スキップしてメイン コンテンツに移動

そうりゅう級最終型が搭載したリチウムイオンバッテリーに注目が集まる


Japan’s Got a Stealthy New Submarine (With Some Very Interesting 'Batteries')

by David Axe 

2019年11月6日、日本で進水した潜水艦は従来型と異なるバッテリーを搭載し、潜航時の行動半径が拡大する。
川崎重工業がそうりゅう級ディーゼル電気推進攻撃型潜水艦とうりゅうを神戸で進水させた。全長275フィートの同艦はそうりゅう級12隻の最終艦であるとともに、姉妹艦おうりゅうに続きリチウムイオンパッテリーを搭載した。各艦はディーゼル発電機も補助動力用に備える。
そうりゅう級の潜航時最大速力は20ノット、浮上時は12ノットとされる。艦首533ミリ発射管6門から国産89式大型魚雷の他、ハープーン対艦ミサイルも発射できる。
とうりゅうは海上公試を経て海上自衛隊に早ければ2021年3月に編入される。日本は潜水艦19隻を運用中で、今後は22隻まで増強し中国の潜水艦増強に対抗する。
とうりゅうが搭載する新型バッテリーで哨戒期間が長くなるが、リスクもある。「リチウムイオンバッテリーというとスマートフォン、ノートパソコン他消費者向け製品でおなじみです」とH.I.サットンがフォーブスに寄稿している。
出力密度で従来型バッテリーを凌ぎ、小型化が可能となり、形状の自由度が高いため艦内におさまる。それでも潜水艦での普及は迅速とは言い難い。
それには理由がある。サムソンがギャラクシーノート7で苦しんだようにリチウムイオンバッテリーは発火しやすい。バッテリー発火が潜水艦で発生すれば直ちに深刻な事態となる。直近ではロシアのエリート潜水艦乗組員14名がバッテリー区画の火災で死亡している。
ただしこの事故は従来型で安全度が高いと言われる鉛バッテリーの場合だ。日本はリチウムイオンバッテリーの安全度を担保して洋上に出動させる方策を見つけたにちがいない。
潜水艦用の新型バッテリー開発では日本以外に、韓国も2020年代初頭の就役をめざす新型潜水艦にリチウムイオンバッテリー搭載を企画している。KSS-IIIバッチIとして3隻の建造が予定され、初号艦は2018年9月に進水している。
韓国の新型潜水艦は魚雷の他、垂直発射管を備え、対地攻撃用巡航ミサイルを発射する。同艦の潜航時最大速力は20ノットになる。
韓国は民生部門に続き潜水艦建造でもリチウムイオンの利点を活かしたいとする。だがリチウムイオンバッテリー技術があっても日本はオーストラリア向け潜水艦建造案件を受注できなず、オーストラリアはフランス案を採択した。
台湾は日本からの技術援助を期待している。同国は1980年代の旧型艦の更新にむけ苦しんでいる。台湾は潜水艦戦での遅れを自覚しており、米国、日本他の技術支援が必要と痛感している。
台湾政府が予算全額を計上すれば、海外技術を応用した潜水艦建造が始まり、台湾海軍の新世代潜水艦1号艦は早ければ2026年に就役する。
日本は次世代潜水艦用バッテリー開発に取り組んでおり、さらに技術面で進展が生まれそうだ。リチウムイオンバッテリーの改良により、ディーゼル発電機が不要となる潜水艦を日本が建造するようだ。
日本が進める次世代艦29SSはリチウムイオンバッテリーのみを搭載するとサットンは報じている。■

David Axe serves as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad.

コメント

  1. バッテリーのみなんてホントかね?
    海中充電設備でも造るんだろうか?

    返信削除
  2. ぼたんのちから2019年11月18日 15:14

    「そうりゅう」型のAIPと鉛バッテリーを取り外し、リチウムイオンバッテリーに置き換えると、鉛バッテリーの場合の倍以上の潜航期間と速度を得ることができるだろう。
    リチウムイオンバッテリーの容量と充放電速度が十分大きく、それに見合った推進装置を搭載すると、短時間にしても原潜の速度と同等か、越える速度を得られる可能性があり、そうなると原潜の価値を大きく減ずることになるかもしれない。
    また、現在、国策で行っている全個体電池が近い将来実用化され、リチウムイオンバッテリーの能力と安全性を凌駕するものと見込まれている。
    そうなると、原潜の優位はほとんど無くなる可能性さえある。高性能バッテリー潜水艦は、深海に潜み、ターゲットの原潜を見つけると、有利な位置から原潜を越える高速を用いた機動で一方的に攻撃できるかもしれない。原潜は、一度捕捉されたら、それで運命が尽きることになるかもしれない。
    海自が将来建造する、様々なテストを行う潜水試験艦を持つ目的は、上記のような技術の進歩が著しく、それを実用化するためと考察する。

    返信削除
  3. 全個体電池はリチウムイオンバッテリーエネルギー密度で2倍、重量比出力で3倍以上程度は見込まれるようですね。
    鉛電池時代の潜水艦と比べ電池容量で8倍、出力では10倍以上が見込まれそうじゃないですか?
    ということは速力では原潜以上の可能性あるかな。
    でも、速力20ノットだと数時間~10時間程しかバッテリーもたないのですかね?
    やはりまだ、
    原潜は見つかってからが勝負、ディーゼル潜は見つからたら最後ということですかね。
    まあ、相手が潜水艦同志の場合と、哨戒機も含む、更に駆逐艦等艦船も含むケース、作戦海域の場所等によって違うのでしょうが・・・

    返信削除
    返信
    1. ぼたんのちから2019年11月22日 0:38

      十分な電力を持つ通常動力潜水艦は、今までの鉛電池の通常動力潜水艦の時代を過去のものにするでしょう。全固体電池が装備されれば、海中に潜む期間が2ヶ月を越えることも可能になるだろうと考えます。
      全固体電池は、容量のみならず、充放電速度が大きく、それに見合った推進装置ならば原潜の速度を越え、さらにその速度をある程度維持することも可能となるかもしれません。また、攻撃に有利な位置への移動や、原潜の攻撃をかわす速度を得られるかもしれません。
      全固体電池潜水艦の戦術は大きく変わることはなく、海中に潜み、目標の接近を待つことになるでしょう。しかし、待機の期間と目標を見つけた後の戦術が大きく変わると推定します。

      削除
  4. 原潜より速くなるとか本気で言ってるんです?
    原潜は36~40ノットでるとされてる現代戦闘艦艇最速の艦種ですよ?

    速度が2倍になると抵抗は四倍になるわけで原子炉のエネルギーなしでは実現は不可能です。

    返信削除
  5. 通りすがり2019年11月22日 0:13

    全固体電池に否定的な意見もあるようで、、、
    https://blog.evsmart.net/electric-vehicles/solid-state-battery-mr-amazutsumi-interview/

    ディーゼル機関に戻ることは無いでしょうけど、バッテリー潜水艦の潜航時間や水中速度が原潜を凌駕するのはちと難しいように思います。尤も、Material Informatics等の進展で、将来的に革命的な電解質材料が発明される可能性は否定できませんが。

    返信削除
  6. リチウム電池でも問題になったのが軽量化によるバラスト不足。全個体電池でも問題になる。軽くなりすぎると潜れない。

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

日本の防衛産業が国際市場でプレイヤーになれるか試されている。防衛面の多国間協力を支える産業が真の国際化を迫られている。

  iStock illustration CHIBA, Japan —  インド太平洋地域での中国へのヘッジとして、日米含む多数国が新たな夜明けを迎えており、軍事面で緊密化をめざす防衛協力が進む 言うまでもなく日米両国は第二次世界大戦後、米国が日本に空軍、海軍、海兵隊の基地を設置して以後緊密な関係にある。 しかし、日本は昨年末、自国の防衛でより積極的になることを明記した新文書を発表し、自衛隊予算は今後10年間で10倍になる予想がある。 政府は、新しい軍事技術多数を開発する意向を示し、それを支援するために国内外の請負業者に助けを求める。 日米両国軍はこれまで同盟関係を享受してきたが、両国の防衛産業はそうではない。 在日米国大使館の政治・軍事担当参事官ザッカリー・ハーケンライダーZachary Harkenriderは、最近千葉で開催されたDSEIジャパン展示会で、「国際的防衛企業が日本でパートナーを探すのに適した時期」と述べた。 日本の防衛装備庁の三島茂徳副長官兼最高技術責任者は会議で、日本が米国ならびに「同じ志を持つ同盟国」で協力を模索している分野を挙げた。 防衛省の最優先課題のひとつに、侵略を抑止する防衛システムの開発があり、極超音速機やレイルガンに対抗する統合防空・ミサイル防衛技術があるという。 抑止力に失敗した場合を想定し、日本は攻撃システムのアップグレードを求めており、12式地対艦ミサイルのアップグレード、中距離地対空ミサイル、極超音速兵器、島嶼防衛用の対艦ミサイルなどがある。 また、高エナジーレーザーや高出力マイクロ波放射技術など、ドローン群に対抗する指向性エナジー兵器も求めている。無人システムでは、水中と地上無人装備用のコマンド&コントロール技術を求めている。 新戦略の発表以来、最も注目されている防衛協力プログラムは、第6世代ジェット戦闘機を開発するイギリス、イタリアとの共同作業「グローバル・コンバット・エアー・プログラム」だ。 ハーケンライダー参事官は、日本の新しい国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛予算の増強は、「時代の課題に対応する歴史的な資源と政策の転換」につながると述べた。 しかし、数十年にわたる平和主義的な政策と、安全保障の傘を米国に依存してきた結果、日本の防衛産業はまだ足元を固めらていないと、会議の講演者は述べた。 三菱重工業 、 川崎

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックIIAとSM