2026年7月2日木曜日

米空軍T-7Aレッドホーク開発を巡る苦悩②―データ権を巡るボーイングとの対立は深刻。その他新型機材にも波及する争点になりかねない

 

T7 graphicデジタル要素を加えたT-7レッドホーク。(『Breaking Defense』作成、元画像:DVIDS/Getty)

T-7のデータ権利をめぐり争うボーイングと米空軍

‘High risk’ sustainment: How Boeing and the Air Force battled over T-7 data rights


情報筋はT-7レッドホークの維持管理で空軍が「多大な苦戦を強いられるだろう」と本誌に語った

https://breakingdefense.com/2026/06/high-risk-sustainment-how-boeing-and-the-air-force-battled-over-t-7-data-rights/

ワシントン発――T-7レッドホークの量産承認を目前に控え、空軍は新型練習機が直面する重大な問題を密かに評価していた。本誌が入手した空軍文書によると、同機の適切な維持管理で空軍が困難をきたす可能性があるという。

2026年3月のT-7の量産決定に向けた内部プレゼンテーションの一部として空軍文書は、同機の維持管理を「高リスク」と評価している。維持管理とは本質的に、プラットフォームの基盤となる兵站支援を指すが、T-7の場合、空軍には整備に必要な技術データがなく、これがレッドホークの契約をめぐるボーイングとの緊張の原因となっている。さらに、部品不足のため問題はさらに複雑化している。

言い換えれば、同計画に精通するある情報筋が本誌に語ったように、空軍は「この航空機の維持に多大な苦労を強いられることになる」のだ。また、空軍当局者が認めたように、必要なデータを入手するためには、レッドホークの納入に関するボーイングとの既存の92億ドルの契約に加え、納税者にさらなる負担がかかる可能性が高い。

問題の核心は、T-7の契約において同社に何が求められているかをめぐる、空軍とボーイング間の対立にある。関係修復を図るため、空軍は新たな「アクティブ・マネジメント」戦略を導入した。同戦略について、空軍当局者は、様々な問題を解決するための協力関係を強化するものだと説明している。

これは、T-7レッドホークに関する3回シリーズの調査記事の第2回である。

この状況は、T-7に限ったことではない。近年、政府は購入した装備を独自に維持管理することを重視するようになり、その結果、設計図面、材料リスト、主要部品に関する情報といった技術データの提供要件がより重視されるようになった。多くのデータを求める傾向は、ペンタゴン内の数多くのシステムに及んでおり、稼働率の低さで悪名高いF-35のような主要プラットフォームもその例だ。

政府による技術データの要求は、請負業者との間で緊張を引き起こし、それが公の場に露呈することもある。しかし、そうした意見の相違やその結果が、空軍の内部資料で特定され、内部関係者によって説明されているほど詳細に明らかになることはめったにない。

本誌インタビューで、空軍の訓練担当プログラム執行官であるロドニー・スティーブンスは次のように述べた。「本プログラムは契約上のデータ義務の履行に関して重大な課題に直面していたが」、昨年実施された新たな「アクティブ・マネジメント戦略」により、当局者は「新たな前進の道」を切り開くことができた。

「アクティブ・マネジメント戦略を通じて、現在、双方が協力して、必要なすべての技術データが確実に提供されるよう取り組んでいる。このパートナーシップは、実戦訓練と長期的な成功に向けたプログラムの体制整備において、その有効性を証明しつつある」。

詳細な質問リストに対し、ボーイングは次のように回答した。「この能力を戦場に投入する操縦士にできるだけ早く提供できるよう取り組んでいるが、安全性や品質は犠牲にできない。安全性は、ボーイングおよびT-7Aプログラムにとって最優先事項である。

「契約締結後、ボーイング社のT-7Aレッドホークプログラムは、350回以上の試験飛行を通じて、344時間以上の飛行試験時間を安全に積み重ねてきた」と同社は付け加えた。「米空軍との協力を継続する中で、T-7プログラムの積極的な管理アプローチにより、少量初期生産に先立ち、生産準備の整った構成を空軍に提供することが可能となり、将来のリスクをさらに低減し、この重要な能力の提供に向けた道を加速させることができます。」

このプログラムに詳しい政府筋は、本誌に対し、「空軍は、ボーイングに航空機の納入を迫るという点で、実に素晴らしい仕事をしている」と語った。「しかし、裏側もあり、維持管理体制の整備に向けた取り組みが不十分だ。

「これは最高に素晴らしい機体であり、任務において大いに活躍するだろうが、もし維持管理に悩まされることになれば、維持管理や即応率の維持に苦戦している他の多くのプログラムと同じ運命をたどることになるだろう。それが本当に腹立たしい」と、同情報筋は付け加えた。

欠落している詳細

大半の大型防衛調達案件と同様に、主契約者ボーイングは兵器システムを設計し、その構成部品を統合するものの、複雑なサプライヤーネットワークから供給される部品多数に依存している。空軍文書や情報筋によると、こうした契約関係を通じて、ボーイングは重要なデータに関する要件が確実に遵守されるよう徹底していなかったという。

本誌が入手した2025年8月の空軍内部プレゼンテーション資料は、ボーイングが主張する「不適合」が、航空機の耐空性に影響を及ぼした重要な安全項目を含む、幅広い問題に与えた影響を説明している。重要な安全項目と同様に、このプレゼンテーションによると、ボーイングは、空軍が請負業者に依存せず(つまり、自前で)航空機を維持するために必要となる技術要件を、サプライヤーに「下流へ展開」しなかったという。

「 「T-7契約では、航空機の自主的な維持管理に必要なデータ権利が求められていたが、ボーイングは必要なデータのごく一部しか提供していない」と、このプログラムに直接関与する情報筋は述べた。この情報筋も、他の関係者と同様に、本記事では匿名を条件として取材に応じた。

具体的には、2026年3月のプレゼンテーションによると、空軍は中間整備およびデポ整備に関するデータが不足しており、これは予備部品の不足と併せて「高リスク」と評価されている。しかし、同プレゼンテーションでは、来年から開始予定の運用整備については「低リスク」と予測している。これは本質的に、飛行場で実施可能な維持管理を指している。

データ不足に対処するため、同関係者は、空軍がサプライヤーと直接契約を結ぶ必要があると述べた。このプロセスには数年と数億ドルを要すると推定されるほか、整備廠の立ち上げも遅れることになるという。

「2018年以降の時間がすべて無駄にされた。今、空軍はデータに関するRFP(提案依頼書)を発行し、サプライヤーと協力して、個別契約をそれぞれ策定しなければならない」と同氏は述べた。時間とは、空軍がボーイングにT-7の競争入札契約を授与してからの年数を指している。

具体的な費用見積もりは示さなかったものの、スティーブンスは、2018年に締結された契約が当該要件を十分に明記していると仮定した場合に限り、空軍が同機の技術データに対してより多くの費用を費やすことになる可能性を認めた。より精緻な契約書を作成できた可能性はあると認めつつも、スティーブンスは、データ権利などの問題の解決で、場合によっては法的措置を通じて請求を追求することは、プログラムにとって最善の利益にならないと主張した。

「(2018年の契約において)政府として要件についてもう少し具体的に明記できたのではないかという点については、議論の余地があるだろう」とスティーブンスは述べた。「その点について議論を続けるか、あるいは法的なアプローチを取って裁判所がどう判断するか、誰が正しく誰が間違っているかを確認するよりも、我々は前進するために、すでに締結されているアクティブ・マネジメント契約に軸足を移したのだ。」

スティーブンスはさらに、T-7は米国法で「中核物流プラットフォーム」に指定されていないと指摘した。同法では、国防総省に対し、国防上不可欠なシステムについて、政府が所有・運営する整備体制を維持することが義務付けられている。当局者は、「特定の部品を有機的に修理することにビジネス上の妥当性があるかどうかを判断する」ために取り組んでいると彼は述べ、さらに「情報が明確になり次第、T-7が耐用年数を通じて所定の稼働率を達成できるよう適切に維持されるよう、製品支援戦略を適宜更新していく」と付け加えた。

空軍は自前整備の確保に「全面的に取り組んでいる」と同氏は続け、同プログラムは「現在、初期訓練および運用に必要な技術データを受け取っている」と指摘した。空軍の「長期戦略」には、「主要サプライヤーとの直接的な政府間関係を確立する」と同時に、「最高のコストパフォーマンスで最高水準の即応態勢を確保する」ことが含まれるとスティーブンスは述べた。

「これは最終的には『両者の長所を兼ね備えた』モデルとなる可能性がある。すなわち、米空軍の整備要員が日常的な整備の大部分を担当しつつ、高度に専門化された機能は産業界と提携する柔軟性を維持する」と同氏は付け加えた。「今後の支援契約に関するいかなる決定も、戦闘員と納税者にとって最も効果的かつ効率的な方策に基づいて行われる。」

情報筋によると、同機の維持管理の見通しが不透明であることは、同機を量産段階に移行させる最近の承認と相反する状況だという。彼らは懸念を裏付けるため、生産ペースを支える適切なインフラが整備されているかを検証する、同機の製造準備レベル(MRL)に関する内部評価を指摘した。2025年8月のプレゼンテーションによると、一部のMRL指標のスコアは8を下回っており、この数値は通常、量産と関連付けられている。(MRLは10点満点)

スティーブンスは、特定のサブ基準、特に同機の供給に関する項目でMRLスコアが8を下回っていたことを認めたが、国防総省の用語で「マイルストーンC」と呼ばれる量産承認には、スコアが8である必要はないと主張した。「フルレート生産に必要な水準に到達できるよう、順調な軌道に乗せる製造成熟化計画が不可欠だ」と彼は述べた。

「スコアが低かった製造評価分野、主にサプライヤー関連については」と彼は述べ、製造成熟化計画により「プログラムに必要な十分な製造品質を確保しつつ、想定される生産ペースを満たせる段階に到達できるだろう」と語った。

さらにスティーブンスは、同機の生産承認が段階的アプローチで行われていることを強調し、これにより当局は並行開発に関連するリスクを軽減することも可能になると述べた。

データをめぐる論争

データをめぐる権利は、企業の知的財産の利用を伴う可能性があるため、政府プログラムで厄介な問題となることがある。企業は競争優位性を維持するため、自社の知的財産に関する情報開示に慎重であり、投資収益を期待して自社資金を投じている。その収益は、航空機のような兵器システムの長期契約において通常最も収益性の高い部分となる維持管理段階で得られることが多い。

軍当局は、特に請負業者による支援が困難となる戦時シナリオにおいて、独自に整備を行うにはデータ権利Data Rightsが必要だと強調している。また、当局はそれが経費削減につながると主張し、国防総省の兵器システムに対する、当局者が「修理権」と呼ぶものの必要性を訴えている。議員たちもこの問題に注目しており、昨年、立法交渉の過程で同様の条項が削除されたことを受け、一部議員は再び修理権に関する条項を支持している。

バイデン政権で空軍調達局長だったアンドルー・ハンターは、契約締結時点でどのような情報を必要とするかを当事者が正確に把握していない場合があるため、データ権利が問題となることがあると説明した。

「データ権利の提供という契約上の規定は、契約締結で署名される。そのため、最初の段階では、具体的にどのデータ権利を指すのかを明確に指定することはできない。サブシステムがまだ流動的な可能性があり、多くの場合、最終的に争点となる重要なデータはサプライヤーから提供されるものだからだ」と、ハンターは最近の本誌インタビューで語った。

「そこで、政府はサプライヤーに『政府に提供するために、貴社の知的財産権(IP)が必要だ』と伝えなければならない。これが、まさに困難を招く理由となる」と彼は付け加えた。「多くの場合、具体的にどの知的財産権が対象となるかという詳細が明記されていないため、後になって議論や論争、交渉の対象となってしまう」

現在も弁護士として活動しているため匿名を条件に本誌に語った連邦契約の専門家は、ボーイングがT-7入札に参加した時点でサプライヤー基盤が固まっていなかった可能性があり、それが技術データの取得希望を複雑にしているのではないかと推測した。

「おそらくボーイングは、航空機の技術データを取得することに関して、そのようなレベルのリスクを負うような約束をするべきではなかったし、契約を結ぶべきではなかったのだろう」と同上専門家は述べた。「多くの場合、企業は単に『とにかく契約を勝ち取ろう』と考えてしまうのだと思う」

この契約専門家は本誌に対し、あらゆる事情を考慮すれば、欠落しているデータを入手するために空軍がサプライヤーと直接関係を築くことは「理にかなっている」と語った。是正措置に関しては、この関係者は、政府には一般的に、支払いの変更や、過去の不適切な実績に対する将来の契約入札への不利益措置といった執行手段が利用可能であると指摘した。それでも、「サプライヤーの数が限られている場合、過去の実績は必ずしもそれほど効果的ではない」と同氏は述べた。

また、この関係者は、ボーイングのような大手プライム請負業者に対処する場合、政府の選択肢はさらに限られる可能性があると指摘した。

「これは、大手企業と関わる際に常に直面する問題だ。… 彼らはあまりにも巨大で、重要な単独調達プログラムをあまりにも多く運営している」と同氏は語った。「彼らに厳しい措置を講じる方法はいくつかあるが、『契約を取り上げる』と簡単に言うわけにはいかない。」■


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