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2021年11月30日火曜日

オーストラリアSSN選定はここまで困難な作業となる。ヴァージニア級対アステュート級の比較。米設計案の採用が有望に見えるが、2060年代の安全保障を左右しかねない重大な決断。

 

英海軍のアステュート級。. Image: Creative Commons.

 

 

立オーストラリア海軍(RAN)向けの原子力潜水艦の選定は非常に複雑かつ困難な選択となる。現在、二型式が候補にあがっている。米海軍(USN)のヴァージニア級ブロックV、英海軍(RN)のアステュート級だ。

 

ともに優秀な艦で性能は互角といえる。原子炉は燃料交換が不要な点で共通しており、高性能ポンプジェット方式の採用も同じだ。またトマホーク巡航ミサイルを運用できる点も共通する。

 

オーストラリア政府が検討すべき点として何隻を整備するのか、供用期間、国内産業界への裨益などがある。

 

今回は両級の違いに着目し、リスク、サイズ、乗員規模、ペイロード、供用開始時期、また輸出規制について論じたい。

 

 

 

【設計上のリスク】ヴァージニア級ではオーストラリアが運用を望むAN/BYG-1 戦闘システムとMk-48魚雷の運用が最初から可能だが、アステュート級は想定してない。アステュート級を改装すれば、ち密に設定されている艦内配置、重量、浮力、バランス、動力、冷却機能の変更が必要となり、想定外の問題になりそうだ。既存設計の変更は数億ドル相当の作業となり数年かかる。代替策として最初から英装備を受け入れ、英国製戦闘システムとスピアフィッシュ魚雷を採用することがある。

 

【サイズ】両級とも通常型の既存艦コリンズ級を上回るサイズで、オーストラリアのインフラ整備が必要だ。これは低規模予算では実施できない。アステュート級は全長97メートル、排水量7,800トン、ブロックV仕様のヴァージニア級は140.5メートル、10,364トンだ。コリンズ級は77.8メートル、3,407トンにすぎない。

 

【乗員数】RANではコリンズ級の60名の乗員確保にも苦労しているので乗員数は少ないに越したことはない。アステュート級は90名、ヴァージニア級は130名程度が必要だ。

 

【ペイロード】ヴァージニア級がアステュート級より大きく、トマホークミサイルに加え将来の新型装備にも対応する。英艦は魚雷発射管を使うのみで、スピアフィッシュとトマホーク合計38発の発射が可能だ。ブロックVヴァージニア級は65発を搭載する。魚雷発射管から25発、ペイロード発射管からトマホーク12発のほか、セイル後方の大直径ペイロード発射管からトマホーク28発も運用するほか、AIM-9X対空ミサイルや極超音速滑空ミサイルも発射できる。

 

【調達見込み】米国が同意すれば既存のヴァージニア級ブロックV数隻をRANに比較的短期間で提供できる。RANの求める原子力安全運用基準と乗員訓練、運用方針の策定に供される。同時に8隻はオーストラリア南部で建造する。2018年のASPIレポートではSSN10隻を整備すればオーストラリアの要求水準を満たすのが可能で、乗員確保が必要とある。

 

原子炉運転では少なくとも当初数年間はUSNによる指導が必要とされ、米向け建造数隻をRANに回す想定だが、これはあくまでも米国が優先順位の変更を認めた場合のことだ。米海軍はヴァージニア級を66隻まで整備する計画だ。アステュート級では英海軍が想定する7隻での建造中止を改める必要が生まれるが、そのため新鋭ドレッドノート級原子力潜水艦の建造が遅れることになる。

 

ヴァージニア級の維持運用は米海軍実績を見ると容易なのではないか。新鋭技術の研究開発も運用隻数が少ないと長期化したり予算超過となることが多い。オーストラリアが最終的にSSNを10隻整備する場合、アステュート級なら17隻、ヴァージニア級なら76隻がそろうことになる。米海軍では静粛性を高めたヴァージニア級ブロックVの企画をすでにはじめている。

 

【補給体制】有事の補給体制も考慮すべき分野で、ヴァージニア級を採用の場合はオーストラリア海軍艦は米海軍艦とともにオーストラリア、日本、グアム、ハワイ、サンディエゴで補給を受けられる。だが英艦採用の場合は英国はAUKUS加盟国であり、スピアフィッシュ魚雷を一部のRAN/USN施設に確保しておく必要が生まれる。

 

【乗員の確保】アステュート級を選択する場合はオーストラリア国内の艦長副長人材の確保が短縮化できる。英海軍の艦長副長は原子力推進コースを修了しており、専門の原子炉技術士官も補助にまわる。これに対し米海軍の艦長副長クラスは全員が原子炉技術をマスターしており、原子炉運転をまじかに見てキャリアをつでいる。オーストラリアで原子力技術をマスターした士官が潜水艦艦長になるには15年かかるため、英米の扱いの違いが大きく作用する。

 

【技術移転の制約】輸出規制がヴァージニア級を選定した際に大きくのしかかる。米国務省の国際武器取引規制(ITAR)制度では米軍事技術の移転を厳しく制限している。ITARのためオーストラリア国民で二重国籍とみなされるものは米政府承認を取るのが困難となる。そもそも二重国籍市民は最初から対象から外されそうだ。

 

ITARの違反罰則が厳しい。米政府指定のリストに違反すると一回につき100万米ドルまたは10年の懲役が科される。ITARの想定する二重国籍者排除の原則はオーストラリアで問題になる。移民が多いためだ。これに対し、英政府の輸出規制には柔軟性がある。

 

【まとめ】見る角度により、最適な原子力潜水艦の選択はオーストラリアにとって極めて技術面で複雑かつ困難になりかねない。最も楽観的に見ても引き渡しまで数か年がかかり、オーストラリアの乗員が艦運用に自立するまで15年かかってもおかしくない。正しい選択によりオーストラリアにおける2060年代以降のSSNの運用維持が左右されかねない

 

長期にわたり影響を与えかねない政府の決断はそうたくさんあるものではなく、間違いを許容できる余地はほぼない。今回がまさしくその例である。■

 

Astute vs. Virginia: Which Nuclear Submarine Is Best for Australia?

BySam GoldsmithPublished2 days ago

 

Sam Goldsmith is the director of Red Team Research, has a Ph.D. on Australian defense industry innovation, and has published through the US Naval War College. This first appeared in ASPIs the Strategist. 

In this article:Astute-Class, AUKUS, Australia, China, Virginia-class

 


 

2019年3月17日日曜日

主張 米海軍は日本とSSK部隊を共同運用すべきだ。日本から調達してもよい

ホームズ教授のいう第二次大戦式の大量建造は夢にすぎませんが、平時から戦力を着実に増強することには賛成です。16隻だった潜水艦部隊を今後日本は増やして20隻超にもっていきますが、同数の米通常型潜水艦が加わり30隻-40隻になればその三分の一程度つまり10隻強が日本近海のどこかにあるわけで相当の抑止力になります。日米合同潜水艦運用体制の整備には軽く20年かかりますから実施するなら早いほうがいいですね。空母、原子力潜水艦共に米海軍で確立された価値観なのでこれを打破するのは大変な負担になります。

Pay Attention: These Are the Submarines the U.S. Navy Needs

この潜水艦が米海軍に必要だ
Go silent, go diesel.
March 15, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: SubmarinesMilitaryTechnologyWorldSSKSSNChinaJapan
March 15, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: SubmarinesMilitaryTechnologyWorldSSKSSNChinaJapan

海軍がディーゼル電気推進潜水艦部隊を導入すべき理由は十分すぎるほどある。まずSSK部隊は西太平洋で抑止力になる。抑止力は艦の性能とともに明確な決意から生まれる。さらに大国として残ることになる。相手能力を打ち負かすのが困難とわかれば戦火を開いて敵は青ざめる。端的に言えば弾性を有する側が抑止力を発揮する。開戦となれば巧みに配置したディーゼル潜水艦が米国並びに同盟国、特に日本の立場を有利にするはずだ。
通常動力潜水艦の調達を再開すべきだ:SSK部隊は連合軍部隊の中核となる。艦体を海上自衛隊(JMSDF)と共通化し合同潜水艦部隊を編成し、問題海域に常駐させれば同盟国の防衛に米国がリスクを恐れていないと日本へ示せる。日本は常駐潜水艦部隊で米国への信頼を高め同盟関係が強化される。
言い方を変えれば米国が日本部隊と共同展開することで日本は孤立する恐れを抱かなり、太平洋で不穏な事態があっても米国が常にそばにいてくれるとわかるはずだ。同盟国友邦国を信頼する意味は米国にとって大きい。米国はアジアに領土がなく、戦略的足場がない。米海軍部隊の一部を多国籍部隊に編入すれば団結を強める効果が生まれ、米海軍は関係国の港湾アクセスが保証される。
戦略状況に適した潜水艦になる。各国の海軍戦略は中国やロシアの艦船活動を第一列島線内で抑えることが目的だ。原子力潜水艦推進派はディーゼル艦は海峡封鎖や狭い海域専用だとし、SSNの優位性を列挙してくるだろう。たとえば無制限の潜行や高速巡航性能だ。はい、証明終わりというわけだ。
だが実は違う。SSKでSSNと同じ性能を発揮する必要はなく、仕事を着実にこなし調達価格が安ければ良い。原子力潜水艦推進派にはディーゼル潜水艦が長く果たしてきた効果を低く見る傾向がある。米海軍太平洋艦隊の潜水艦部隊が第二次大戦中に日本帝国海軍を大いに苦しめたのがまさしく第一列島線が舞台だった。JMSDFも同様の戦術をソ連、中国相手に冷戦中に展開した。両国の海軍は列島線戦略で高い効果を上げ、しかも当時のディーゼル潜水艦は現在よりずっと初歩的な艦だった。史実を否定したSSK反対論には説得力がない。
連合軍潜水艦部隊にSSNの高速性能、無期限潜行能力は列島線防衛で不要だ。SSNが優れた性能を発揮するのは外洋での戦闘だが防御任務では過剰性能となり運用経費が高くつく。米日合同戦隊の潜水艦は水上艦と協調し封鎖線を引く。島しょ部にはミサイル装備の陸上部隊、上空は航空機が飛び、機雷敷設も計画的に行う。哨戒潜水艦はその中で静かに潜み、列島線沿いに姿を探知されずに攻撃の機会を待つ。
ディーゼル艦で上記全部がこなせる。連合軍に十分な数の哨戒艦があれば定期ローテーションで常時警戒待機できる。哨戒中の喪失艦の補充用に予備艦も必要だろう。米日合同部隊の潜水艦部隊に琉球諸島まで定期的配備できる隻数が必要だ。JMSDFは19隻に拡充する予定だが、本当はもっとほしいところだ。さらに十数隻の米国艦を加え合同布陣をしけば予備艦も含め十分な規模の潜水艦部隊が生まれ攻勢に転じても運用でき黄海や東シナ海、オホーツク海での水上艦攻撃を想定する。
当面はこれが整備できれば適正規模であり、SSNと比べてはるかに安価に整備できる。単価の違いは隻数が増えれば高くなる。日本が建造した最大規模のディーセル艦そうりゅう級の単価はは米海軍の最新鋭ヴァージニア級SSNの五分の一、すなわち6.31億ドル対32億ドルである。ただし米海軍が議会と建艦にからむと価格の差は1対4になるだろう。つまり米海軍はヴァージニア級3隻分の予算で12隻のディーゼル艦部隊が整備できる。
あるいはSSKの建造でSSNを削るより沿海域戦闘艦がSSK相手に意味のある攻撃力を発揮できないので一対一で取替てもよい。最新のLCSは単価6.46億ドルでそうりゅうの6.31億ドルに近い。LCSを断念しても(今年の国防予算要求では3隻を計上している)海軍に悪い話にならないはずだ。
ディーゼル艦配備には同盟国との政治、戦略地図、予算執行での効果も期待できる。戦闘では戦闘力の迅速回復が戦勝につながる可能性が最も高い。海洋戦略の師アルフレッド・セイヤー・マハンやJ・C・ワイリーも同じ意見だ。両名は米国が大国間戦闘の開戦時に甚大な被害を受けてもその後逆転すると予言した。これはトランプ時代のペンタゴンが想定する戦闘の推移と同じだ。
その結果どうなるか。軍と国防産業部門は開戦直後の中国やロシアの猛烈な第一撃を乗り切れる量の装備を準備する必要がある。ノックアウトされては元も子もない。その後戦力を再整備し、しかも迅速に進める必要がある。これで米軍は反抗を展開できる。では米海軍の潜水艦部隊が緒戦で損耗したら補充できるのか。米海軍が潜水艦戦闘力を確保するには潜水艦の大量建造が必要だ。
ただし原子炉や格納用の船体は短期建造できず経費も高い。ヴァージニア級を年間二隻建造するだけで造船所に負担となっているのは旧式オハイオ級弾道ミサイル原潜の建造も進行中のためだ。その結果、SSNの隻数は増えず戦時喪失分の補充など期待できない。平時に建造規模の維持に精一杯ならSSNの戦時喪失が現実のものとなった場合、建造能力に余裕はない。
このため通常動力SSKにも外洋での戦闘任務を与える可能性がある。米海軍も新造通常動力潜水艦を短期間かつ大量配備する方法を模索せざるを得なくなる。米国内ではディーゼル艦建造は1950年代以降行っていない。したがって海軍当局は日本との交渉でが同国で建造した艦の調達を検討すべきで、そうりゅう級で完成の域に達した艦設計、熟練した建造施設を活用すべきだ。米国内でディーゼル艦を日本企業の参画で建造する選択肢もある。あるいは両方実施しても良い。米国第一を主張する大統領と議会を言いくるめ従来と違う方向にもっていくにはすぐれた交渉術が必要だ。説得を始めよう。
抑止力と切迫する情勢からも必要だ。米海軍および政治指導部は必要な戦力整備を継続ししかも迅速に進める必要がある。戦闘力整備を遅々としたペースで展開すると敗北は必至となる。第二次大戦時の教訓が役立つ。枢軸国打倒に必要な物量のため米海軍艦艇の設計はあらゆる点で最高性能を求めなかった。米国には普通の戦力でも大量かつ迅速に艦艇が必要だった。
つまり適度な性能で設計は簡素であればよく、多彩な業者を生産に巻き込んだ。デトロイトの自動車工場がB-24爆撃機を毎時間一機完成させていた。米海軍も戦時喪失分を早く補うことを最優先し、一部に目をつぶった。当時の議会とフランクリン・ロウズベルト政権の指導力に助けられ、新造艦艇や航空機生産が真珠湾攻撃前から始まっていた。1940年の両洋艦隊法案が後押しした。
事前に戦力補充分の整備を進めることを今後の米海軍で合言葉にすべきだ。これにより予備戦力整備が生まれるのが利点で、艦隊指揮官は開戦の諸端から兵力を積極投入できる。損耗を心配して中途半端な運用をしなくてもよい。補充艦艇や機材がやってくるとわかれば指揮官はリスクをいとわなくなる。チェスター・ニミッツ大将が真珠湾攻撃の残余艦で1942年に空母強襲作戦を展開したのは1943年になれば新造艦が来るとわかっていたからだ。予備戦力があれば今ある装備を活用して勝利をおさめる確率が高くなる。
ということでディーゼル潜水艦の調達が既存原子力艦部隊の補強になることが外交、戦略、予算、作戦、戦術面からおわかりになったはずだ。是非実現しようではないか。■
James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and coauthor of Red Star over the Pacific .