Su-27SM、Su-30SMはともに頑丈な機体で長期間供用に耐える。両機とも製造は安価にでき、性能は新型Su-35と比べても遜色ない。
ロシア戦闘機ではSu-35が最高性能機とされるが、ロシア空軍の機材は大多数が旧式各型だ。国際戦略研究所(IISS)の「2018年度版軍事力バランス」ではロシアは旧型フランカー220機近くを運行し、Su-35Sが70機なので3倍の規模だ。「旧型」フランカーと言っても多様な機種があり、Su-27原型以外に改修型SMの他、複座型もある。だが旧型フランカーは今でも威力があるのか。一部はSu-35Sの性能に匹敵するのだろうか。
まずIISSが50機あるとする初期フランカーとは1985年に供用開始したSu-27Sのことだ。その他、複座型Su-27UBが10機ある。各機のレーダーはあまりにも旧式で現在の戦闘機と比べ見劣りがする。
Su-27Sだけがセミアクティブレーダーホーミングミサイルを発射できるが、R-27ミサイルの飛翔中は機首を標的に向けたままにする必要がある。R-27ERは射程が伸び、中間誘導機能がつくものの同機は最新の空対空戦術で用いるアクテイブレーダーホーミングミサイルは使用できない。
ただし近接距離でのドッグファイトとなれば機体の頑丈さとヘルメット搭載視野表示装置、さらにR-73ミサイルが強みを発揮する。オフボアサイト対応可能な赤外線ミサイルロッキングは登場当初こそ革命的と言われたが、その後登場の米機にはAIM-9Xと共用ヘルメット搭載照準システム(JHMCS)がつき、Su-27Sより幅広い角度で敵機をロックアップし撃破できる。
フランカーで初めて多任務機になったのはSu-27SMで47機ある。近代化改修機材として2003年登場した。近代化は大部分がエイビオニクス改修で既存装備の性能を引き上げた。
地図機能が追加され、誘導空対空兵装にはKABレーザー誘導爆弾、Kh-29型ミサイルが加わった。アクティブレーダーホーミング方式のR-77ミサイルも導入された。エンジンを新型に切り替える近代化改修が2007年から始まっている。
改修によりSu-27SMは真の多任務機となり、低費用で応急しのぎの改修を行ったと言える。さらに本格的改修を行ったのがSu-27SM3で14機が供用中だ。同機は近代化に加え、SM3標準で作り込まれた機体で、中国用に想定していた機体から製造したと解説する向きがある。Su-27SM3はそれまで輸出用フランカーだけが使っていた技術多数を採用している。
Su-27SM3には強力なイルビスEレーダーが搭載され、Su-35Sと共通する。新型エンジンは推力を上げ、航続距離が伸びた。ハードポイントは追加して合計12点になった。機体剛性を高め3トンに及ぶ追加装備の運用を可能にした。
コックピットもSu-27SM3で大幅に近代化し、多機能ディスプレイ4面とし、Su-27各型の古臭いダイアル式計器盤と好対照だ。さらに新型通信装置で安全に通信できるようになった。
Su-27単座機の流れではSu-27SM3が最高性能の機体だ。ロシアにはさらに高性能の複座型Su-30があり、それはSu-30M2とSu-30SMだ。
Su-30各型はほぼSM3に匹敵する高性能戦闘機だ。空対地兵装を搭載し、MFDをコックピットに導入し、エンジンは改良型で推力偏向効果により一定の条件では操縦性がさらに高まった。Su-30でも兵装用ハードポイントが12箇所あるが、イルビス-Eレーダーは積まず、長距離交戦能力は劣る。
Su-35Sは無論、こうした機材と一線を画す機体で、推力偏向性能を高めたエンジン双発、イルビス-Eレーダー、新鋭コックピットがあり、ロシアの空対地兵器すべてを運用できる。
各型の近代改修には利点もある。Su-27SM3はSu-35よりずっと安価ながら事実上同じ水準の長距離戦闘能力を有する。Su-30はパイロット間で負担を分担し、対地攻撃に威力を発揮するだろう。
ひとつ問題なのは新設計のSu-30M2、SM、Su-27M3はフランカーの半分を占めるにすぎず、残る半分がSu-27S、SM、UBの各型で性能は相当落ちる。ただしこれも時間がかかるが解決に向かうだろう。新型Su-57の供用がはじまっているからだ。■
この記事は以下を再構成したものです
コメント
コメントを投稿
コメントをどうぞ。