スキップしてメイン コンテンツに移動

★★米海軍が通常型潜水艦建造に向かう可能性



この記事では通常型潜水艦の優位性がいまいち明確にとらえられていないと思うのですが、まず原子力潜水艦ありきの米海軍が考え方を変えたとしても通常型潜水艦建造の技術基盤がない米国が日本に協力を持ち掛けてくるはずなので潜水艦事業に大きな変化をもたらすのは必至でしょう。
そうりゅう級(あるいは後継艦)を米海軍が採用すれば日本の防衛産業にとっては画期的な事態となりますね。ただしこれは東アジアでの安全保障を見直したいという米国の一部の流れとは逆に日本との協力関係の強化になってしまうので、日本には好都合と言えるのですが、米国本流のの考え方にはなじまないでしょう。日本の地理的優位性を精一杯活用すべきでしょうね。

 


Is It Time for the U.S. Navy to Start Building Non-Nuclear Stealth Submarines?

米海軍は通常型潜水艦建造に踏み切るべき時に来たのか
October 29, 2017

  1. 米議会とトランプ政権がウォールストリートジャーナルのロシア海軍潜水艦の記事を読めば、米国も真剣に通常型潜水艦調達を検討すべきと言い出すのではないか。
  2. ジュリアン・E・バーンズ記者の記事ではロシアの通常型潜水艦とNATOの間で追跡劇が3か月続いたと暴露している。バーンズは「ロシアの攻撃型潜水艦クラスノダールKrasnodar,は5月末にリビア沿岸を離れ地中海を東に向かい、その後潜航し、シリアに巡航ミサイル数発を発射した」と伝えている。
  3. バーンズ記者はNATO部隊が同艦を一貫して追跡していたと明らかにした。まずオランダが北海で同艦を捕捉し英仏海峡まで追尾した。ジブラルタルからは米巡洋艦がP-8の支援で地中海で追尾した。
  4. モスクワは同艦がリビアに向かい演習参加すると発表していた。実際には到着する前に浮上し5月末にシリアに向け巡航ミサイルを発射している。問題は米空母打撃群が6月はじめに同じ地域に向かっており、対ISIS作戦の実施を始めようとしていたことだ。このためロシア潜水艦の位置確認は特に重要になった。米関係者は「潜水艦一隻でも空母のような主力艦に脅威になる」ためと説明している。
  5. バーンズは詳細に触れており、米海軍や同盟国が潜水艦を追尾する方法各種や潜水艦が追尾から逃れる戦術も書いている。ただし記事からは西側海軍部隊がロシア潜水艦追尾にどこまで成功したか不明だ。米海軍関係者は同艦の二回目ミサイル斉射の様子はフランス海軍フリゲートが把握し、米海軍も空中監視していたと述べている。NATOがこのロシア潜水艦の追尾に苦労したのなら、中国やロシアが米潜水艦の追尾はできないことは明らかだ。
  6. 記事から明らかなのは米国や同盟国は相当の努力を投入してクラスノダールを追尾したことだ。これは相当困難な仕事だ。米国は世界最高の対潜戦能力を有すると自負しており、同艦追尾に必要な前方配備基地や同盟諸国を有していることが重要だ。もし米およびNATOが潜水艦追尾可能ならロシアや中国では西側潜水艦の追尾は不可能となるはずだ。
  7. クラスノダールがとくに高性能通常型潜水艦でない点が要注意である。同艦はプロジェクト636.3ヴァルシャヴャンカVarshavyanka級潜水艦だ。ロシアは世界で最も静粛な潜水艦と自慢する636.3型はキロ級を改良し低価格が特徴だ。2009年にはヴィエトナムに同型艦6隻をわずか20億ドルで供給する契約に調印している。(価格には乗員訓練および予備部品を含む)対照的に米国は原子力潜水艦一隻で27億ドルを支払う。通常型で最大かつ最高性能と言われる日本のそうりゅう級は単価5億ドル超といわれる。つまり原子力潜水艦一隻の単価でディーゼル電気推進型潜水艦が5隻ないし7隻建造できる。
  8. 355隻艦隊を整備しようとする米国 には通常型潜水艦調達を真剣に検討し原子力潜水艦の補完機能を実現する必要がある。これは大きな変化となる。米海軍の最後の通常型潜水艦建造は1950年代で、1990年以降は運用していない。ここにきてディーゼル電気推進式潜水艦建造構想に勢いがついてきた。今年初めには議会の求めに応じ2030年代の海軍艦船構成を検討したMITREコーポレーションが通常型潜水艦の配備を求めた。
  9. 米海軍側がこの要望をはねつけ、通常型潜水艦では海中環境、補給面、性能面で制約があると反論したのは自然な反応といえる。だがこれに対しいずれも制約条件ではないとの主張が出てきた。ジェイムズ・ホームズJames Holmesが海中環境は潜水艦を米国配備した際にのみ制約となると主張。日本への前方配備なら米本土配備の原子力潜水艦に対して有利だと述べている。同様にホームズの指摘では補給面でも日本を利用すれば克服可能という。ディーゼル電気推進式潜水艦だけでなく海軍の他の艦艇にもメリットが生まれるという。
  10. 性能面で高性能ディーゼル電気推進式潜水艦は特に脆弱なわけではない。ホームズは日本のそうりゅう級は二週間に一度浮上するだけでいいという。原子力潜水艦並みの潜航期間は無理だが、ヴァージニア級攻撃型原子力潜水艦一隻の値段でそうりゅう級5隻を導入できると主張。単艦の性能で原子力潜水艦にかなわなくても数の威力でカバーできるとした。
  11. たしかに大洋なら原子力潜水艦の性能が活用でき、長期間展開能力、潜航深度で他の追随を許さない。一方で浅深度海域や閉鎖系海域のペルシア湾や南シナ海では大気非依存型推進(AIP)搭載の潜水艦が望ましい選択になる。この事から議会、トランプ政権に対し原子力潜水艦のみの調達方針を再考すべきと求めたい。■
Zachary Keck (@ZacharyKeck) is a former managing editor of the National Interest.
Image: A Russian made Iranian navy Kilo class submarine takes part in Iranian naval exercises in the Persian Gulf November 2, 2000. Iranian navy maneuvers on both sides of the strategic strait of Hormuz will continue until November 6, 2000.

コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...