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韓国が原子力潜水艦運用を開始する日が来るのか


著者の一人は現役韓国海軍潜水艦乗り組み士官です。果たして実現の可能性はあるのでしょうか。虫の良い主張にも聞こえる反面、展開されている効果も実現の可能性はあるように思えます。日本との微妙な関係に配慮した文脈になっていますが、独島と竹島を併記する一方原文では東海となっていますのでやはり韓国だなという感じは残りました。皆さんはどう思いますか。


Should South Korea Start Building Nuclear Submarines?

韓国は原子力潜水艦建造を開始すべきか

September 26, 2017

  1. 北朝鮮が潜水艦発射式弾道ミサイル(SLBM)開発に取り組む中、韓国は米国支援を得て原子力推進式潜水艦(SSNs)の取得に近づいている。国連本部訪問時の協議で韓国大統領文在寅はドナルド・トランプ大統領と韓国が長年目指すSSN建造を議題にした可能性がある。
  2. 韓国国防筋はすでに国産SSN建造費と効果を試算しているが、米国でこの話題はほとんど議題になっていない。米国防政策筋が米韓同盟に韓国SSNsが実現した場合の結果を真剣に検討することこそ重要である。一方で米国支援で韓国がSSNを実現した場合の同盟関係への潜在リスクを検討してみる。
4Dの強化
  1. 韓国国産SSNの一つの効果は同盟軍による「4D」作戦構想の実現が強まることだ。この構想は北朝鮮核ミサイルの「探知、妨害、防衛、破壊」detect, disrupt, defend against, and destroyを行う内容でいわゆる「キルチェーン」の一部として北朝鮮内部深くを攻撃する能力で北朝鮮ミサイルの発射前にこれを排除する構想が4D構想の中心だ。北朝鮮がSLBM開発に進んでいるため、現在のキルチェーンの有効性に疑問が生まれている。同盟側も対潜戦(ASW)能力を向上しないと北朝鮮潜水艦が4D構想そのものを揺るがしかねない。
  2. そこで韓国製SSNsが決定的な役割を果たす。SSNは騒音も大で韓国が供用中の孫元一Son Won-I級およびl張保皐Chang Bogo級ディーゼル電気推進潜水艦(SSKs)より艦体も大きくなるが航続性能や推進力の増加、センサーの能力向上、水中速力の増加で有利だ。米海軍が指摘するようにSSNsは水中無人機(UUVs)の運用、充電が可能で偵察用途に投入できる。
  3. そうなるとSSNは4Dのうち「探知」と「破壊」で威力を発揮する。また海中配備センサーやP-3オライオン哨戒機を補完するほか、同盟国のASW機能にもそのステルス性を生かし北朝鮮沿岸に前方展開することで効果を発揮する。北朝鮮港湾部を監視し、ミサイル潜水艦を追尾する中でUUVsやセンサーの威力をいかんなく発揮できるはずだ。SSKsではバッテリー充電で居場所を露呈してしまうがその心配はない。また必要ならSSNsの高速と武装を生かして北朝鮮ミサイル潜水艦を事前に排除できるので「水中キルチェーン」の基盤にもなれる。
  4. だがそれなら米海軍がSSNsを定期的に黄海や日本海に配備すればすむのではないかという疑問が出るだろう。残念ながら米海軍は世界各地での展開とくに中国ロシアへの対応で潜水艦展開に余裕がない。さらに水中キルチェーン実施の任務を与えれば米潜水艦隊には一層の負担となる。そのため韓国が小規模のSSNs部隊を編成し4D任務を韓国近海で実施できれば米海軍機能の補強戦力になる。
支配力と抑止力
  1. 韓国版SSN部隊には北朝鮮相手の力による交渉力を強化する効果も期待できる。韓米同盟側が4D実施能力を高める中で韓国の北朝鮮核兵器に対しSSNsは「拒否による抑止」の手段となる。北朝鮮がSLBMを投入する可能性を減らすだけでなくSSNsにより北朝鮮はSLBMで有頂天になれなくなる。言い換えれば同盟側の4D機能が充実し効果を上げれば、北は報復を恐れるあまりSLBMでの強硬挑発策に躊躇するはずだ。
  2. 米国による技術移転ならびに韓国の大規模支出を実施するかで同盟側の決意が試される。米韓両国は追加負担を受け入れれば北朝鮮の挑戦に果敢と立ち向かい抑止効果の機能をさらに高められる。
同盟間の結合
  1. 米国支援のもと韓国がSSNs開発に走れば韓米同盟の結合にも好影響が出る。同盟間でたえず付きまとう恐怖が韓国の「放棄」である。この懸念は北が米本土直撃能力を整備するにつれて一層現実のものとなっており、もし北朝鮮が米本土を核攻撃する構えを示せば米国は韓国防衛に向かわないのではとの心配が韓国側に根強い。ただし米国が海軍用原子力利用の支援をおこなえば、米国が韓国防衛にただならぬ決意をしている証となり、韓国も同盟関係への信頼を高めるだろう。
  2. 同時に韓国に防衛上の責任を強化することとなれば韓米同盟関係も好転するはずだ。ワシントンがソウルに負担増加を求めているのは財政、人的資源両面で半島および域内の安全保障上の役割拡大を望んでいるためだ。トランプ大統領は韓国は自国防衛の能力がありそうすべきと繰り返し発言してきた。SSNs小部隊が整備されれば韓国はこの実現に大きく近づく。米海軍SSNsに依存せずに北朝鮮SLBM脅威への負担分担として韓国は自国軍の強化をはかるべきだ。
遠距離運用能力
  1. 韓国SSNsの二番目の戦略意義として韓米同盟の適用範囲を地域からグローバル両面へ拡大する効果が見込まれる。近年の同盟協力関係では安全保障協力範囲を拡大する傾向が大で「グローバルパートナーシップ」を強調しがちだ。しかるに韓国の軍事力投射能力は限定されたままである。韓国ではこれに対して迅速展開部隊の整備として独島級強襲揚陸艦を中心とした装備を企画しているが、展開部隊の護衛には鈍足で航続距離が短いSSKsを充てるしか選択の余地がない。韓国SSNsははるかに高機能の護衛となり、高速かつ遠距離に展開可能となる。
  2. 能力拡大により韓米同盟は域内およびグローバルな安全保障への貢献を朝鮮半島を超えて実現できるようになる。かつてマイク・マレン提督が呼んだ「1,000隻海軍」つまり志を共有する各国海軍の集合で海洋の安全安定を守る構想が有効だ。韓国の迅速展開部隊は核拡散防止構想、シーレーン防衛、海賊対策、人道救難活動の海外展開に有益だ。
水中軍拡の恐れ
  1. 韓国版SSNs整備で別のリスクも発生する。韓国の隣国である日本、中国が韓国の新規能力の整備に警戒する可能性がある。各国との関係が悪化したり韓国の意図を誤解しての軍拡競争につながりかねない。
  2. 特に中国が同盟国の4D機能整備でこれまでも悪い反応を示している。同盟国による高高度採取段階地域防衛(THAAD)の展開に敏感に反応して中国は韓国への自国民旅行を停止させ独自に長距離レーダーの稼働を内蒙古で開始した。
  3. 日本はそこまで過敏な反応はしめさないはずで、北朝鮮ミサイル脅威への懸念を共有していることに加え米韓含む三カ国体制でも利害を共有しているためであるが、もし韓国が独島(竹島)を舞台とした韓日対立にSSNsを展開する事態になれば日本の計算も変わるはずだ。
  4. 水中戦力整備は東南アジアですでにはじまっている。中国の潜水艦部隊の整備が1990年代以来進んだことで各国も独自の潜水艦部隊整備に乗り出している。シンガポール国防省の予測では2025年までに各国保有の潜水艦は合計200隻ないし250隻になる。韓国SSNsの整備が軍拡競争を一層激しくしないよう慎重に事業を進める必要があろう。
核拡散の潜在性
  1. 一方で韓国SSNsは一歩間違えば深刻な核拡散問題を引き起こしかねない。海軍用原子炉には濃縮ウラニウムが必要で使用済み核燃料は貯蔵あるいは再処理が必要となる。このため原子力推進技術でその国の核燃料サイクル技術理解が進み核利用の潜在力が高まる効果が生まれる。問題となるのは海軍用原子炉では高濃縮ウラニウム(HEU)が必要となり、ウラニウム235を90パーセント程度まで高めた燃料を使うが、これは武器にも転用できることだ。実際にイランはSSN開発を言い訳としてHEU製造を過去に行っている。
  2. もし韓国がSSNを利用して核兵器開発に向かっていると周囲国や世界から見られれば、域内の安全保障のみならず世界規模の非拡散方針に重大な影響を及ぼしてしまう。またこれまで北朝鮮に核兵器開発を放棄させようとしてきた努力を無駄にしてしまいかねず、他国も独自核兵器開発に向かいかねない。同盟各国はこの懸念が現実にならないよう十分な配慮して韓国版SSNs推進を理解する必要がある。
リスク緩和と効果の増大をめざせ
  1. トランプ-文間で米韓協力体制でSSN建造が合意できれば、リスクを慎重に避しつつ前に述べたような効果を最大限に実現する方法を模索すべきだろう。韓米同盟も韓国SSNsが実現した場合の効果を最大限に発揮できると強調すべきだ。米国には技術面で韓国を全面的に支援してもらう必要があり、その他人員面や作戦構想面でも韓国が効果的に各艦を運用できるよう支援を期待したい。
  2. 韓米同盟は外交面でも協調して信頼醸成と軍同士の接触を中国とさらに三カ国体制として日本とも確立して軍拡競争に陥らないようにすべきだ。同時に各国は堂々とSSN整備で北朝鮮SLBMを無力化でき、北朝鮮が半島の安全と安定を損なう行動に出るのは許さないとの決意を強調すべきだ。
  3. 韓米同盟は核拡散への懸念の打ち消しにも努力すべきだ。特に米国は韓国に米保有の濃縮ウラニウム購入を許しSSNs燃料とさせるべきで、韓国独自の濃縮化は許すべきでない。さらに米国は今後も韓国とともに使用済み核燃料貯蔵の課題解決に向けた努力をすべきだ。特にドライキャスク方式の核燃料保存技術が再利用に代わる手段として脚光を集めており、核拡散の懸念を生まない技術になっている。■


Jihoon Yu (LCDR) is a submarine officer in the ROK Navy. He earned his PhD in Political Science at the Maxwell School of Syracuse University and MA in National Security Affairs at the U.S. Naval Postgraduate School. He can be contacted at yjhnavy3@hanmail.net.
Erik French is a PhD Candidate in Political Science at the Maxwell School of Syracuse University, an adjunct instructor at American University’s School of International Service, and a young leader with Pacific Forum CSIS. He can be contacted at edfrench@syr.edu. Twitter: @Erik_D_French.
Image: The Ohio-class ballistic missile submarine USS Tennessee returns to Naval Submarine Base Kings Bay, Georgia in this February 6, 2013 handout photo. REUTERS/Mass Communication Specialist 1st Class James Kimber/U.S. Navy/Handout via Reuters

コメント

  1. 今の時代に韓国にとって原潜が必要なのかとも思いますね。
    通常動力の弾道ミサイル潜水艦で充分なのでは?

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