B-21への空中給油条件で明らかになった要求内容と次世代給油機実現の行方(The War Zone)―米空軍内では依然として次世代給油機NGASは優先順位を引き下げられていますが、タンカー戦略をどう構築するつもりなのか注目です
Northrop Grumman
B-21の極めて長い耐久能力を米空軍がどのように利用するかから、次の空中給油機への新たな要件が生まれる
米空軍がめざすB-21レイダーの導入構想で、ステルス爆撃機への空中給油に関し新たな要件が含まれている。開発中のB-21は、非常に大きな内部燃料容量、高効率の機体、先進的なエンジンにより、給油なしで極めて長い飛行が可能になると予想されている。レイダーの空中給油の必要性に関する今回の発表は、次世代空中給油システム(NGAS)計画の一環として、空軍が新型ステルス空中給油機を導入する計画について不透明な状況にある中での発表となった。
米軍輸送司令部(TRANSCOM)のトップであるランドール・リード空軍大将Gen. Randall Reedは、今週初め上院軍事委員会のメンバーにへの証言で、B-21での空中給油の必要性に言及した。Aviation Week がリード大将のコメントを最初に報道した。
「B-21爆撃機が就役し、爆撃機部隊が近代化され増強されるのに伴い、同機で重要な任務を遂行するため、適切な空中給油機部隊を確保しなければなりません。空軍が空中給油機の調達戦略で最終的な決定を下すことは理解しています。しかし、TRANSCOMが空軍と協力して、その要件をどのように伝えているのかをより理解していただきたいと思います。核爆撃機部隊を効果的に維持し、世界的な抑止力を維持するために必要なことを空軍に伝えているのでしょうか?」と、ネブラスカ州選出の共和党議員、デブ・フィッシャー上院議員はリード大将に尋ねた。 「はい、議員。ちょうど先月、私はスタッフと米国戦略軍(U.S. Strategic Command)を訪問し、司令官とそのスタッフと会い戦闘部隊との話し合いを行いました。その際、私たちは、私たちが彼らとより効率的かつ効果的に連携する必要性を理解するために、彼が求められている任務について説明しました」とリード大将は答えました。「同じ期間に、彼らが新型航空機をどのように運用するつもりなのかについて、非常に深い理解を得ることができました。これにより、我々の支援方法も少し変わります。具体的には、燃料の移送に関して、より高い要求が課されることになります。
「その結果、STRATCOMのトップであるアンソニー・コットン空軍大将と私は協力して、空軍内部で私たちが協力してそれを達成するために何が必要で、何を期待されているのかを説明しています」とリード大将は付け加えた。
TRANSCOMのトップは、将来のB-21運用を支援するための空中給油要件について、これ以上の詳細な説明は提供しなかった。リード大将の「燃料の移送に関して、もう少し高い要件」というコメントが、給油機の燃料の分配速度、移送可能な燃料容量、またはその両方に関連しているのかどうかは不明である。
Aviation Weekの報道によると、給油速度に関しては、「国際空中給油システム諮問グループが定めたガイドラインでは、給油ブームは毎分1,200ガロン(約4,536リットル)、重量にして約8,000ポンド(約3,629キログラム)のジェット燃料JP-8に相当量の給油をサポートするよう求めている」と指摘している。
「B-21の機体重量と燃料容量は不明がが、同爆撃機のサイズは一般的にB-2Aの3分の2程度と考えられている。」と、記事は付け加えている。「B-2Aは最大167,000ポンドの燃料を搭載できます。1分あたり1,200ガロンの移送速度と仮定すると、KC-46がB-2Aの燃料容量の80%を完全に補給するのに約17分かかる」。
米空軍の空中給油機の最後尾にあるブーム操作者の位置から見たB-2Aスピリットステルス爆撃機。米空軍
空中給油機が対象機と連結している間は、両機が脆弱性に直面する。B-21のようなステルス機は、非ステルの空中給油機から給油を受ける際に、発見されるリスクが高まる。レイダーは、敵の防空網から離れた場所で給油できるため、こうした問題の緩和に役立つ可能性があるものの、相手の脅威が到達できる範囲も拡大している。非ステルス機の探知可能距離は、年々急速に伸びる一方だ。転送速度の向上は、給油ウィンドウに必要な総時間を増やすことなく、より多くの燃料を積み下ろしできることを意味する。全体として、レイダーの巨大なタンクへの給油に要する総時間の短縮に空軍が関心を有している可能性がある。
さらに重要なのは、B-21が搭載できる燃料の総量によって、空中給油の全体的な需要がさらに高まる可能性があることだ。レイダー部隊は、他のタイプと比較して、その作戦を支援するために、他に類を見ないほど大量の空中給油機を必要とする可能性がある。空軍とTRANSCOMは、平時における需要の高まりも一因となって空中給油の不足が起こる可能性があることを、ここ数年警告し続けてきた。B-21のニーズと一般的な任務プロファイルに合わせた、より大きな燃料容量を持つ空中給油機を調達することで、B-21の世界規模の任務における空中給油に必要な空中給油機の数を減らすことができ、その分を他の任務に充てたり、あるいは全体的な戦力を縮小したりすることが可能になる。
現行の空軍爆撃機は1日以上におよぶ長距離飛行任務を遂行しており、すでに述べたように、B-21はB-2よりも大幅に長い航続距離での作戦遂行能力を持つことが期待されている。これには、偵察やネットワーク支援といった爆撃機以外の極めて長時間の任務セット、および将来的には他の任務タイプも含まれる可能性が高い。本誌が過去に詳細に検討したように、レイダーの全体設計は、高高度長距離飛行に最適化されている。これには、機体が小型化されているにもかかわらず、内部燃料容量を大きく確保できるように、B-2より短くなった内部兵器格納庫が含まれる。つまり、同機は極端な長距離作戦に最適化されており、これらの要件により、まさに空飛ぶステルス燃料タンクとなっている。
B-21の武器庫のドアが開いているように見える最初の画像が公開されたが、エンジンベイやその他のアクセスは機体下にもある。
B-21のエンジンは不明だが、B-2の4基ではなく、おそらく2基のエンジンが搭載され、高い燃料効率を実現すると思われる。
「私はジルに、B-21に最も効率の高いエンジンを搭載するように頼まなければならない。なぜなら、機体はガソリンを少ししか飲まず、非常に重いものを長距離運ばなければならないからだ」と、水曜日に開催された航空宇宙軍協会(AFA)の2025年戦闘シンポジウムにおける次世代航空機に関するパネルディスカッションで、空軍グローバルストライクコマンド(AFGSC)の戦略計画・プログラム・要件担当ディレクターであるタイ・ノイマン少将Maj. Gen. Ty Neumanが述べた。ここでの「ジル」とは、同じくパネリストとして参加したプラット・アンド・ホイットニーの軍用エンジン部門社長ジル・アルベルテリのことである。
テスト飛行中のB-21レイダーの試作1号機。
「B-21は、戦争遂行の力学と、それに対する我々の考え方を根本的に変えつつあります。我々は、今日だけでなく将来にわたる脅威にも対応できる航続距離、アクセス、ペイロードを備えた、あらゆる局面に対応可能なプラットフォームを構築しています」と、同じパネルディスカッションでノイマン少将は述べた。「私たちは、適応可能なものとなるよう構築しています。オープンシステムアーキテクチャにより適応可能となるでしょう。通信やネットワークにも適応可能となるでしょう。そして、システム、武器、センサー、プラットフォーム、通信、宇宙など、あらゆるシステムにも適応可能となるでしょう」。
B-21では、「歴史上の戦闘でかつて見られなかったほど複雑な兵器各種を、1つのプラットフォームに同時に導入し、開発しています」と、ニューマンは付け加えた。「通常核兵器の統合、電子攻撃、電子戦など、あらゆる種類のものがすべて1つのプラットフォームにパッケージ化されていると考えてください。それが、この技術がもたらす成果です」。
ノイマン少将のコメントは、B-21が単なる爆撃機以上の存在であることを強調している。これは、本誌がこれまで強調している点でもある。同機は、大規模な長距離攻撃(LRS)システムファミリーの1つにすぎず、その詳細については依然として厳重に機密扱いのままだ。LRSエコシステムには、今後配備される核搭載のステルス型長距離スタンドオフ(LRSO)巡航ミサイルも含まれる。
また、B-21も20年代後半の運用開始に向けて、現在も開発の最終段階にある。
「私たちは、開発のペースと性能の両面で、現在の状況に非常に満足しています」と、 水曜日のAFA Warfare Symposiumのパネルディスカッションのメンバーであり、B-21を担当するノースロップ・グラマンの航空部門のエグゼクティブ・バイスプレジデント兼プレジデント、トム・ジョーンズが述べた。「当社は最初の量産機を完成させ、週に何度も飛行させています。これは、当初から約束していたように、同機を日常的に飛行させる上で非常に良い兆しであると思います・テストプログラムには常に問題の発見があるものですが、これまでのところ、このペースで飛行できているということは、不具合の発見がそれほど多くないことを示しています」
空軍は現在、最初の量産前B-21で飛行試験を実施している。 さらに5機の量産前B-21が、さまざまな段階で製造中だ。また、飛行しない機体2機も、進行中の試験作業のサポートに使用されている。
「性能面では、テスト結果はデジタルデータと極めて近い結果を出し続けています。デジタルエンジニアリングモデルについて多くを語ってきましたが探しているのは、高い相関性を持つモデルです。」とジョーンズは続けた。「非常に高い相関性が見られます。必要な性能を確実に得るために、少し余裕を持たせたモデルにした箇所もあります。そして、余裕を持たせたモデル化を行った場所で十分な余裕があることが確認されています」。
「最初のフライト前に、ハードウェア、ソフトウェア、センサー、ナビゲーション、通信スイートを実際に使用できる飛行テストベッドで、1,000時間以上の飛行時間に相当する200回以上のフライトを行いました」とし、「ミッションシステム統合に入ると、通常は多くの発見が得られるのがこの段階です。当社には、1,000時間以上の発見とミッションシステム統合の経験があります。これは、私たちが全体として目指す方向性にとって非常に良い兆しであると思います」。
ジョーンズは、このテストベッドプラットフォームについて、これ以上詳しい説明は提供していない。同機は、ノースロップ・グラマンによるB-21に関する最近のプレスリリースでも言及されているが、詳しい説明はない。本誌は、同社に詳細情報を問い合わせている。これは、B-21関連のテストに深く関与していると考えられる同社所有のG550テスト機を指している可能性が高い。また、このプログラムに関連する極秘テスト記事も存在する可能性がある。
米軍および連邦議会議員は、B-21を、その複雑性や途中で明らかになった問題にもかかわらず予算とスケジュールを維持してきた模範的なプログラムとして長年宣伝してきた。
B-21プログラムとは別だが密接に関連する問題として、特にレイダーの空中給油の必要性に関するニュースと絡み合っているのが、空軍のNGAS構想だ。NGASも次世代空中給油能力のシステムとして形を整えつつあり、その目玉となるのは新型のステルス空中給油機である可能性もあるが、その将来は不透明だ。
「空中給油の分野では、次世代空中給油システム(通称NGAS)の代替案分析に多くの時間を費やしてきました」と、水曜日に開催されたAFA Warfare Symposiumのパネルディスカッションで、空軍ジョン・ラモンターン大将Gen. John Lamontagne(空軍機動軍団(AMC)司令官)が述べていた。「その作業は、そのほとんどが国防総省のOSDに提出済みです。今後1~2ヶ月で仕上げ作業を行う予定です。そして、滑走路の大きさはどの程度必要か、どの程度の燃料をどの程度の距離に届けることができるか、そして、脅威環境下でどこまで前進できるか、また、これら3つのトレードオフについて効果的に検討しています」。
ステルス空中給油機のレンダリング。ロッキード・マーティン社スカンクワークス
空軍はまた、空中給油能力と容量の改善と拡大、および脅威の高い地域での生存性の向上を目指し、他の選択肢も模索中だ。これには、戦闘機サイズの機体が搭載可能な新型ポッドブーム装備システムが含まれる。
NGASやその他の最優先事項である空軍近代化の取り組みにおける大きな問題は、依然としてコストだ。昨年、空軍がステルス空中給油機を購入する余裕があるのか、また、次世代航空優勢(NGAD)構想のもとで開発中の新型の有人ステルス戦闘機や協調戦闘機(CCA)無人機を購入する余裕があるのかについて、深刻な懸念が浮上した。
現在保留中のNGAD戦闘機計画の徹底的な見直しにより、少なくとも一部機体を取得することが、特に将来のハイエンド戦闘において、空軍が最小限のリスクで最高の航空優勢を確保するために不可欠であるという結論に達した。そのために必要な数十億ドルが、NGAS含むその他の事業に影響を与える可能性がある。
すでに空軍は大陸間弾道ミサイル(ICBM)プログラム「センチネル」のコスト高に頭を悩ませている。さらにヘグセス長官の下、国防総省も既存のプログラムを削減し、ゴールデン・ドーム・ミサイル防衛構想のようなトランプ政権の新たな優先事項に数十億ドル規模の予算を振り向けることを検討している。
B-21調達の最適規模をめぐる現在進行中の議論は、独自の予算的影響を及ぼしている。現在の計画ではレイダーを少なくとも100機購入することになっているが、その数を増やす話も出ている。
水曜日、B-21戦闘群の規模に関する議論について、ノイマン少将は「実際の機数に関しては、空軍だけの決定ではないと私は主張したい」と述べた。「B-21を開発し、配備する能力は、国家の使命であり、実際には統合軍全体にとって戦力増強、戦力拡大につながる。そして、もし私たちがこの計画に時間と労力を費やし、今想定している以上の数を生産しようとするのであれば、国家は『これこそ向かうべき方向だ。ここが未来だ』と主張するだろう」。
空軍が何機のB-21を最終的に入手することになろうとも、レイダーは、明らかになった空中給油の独特な要求を含め、空軍の戦力構造と今後の運用に大きな影響を与えることになるだろう。■
B-21 Aerial Refueling Demands Further Point To It Being A Stealthy Flying Gas Can
How the Air Force plans to use the B-21's extremely long endurance capabilities has created new requirements for its tanker fleets.
Joseph Trevithick
コメント
コメントを投稿
コメントをどうぞ。