMk45 Mod4 127mm(5インチ)/62艦砲と、艦橋の前方と艦尾のヘリコプター格納庫の上に配置された2基のファランクス・ブロック1B CIWSを含む。 日本が最新の艦艇でも、RAMやSeaRAMシステムでなく、ファランクスCIWSに頼っているのは印象的だ。魚雷発射用のハッチは見えない。格納庫はSH-60ヘリコプター2機を収容できる。


ASEV駆逐艦計画の背景

Japan ASEV

海上自衛隊のまや型DDG(ミサイルを発射している)、米海軍のDDG51フライトIIIと並走する2隻のASEVのイメージ図。 ロッキード・マーチンのイメージ。


2020年12月、日本政府は閣議で、ミサイル迎撃ミサイル発射後に落下した部品が人口密集地を直撃する可能性があるとの懸念から、安倍晋三政権時代の2020年6月に中止された陸上イージス・アショア弾道ミサイル防衛システム2基の代替案として、ASEV2隻を導入すると決定した。

 ASEVは、主に北朝鮮による弾道ミサイル攻撃の脅威から日本を守ることを目的としている。防衛省は、ロフテッド軌道で発射された弾道ミサイルを迎撃するためには、極めて高い迎撃能力を持つASEVが必要だと強調している 海上自衛隊は2027年度中にASEV初号艦を受領し、翌2号艦は2028年度に引き渡される予定だ

 東京では、ASEVのコスト上昇に懸念が高まっている。 現在、防衛省はASEV2隻の取得費用を7839億円(52億3000万ドル)、1隻あたり約3920億円(26億2000万ドル)と見積もっている。これは、防衛省が2020年の導入を決めた際に想定していた1隻あたり約2400億円(16億ドル)の約1.6倍に相当する。防衛省は値上げの理由として、円安と物価上昇の影響を挙げている。このうち、AN/SPY-7(V)1レーダーアンテナの取得契約価格は約350億円(23.4億ドル)、イージスシステムの取得契約価格は約1,382億円(9.23億ドル)である。

 直近では、防衛省は2025年度4月からのASEV2隻取得関連経費として865億円(5億7800万ドル)を確保し、具体的には、実証試験を含む各種試験準備に係る経費に言及している。

 防衛省は、ASEV2隻に搭載するSPY-7レーダーは、既存のSPY-1レーダーの5倍の追尾能力を持ち、ロフテッド軌道の弾道ミサイルだけでなく、弾道ミサイル複数が同時発射されても対応できると強調している。

 防衛省は、2032年以降にASEVに搭載される予定の改良型12式SSM(艦船発射型)、トマホーク巡航ミサイル、高出力レーザーシステムをASEVに装備する計画だ。 それ意外に防衛省は、ASEV2隻とその他イージス艦に、極超音速ミサイルを撃ち落とす特別設計の次世代ミサイル防衛システム滑空位相迎撃ミサイル(GPI)を搭載する。■


Japan’s ASEV Super Destroyer: Fresh Details Unveiled

  • Published on 06/03/2025

  • By Dimitris Mitsopoulos


https://www.navalnews.com/naval-news/2025/03/japans-asev-super-destroyer-fresh-details-unveiled/


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...