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主張 日豪印の三か国に加え、米英両国も加わりインド太平洋の戦略環境を三角形構造で考えると今後どうなるか。

 

 

ーストラリア、インド、日本の三か国がここ数年にわたり連携を静かに深めてきた。米国・英国もアジア太平洋での関係強化を進めている。

 

ヘンリー・キッシンジャーは三角形で考え、米、ソ連、中国の関係を構想した。今日の戦略三角形はインド太平洋にある。頂点にキャンベラがあり、そこから北西にニューデリーがあり、もう一方は南北に走り東京とキャンベラを結ぶ。さらに重要な線が二本あり、それぞれワシントンDCとロンドンをつないでいる。

 

2007年に中国の主張の強まりを受けてこの関係がゆっくりと進化を開始した。ある意味でバラク・オバマ大統領のシリアでの「レッドライン」撤回、ドナルド・トランプ大統領の同盟関係への取引感覚導入から米政策の動きが予測不能となったのを反映したものといえる。同時に日本、オーストラリア、インドが安全保障面での役割強化をそれぞれ認識してきたことの反映でもある。

 

インド太平洋の安全保障構造の進化は冷戦時の「ハブ&スポーク」モデルがネットワーク型の総合構造へ変わったものであり、オーストラリア、インド、日本の安全保障上の関係強化をもたらした。新たな構造では戦略提携関係がインドネシア、シンガポール、ヴィエトナムにも広がっている。他方で、オーストラリア、インド、日本の各国は二国間同盟関係を米国と保持しつつ、域外の勢力とも安全保障上のつながりを強化している。そのあらわれがAUKUSの潜水艦調達事業として実現した。

 

インド太平洋の三角形

 

三角形協力に向かう動きではオーストラリア=インド艦の戦略取り決めがめだつ。オーストラリアの2017年版外交白書ではインドを中核的安全保障の相手国としてとらえており、域内秩序を支えるとしている。AUSINDEX演習が2015年に始まり、直近は2021年9月にダーウィンで開催されている。

 

2020年のリモート型式によるサミットでスコット・モリソン、ナレンドラ・モディ両首相は2009年の戦略パートナーシップを総合的戦略パートナーシップに格上げし、「開かれた自由で法の支配下のインド太平洋のビジョン」を共有し、海洋部での協力強化を謳った。両首相は相互補給支援でも合意し、両国軍事基地の相互利用を決めた。サミット後にインドはオーストラリアを印米日の共同海軍演習マラバールに招待し、クアッド各国が初めて一堂に会する演習となった。2021年9月10日から12日にかけ初の2+2大臣級会合で総合的戦略パートナーシップ協議がニューデリーで開かれ、インド、オーストラリア両国は外相、国防相を参加させた。

 

インドと日本の関係は6世紀の仏教伝来までさかのぼるが、21世紀に特別な戦略グローバルパートナーシップに深化した。モディ、安部晋三両首相が中心になり両国関係が変化した。安部は自由で開かれたインド太平洋構想の原型を2007年のインド国会演説で初めて公表した。「両大洋の合流」と海洋国家の両国に触れ、インドと日本には「シーレーンの確保で死活的国益がある」と述べた。安部は両国の外交防衛担当部門に対し将来の安全保障上の協力を「共同検討」するよう求めた。

 

日本はマラバール演習に2015年から常任演習実施国として参加している。日印間のJIMEXは2016年にベンガル湾で始まり、毎年開催されている。2020年9月、両国は安全保障の関係強化を狙い物品役務相互提供協定を締結した。2021年6月、両国は合同演習をインド洋で展開し自由で開かれたインド太平洋の実現の一助とした。2+2大臣級会談が毎年開かれ、両国間の意思疎通を図っている。

 

21世紀の日本=オーストラリア間の協力の原型となったのが2007年の安全保障協力の共同宣言で、「アジア太平洋さらに域外で共通の戦略権益を協議する」とし、防衛関係者の交流、共同演習、2+2メカニズムの創設を目指した。2013年に両国は物品役務相互提供協定を結び防衛協力をさらに進めた。キャンベラ、東京はともに二国間関係を特別な戦略パートナーシップに格上げしている。

 

オーストラリアの2017年版外交白書では日本の防衛改革努力並びに防衛力整備を歓迎しつつ日本が「一層積極的な役割を域内安全保障で演じるよう支援する」とした。日本は米豪間のタリスマンセイバー演習に2019年初めて参加し、ヘリコプター空母いせと自衛官500名を派遣した。両国間の防衛関係強化を受けて、2020年に両国政府は相互アクセス協定を結び、菅義偉首相は両国間の「意思と能力を共有し、域内の平和安定に資する」と評価し、モリソン首相も「画期的な防衛条約」として日豪の「特別の戦略パートナーシップ」を強化すると称賛した。2021年6月の2+2会合に先立ち、茂木敏充外相が両国の安全保障関係を「次のレベル」に引き上げたいと発言したとロイターが伝えた。

 

自由で開かれたインド太平洋

 

三角形はここ十年で深化し、日本、オーストラリア、インドは米国とのつながりをさらに強め、強硬な態度を強める中国という課題に対応し、力を合わせ自由で開かれたインド太平洋の維持を図っている。

 

2019年の日米安全保障協議会の共同声明文は両国の安全保障政策の方向性を一致させることに触れ、「力による国際法規範や仕組みの変更は自由で開かれたアジア太平洋で共有する価値観、同盟関係への挑戦である」とし、同盟関係国が東南アジア諸国連合、インド、日本、大韓民国と一緒に「ネットワーク構造の同盟関係、協力関係を強化することで安全、繁栄、包括的かつ法の支配が働く広域圏を維持する」ことに全力を尽くすとした。

 

2020年にトランプ大統領はインドを訪問し、包括的グローバル戦略パートナーシップで合意した。同年10月に米印2+2会合で両国政府は物品役務相互提供協定、通信互換性保安合意、軍事情報包括保護協定でそれぞれ合意を形成した。同時に自由で開かれたインド太平洋の維持を再確認した。

 

そこにインド太平洋三角形のもう一つの線が出てきた。ロンドンからである。HMSクイーン・エリザベス空母打撃群をインド太平洋に展開させ、哨戒艇二隻を同地区に常駐させる決定、さらにAUKUS枠組みでの原子力潜水艦建造がロンドンのめざす意図を物語っている。英国防相ペニー・モーダントが2019年のシャングリラ対話で使った表現では域内プレゼンスを「粘り強く」維持するとあった。

 

現時点のオーストラリア-インド-日本の三角形に米国がクアッドで加わり自由で開かれたインド太平洋の価値観を各国が共有する形が生まれた。各国は法規則に基づく秩序、紛争の平和的解決、力による既成事実の変更の拒絶で共通する。では各国間に対中国姿勢で違いは存在しないのだろうか。実はある。各国とも地理や経済の違いのため国益は一様ではない。だが、インド太平洋に関する限り、各国は相互に補強しあう。さらにこの先を見るとワシントン、東京、キャンベラ、ニューニューデリーの政治トップの次の課題は各国の相違点を縮める努力にあわせ、共通のビジョンの方向に国内政治を収束させていく仕事だ。■

 

Can the Australia-India-Japan Strategic Triangle Counter China?

by James Przystup

October 21, 2021  Topic: Quadrilateral Security Dialogue  Region: Indo-Pacific  Tags: Quadrilateral Security DialogueIndiaJapanAustraliaAUKUSAlliancesChina

 

James Przystup is a Senior Fellow at the Institute for National Strategic Studies. Previously, he has served as Deputy Director of the Presidential Commission on U.S.-Japan Relations 1993-1995, the Senior Member for Asia on the State Department’s Policy Planning Staff 1987-1991, Director of Regional Security Strategies in the Office of the Secretary of Defense 1991-1993 and Director of The Asian Studies Center at The Heritage Foundation 1993-98. The views expressed are the authors’ own and do not reflect those of the National Defense University or the Department of Defense.

Image: Reuters.


 

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