スキップしてメイン コンテンツに移動

南シナ海で米軍機材が活発な動きを示している

SCS PROBING INITIATIVE/USN/USAF

軍機がバシー海峡で飛行活動を強化している。同海峡は台湾島南端からフィリピンのルソン島北端の間にあり、戦略的意義がある。米空軍は、フィリピン海から南シナ海を結ぶ上空にKC-135給油機を継続して派遣している。特にP-8Aポセイドン、P-3Cオライオン哨戒機、EP-3EエアリーズII、RC-135V/Wリヴェットジョイント情報収集機材も同地で確認されており、この状況は先月から続いている。
今日だけでもRC-135W一機とKC-135T一機が同地区に飛来した。昨日はEP-3E一機とP-8A三機がバシー海峡周辺を飛んだ。一昨日はP-8A一機、P-3C一機、EP-3E一機、RC-135W一機が時間帯は異なるが来訪しており、KC-135Rが支援にあたった。
RC-135Wは現地時間18:40ごろ南シナ海から離脱しているが、どこから飛来したかは不明だ。KC-135Tは同日10:00ごろに同地で確認されている。
7月8日に海軍のEP-3Eが広州沿岸から50カイリ地点まで近づいた。
7月7日夕刻から7月8日早朝にかけP-8A3機がバシー海峡付近で見つかった。
「米軍が連日南シナ海で3から5回出撃している」とSCS Probing Initiativeが7月7日にツイートした。北京大学がSCS Probing Initiativeを主宰しており米航空部隊の動向に人一倍敏感になのは当然だ。米艦船の追跡もしているが、他国の軍は追跡しない。
6月末から米軍の航空作戦が同地区で活発になっている。まず6月24日に P-8Aが2機、 P-3C一機、RC-135W一機がバシー海峡上空に飛んだ。これと別にP-8A四機、EP-3E一機、RC-135W一機、KC-135二機が7月3日に飛来した。SCS Probing Initiativeは小規模編隊を定期的に追尾しており、二機しかないRC-135Uコンバットセント電子情報収集機の一機も見つかった。
最新の空母山東も加わり人民解放軍海軍が同地区で大規模演習を6月から展開している。
7月に入ると米海軍もニミッツ級空母USS ニミッツ、USS ロナルド・レーガンを南シナ海に移動させ、ここ6年で初の空母2隻体制での演習を始めた。タイコンデロガ級巡洋艦、アーレイ・バーク級駆逐艦以外に潜水艦も監視の目を光らせていたはずだ。各空母の航空部隊が一緒に訓練したほか、米空軍のB-52もルイジアナ州バークスデイル空軍基地から加わり、グアムに着陸し長距離訓練飛行を完了した。
米軍は中国演習を監視する以外に人民解放軍海軍の空母含む艦艇の技術情報を収集する目的もあったはずだ。中国軍が米軍の動きにどのように対応するかを見れば、情報収集の可能性がさらに広がる。
連日飛来した米軍機には各種情報の収集機能があったはずで、P-8Aや P-3Cには高精度映像を電子光学あるいは赤外線を利用して撮影する装備があり、EP-3Eと RC-135にも別の情報収集機能がある。P-8Aには高度のSIGINT能力があり、レーダー画像収集機能もP-3C同様についている。
異例の空母2隻体制演習への中国の反応も情報収集上でユニークな機会となる。空母2隻が南シナ海で作戦運用すればISR活動も活発となる。相手側の潜水艦を空母群に接近させないためにもP-8AやP-3Cの対潜能力が必要となる。
米軍としては各センサーを作動させる対象には事欠かないはずだ。バシー海峡は南シナ海から太平洋に抜ける重要な通行路となっており、中国潜水艦も利用する。PLANは新型094型晋級弾道ミサイル潜水艦2隻の供用を開始し、同級は6隻となった。
094型各艦は海南島の楡林海軍基地Yulin Naval Baseを母港にしている。5月には特殊改装したP-8AがAN/APS-154高性能空中センサーレーダーポッドを搭載し海南島付近を飛行するのが見つかっており、楡林基地も観測対象のはずだ。中国潜水艦特に弾道ミサイル潜水艦は海南島を出港後にルソン海峡まで移動し、フィリピン海を経由し太平洋へ転進している。このため同海域は潜水艦の動向を掴む意味で重要地点となっており、同時に動きを封じる地点でもある。
 @CVVHRN
AN/APS-154 高性能空中センサー(矢印)を搭載した P-8A
中国潜水艦部隊は新型艦の投入もあり近年活発になっており、米軍や同盟国部隊の重大関心対象となっている。6月には日本政府が中国潜水艦が奄美大島と横当島の間の国際海峡を潜航したまま通過したと異例の発表をしていた。
すべて米中関係がこじれたまま背景があり、COVID-19の世界的流行も影を落としている。中国政府は香港に厳しい保安法を課し米政府も香港との関係を再構築を迫られている。中国指導部は台湾に対しても近年になく厳しい態度を示しており、台湾政府が中国と距離を取ろうとしているのもその一因だ。
米国は台湾と正式な外交関係はないが、台湾を同盟国扱いしており、中国による圧力に対して航行の自由作戦(FONOPS)を台湾海峡でも実施し、航空機艦船を投入している。6月はじめには海軍のC-40A人員輸送機が台湾島上空を横断飛行する異例な動きを見せた。同月末には米陸軍がグリーンベレーが台湾軍と共同演習する映像を公表した。
今回対象の地区で近い将来に地政学面で状況が好転の兆しはないので、米軍活動が強化される構図が数週間数ヶ月にわたり目撃されそうだ。■
この記事は以下を再構成したものです。

American Surveillance Aircraft Have Been Flooding Into The Airspace South Of Taiwan (Updated)

For the past three weeks, there has been a big increase in U.S. military air activity in the Bashi Channel between Taiwan and the Philippines.

BY JOSEPH TREVITHICKJULY 10, 2020
Contact the author: Joe@thedrive.com

コメント

  1. ぼたんのちから2020年7月14日 14:40

    人民解放軍海軍(PLAN)は8月に南シナ海で大規模な演習を予定し、上陸演習も行われると予想されている。
    記事のように米軍機の活動が活発化し、これに加えて空母打撃軍2個が南シナ海で演習を行い、異例とも思えるプレゼンスを誇示しているのは、1996年の台湾海峡危機を思い出させ、PLANが何らかの軍事的冒険を計画し、米軍が抑止しようとしているように見える。
    また、ポンぺオは、「南シナ海で中国政府が主張する権利は、完全に不法なものであり、その掌握を目的とした嫌がらせの活動も同じく完全に不法だ」と今までより踏み込んだ声明を出し、現状変更に対抗する強い姿勢を示した。
    中国は、南シナ海で他国が支配する島嶼を奪取する計画を持っている可能性がある。
    その背景に、世界に武漢肺炎が流行し、現在ならば中国が世界で最も強力であり、ごり押しに他国は抵抗できないと考えているのかもしれない。戦狼外交は手始めで、一国二制度の破壊やインドとの紛争は、増長した中国の世界戦略の一環かもしれない。次は南シナ海か台湾で問題が起きる可能性が高まっているのかもしれない。

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

日本の防衛産業が国際市場でプレイヤーになれるか試されている。防衛面の多国間協力を支える産業が真の国際化を迫られている。

  iStock illustration CHIBA, Japan —  インド太平洋地域での中国へのヘッジとして、日米含む多数国が新たな夜明けを迎えており、軍事面で緊密化をめざす防衛協力が進む 言うまでもなく日米両国は第二次世界大戦後、米国が日本に空軍、海軍、海兵隊の基地を設置して以後緊密な関係にある。 しかし、日本は昨年末、自国の防衛でより積極的になることを明記した新文書を発表し、自衛隊予算は今後10年間で10倍になる予想がある。 政府は、新しい軍事技術多数を開発する意向を示し、それを支援するために国内外の請負業者に助けを求める。 日米両国軍はこれまで同盟関係を享受してきたが、両国の防衛産業はそうではない。 在日米国大使館の政治・軍事担当参事官ザッカリー・ハーケンライダーZachary Harkenriderは、最近千葉で開催されたDSEIジャパン展示会で、「国際的防衛企業が日本でパートナーを探すのに適した時期」と述べた。 日本の防衛装備庁の三島茂徳副長官兼最高技術責任者は会議で、日本が米国ならびに「同じ志を持つ同盟国」で協力を模索している分野を挙げた。 防衛省の最優先課題のひとつに、侵略を抑止する防衛システムの開発があり、極超音速機やレイルガンに対抗する統合防空・ミサイル防衛技術があるという。 抑止力に失敗した場合を想定し、日本は攻撃システムのアップグレードを求めており、12式地対艦ミサイルのアップグレード、中距離地対空ミサイル、極超音速兵器、島嶼防衛用の対艦ミサイルなどがある。 また、高エナジーレーザーや高出力マイクロ波放射技術など、ドローン群に対抗する指向性エナジー兵器も求めている。無人システムでは、水中と地上無人装備用のコマンド&コントロール技術を求めている。 新戦略の発表以来、最も注目されている防衛協力プログラムは、第6世代ジェット戦闘機を開発するイギリス、イタリアとの共同作業「グローバル・コンバット・エアー・プログラム」だ。 ハーケンライダー参事官は、日本の新しい国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛予算の増強は、「時代の課題に対応する歴史的な資源と政策の転換」につながると述べた。 しかし、数十年にわたる平和主義的な政策と、安全保障の傘を米国に依存してきた結果、日本の防衛産業はまだ足元を固めらていないと、会議の講演者は述べた。 三菱重工業 、 川崎

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックIIAとSM