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DARPAのグレムリン無人機が空中回収に成功し、実戦化されれば、航空戦の姿を革命的に変える可能性を示した。中国、ロシアへのペンタゴンの切り札になるか注目。

 

2021年10月、ユタ州ダグウェイ試験地区でグレムリン航空装備のテストが行われた DARPA

 

  • DARPAのグレムリン無人機が10月に大きな成果を上げた

  • C-130でグレムリンの飛行中回収に初めて成功した

  • グレムリンが期待通りの性能を発揮できれば、米軍機は敵防空網の有効射程外に留まれる

軍のトップ研究機関たる国防高等研究プロジェクト庁(DARPA)が開発を進めるグレムリン無人機事業で大きな進展があった。


最新のテストでC-130がグレムリンの飛行中回収に成功した。


グレムリンが米軍の想定する性能通りなら、航空戦闘を革命化し、中国やロシアといった高度軍事力を有する相手にも優位性を発揮できる。


A Gremlins Air Vehicle during a test at Dugway Proving Ground, October 2021. DARPA


グレムリンは想像上の生物で、2015年に開発が始まり、再使用可能かつ消耗覚悟の無人機装備の実現を目指している。


ペンタゴンは同機多数を投入し、各種武装も想定する。DARPAは同機の「大群状態」でを有人機と同時運用し、敵打破をめざす。


10月のテストではX-61グレムリン二機を編隊飛行させた。グレムリンはゆっくりとC-130に下方から接近し、母機が垂らすケーブルの先のフックに接続させた。


その後C-130機がケーブルを模き戻し、飛行中の収納に初めて成功した。テスト部隊は同機を24時間後に別のテストに供した。


A Gremlins Air Vehicle during a test at Dugway Proving Ground, October 2021. DARPA


DARPAはテスト飛行四回を実施し、グレムリンの飛行特性データを収集し、母機との運用、飛行中回収を試した。


同機事業は完成の域に達しておらず、グレムリンの別の一機を事故で喪失もしている。


同無人機に情報収集監視偵察(ISR)センサーを搭載すれば航空状況あるいは地上の状況の認識能力が実現し、電子戦ジャマー装備により有人攻撃機の侵入路を「開ける」機能が実現するだろう。


グレムリンで搭載可能なペイロードは150ポンドほどなのでAGM-114ヘルファイヤミサイルなど小型装備に限られるはずだ。


A Gremlins Air Vehicle during a test at Dugway Proving Ground, October 2021. DARPA


グレムリンとは機体探知能力、対空能力、対無人機攻撃能力を有する大国へのペンタゴンの回答だ。


ここ20年にわたる米軍は高度といいがたい敵相手に航空優勢を維持できた。だが今やロシアや中国のような手ごわい相手との競合を想定せざるを得ず、航空優勢の確保がままならなくなる事態が想定される。DARPAはグレムリンで安価な解決方法をめざし、20回使用でき、かつ運用維持は有人機や従来型の無人機より低価格とする。そもそも既存機種は数十年もの長期間供用を前提としている。


グレムリンは空中回収可能・再利用可能とすることでコスト削減をめざしている。空中回収発進によりグレムリンの作戦半径を伸ばしながら母機は遠距離地点で無人機を発進させ、敵の対空攻撃外に留まり生存性を高める。


グレムリンはミッション完了後に母機に回収される。24時間の保守整備を受け、次のミッションにと入可能となる。


A Gremlins Air Vehicle during a test at Dugway Proving Ground, October 2021. DARPA


今回の空中回収が失敗におわっていれば、ペンタゴンとDARPAは同事業の見直しをせざるを得なくなるところだった。


次に考えられる同機の運行形態としてグレムリン多数を母機部隊から運行することがある。この大量運用を実現するべく、DARPAは30分以内にグレムリン4機の発進回収テストを行う。このテストに成功できないとグレムリン事業は大きく見直しが必要となる。


グレムリン事業の母機として、B-52ストラトフォートレス爆撃機、AC-130スプーキーガンシップ、MC-130コマンドーII輸送機、F-35ライトニングII以外にほかの無人機もDARPAは想定している。


1958年にソ連がスプートニク人工衛星打上げで米国の先を行くことが判明し、創設されたDARPAはグレムリン以外でも多大な成果を上げている。


同庁はペンタゴンの先端技術案件の研究開発で主となる組織で米軍の技術優位性維持に貢献している。米国の実力に伍する国の登場で優位性は揺らいでいるが、DARPAの革新技術は対潜戦、ドッグファイト、自律運用装備、さらに将来の地下での戦闘を対象に応用が期待されている。■


DARPA Gremlins Test Shows How US Planes Can Be Drone Mothership

DARPA's latest 'Gremlins' test shows how the US military's biggest planes could be motherships in future wars

Stavros Atlamazoglou Dec 10, 2021, 12:14 AM


Stavros Atlamazoglou is a defense journalist specializing in special operations, a Hellenic Army veteran (national service with the 575th Marine Battalion and Army HQ), and a Johns Hopkins University graduate.


コメント

  1. >中国やロシアといった高度軍事力を有する相手にも優位性を発揮できる。

    グレムリン計画における空中回収の方式は、計画始動後もしばらく謎のままでした。その間、いくつかの国や組織が「俺たちのグレムリン構想」をネット上に露出しており、確かロシアのやつは、巨大ロボットアームで無人機を掴む、みたいなやつだった気がします。
    DARPAが最終的に採用した回収方式は既存の技術要素を組み合わせた無難なシステムに見えるので、これなら中国やロシアも真似してくるかもしれませんね。

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