大統領専用車はテロ攻撃、化学攻撃に耐えるモンスターと言われていますが、専用機もその延長でB-21を改造すれば良いとの大胆な意見です。ただし、非軍事用途だと証明せずに各国の空港に乗り入れできるでしょうか。次代の大統領が「平和主義」なら搭乗に躊躇するのでは。また民生空港ではタラップも使えず、大統領の姿が屈辱的なかがみ込んだ姿で登場すれば大変です。(ここらは機体形状を改修して解決できるでしょう)実現すれば21世紀の大統領専用機らしくなり世界に知れ渡るでしょうが、可能性はどうでしょうか。日本は早々にB777を採用していますが、レガシージャンボのVC-25はまだまだこれからも飛ぶことになりそうですね。
Presidential Bomber? Report Touts B-21 For Air Force One
B-21の「大統領専用爆撃機」が太平洋上空を移行する想像図。
James Drew, Aviation Week
国防アナリストの検討会から米空軍がすすめるボーイング747-8原型とするエアフォースワンのかわりにノースロップ・グラマンB-21ステルス爆撃機の改修案あるいはボーイング737フリートを軍用にする案が浮上した。
- 検討はライト・ウィリアムズアンドケリー(WWK)(コスト管理ソフトウェア・コンサルティング企業)の依頼で、747-8二機ないし三機を軍用仕様の専用機に改修する費用が莫大になるとドナルド・トランプ大統領が問題意識をもっていることを踏まえ、軍用仕様そのものを見直せば費用を大幅に圧縮できると指摘。現時点の要求水準ではエンジン四発、随行員70名以上の収容を求めている。最新鋭航空機が双発でも十分に安全かつ信頼性が高いことを考慮し空軍は代替策を検討すべきであり、ボーイング747-8あるいはエアバスA380しか検討対象にしていない状況を変えるべきと主張。
- 昨年12月にトランプは大統領専用機代替事業(PAR)をこき下ろし、推定32億ドル費用に批判の目を向け「制御不能」とツィッターで述べた。ジェイムズ・マティス国防長官は抜本的見直しで費用削減を求めている。ペンタゴンの再検討では自律運用能力、機内発電容量、空調、残存性ならびに軍用・民生通信能力に中心を置いている。だが機体の変更はないのだろうか。
- WWK報告の主筆ダニー・ラムは報告書ではB-21と737を中心に捉えたと述べる。ボーイング767やエアバス、ボンバルディア、エンブラエルの外国勢も検討したが、ロシア・中国製の機体は対象外。
- 安上がりにするのなら737多数を採用することだ。同機はすでに軍用用途に多数利用されている。このうち737-700が原型のC-40は米海軍、空軍で運用中だ。737はP-8Aポセイドン対潜哨戒機として海軍が飛ばす他、オーストラリア、インド、ノルウェー、英国が運用する。またオーストラリア、韓国、トルコは同機を早期警戒統制機に転用している。ボーイングはE-8C共用監視目標攻撃用レーダー機(STARS)、EC-130Hコンパスコール、RC-135リベットジョイント各機の後継機として737を提案中だ。
- CFM-56-7Bを搭載したC-40B型C型は米空軍では111名までの輸送が可能で、空中給油なしで5,000カイリまで飛べる。つまりアンドリュース共用基地(メリーランド)からフランス、ドイツ、英国、南アメリカ、北アフリカまで一気に飛べる。またトラビス空軍基地(カリフォーニア)で途中燃料補給すればハワイまで飛べるし、日本にも到達できるはずだ。P-8Aは737-800ERXを補強した形で完全装備の場合はそこまで長距離は飛べないが、空中給油装備があり、軍用無線交信データリンク装置をつけ、エアフォースワンとなる747-8の通信能力と遜色はない。
- 「747で必要な装備はすべて737で利用可能」とラムは指摘する。747を軍用に転用すると言っても同機は販売不振で生産中止になりそうな機体だ。「737原型なら必要条件はほぼ全部満足しつつ、安価にできる。737は今後30年間は飛行しているはずだ」
- 737はボーイング商用機で最小で小規模空港でも利用できるが、大型747-8ではそうはいかない。大統領を乗せるための改修内容は多岐に渡るが、海軍が核戦争の際に大陸間弾道ミサイル発射の指令コードを空中から送るボーイングE-6マーキュリーでも早晩後継機が必要となり、指揮命令機能を備えた新型機はオーストラリア、カナダ、ドイツ、日本、英国の各同盟国でも必要とされるかもしれない。
- ラムはより大型の767-2C(米空軍向けKC-46ペガサス給油機の原型)も検討価値がある。「だが民間機737の方が有利」という。
- B-21採用案の中心は安全性だ。ラムは高性能地対空ミサイルが普及しており、「非国家戦闘集団」がエアフォースワンの脅威となると747-8では脆弱だと指摘。
- 「747はレーダーで格好の標的でB-52と同じ大きさに写ります」といい、「B-21はステルス機で核爆発にも耐える重度防御を施しています。機内はかなり窮屈ですが、何と言っても残存性が高い。特に二機、三機を同時に運行する場合です」
- B-21の詳細は極秘扱いだが開発は昨年始めに始まっており、試作各型はその前に制作済みだ。就役開始は2020年代なかばとなる。747-8が現行の747-200B原型のVC-25大統領専用機材に交替するのは「2024年想定」と空軍は説明している。
- 報告書では大統領専用機に爆撃機の転用案を分析するにあたり情報公開の扱いのノースロップB-2スピリット爆撃機を基本にしたとラムは説明。同機の兵装庫他の部分を取り外し、数名の人員輸送用に改装する。B-21は長さ20フィート重量30千ポンドのボーイング性大型貫通弾を搭載する予定で、兵装庫の大きさを推定できた。
- ただし同乗者全員が乗れないため、737およびB-21両案では追加機が残りの政府関係者、軍支援要員や報道陣を運ぶ。最重要ではない要員は大統領専用機から一定の距離を保ち安全を確保した機体から暗号化データリンクで通信を維持できる。
- 大統領用ヘリコプターや装甲リムジンのような大型貨物は今でも軍用輸送機が運んでいる。ボーイングC-17グローブマスター、ロッキード・マーティンC-5ギャラクシーやC-130ハーキュリーズが使われている。空中給油にはボーイングKC-135ストラトタンカー、KC-10エクステンダー、KC-46を使う。
- 国家としての威信を示す意味ではラムは747「ジャンボジェット」では1970年代と同じ効果は挙げられず、747そのものが間もなく姿を消すと指摘し、エアバスA380「スーパージャンボ」も同様だとする。二機あるVC-25は全米で今も稼働中の747-200の唯一の例だ。ラムは両機を予備に確保し、長距離飛行用や北京やモスクワと言った米政府が高性能ステルス機の駐機は回避したいと思う場所への移動用に使えば良いとする。
- 「どんなイメージを伝えたいのでしょうか。製造中止になった機体を使いますか。気を抜けば戦争になりそうな国にも行くんですよ。これは政策で決めることとはいえ、米大統領を奇襲攻撃で死亡させようと企む勢力でもしっかり防御され重武装の機体が複数現れれば考え直すのではないでしょうか」
- エアフォースワンを運用するのは第89空輸飛行隊でアンドリュース共用基地を本拠とする。短距離ヘリコプター移動は海兵隊第一ヘリコプター飛行隊(HMX-1)によりシコルスキーVH-3D、VH-60N、ベル=ボーイングMV-22Bを運用しており、今後VH-92Aが加わる。ヴァージニア州クアンティコに基地がある。
- 1980年代製のVC-25各機は今年中に耐用年数の30年を超える。空軍は大統領の空輸ミッションでは「失敗が許されない」とし、移動中も大統領に国務、軍の指揮に必要な居住空間を確保し「世界中どこでも空にいながら」各国元首にも連絡できる環境を提供する。核戦争の場合でも運用が必要となるため機体は電磁パルス他の障害に耐えるべく強化されている。2013年9月に公表された要求性能内容について昨年12月合計21社が説明会に参加した。選定はボーイング、エアバスに絞られたが、エアバスは機体のみの提供に止めたいと希望し、主契約企業になる意向はなかった。空軍は2015年に747-8案を採用し、ボーイングに同年末に提案提示を求めた。すでに同社には空軍から170百万ドルがリスク低減用に交付済みで今年中に初号機の機体購入になるはずだったが、まだ正式契約になっていない。
- トランプはVIP飛行にはなれている。自身でボーイング757-200を「トランプフォースワン」と呼び特別改修しており、選挙運動中に各地を移動していた。「シェパードワン」はローマ法王が使うアリタリア航空のA321法王専用機のことで、2015年9月にワシントンに飛来している。
- その他メキシコはボーイング787-8ドリームライナー特別改装機を空軍に運用させている。オーストラリア首相は以前はボーイングビジネスジェットをリースで使っていたが、今は空軍のエアバスKC-30A多用途給油輸送機で移動している。■
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