国防情報局が中国が地上配備レーザー兵器の運用を2020年に開始しそうだと2019年1月警告していた。低地球周回軌道上のセンサーを対象にし、2020年代中ごろには高出力装置で非光学衛星に損傷を与える能力が生まれるとした。
この脅威はどの程度現実なのか。中国にレーザー基地が5箇所あることがわかっている。そのうち新疆施設に建屋が5つあり、ひとつは衛星追尾用、その他三棟は衛星センサーの妨害または破壊用と推測される。新疆施設がその他4箇所と同様なら各施設は航空攻撃の前に脆弱となる。
中国にはこれ以外に衛星レーザー測定基地数カ所があり、衛星軌道を観測しスペースデブリの追跡にも使うが、米国等の衛星センサーに損傷を与える能力もある。
世界に衛星レーザー測定基地が50箇所あるが、中国には固定基地が上海、長春、北京、武漢、昆明の5箇所ありこれ以外に移動式観測基地2個を運用している。
上海施設は2.8ワットと低出力レーザーを運用する。その他施設の出力も同程度あるいは低いと見られる。上海には60ワットレーザーもありデブリ測定に投入している。計算上では1ワットのレーザーでセンサーに永久的損傷を与える可能性は1000分の1だが、40ワットだとおよそ2倍になる。可能性は低いように聞こえるが、これから増加する。
近い将来に中国は米国・同盟国の画像衛星の妨害を重視するはずだ。ただ幸いにも解像度10センチ以上の衛星の光学部分に損傷を与えようとすると撮影場所から約10キロ地点からレーザー発射の必要がある。
センサーに損傷を与えようとするレーザー攻撃に米国はどう対応すべきか。まず撮影対象の10キロ範囲に固定式衛星レーザー観測施設やレーザー施設が何箇所あるのか把握が必要だ。
次に、レーザー防衛体制を有する対象の撮影リスクを試算すべきだ。センサーが損傷を受ける可能性と撮影成功の効果を比較する。検討から次の提言が出てくるはずだ。
- 平時に撮影回数を極力増やす。有事にセンサーが損傷を受けると想定するため
- 画像アップデート回数を減らす。撮影回数が減れば被害を受ける回数も減るため
- 低解像度画像に切り替える。低解像度センサー衛星は安価かつ多数を運用できる
三番目に、米国は商業衛星や専用軍事衛星を平時のみならず危機発生時や有事にも活用すべきだ。画像撮影手段が各種あれば、一部センサーがレーザー攻撃を受けても損傷は限定できる。敵も攻撃を初期段階で実施できなくなる。
最後に、米国は2010年の新戦略兵器削減条約を延長すべきだ。条約は2021年2月失効するが、検証用の国家技術手段(センサー搭載衛星を含む)への妨害は禁止している。ロシアに加え中国も交渉に呼び込むため、この種の妨害手段の禁止を中国に合意させる必要がある。
米政府には多くの課題がある。今は中国レーザーは米国が画像収集する対象から10キロ以内に配備する必要がある。2020年代中頃に中国が強力なレーザーを実用化すれば、中国は低地球周回軌道上の衛星を連日狙うことが可能となる。その結果、米国は各衛星の耐久力を引きあげ、外装を強化するか、中国レーザー基地そのものを破壊する手段の準備が必要となる。
中国のレーザー測定基地と合わせ高出力移動式装備も監視対象とすべきだ。移動式装備は軍民両用となる可能性があり、禁止は不可能だ。代わりに米国は同盟国と外交手段で敵対行動を困難にすればよい。
解決策として移動式レーザー装備はすべて登録する国際制度が考えられる。運用国が移動予定を事前申告し、移動をリアルタイムで伝えることにすればよい。■
この記事は以下を再構成したものです。
Op-ed | US satellites increasingly vulnerable to China's ground-based lasers
by Brian G. Chow and Henry Sokolski — July 10, 2020
Brian Chow is an independent policy analyst. Henry Sokolski is executive director of The Nonproliferation Policy Education Center in Arlington, Virginia.
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