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2015年10月29日木曜日

★★LRS-B>これがノースロップ・グラマンの勝因だ



一日経つと予想が大きく外れノースロップ・グラマンが受注決定業者になていました。以下その勝因の分析です。

LRS-B: Why Northrop Grumman Won Next U.S. Bomber

Oct 27, 2015Bill Sweetman | Aviation Week & Space Technology
ノースロップ・グラマンが長距離打撃爆撃機(LRS-B)の受注企業に決まり、年商で合わせて6倍の規模を有する競争相手チームを打ち負かす結果になった。
  1. 米空軍は10月27日に選定結果を発表し、ノースロップ・グラマンがボーイング/ロッキード・マーティンを破り新型爆撃機100機の生産を担当する。初期作戦能力の獲得は2020年代中頃が目標だ。ペンタゴンによると次は技術製造開発(EMD)段階で2010年価格で214億ドル設定でテスト機材(機数不詳)を生産する。
  2. これと別に190億ドルがリスク低減策に支出ずみで両陣営は初期設計を完了していた。2016年価格でのEMD経費見積もりは235億ドルとペンタゴンが発表。なお、2016年価格で換算するとB-2の開発には372億ドルかかっている。
  3. 空軍はノースロップ・グラマンの新型爆撃機(正式名称は未定)の調達単価は2010年価格で100機購入を前提で511百万ドルとしている。ペンタゴンも二種類の試算をおこない、550百万ドル(2010年価格)という目標水準を下回る見込みを確認した。この目標は2011年に当時のロバート・ゲイツ国防長官が承認した。
  4. ノースロップ・グラマンの受注契約では固定価格制かつ報奨金を最初の低率初期生産5ロット分に認めている。初期生産機材は総平均機体価格を上回るはずだがその価格は公表されていない。生産が順調に進めば、800億ドルの事業規模になる。LRS-Bの運用開始は2020年代中頃の予定だ。ただし正確な予定は初期作戦能力の設定水準に左右され、今後空軍のグローバル打撃軍団が詳細を決定する。
  5. 事業規模が大きいため、業界ではかねてから敗れた側が結果に不服を訴えるのではないかと見ていた。ボーイングには前例がある。2008年に給油機選定がノースロップ・EADS陣営に流れたことに抗議し、結果として同社が二回目の選定で採択されている。ボーイングとロッキード・マーティンは共同声明で両社が「本日の発表内容に落胆し、選定がどのように行われたのかぜひ知りたい」と表明している。空軍は選定で敗れた側には30日に説明するとしているが、不服申し立ては100日間可能だ。
  6. 一方、ノースロップ・グラマンの社長、会長兼CEOウェス・ブッシュは「空軍は正しい判断で我が国の安全保障を確保した」と表明した。「重大事業を執行する資源は確保済み」.
  7. ただ現時点でノースロップ・グラマン側に参加する企業名は秘匿されており、エンジン調達先も不明だが、空軍によれば重要構成部分の供給先はすべて確保済みだという。業界アナリスト陣によれば機体はB-2の小型版という姿になり、主翼胴体一体型で双発で空中給油なしで2,500カイリの飛行半径だというが、詳細は確認できていない。
  8. 選定手順の詳細は秘匿情報扱いのままだが、ノースロップ・グラマンの広帯域全面ステルス技術がB-2で実証されていること、またこれも極秘のRQ-180情報収集監視偵察(ISR)用無人機の実績が高評価された可能性が大だ。
  9. 選定の決め手はステルス性、航続距離での差であろう。LRS-Bではリスク低減、オープンアーキテクチャア、機動性の高い管理生産技術が求められている。
  10. LRS-B競合は以下の三点で独特であった。まず要求内容は取り消しされた次世代爆撃機(NGB)事業から継承している。当初の目標水準を引き下げる一方、作業工程を伸ばし、機体単価を中核性能内容(KPP)に設定した。
  11. 二番目に実証機に予算を回さずにペンタゴンは双方の事業者に初期設計の審査(PDR)を行わせている。これはおそらく2013年から2年間を費やしている。
  12. 三番目にLRS-Bの事業統括を空軍内の迅速戦力開発室(RCO)に任せたことがだ。空軍調達担当のウィリアム・ラプランテ次官は目を見張る性能を実現してきた実績があり、しかも単なる実験機ではなく本生産につながっている」とRCOを評価している。.
  13. 注目すべきはラプランテがRCO内にできたLRS-B事業担当部門はロッキードF-117ステルス機を35年前に開発したのと同様のチームになっていると発言している点だ。RCOの業績として公認ずみなのはボーイングX-37B宇宙機案件しかないが、2012年にRCOが公表した室次長の要件として「相当の経験を...低視認性技術、低視認性機体対抗技術および電子戦に有するもの」と想定していることからどんな技術を重視しているのかが伺われる。F-117と同様にLRS-Bは目標水準の実現のため成熟したサブシステムを新設計機体に搭載する構想であろう。
  14. ただしラプランテはさらにつづけており、RCOチームはペンタゴン、議会、会計検査院の監督を受け、内部にはレッドチーム、ブルーチームで考えられる脅威に対抗できるか検証したという。.
  15. LRS-Bの設定平均調達単価は550百万ドル(2010年価格、100機生産前提)でこれがKPPになった。
  16. LRS-Bで採用される中核技術は非公開だが成熟している。「風洞テストを受けているほか、試作型を作成し、実際に飛行しているものもあり中にはすでに実用化されているものがある」とラプランテは10月21日に語っている。
  17. ただし、ラプランテは遅延や費用超過が今後発生しないとは見ていない。「技術の統合には必ずリスクが有り、工程表には適度な余裕を入れ込んで一部の遅延をカバーする構造になっているが」
  18. LRS-Bは容易に性能改修ができる構造で、「現時点では想像さえできない将来の装備を搭載する場所と重量を設定している」(ラプランテ)は言う。オープン・アーキテクチャアで新型サブシステムを調達できることで「たえず性能を高く維持し、統合を期待できる」(ラプランテ) 低視認性を維持するコストとともに性能改修がライフサイクルコストの相当部分に想定されており、調達コストより相当大きくなるはずだ。
  19. もうひとつLRS-Bがこれまでの事業と異なるのは生産ペースだ。想定は「予算獲得可能な範囲でF-35のような急増想定はしていない」とラプランテは言う。「弾力的に設定している」とし、実現可能な年間予算配分を前提としている。「年間7機から8機というところか」(ラプランテ) この数は他の軍用機より相当少ないが、逆に生産ラインは2040年頃まで稼働することになる。爆撃機推進派にはLRS-Bの配備が始まり、アジア太平洋作戦が引き続き重要であれば、100機では足りないと見る向きがある。
  20. ノースロップ・グラマンはボーイング、ロッキード・マーティン、レイセオン陣営の合計年間売上1,600億ドルと比較すると6分の一未満の規模しかない。ボーイングとロッキード・マーティンは2007年時点でNGB事業で連携をしていた。LRS-Bで仕切りなおし再びチームを組み、レイセオンを加えた。ロッキード、ボーイングはそれぞれ米軍の主要機材をほぼ全数供給している。
  21. 一方で選定のルールも変更されている。ラプランテは10月21日の記者会見で価格試算を独立して行うことを重視している。これはペンタゴン内部にある費用試算事業効率評価(CAPE)部門の仕事で2009年のウェポンシステムズ超厚改革法により生まれた組織だ。「すべての事業に費用試算を独立部門が行い、その結果で予算を配分する」とラプランテは言う。また試算も一本ではない。事業推進室からCAPE試算担当者へ今回の事業内容を最初から説明している。.
  22. 開発コストとして現在引用されているのは独立部門による費用試算結果であり、受注企業あるいは事業推進部門による試算結果ではない。目標とするのは低価格入札をしにくくすることだ。
  23. ボーイング、ロッキード・マーティンは競合相手を価格で勝とうとしただけではなく、政府資金による実証機材(次世代長距離打撃機材実証機、NGLRS-D)製作をNGB時代の早期からはじめていた。ボーイングのファントムワークスが低視認性機体の開発を先導し、ロッキード・マーティンのスカンクワークスが機体を生産している。
  24. ステルスだけでなく、ファントムワークスは新生産技術の応用でも先陣を切っている。これはボーイングが全社的に導入を図るブラック・ダイヤモンド技術としてLRS-B選定でも有力な要素になると見られていた。
  25. ロッキード・マーティンは自社のステルス技術での知見を応用してきた。だがF-22では機体構造が窮屈なため性能改修が成約を受けて、変更が必要となると都度その他の技術に影響が出ないことを確認する必要があった。このためLRS-Bではオープン・アーキテクチャーの採用でこの再発を回避しようとした。.
  26. ノースロップ・グラマンもNGLRS-Dで採用された技術の一部を共有していた可能性があるが、最大の要素は同社がRQ-180で実用化した技術内容だろう。業界筋によれば同機は高度にステルス性を有した高高度飛行UAVとして機体設計が飛躍的な進歩を示しており、推進系でも空力的に洗練され、流体力学計算(CFD)や電磁気学計算(CEM)の進展による効果が大といわれる。.
  27. B-2はで高いステルス性を実現したが、機体設計ではステルスと空力特性の両立で困難を極めた。また機体中央部と主翼の設計は複雑で三次元風流、ショックのパターンから当時のコンピュータモデリングとテストの最先端結果を応用している。同機は燃料消費効率が優秀で給油なしで6,000カイリを飛行半径としているが、実はB-52と同様の効率しかない。
  28. これとは対照的に2000年に入ったばかりのノースロップ・グラマンの設計案は「グライダー並み」の飛行効率を有していたという。RQ-180はLRS-Bよりはるかに軽量のはずだが、翼巾はほぼ同じで設計段階でCFDおよびCEMが大幅導入されていることを伺わせる。また新型レーダー吸収剤や塗装も採用されている。このUAVから新規のステルス技術の知見が展開されるはずで、ノースロップ・グラマンはLRS-Bの運用コストの試算根拠としても使うはずだ。
  29. ロッキード・マーティンのRQ-170もRCOによる事業統括の成果だと広く信じられており、今回LRS-Bに参画した大手3社はすべてRCOとの接点があるが、なかでもRQ-180での知見が一番大きな意味があると見られる。
  30. B-2は高コストで知られるが、ノースロップ・グラマンによれば逆に同機の経験がプラスに働くという。同機の飛行時間あたりコストがその他大型機材で少数機を運用する際のコストと全く異なる構造で、通常機材であれば固定費用が中心で保守管理コストはゆっくりと上昇するという。現在運用中のB-2各機は各9年で丸まる一年間の保守管理施設入をする。また新素材の採用でB-2の探知特性は大幅に改善しているという。
  31. ノースロップ・グラマンはコストを抑えるため大胆な策に出てきた。プロジェクト・マジェランの社内コードでメルボーン(フロリダ州)に有人機の研究拠点を設置した。これまで研究拠点をロサンジェルス・パサデナ地区、セントルイス、フォート・ワースの三地点に分散してきた流れに逆行する。メルボーンでは新規建屋が完成しているが、さらに追加建設し、2019年までに1,500名規模の施設となる。■


2015年9月3日木曜日

★米空軍>LRS-B設計2案はすでにテスト実施済みで完成度高いと判明


まもなくと言われ続けてきたLRS-B受注企業の選定も本当にまもなくのようです。ここにきて空軍から意図的に次期爆撃機の情報が開示されてきました。すべて真実であればLRS-Bの開発課程はこれまでと相当違うようで、しかも両案とも完成度が高いので選択はむずかしそうですね。一方で新型機の開発調達で相当の失敗が続いていますので、今回の案件が成功すれば、空軍も自信をつけるでしょうね。ゲイツ元長官の置き土産としても高く評価されるのではないでしょうか。

LRS-B Details Emerge: Major Testing, Risk Reduction Complete

By Aaron Mehta11:26 a.m. EDT September 2, 2015

635570048174454101-AIR-BTN-New-bomber(Photo: Northrop Grumman)
WASHINGTON — 米空軍向け次期爆撃機で採用を狙う設計二案はすでに空軍が相当のテストを行っており、これまで理解されていたよりも完成度が高いことがわかった。ペンタゴンが契約の交付前にここまで行うのは異例だ。
各設計案にはかなり高度なステルス性能があり、B-2から相当の改善となっており、核兵器運用の認証は将来取得し、任意で有人操縦となる。
長距離打撃爆撃機(LRS-B)は空軍にとって三大調達案件の最上位とされ、これまで秘密のベールに覆われてきた。空軍は二案から選択を迫られる。ノースロップ・グラマン案とボーイング=ロッキード・マーティン共同案だ。契約交付はまもなくと見られ、9月中だろう。
9月1日に空軍は外部関係者を招いた会合を開催し、新情報を開示している。同会合について詳しい関係者2名から空軍が設計二案をかなりの範囲でテストずみであることがわかってきた。
そのうちひとつの筋から空軍関係者が両案とも「非常に完成度が高い」と述べ、風洞テストや生存性テストを実施し全角度から設計案の評価が進んでいると明らかにしたとのこと。ただし両案で実機飛行は行っていないと両方の筋が述べた。
要求性能は2013年5月に最終版とされたと同上筋は言う。そのあとで二社の設計チームは開発テストを開始し、空軍はリスク低減策に注力している。
二人目の筋は空軍のブリーフィング担当者が二社の設計案は大きく異なり、エンジン、電子戦装備、通信システムなどのサブシステムでも類似性はないと発言していたという。サブシステムの契約企業名は発注先が決まっても公表されないと二人目の筋は見ている。
「EMD(技術製造開発段階)以前でここまで完成度の高い事案はなかった」と一人目の筋は言う。「これまでと全く違う。すでに数年間をテストに使っている」
一人目の筋は空軍関係者からリスク軽減策が「アクセスパネルまで全てに対して」実施されたとの発言があったという。
「リスク軽減が実施されている。設計案は技術的に完成度が高い」と空軍関係者が発言している。また「航空機製造でここまで完成度が高い例は見たことがない」とも述べているという。
調達プロセス初期でここまでのテストを実施するのは異例で、その理由として事業が迅速戦力整備室Rapid Capabilities Office (RCO)の担当であるためであるという。同室は空軍調達部内でX-37B宇宙機など極秘事業を担当している。
その名称どおり、RCOは空軍の通常の調達手順と異なる形で業務を進める部署で技術調達で裁量を与えられている。同室に事業を任せる決定は2011年に当時のロバート・ゲイツ国防長官が下したもので、開発中止になった次世代爆撃機事業の問題点を分析した結果だ。
RCOが関与したことでこれまで空軍が長く主張してきた次期爆撃機には既存技術を流用するとの説明が微妙になる。一部観測筋は空軍が既存民生技術を使って機体価格を抑えると見ているが、RCOには一般人が聞いたこともない技術を自由に扱える権限がある。
「EMDで想定するより三年先を行っています」と一人目の筋は解説する。「EMDにもっていくために通常より高い技術の完成度を求め、その代償を提供することにしたのです。これがRCO方式ですね」
空軍の説明者からは発注先選定の時期、選定方法では詳細説明はなかった。ただし、同機開発の今後を示す情報を開示している。
  • 契約は二部構成でEMD契約では実費プラス奨励金方式となり、低率初期生産段階の5ロット分は固定価格で奨励金はなしで21機を生産する。
  • 契約交付とともに空軍は開発コストの詳細を共有する。運用コスト維持コストの試算はマイルストーンC後に出る。
  • The bomber design will have a robust electronic attack element on board
  • 爆撃機には強力な電子攻撃装備が搭載される。
  • 核攻撃運用の認定は最初はないが、その後核攻撃用ソフトウェアとハードウェアを1号機用に製造する。認証手続には生産機材5機を同一仕様としソフトウェアが必要なので、十分な機数が製造されテスト業務に割り振る事が可能となってから始まる。
  • 構想では任意有人操縦となっているが、初飛行は有人操縦で行い、初期生産機体に無人操縦装置を組み込むのか、後日追加するのかは不明。一人目の筋は無人操縦設定は「当面の優先課題」ではないという。
  • 空軍はオープンアーキテクチャ方式の採用にこだわっており、将来の性能向上を安価に行う事を狙う
双方の筋は空軍関係者がB-2と比べ相当のステルス性があるとしており、B-2設計当時は入手不能だった生産素材画素の背景にあるという。
機体寸法については空軍説明者はあきらかに口にしたくなかったようだ。ただしUCLASSでは小さすぎ、B-2では大きすぎると明確に示している。
「発言と身のしぐさからB-2より小さいとわかる」と一人目の筋は言う。「機体の大きさはエンジン技術に左右されているようだ」
2番目の筋もこれに同意見だが、小型機だからといって航続距離が短くなるとは限らないという。ただし空軍がペイロードを航続距離のため犠牲にすれば。空軍の説明者はペイロード総重量の関係よりも同機が多様な兵器を搭載できる事のほうが重要だとしている。
三番目の筋は同上会合には参加していないが、同機に詳しく、設計案はB-2と比較すると「ペイロードは2割減、航続距離も2割減」だろうとする。同筋はどちらの企業が受注するにせよ、形状は全翼機形状でボーイング、ノースロップがそれぞれ作成したUCLASS設計案に類似しているとする。
総合すると各筋で一致するのは会合で参加者は米空軍は今回の爆撃機開発を予想をくつがえすほど巧妙に運営していることがわかったという。議会がすでに同機事業になみなみならぬ関心を示しているのでこの点は重要だ。
「空軍は実力を発揮してやろうと決意しており、実際にそれに成功していると見る」と二人目の筋は言う。「うまく運営されていると思う。コスト問題を深く意識し、むしろそれを真正面からとりあげようとしている」■