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2025年12月10日水曜日

主張 NATOはロシアとのドローン・ミサイル戦争への準備の不備を補うべきである(National Security Journal)

 

― これはNATOだけの課題ではありません。日本も正面装備だけでなく砲弾備蓄や遅れている対ドローン戦術を加速度的に充実していく必要があります

要点と概要 – NATO は、スピード、ソフトウェア、大量生産を前提としたロシアの戦争に直面している。それは、群れをなすドローン、容赦ないミサイル、そして急速に進化する電子戦だ。

-同盟国は支出を増やし砲弾・迎撃ミサイルの生産を拡大しているが、平時の調達リズムが依然として規模とペースを制約している

- NATOが競争力を維持するには、複数年調達の確定、低コスト射撃兵器と非殺傷効果の優先、修理ネットワークとコード更新を戦闘力として扱うことが必須となる。

- 弾薬・精密部品・ソフトウェアにおける産業基盤の持続力、前方修理拠点、データ融合型「ドローン壁」が決定的である。

-抑止力は、手頃な効果を迅速に集中させることに依存する——ソフトウェアサイクルの短縮、弾薬庫の充実、強靭な兵站、そして精巧な単発兵器よりも多層防御。

NATO対ロシアのドローン戦争:量が勝つ

ロシアのウクライナ侵攻は速度と規模を武器とした戦争だ:数百機の低コストドローン、数十発の巡航・弾道ミサイル、四半期ごとに戦術が変異する電子戦(EW)。NATOが備えるべきは、精巧なプラットフォームによる優雅でゆったりした作戦ではなく、ドローンとミサイルが交錯する戦場だ。ここでは教義よりソフトウェアが速く進化し、弾薬の蓄積量が生存を左右する。

戦時需要と技術進歩に歩調を合わせる

同盟はこのペース、この技術構成に備えているだろうか?部分的には。大半の加盟国はようやく本格的な支出水準に達し、大砲の生産量は大西洋の両岸で増加中だし、対ドローン・電子戦ツールの導入パイプラインは短縮されている。しかし核心的問題は残る:ロシアは量産に集中させる一方、NATOは平時ブロックのように買い続けようとしている。

同盟が複数年契約を締結し、低コストの射撃手段やソフトキル効果へコスト交換曲線をシフトさせ、修理ネットワークやコード更新を戦闘力として位置付けなければ、追いつくのは困難だ。資金を量産へ、量産を戦速へ転換する窓は開いているが、長くは続かない。

改善点から始めよう。長年の呼びかけを経て、防衛費の2%目標は今や大半の同盟国にとって実質的に下限となった。32カ国中23カ国が2024年にこれを達成し、東部戦線の数カ国は大きく上回っている。資金自体が勝利をもたらすわけではないが、訓練された要員、豊富な弾薬備蓄、現実の戦場でも機能する兵站を支える前提条件である。また政治的決意を示すものでもある:大半の同盟国が参加費を負担する時、抑止力は米国の慈善ではなく集団的意志として機能する。

資金は戦力増強に直結している。米国は155ミリ砲弾の装填・組立・梱包ラインを増設し、暫定目標の達成遅れやフル生産体制の課題はあるものの、月間10万発生産を目指している。欧州は弾薬増産計画を支援し、2025年末までに年間約200万発の生産能力向上を目標としている。主要請負業者はシフトを増やし、複数年契約を締結し、国境近くに新工場を建設中だ。これは宣伝用のパフォーマンスではない。溶接トーチの火花と火薬運搬車が門をくぐる現実である。

戦争の構成要素

しかし砲兵戦は戦闘の一部に過ぎない。ウクライナ情勢が示すように、ミサイルとドローンが戦況のペースを決定し、被害の規模を拡大している。独立した集計によれば、ロシアの長距離ミサイル生産量は2025年半ばまでに四半期あたり数百発に達する見込みだ。ウクライナ情報機関は、モスクワが現在月産2,700機ものシャヘド攻撃ドローンを生産可能と推定している。正確な数字が上下しても、論理は不変だ:防空網を飽和させ、困難な選択を強要し、高価な迎撃ミサイルを補充速度を上回るペースで消耗させる。

西側諸国における迎撃機、センサー、電子戦キットの生産は増加傾向にあるが、平時の契約リズムや部品供給のボトルネックに縛られており、数か月が数年にも感じられる状況だ。NATOがバルト諸国やポーランドのインフラへの持続的攻撃を耐え抜きつつ前線地上部隊を保護しなければならない場合、弾薬備蓄量は数か月ではなく数日で制約要因となる。

同盟の優位性は品質にある。同盟国の戦闘機、レーダー、指揮統制ネットワークは、消耗戦で依然としてロシアを凌駕している。ただしこの優位性が意味を持つのは、電波が妨害され空がドローンで埋め尽くされた状況でも、我々のシステムが機能し続ける場合に限られる。

この点において、NATOは技術調達・配備の方法を変革しつつある。派手な「イノベーション」デモに代わって、有望な民間スタートアップを軍事試験に引き込むパイプラインを構築し、対ドローン防御システム、GPS妨害時の代替航法装置、自律型情報収集/監視装備といった実用的なツールを日常作戦へ導入している。2025年半ばに合意される予定の迅速化プロセスは、「デモでは機能した」と「実戦部隊で機能する」との間のギャップを縮めることを目指している。

東部戦線沿いの各国政府は、自国の空域が実戦実験場化しないよう、多層的な「ドローン壁」構想——まず検知、次に迎撃——を構築中だ。初期段階では高価な撃墜システムより、検知ネットワークとデータ融合に重点が置かれている。この直感は正しい:より多く感知し、より速く融合し、より安価に撃墜せよ。ただし導入は数か月ではなく数年かけて段階的に進み、成功はソフトウェアやセンサーの進化速度に追随できる調達規則にかかっている。

産業戦争機械

産業の持続力が要となる。三つの重なり合う分野を考えよう:砲弾・推進剤・爆発物向けの重工業、シーカー・誘導装置・迎撃機向けの精密工業、自律性・電子戦・迅速な更新向けのソフトウェア産業である。

NATOにはこれら三つが同時に、大規模に必要だ。そのためには、冷戦後に萎縮したサプライチェーンの再構築、半導体・光学・電池メーカーの防衛優先レーンへの組み込み、制裁網をすり抜ける重要サブコンポーネントの友好国調達が必要だ。さらに、単なる製品ではなく学習曲線を購入する契約を締結する必要がある。企業が機械と人材に投資できる複数年契約と、ソフトウェア・ペイロード・電子戦戦術を戦時スピードで更新可能なモジュラーアップグレードを組み合わせるのだ。さもなければ、同盟は過去の課題での精緻な解決策で買い続ける一方、敵側は「十分機能する」製品を大量に供給し続けることになる。

製造から兵站へ

兵站にも同様の実用主義的アプローチが必要だ。欧州と北米が重装備を戦場に輸送する速度が、ロシアによる消耗速度を下回れば、支出が増加しても戦闘力は低下する。この課題への対応は、港湾・鉄道車両・橋梁だけでなく、修理——レーダー、発射装置、ドローン、妨害装置を絶え間ない電子的・物理的圧力下で稼働させ続ける地味な作業——も含まれる。

ウクライナは、秩序ある供給網が崩壊しても分散型修理ネットワークがあれば戦闘力を維持できることを実証した。NATOはこの教訓を、前方修理拠点、コンテナ化された電力・通信システム、そして回路基板や真空管など重要部品の大量備蓄(弾薬と同様に扱われ、後回しにされないもの)によって確固たるものとするべきだ。

戦闘におけるペース維持

同盟はロシアとのドローン・ミサイル戦争を戦うのに十分な戦力を本当に増強できるだろうか?

2022年初頭と比較すれば、答えはイエスだ。現在のNATOは資金基盤が強化され、慢心が減退し、大量生産能力の再習得を進めている。ペースの問題は依然残る。ロシアは指揮統制型管理——生産量目標、供給網の再編、量産のための設計上の妥協——による戦時経済を構築した。NATOは自由民主主義のツール——規則に縛られた契約、エネルギー拡張への環境制約、命令で急増させられない労働力——で戦う。

ロシアに勝つため民主主義国家はロシアの真似をしてはならない。しかし、アプローチの調整は可能だ:同盟国間で複数年にわたる調達を確定させ、需要を統合して供給業者の投資を安定させ、ソフトウェアと電子戦(EW)の開発サイクルを6年から6ヶ月に短縮する。

戦闘に先立つ教訓

最後の教訓は明白だがしばしば無視される:任務を遂行できる最も安価な攻撃手段が通常は勝利する。数万ドルの低コスト巡航兵器が数百万ドルのレーダーを無力化すれば勝利だ。高価な迎撃機が安価なドローンを撃墜しても勝利とは言えない。コスト対効果曲線を曲げよ。プログラム可能な空中爆発弾を搭載した砲兵を配備せよ。安価なドローン対策として、妨害・偽装・眩惑装置といったソフトキル手段を拡充せよ。消耗可能な偵察ドローンを大量購入し、高価な迎撃機は重大な脅威にのみ温存せよ。資金を弾薬のように扱うのだ。

今世紀の抑止力は、奇跡の兵器や重大な声明文で決まるのではない。NATOが基準を損なわずに兵力と弾薬を拡大できるか、脆くならずに適応できるか、浪費を増やさずに支出を増やせるかにで決まる。同盟はようやく正しい戦略——大量備蓄、分散リスク、多層的拒否、産業とコードの迅速性——を手に取ったが、実行しなければ意味がない。

工場をフル稼働させ、ソフトウェアのループを短縮し、前線に弾力性のある感知・修復システムを構築しよう。そうすれば、現在ロシアの優位性と思われるテンポは、NATO の罠に見えてくるはずだ。工場稼働率が高く、ソフトウェアのループが短く、修復チームがすでに活動している側が大量生産すれば、失敗と時間が決定的な要素となる。■


NATO Isn’t Ready for a Drone-Missile War With Russia

By

Andrew Latham

https://nationalsecurityjournal.org/nato-isnt-ready-for-a-drone-missile-war-with-russia/

著者について:アンドルー・レイサム博士

アンドルー・レイサムは、平和外交研究所のシニア・ワシントン・フェロー、ディフェンス・プライオリティの非居住フェロー、ミネソタ州セントポールにあるマカレスター大学の国際関係学および政治理論の教授を務めている。X: @aakatham で彼の投稿をフォローすることができます。彼は、ナショナル・セキュリティ・ジャーナルに毎日コラムを寄稿している。

2024年2月2日金曜日

ロシアがバルト海でGPS妨害を露骨に行っている事実にNATOの忍耐力が試されている。国際合意を無視するロシアには相応の報いが下りて当然ではないだろうか。

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A screengrab of reported navigation issues in the airspace over eastern Europe on Jan. 19, 2023. (GPSJam screengrab)


ウクライナ戦争は、安価な無人航空機の使用からこれまでにない規模の情報戦まで、現代の戦場における新戦術を前面に押し出した。しかし、同時に最新の電子戦も展開されている。ロシアによる可能性が高い、危険な干渉らしきものについて米大統領による国家宇宙ベース測位ナビゲーション・タイミング国家諮問委員会のメンバー、デイナ・ゴワードDana Gowardが分析した。

開されている航空機追跡データベースによると、1カ月以上前から、バルト海沿岸地域を飛行する航空機は、GPS信号への各種干渉を経験している。場合によっては、GPS受信機が電子的に捕捉されたり、航空機が意図したルートから何マイルも外れているように「スプーフィング」されたりしているようだ。

妨害やなりすましは以前からあるが、この地域ではほぼ毎日何らかの妨害が行われており、定期的に広範かつ重大な妨害が行われている。ウクライナ侵攻を支援するNATO諸国への嫌がらせとして、ロシアがこの活動の背後にいることはほぼ間違いないとされてきた。

このような妨害行為は、何千機もの民間航空機に危険を及ぼすものであるが、国際的な圧力は今のところ妨害行為を止めることができないため、NATOは相応の行動をとる時期に来ている。

12月25日と26日、ポーランド北部とスウェーデン南部の広い範囲が影響を受けた。翌週の大晦日には、フィンランド南東部の広い範囲で航空機の乱れが報告された。1月10日、13日、16日にはポーランドの北半分が主な標的となった。19日には、スウェーデン南部とポーランド北部が影響を受けた。直近では1月24日にエストニアとラトビアが標的となった。

いずれの場合も、妨害は民間航空機が搭載する航空安全ADS-Bシステムによって検知され、ウェブサイトGPSJam.orgに表示された。

テキサス大学ラジオナビゲーション研究所の大学院生ザック・クレメンツによるクリスマス妨害の分析。クレメンツ氏はGPSの妨害について研究しており、地球低軌道上の衛星から発生源を突き止めることに関して発表している[PDF]。


インタビューで彼は、広範囲に広がる送信機多数が関与していると判断したと述べた。あるものはGPS信号を妨害してサービスを拒否していた。しかし、少なくとも1個の送信機は、航空機を偽装し、計器が実際の位置から遠く離れ、円を描いて飛行しているように見せていた。

「サークル・スプーフィング」現象は、船舶では頻繁に観察されてきたが、航空では今回が初めての報告であった。

クレメンツによれば、ロシア国内がスプーフィングの発生源であることは間違いないという。「航空機がスプーフィングによる影響を受け始めた地点と、航空機が本物のGPSを取り戻した地点から、スプーファーはロシア西部のどこかにいることがわかる。「興味深いことに、航空機がスプーフィングされた場所は、ロシアの退役したスモレンスク軍事空軍基地から約1キロの野原である」。

スタンフォード大学のジクシー・リュウ大学院研究員は、クリスマスの妨害にはほぼ間違いなく多くの妨害機が関与していることを筆者に確認した。以前の研究でリュウは、ADS-Bデータを使ってGPS妨害の発生源を地理的に特定している。

モスクワは広範囲に及ぶ妨害行為を否定していると報じられているが、ウクライナのメディアは、「...2023年12月中旬以降、ロシアのバルチック艦隊の部隊がカリニングラード州でEW(電子戦)システムBorisoglebsk-2を使って演習を行っている 」と報じている。

米国とポーランドのアナリストによれば、この干渉は、国境付近で西側の影響力が強まっていることに対するロシアの対応の一環だという。12月中旬、米軍とポーランド軍はポーランド北部でイージス対ミサイルシステムを作動させた。その直後、トルコ議会はスウェーデンのNATO加盟に道を開く行動を開始した。

ロシアのこのような反応は前例がないわけではない。2022年、ウラジーミル・プーチン大統領はフィンランドとスウェーデンがNATOに加盟しようとするならばと脅した。その後、フィンランドのサウリ・ニーニスト大統領はジョー・バイデン米大統領と会談し、防衛関係の改善を話し合った。その後間もなく、フィンランド南部、カリニングラード、ロシア、バルト海近辺の上空を飛ぶ飛行機がGPS妨害を報告し始めたと『ガーディアン』紙が報じた。

最近の妨害やなりすまし事件でポーランドに焦点が当たっているのは、ポーランドの新しいアメリカ製対ミサイル・システムの重要性を軽視しようとするロシアの努力かもしれない。同様の妨害は、米国がウクライナに供給した精密兵器の多くにも及んでいる。ポーランドのイージス施設はGPSではなく高出力レーダーを主に使用しているとはいえ、今回の干渉はシステムに対する国民の信頼を損なう狙いの可能性がある。

また、一部オブザーバーは、ポーランドでの干渉が戦略的なスワウキ・ギャップを通る道路にも及んでいると指摘している。ポーランドのリトアニア国境に平行する全長40マイルのこのルートは、ロシアの盟友ベラルーシとバルト海に面したロシアのカリニングラードを直接結んでいる。軍事アナリストは以前から、この地域はヨーロッパの陸上紛争で重要地点になると考えてきた。

これらの攻撃は、国際空域や海域を航行する他国の航空機や船舶を標的にしてきた。また、NATO加盟国の主権領土やインフラにも影響を及ぼしている。

さらに、生命と財産に多大なリスクをもたらしている。

大手国際航空会社の上級機長ジョー・バーンズは、「GPS信号が利用できなかったり、何らかの形で危険にさらされたりすると、大きなリスクにさらされる」と語った。バーンズ機長はまた、GPSとその関連問題についてアメリカ政府に助言を与える委員会のメンバーでもある。「GPSへの干渉は事故のリスクを高め、ほとんどの場合システムの速度を落とし、フライトをより長く、より高くする」。

GPS信号への偶発的な干渉は、2019年にアイダホ州サンバレーで民間旅客機の墜落を引き起こしかけた。航空関係者はその後、国際民間航空機関(ICAO)にGPS妨害を緊急課題として挙げた。翌年、ICAOはすべての国に対し、この問題の重大性に留意し、適切な行動をとるよう呼びかけた。国際海事機関も同様の呼びかけを行っている。

安全上の懸念に加え、GPSやその他の衛星信号への意図的な干渉は、国連の国際電気通信連合(ITU)の全加盟国によって合意された国際法および規制に違反する。2022年の通達でITUは、2021年に記録された航空関連の衛星ナビゲーション干渉万件以上の事例を挙げている。同通達は、このような行為が有害な干渉に対する規則に違反することを強調し、次のように述べている。「......一般に『GNSS(全地球航法衛星システム)ジャマー』と呼ばれる装置や、航空機に有害な干渉を引き起こす可能性のあるその他の違法な干渉装置の使用は、無線規の第15.1号によって禁止されている......」。

国際社会は、バルト海で見られるような電子戦が戦争であることを認識しなければならない。そして、宣戦布告がないにもかかわらず、ロシアは他国、特にNATO加盟国を標的とした一連の低レベル攻撃を意図的かつ組織的に行っている。

国際機関による話し合いや宣言が機能していないことも明らかだ。問題は悪化するばかりだ。

NATOと国際社会には、適切かつ比例的な対応で選択肢があり、速やかに検討され、採用されるべきである。例えば、新しい衛星の周波数割当てはITUが管理している。他国の衛星の信号を日常的に妨害していると判明した国に対して、新たな割り当てを拒否することは適切であると思われ、良い第一歩となる。

増大するこの問題が大きな犠牲者を出したり、NATOが直接関与する武力紛争に発展する前に、より断固とした明白な行動をとる必要がある。■

ダナ・ゴワードは、レジリエント・ナビゲーション・タイミング財団の会長であり、米国大統領の宇宙ベースのポジショニング・ナビゲーション・タイミング国家諮問委員会のメンバーである。元米国沿岸警備隊海上輸送システム部長。


Dana Goward is the president of the Resilient Navigation and Timing Foundation and a member of the US Presidents’s National Space-Based Positioning Navigation and Timing National Advisory Board. He formerly served as the Director of Marine Transportation Systems for the US Coast Guard.

https://breakingdefense.com/2024/01/as-baltics-see-spike-in-gps-jamming-nato-must-respond/


2022年12月28日水曜日

歴史に残る機体(35)EA-6プラウラーはグラマン艦載機最後を飾り、文字通り縁の下の力持ちとなった電子支援機材として重宝された。

 歴史に残る機材32


The EA-6B Prowler Has Been Retired, But Its Impact On Air Warfare Will Live On Forever

グラマンA-6イントルーダーの系譜は、60年にわたる供用を経て終焉を迎えた

EA-6Bプラウラーは、同型機の最後の運用者となった海兵隊が正式に退役させた。米海軍が同機を2015年7月に退役させて、終焉の日はじわじわと近づいていた。プラウラーの退場は、グラマンのA-6イントルーダー・ファミリーの60年にわたる信じられないほど成功した実績の終わりを意味する。

すべてはYA2F-1に始まり、推力ベクトルノズルと、設計時(1950年代)には高度なコンピュータシステムを備えた、非常に野心的な空母艦載攻撃機だった。同機は1960年に初飛行し、その後A-6イントルーダーへ改良された。同機は、非常に大量の爆弾を搭載し、悪天候や夜間でも超低空飛行で敵地深くまで侵攻する、信じられないほどの攻撃力と正確さを備えた核搭載可能攻撃機であった。A-6は1963年に就役し、10年間ベトナムで戦い、その後、リビア、イラクなどで活躍した

グラマンと海軍は、このイントルーダーから、敵防空レーダーを妨害するイントルーダーの電子戦型EA-6Aを短期間で誕生させた。この機体はわずか28機しか製造されず、1963年に初飛行した。しかし、コンセプトは成功し、ベトナムの危険な空で苦労して学んだ教訓も手伝い、4人乗りEA-6Bイントルーダーの再設計につながった。1968年に初飛行、1971年に就役した空母搭載可能な電子戦専用ジェット機である

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EA-6A prototype., USN

EA-6Bは海軍と米海兵隊で48年間にわたり活躍し、その性能と必要性は増す一方だった。1998年に米空軍のEF-111レイヴンが退役すると、EA-6Bはアメリカの空軍力での電子戦支援で唯一の機体となり、同機以外には空軍のEC-130Hコンパス・コールが限られた能力を提供するだけだった。 

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EA-6A and EA-6B side by side. , USN

時代が進むにつれて、プラウラーの技はより多くなっていった。プラウラーはAGM-88高速対レーダーミサイル(HARM)を発射し防空体制制圧を支援し、ALQ-99ジャミングポッドで電子妨害支援も可能になった。EA-6Bの電子戦装備は、通信システムの妨害にも使用され、プラウラー・コミュニティは、イラクとアフガニスタンのアメリカ軍と同盟軍の地上部隊に恐怖をもたらした遠隔起爆型即席爆発装置(IED)を破壊する機能で、空中からの支援能力を高めた。

海兵隊の最終的なICAPIII機は、非常に高性能な機体となった。このアップグレードにより、プラウラーの状況認識、通信能力、妨害効果、ヒューマンマシンインターフェースが飛躍的に向上した。EA-18Gグラウラーの電子戦システム開発のベースとなったが、一部情報筋によると、ICAPIIIプラウラーは、グローラーよりさらに優れているという。

ここ数年、ほんの一握りの海兵隊プラウラーがLITENINGターゲット・ポッドを搭載し飛行し、従来とは異なるオーバーウォッチと監視の役割を果たしながら、必要に応じ妨害任務も同時にこなしてきた。

プラウラーは著しく時代遅れの航空機であったにもかかわらず、そのキャリアの黄昏時に真のマルチロール・プラットフォームとなった。

海兵隊航空基地チェリーポイントを拠点とする米海兵隊の最後のプラウラー飛行隊、Marine Tactical Electronic Warfare Squadron 2、通称VMAQ-2「Death Jesters」も2019年3月8日金曜日、基地での式典で同機に別れを告げた。

USMCは、EA-18Gグラウラーなど電子戦専用機の購入していない。その代わりに、同軍はボルトオンのIntrepid TigerポッドとMQ-21 Blackjackドローンを使用し、飛行部隊全体に電子戦能力を分散させる方針だ。しかし、はっきり言って、これらのシステムは、それなりに能力はあるものの、EA-6BやEA-18Gが提供する広範囲の敵の防空システムに対するハイエンド電子攻撃能力は提供しない。

アメリカ海兵隊が購入するF-35BとCは、強力な電子戦機能を持つが、大規模な戦力保護やプラウラーやグㇻウラーが提供する広域妨害ではなく、自己防衛に重点を置いている。

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DoD

2016-2025 Naval Aviation Vision文書では、米海兵隊の中央集権的な電子戦戦略の脱却について次のように述べている。

EA-6B Prowlerの2019年度退役後の電子戦(EW)要件に対処するための海兵隊の包括的計画は、海兵隊空地任務部隊(MAGTF)EWで、最新技術を使用し航空プラットフォーム(無人、固定翼、回転翼の資産)、ペイロード、地上EWノード、サイバー効果を統合し指揮官に有機的かつ持続的EW能力を提供する。MAGTF EW構想は、海兵隊がこれまで低密度・高需要のEWに集中していたのを、分散型・ネットワーク型・プラットフォーム非依存型のアプローチに移行させる。MAGTFのEWは、地上部隊や高度な統合防空システムに対抗する第5世代航空機を支援するため統合EW資産を補完する」。

EA-6Bは、国防総省が保有する高速ジェット機の仲間に比べれば比較的小さな機体だが、総飛行時間は26万時間を超え、現役時代はほぼすべての主要な米軍作戦に参加していた。EA-6Bのレーダー・スクランブル機能によって、どれだけのパイロットと航空機が救われたかは、数えることができない。

message-editor%2F1552091840163-aasddavv.jpg一番手前の機体の左翼についたライティングポッドに注目。

USMC

この数字は本当に驚くべきことだ。プラウラーが電子トリックを駆使して1機救うごとに、他の多くの飛行機とサービスマンが、墜落機を救出するため敵地に飛び込む作戦が不要になったことを意味することを忘れてならない。つまり、EA-6Bはアメリカの戦闘機の生存率に累積的な影響を与えたのだ。

また、F-117が初めて出撃して以来、プラウラーはアメリカのステルス航空機の静かな担い手として、ステルス技術の「カクテル」にほぼ不可欠な存在として働いてきた。F-117が唯一戦闘で失われたのは、アライド・フォース作戦時で、ステルス機が敵領空に深く入ったが電子攻撃の傘としていのEA-6Bが不在の夜だったことは注目に値する。

地上の兵士にも同じことが言える。電子戦の天使が頭上を周回していたために、命も手足も無事で脱出できたことを知らない人がどれだけいるか。今や、電子戦は戦闘の主要領域となりつつある。電子攻撃関連の技術は、かつてないほど重要かつ効果的であり、はるかに大きな能力が生まれつつある。数十年にわたるEA-6Bの運用は、EA-18Gグラウラーの開発のみならず、今後数十年にわたり戦闘に勝利するための電子戦戦略や技術に影響を与えてきた。

グラマンを象徴する同機はもう使用されていないが、EA-6Bと、その頑丈な機体に精力的に取り組んだ人々、それに搭乗した人々、その他設計や長年にわたるプラウラーの維持に携わった全員が残したのは素晴らしい遺産だ。それは、地球上のどの飛行機にも真似できない、信じられないような、しかししばしば誤解される記録だ。EA-6Bは本当に、一般人がほとんど何も知らないまま最も重要な戦闘機だった。

「グラマン鉄工所」の戦術機の系譜で最後の機体に最後の別れを告げたが、私たちはプラウラーをこれほど壮大で長続きする成功に導いてくれたすべての人に感謝の言葉を述べるしかない。■

 

The EA-6B Prowler Has Been Retired, But Its Impact On Air Warfare Will Live On Forever

BYTYLER ROGOWAY|UPDATED DEC 1, 2019 6:46 AM

THE WAR ZONEMUST READ FEATURES

 


2022年9月2日金曜日

MALDデコイにより米空軍は敵防空網を突破し、強力な攻撃実施を目指す。米軍機電子声紋のみまらず、EW攻撃能力まで付与された最新型二注目

 

ADM-160 MALD(ミニチュア空中発射デコイ)は、その名の通り、巡航ミサイルのように航空機から発射される小型装備で、現役の米軍各機のレーダー特徴を模倣する。MALDは敵の地対空ミサイルを破壊できないが、高度な統合防空網を排除するため大きな役割を果たす。



全長9フィート、重量300ポンドのMALDはこの機能SAS音紋補強サブシステムを通じ発揮し、広範囲の周波数で発信するアクティブ・レーダー・エンハンサーを活用し、ミサイル型のMALDを、ステルスの元祖F-117ナイトホークからB-52など大型爆撃機に至るまで各種機種で、防御レーダー・システムを誤動作させる。


MALDの取り組みは1990年代に始まった。湾岸戦争でアメリカがADM-141戦術空中発射デコイ100機以上を連合軍航空機に先駆けイラクに展開し、イラク軍指揮官の目を欺き防空レーダーアレイを作動させることに成功した。敵レーダーが作動すると、連合軍航空機はAGM-88 HARMなど対レーダーミサイルで交戦し、その後の航空作戦のためイラク上空を安全にするのに極めて有効な手段となった。


ADM-141 TALDを発進させるF-14トムキャット (Wikimedia Commons)


しかし、1990年代後半にMALDの開発は減速し、システム・コストを低く抑える目標が遠のいた。2002年に空軍はMALDコンセプトを一新する準備をし、3万ドルのADM-160Aを廃棄し、レイセオンのADM-160Bという、大型で性能の高い、単価12万ドルの新型を採用した。


2016年には、ADM-160C MALD-Jが正式に就役し、他の航空機のレーダーリターンを模倣できるオリジナルのSignature Augmentation Subsystemだけでなく、CERBERUSという名称で開発されたモジュール式電子戦能力も組み込まれた。CERBERUSは単一ジャマーではなく、1分以内で交換できる各種電子戦(EW)ペイロードを提供し、戦場の状況に合わせてEW攻撃を行うことができるようになっている。


ADM-160 MALDの能力を示すイメージ図。


言い換えれば、小型で消耗品のMALD-Jは、F-16かB-52で戦場に運ばれ、あらゆる種類の航空機の到来と敵の防空体制に勘違いさせ、早期警戒と標的レーダーアレイを妨害し防衛軍の対応をさらに困難できる。


MALD-Jは、海軍のEA-18Gグラウラーのような電子戦専用機ほど広範な能力や威力はないものの、EWペイロードを交換して効果を発揮できるため、非常に有効なシステムだといえる。また、MALDは回収不能(消耗品)であるため、グラウラーより敵防衛システムに近い地点を飛行でき、発信範囲の減少を相殺できる。


米海軍のEA-18Gグラウラー電子攻撃機は、世界で最も高性能なEWプラットフォーム (U.S. Navy)


現在使用中のMALDは、500マイルをカバーし、1時間以上滞空でき、その間に周辺のレーダーオペレーターの作業を複雑化させる。最新型のMALD-Xは、暗号化データリンクと、高度なEW機能を備え、他の機体から情報を取得できる。


これまでのMALDは発進後、事前収集した情報に基づきプログラムされた飛行経路を飛行し、経路がどれだけ有効であったとしても、ミッションに参加できなかった。しかし、MALD-Xでは、戦闘中にコマンドを発行し、戦況の変化に応じ飛行経路を変更できるようになった。このような進化を遂げ、2018年に飛行試験実証が完了した。MALD-Xは最終的に、MALD-Nと呼ばれる海軍向けシステムになる予定だ。


ADM-160 MALDの想像図 (U.S. Air Force)


高度の防空能力を有する国との大規模紛争では、ADM-160C MALD-Jが敵領空を真っ先に通過する可能性が高い。この妨害デコイを巡航ミサイルや航空機と一緒に大量投入すれば、防空システムはスコープに映るレーダーが本物か架空か見分けなければならず、しかも妨害機能で送られてくる静電気を選別しなければならなくなる。


敵空域に殺到する現実のレーダーリターンや模擬レーダーリターンに迎撃ミサイルを発射すれば、これらのシステムはAGM-88やF-35が搭載する予定のAARGM-ERなどの対レーダーミサイルの攻撃の前に弱く、同時に地対空ミサイルの貯蔵量も枯渇させる。


MALDの使用イメージ


より限定的な戦闘では、例としてF-15Eストライクイーグルが目標に接近する様子をMALDの編隊が表現すれば、敵の注目を集め、より高い高度を飛ぶF-35が目標に弾薬を展開することも可能だろう。


このように戦闘戦術をミックスし、過去の実戦で活用された戦術をMALDで再現することで、高い有効性を維持することができる。レーダーに映る戦闘機や爆撃機の群れを無視するのは、たとえそれが囮(おとり)であると分かっていても、リスクが高すぎる。


さらに、JASSM(Joint Air-to-Surface Standoff Missile)のような長距離の低視認性巡航ミサイルを加えれば、A-10やB-52、さまざまな戦闘機、あるいはRapid Dragonプログラムにより貨物機までもが大規模戦闘に加わる。

MALDを広範な統合戦略の一部として使用することで、アメリカは第二次世界大戦中の空襲を彷彿とさせる航空戦へのアプローチに復帰できるだろう。ただし、現代の戦闘では、敵のレーダースクリーンに実際に表示される目標のほとんどは実在せず、ステルス機や巡航ミサイルの脅威は、照準スコープにまったく表示されないかもしれない。


どんな相手にとっても非常に難しい問題となる。■


ADM-160 MALD: America's secret weapon to engage air defenses isn't a weapon at all - Sandboxx

Alex Hollings | August 18, 2022



Alex Hollings

Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University.