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2023年9月4日月曜日

九段線から十段線へ。中国の領有権主張はとどまる所を知らない。今回はインド、ネパールにも波紋。沖縄も入っているのに、日本メディアには報道しない自由を行使していていいのだろうか。

 


中国の新しい10段線地図がインド太平洋全域で反発を受けている


新発表の地図は、インド、ネパール、ベトナム、マレーシア、台湾から鋭い反応を呼び起こしている。地図はインドで開催されるG20サミットの1週間前に発表された。習近平国家主席は出席しないと言われている


 今週、中国が南シナ海の大部分に対し違法な領有権主張を更新し、インド国境沿いにも新たに領有権を追加する公式地図を発表したことを受け、怒りの波が南シナ海周辺とインド全土に広がっている。

 中国による最新の覇権主義的行動は、中国天然資源省が28日に発表した「新標準」地図の形で現れた。新しい地図は、中国が主張し、国連の海洋法法廷によって却下された9段線の主張を繰り返す一方、台湾周辺とインド北部の新たな領土を主張している。習近平国家主席が最新のBRICsサミットで「覇権主義は中国のDNAにはない」と宣言した数日後のことである。

 中国が一方的に2つの新領土を主張し、インドとネパールを怒らせている。しかし、インドだけではない。

 キャンベラにあるオーストラリア戦略政策研究所のインド太平洋専門家マルコム・デイヴィス Malcolm Davisは、「中国がインドの領土(アルナーチャル・プラデシュ州とアクサイチン州)を中国領土と主張していることが争点のようですが、同時にロシア領土(ボリショイ・ウスリースキー島)や南シナ海全域、台湾の領有も主張しています」と言う。

 台湾の近くにダッシュ記号が描かれているのは、中国が琉球の日本の島々も自国の領土と見なしているのではないかという指摘もある。中国は以前、インド領や南シナ海、台湾の領有権を主張していたが、ロシア領の領有権を再び主張し、日本領の領有権も主張する可能性が出てきた。インド側は怒っており、中国に正式に抗議している。モスクワがウクライナ戦争で北京の支援を必要としていることを考えると、ロシアがどう反応するかはわからない。

 インド太平洋の主権問題ではよくあることだが、実際に何が起きているのかについては、専門家で見解が異なる。シンガポール国立大学のイアン・チョン Ian Chong 准教授は、新しい地図に新しい領有権の主張が含まれているかと問われ、「このタイミングは驚きだが、領有権の主張は新しいものではない」と答えた。

 「おそらく、フィリピンとベトナムが、中国船舶による放水砲の使用を公表し、彼らの船舶を阻止したことと関係があるのでしょう」とチョンは続けた。「もしかしたら、ベトナムとインドが2016年の仲裁裁判所の裁定を支持したことと関係があるかもしれない。しかし、これはすべて推測である。公式な説明はまだない。ではなぜロシアを引き入れたのか?」


各国の反応

新しい地図は、インド、ネパール、ベトナム、マレーシア、台湾からの鋭い反応を呼び起こした。新しい地図は、習近平が出席する予定だったインドでのG20サミットの1週間前に発表された。

 インド外務省のアリンダム・バグチArindam Bagchi報道官は水曜日の声明で、「インドは、インドの領土を主張するいわゆる2023年の中国の『標準地図』について、中国側と外交ルートを通じて強く抗議した」と述べた。「我々は、これらの主張には根拠がないとして拒否するこのような。中国側の措置は、境界問題の解決を複雑にするだけだ」。インド軍と中国軍は、中国が領有権を主張する2地域をめぐる国境戦で何度も殺し合いをしており、最初の戦闘は1962年に起きている。

 「マレーシアは、サバ州とサラワク州付近のマレーシア領海一部を中国に属するとする中国の2023年標準地図を認めない」と外務省は8月30日の声明で述べた。

 その1日後、フィリピン外務省は声明を発表し、「中国の2023年版標準地図を拒否する...南シナ海における中国の境界線を示すとされる9本の破線(現在は10本の破線)が含まれているためだ...フィリピンの地形と海域に対する中国の主権と管轄権を正当化しようとするこの最新の試みは、国際法、特に1982年の国連海洋法条約(UNCLOS)の下では根拠がない」と述べた。

 中国外務省の王文斌 Wang Wenbin 報道官は8月30日の定例記者会見で、「南シナ海に関する中国の立場は一貫しており、明確だ。中国当局は毎年、様々な種類の標準地図を定期的に発行しており、これは社会のあらゆる部門が標準地図を利用できるようにし、地図の標準使用に関する国民の意識を高めることを目的としている。関係者が客観的かつ理性的な見方をしてくれることを願う」。 前日、王報道官はインドの抗議に対し、同じような形で、より慇懃な態度で答えていた。「私たちは、関係者には客観的かつ冷静になり、この問題の過剰解釈は控えるよう願う」。

 この表現は、今年シンガポールで開催されたシャングリラ対話で人民解放軍トップの発言と興味深い関係がある。李尚武将軍 Gen. Li Shangfu は、中国軍が東シナ海や南シナ海で、国際水域にいる他国軍に、なぜ危険で非専門的な行動に頻繁に出るのかという質問に対し「余計なお世話だ」と言い切っていた。

 最新の地図は、中国の「10段線」に正式なお墨付きを与えるもので、従来の「9段線」からアップグレードしている。国連法廷で中国の主張は国際法上正当性がなく、中国が主張する領土は法律上も歴史上も根拠がないとの裁定が下されている。

 それ以来、中国は世界で最も手付かずのサンゴ礁を破壊して海軍基地や空軍基地を建設し、排他的経済水域内のサンゴ礁で部隊に補給しようとするフィリピンの小型船舶に放水したり、乗組員をなぶり殺したりしている、  USSチュンフンがカナダのHMCSモントリオールと台湾海峡を通過航行した際には威嚇し、他国の艦船や米軍機の周辺では、好戦的で時には危険な作戦行動をとった。


パラオ、米沿岸警備隊を歓迎

注目すべきタイミングとして、太平洋の島嶼国家パラオは8月23日、米国沿岸警備隊との協定に署名し、パラオ職員が乗船することなく、パラオに代わり沿岸警備隊艦艇を排他的経済水域で航行できるようになった。

 「この協定は、パラオの排他的経済水域を監視し、違法・無報告・無規制の漁業から守り、パラオ海域で不審な操船を行う招かれざる船を抑止するのに役立ちます」とスランゲル・ウィップス大統領 President Surangel Whipps は声明で述べた。

 パラオは、他の太平洋諸国と同様、国防を米国に依存している。そのため、この協定が太平洋の小国が従うべきモデルになり得るかという疑問が生じる。もしそうなら、マーシャル諸島とミクロネシアは「候補になりうる」と、この地の独立系シンクタンク、ローウィー研究所のミハイ・ソラ Mihai Sora は言う。

 「しかし、太平洋諸国も主権侵害に非常に敏感であり、現段階で同様の合意を求めてアメリカのドアを叩く国が多いとは考えにくい」とソラは付け加えた。「アメリカは、太平洋島嶼国との関係において、このような案を持ち出す前に、外交的な下準備が必要だ」。

 もっと根本的なことを言えば、中国の第っk簿漁船団や沿岸警備隊がEEZに入るのを阻止することを明らかに目的としているこのようなパトロールは、この地域の緊張を和らげるのに役立つのだろうか、それとも高めてしまうのだろうか?

 米国は、パラオのような島国への安全保障支援の拡大は、ルールに基づく秩序と地域のパワーバランスの強化に役立つと主張するだろう。しかし、多くの太平洋諸国の代表は、その反対を主張している。地域の安全保障を強化することは、紛争のリスクを増大させるというのだ。今回のケースでパラオは米国にこのような支援を明確に求めたようだ。■


New Chinese 10-Dash map sparks furor across Indo-Pacific: Vietnam, India, Philippines, Malaysia - Breaking Defense


By   COLIN CLARK

on September 01, 2023 at 8:39 AM


2020年4月15日水曜日

自衛艦に衝突した中国漁船の背後に中国の特異な地政学的野望がある



3月30日、東シナ海公海で海上自衛隊の駆逐艦が中国漁船と衝突した。台湾の沿岸警備隊も中国漁船と同様の衝突事案に遭遇している。中国海警がヴィエトナム漁船に衝突し沈没させた事件が数日前にパラセル諸島海域で発生していた。中国は何を企んでいるのか。
 SF界の巨匠ロバート・ハインラインが読者にこう警句を与えていた。
 敵の行動を愚行と片付けてはいけない。理解に苦しむ行動を相手が取るのは背後に悪意があるからであり、自然発生したわけではない。初期段階は無難な説明を探してもよい。ハインラインには悪いが、筆者は若干手を入れたい。見方が狭すぎる。愚行や意図的な悪意以外の選択肢もある。能力不足、役所仕事の延長、純粋な事故で人の考えや行動に歪みが生まれる。ハインラインはすべて愚かさに分類した。
こんなのはどうか。敵意ある行動をすべて人的エラーで片付けるな。これならハインラインの智慧の本質のまま現実に対応できる。
 そこで今回の日中海上衝突事件を見てみよう。偶然事故の可能性はある。発生時間は夜間で海域は混雑していた。2017年の米海軍衝突事件の教訓から第一線の軍艦の乗員でさえ、過労や訓練不足で危険を招くことがあるとわかる。技術が進歩しても人的エラーの撲滅は不可能だ。日本側あるいは中国の乗員、または双方が暗闇の中衝突したのかもしれない。
 ハインラインの命題に修正が必要だ。「敵意の存在を排除してもいけない」というのはどうか。
 相手が中国共産党(CCP)であればなおさらだ。中国政府は民兵を漁船団に編入し、海洋戦略の一環としてきた。海上民兵は非正規海軍部隊の扱いだ。人民解放軍海軍(PLAN)と海警が正規部隊として拡充されてきた。中国が海上民兵を実際に投入したのは1974年のことで、南ヴィエトナムからパラセル諸島を奪い、短期ながら流血の事態を発生させた。民兵の乗る漁船を海警が支援する形式は南シナ海で2009年から続いている。中国政府は「譲る余地のない国家主権」を広大な南シナ海で主張しており、条約で他国が保有する海域もここに含めている。非正規部隊は2012年にフィリピン海軍とスカボロー礁でにらみ合いを演じ、フィリピンの排他的経済水域に深く入り込んだ。CCPが認めた海域に漁船団が大挙入り、現地国の海軍沿岸警備隊が退去を求めても怖いもの知らずだ。現地で抗議の声が上がれば、海警が民兵の支援にやってくる。事態がこじれればPLANが支援する構図だ。
 民兵は共産中国にとって弱小国対応用の戦略的先兵の扱いだ。相手は弱小国に限らない。尖閣諸島で民兵の乗る漁船や海警艦船はこの10年で当たり前の光景になっている。そのあげく、CCP高官は尖閣の共同管理を提案している始末だ。その先に同諸島の占拠があるのは明らかだ。中国の揚陸作戦能力を恐れ日本も海上、航空の両自衛隊のプレゼンスを同地区で強化してきた。日本の主権を守りつつ侵略は抑止するという考えだ。陸上自衛隊も島しょ移動型の「動的統合防衛部隊」として南西諸島部侵攻を排除する作戦構想を打ち立てた。
 こうした動きはPLA指揮官に都合がよい。日本が中国に匹敵するプレゼンスをしても中国軍は数の上でまだ優位だ。海警、海上民兵、PLANの組み合わせがあれば汗を流さずに紛糾する海域で大きなプレゼンスを実現できる。他方で日本の海上保安庁、海上自衛隊は歩調を合わせるのに苦労を強いられる。ただでさえ隻数が限られるのに多数を現地派遣することになる。常時配備すれば乗員、装備でしわ寄せが避けられない。艦船の保守整備に時間が割けられなくなる。PLAは現地にプレゼンスを置き日本の疲労困憊を待てばよい。
 この方式は中国の伝統的戦略と合致する。孫子は敵に「緊張・疲労」を発生させる配備、欺瞞の策を推奨した。敵を疲弊させた方が勝者だ、と孫子は述べた。消耗した敵に一撃を加えれば決定的な打撃となる。島しょ部防衛に当たる日本がこの立場で、長期間に渡り高密度の作戦を維持する必要がある。
 欺瞞ではCCPの設立者毛沢東の思想がPLAに染み込んでおり、戦役で欺瞞はつきもの、これで十分と言う水準は存在しないとある。毛は孫子思想を参考に敵を完敗させるには「通常」「特別」双方の部隊が必要とka考えた。通常部隊が正面で戦い、特別部隊は敵の弱点をつき、通常部隊を優位にする。「戦いにおいて、双方の部隊の組み合わせは無限にある」(孫子) PLAはこれで敵を劣勢に追い込む。
 PLANが通常部隊、海警・海上民兵は特別部隊だ。平時には特別部隊が前面に立ち、通常部隊は待機し、有事に通常部隊が活躍する。双方に保護の傘を差し伸べるのが沿岸配備のミサイル部隊や航空部隊で、双方あるいはいずれかの部隊がトラブルとなれば火力を提供する。この陸上装備がPLAには第二の特別部隊となり、残りを補助できる。孫子、毛ともにしたり顔であろう。
 欺瞞理論の大家バートン・ホェーリーがCCPの東シナ海戦略が日本に与える危険性をこう説明している。「欺瞞作戦の構成要素は常に2つだ。本心を偽る、隠すかのいずれかだ」とし、本心を偽り相手に真実を見えなくさせながら、本心を隠し虚偽を示す。敵に真実と違うイメージを植え付ければ成功だ。戦術、作戦、戦略の各段階で優位性が強まる。
 ホェーリーは隠蔽策の例として「リパッケージ」を上げる。これは「偽装して真実を隠すことで、物事を別の言い方に変更してしまうこと」だという。揚陸部隊のリパッケージ策としてPLA海兵隊を海警艦艇や漁船に乗せる可能性がある。尖閣諸島周辺を巡行する非正規部隊が正規部隊の攻撃効果を与えるかもしれない。中国が尖閣諸島周辺での作戦を強化して悪意を隠すかもしれない。これはここ十年で実行されている。この結果としてCCPは尖閣諸島の統治権をめぐる対立に軍事力を使わず解決を模索しているとの印象が生まれる。ホェーリーは中国は海警や民兵で通常さを装うはずという。尖閣諸島近辺で中国ののプレゼンスを普通に日本に感じさせられれば、決定的な一撃を突然与えるチャンスがひろがる。
「おとり」も欺瞞作戦の典型とホェーリーは述べる。「注意を反らせ虚偽の姿を示すこと」で、中国は尖閣諸島から日本の関心を反らすため、別の場所で手をうつ、あるいは同時進行でなにかはじめるかもしれない。海上自衛隊艦船への衝突もこの一環の可能性がある。おとり作戦は特別部隊の役目で、尖閣諸島への日本の目をそらせなくても、日本に資源投入を続けさせればよい。孫子・毛の伝統を引き継ぎ、民兵・海警隊員で現場に日本部隊を釘付けできれば中国が決定的な一撃を加える前に優位な状況が生まれる。
 中国の欺瞞作戦の目的は日本の海上部隊を消耗させ、自己満足させ、本来の主戦場から注意を反らせることにある。その後、一発発射するわけだ。
 今回の中国漁船が海上民兵だったのか日本が解明していないのなら全力をあげて答を出すべきだ。仮に答えがイエスなら、中国は東シナ海で企んでいることがわかる。逆に関係なかったら、それでおわりだ。中国は周辺海域で海上交通を活発にするのには戦略的な意味がある。一部船舶は日本側艦船と接近し、誤った行動につながることもあろう。日本は防御姿勢を強めるしかない。CCP首脳部は現時点は中国に有利と理解しているのかもしれない。米海軍が西太平洋に配備中の空母2隻がパンデミックで戦力を発揮できなくなっており、米海軍のトップも混乱している。
 敵を孤立させることが限定戦に先立ち必要となる。対決の前に事態を簡単にしておき、戦力バランスを自軍に有利にすれば、決定的な勝利を短期間で実現できる可能性が増える。日米同盟は外交面で健全だが、軍事的にほころびがあると中国が判断する可能性もある。米国がウィルス対策に追われ、艦船や航空機を投入できなくなっているからだ。絶好の機会が来たと中国が判断する可能性がある。機会が消える前に行動を取る誘惑に駆られる可能性がある。誘惑がこのまま残るのかはわからない。
ハインラインのCCP向け警句にも修正が必要だ。悪意の存在で説明がつく中国共産党の行為を人的エラーのせいにすべきではない。だが、人的エラーを排除してもいけない。ここ数年の中国政府の悪行を習近平一味のしわざと証明できれば勝ち目が増える。この解決方法なら安全だし、警戒態勢を維持できる。

注意せよ、日本!

ホームズ教授はハインラインがお好みのようですね。このブログのオーナーも同様です。TANSTAAFL!(この記事は以下を再構成したものです。)

 

Is China Getting Ready for an East China Sea Showdown?

April 11, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaEast China SeaU.S. NavyA2/adTaiwan

James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and coauthor of Red Star over the Pacific, a fixture on the Navy Professional Reading List. The views voiced here are his alone.